スズキのコンパクト本格4WD車のジムニーは、その成立過程(下記の記事参照!)を振り返ると、まことに偶然の世界に満ちている。不遇時代の鈴木修氏(現会長)の人間関係から誕生した異色のロングセラーの軽自動車だからだ。それだけでなく、開発者に言わせると、このジムニーがあったからこそ、アルトやエスクードが誕生したという経緯もある。だとするとジムニーはスズキにおいてモノづくりのベースを構築したクルマだといえる。
そのジムニーが、20年ぶりにフルモデルチェンジされた。しかも「機能美」に一段のこだわりをいだいてのチャレンジだという。初期型の発売が1970年、今回で4度目の全面改良である。普通のクルマは、5~6年ごとにフルチェンジであることを思えば、トラック並みの時間の経過。トラックは「生産財」といわれる。レジャー目的で購入する向きもあるが、山岳地帯の生活の足になったり、営林所でのプロが使う道具であることを考えると、ジムニーも「生産財」。いわゆるBtoBの商品かもしれない。
このジムニー、日ごろは地味な存在に見えなくもないが、年間1万台以上が着実に売れていて、世界累計285万台と大健闘。一時期ライバルだったパジェロミニが2013年に発売中止に追い込まれているので、「日本が世界に誇る唯一無二のコンパクト4WD」だと大書するスズキの自慢も許されていい。ちなみに、パジェロミニは、モノコックだった。本格4WDにはフレーム必須なのは分かり切ったことだが、コストを考えると当時の三菱経営者はその一歩を踏み出せなかった。
ジムニーは相変わらずラダーフレーム方式、しかもエックスメンバーと前後にクロスメンバーを追加することで、先代より1.5倍の剛性を高めている(写真)。FRのレイアウト、副変速機付きパートタイム4WDや3リンクのリジッドリアサスなどを踏襲しながら、今回「ブレーキLSDトラクションコントロール」が追加され、泥濘地での走破性に磨きがかかったという。
トランスミッションは、6速を導入も考えたようだが、スペースの関係で5速にとどまり、結果的には5MTとアイシンAW製の4速ATのどちらかを選択できる。価格は145万8000円から。同時発売の『ジムニーシエラ』はエンジン排気量1.5リッターで、年間1万200台。価格は176万円台から。