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2021年8 月 1日 (日曜日)

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トヨタディーラーの不正車検があぶり出した日本の闇

不正車検(トヨタディーラー)  7月21日付の新聞で、「トヨタ販売店の不正車検」が再び大きく取り上げられた。
  今回は、スナップオン・ツールで精鋭の整備士がサービスをおこなうとされてきたレクサス店でも、「手抜き車検がまかり通っていた」というのだ。渦中の「レクサス高輪店」では、車検時間を2時間と設定し、その時間内に点検と整備をおこなうことが売りになっていた。同じトヨタでも、愛知のトヨタ系ディーラーでは、「45分車検」をセールスポイントに掲げて、なんと45分でのスピード車検を展開していた。
  いずれも、時間に追われ、やるべき点検事項をやったことにしていたというのだ。新聞記事によると「時間が目的化し、トヨタ生産方式の高いコンセプトが蔑ろにされた、結果だ」という読み解きである。
  表面的にはその通りなのだが、真相は実は日本の車検システムに潜む(あえていえば)“病魔”である。
  いうまでもなく、日本の車検は大きく2つある。ひとつは持ち込み車検といわれる国(国交省)が直営する全国に120近くある車検場での車検。ユーザー車検や認証工場(全国で約9万軒)のスタッフが“クルマを持ち込んで”車検を受ける。もう一つは、ディーラーや、コバックなどの民間の車検場(認証工場に対して正式には指定整備工場という)である。現在指定工場は約3万軒あるという。
  そもそも、指定工場が誕生したのは、昭和37年(1962年)で、クルマ自体が増加し、従来の国の検査場では検査がまかなえなくなったからだ。
  でも民間車検場である指定工場になるには、認証工場にくらべ設備や人員の数など高いハードルがあるし、検査員(整備士でもある)が1人か2人常駐する。つまり、ほんらい国がおこなうべき検査を代行して仕事としている検査員が、民間車検場にいるということだ。分かりやすく言えば、これって同じ屋根の下に警察官と泥棒がいるようなものだ。検査員が整備士と同じ釜の飯を食っている。このいわば性善説システムを成り立たせるには、しっかりとした両者の間での緊張感が必要だ。
  一方、昭和30年代40年代にくらべ、道路はよくなり、クルマ自体も信頼耐久性が格段に良くなった。
  知恵袋である1級整備士がこんなことをいう。「手抜き整備、手抜き点検は、ありがちですよ。ユーザー車検の愛好家の広田さんもそうでしょう。走行キロ5千とか1万kmといったクルマの場合、1回目の車検で、とくに見るところがないわけじゃないですか?! 整備士ならそんなこと常識で承知していますよ」つまり、無駄と分かっていることをしたくないし、する意味がないということのようだ。「この事件は、内部告発によるものだと思います」というのだ。
  今回の事件は、日本の車検制度自体が、時代にそぐわない仕組みだということを露呈したのだ。
  そもそも、モータリゼーション先進地域カルフォルニアでは、排ガス試験しか義務化されていない。日本のような、スピードメーターの検査も、ヘッドライトの照射試験もない。フロントガラスが割れている、あるいはウインカーの点灯しないクルマが平気でフリーウエイを走っている。使用者責任スピリッツが見事に実践されている世界。それでも、とくに事故が多いとは聞かない。グローバル化していない日本の車検制度、ということに気付くべきだ。新聞記者も、取材対象者にヒアリングして机の上で考えるだけでなく、自分のクルマを一度ユーザー車検を体験すれば、この辺の事情が分かるハズ。
  それでも、車検制度で飯を食っている人は、世界に厳しい車検で高い交通安全レベルが保たれているという。でも、その車検整備の大半は世界から見ると幻想というか壮大な無駄ということ。げんに日本でも、排気量250㏄未満のバイクは、車検はないが、とくに頻繁に事故が起きているわけではない。このことから、日本人には使用者責任の精神が欠落していると考えるのは間違いだ。全貌を知れば、良識ある日本人の大半は、車検制度の抜本的見直しを迫るはずだ。

カーライフ大助かり知恵袋1

遅れてきたお雇い外国人 ウイリアム・ゴーハム伝(第15回)

DATSUNラインオフ  1年ばかりで年間500台生産可能規模の自動車工場が完成し、昭和10年(1935年)4月ダットサン第1号がラインオフした。
  横浜工場は、1937年4月に、鋳造、熱処理、機械加工、プレス加工、車体組み立て、溶接、塗装工程など東洋一の規模を誇る流れ作業による、本格的マスプロダクション・システムを導入している。が、こうしたモノづくり工場づくりの司令塔的存在だったゴーハムは、ライン完成の見通しが立ったところで、次の新しい仕事に着手し始めた。
  ゴーハムの新しい仕事は、「戸畑鋳物」あらため「国産工業」での工作機械の制作だった。
  当時の国産の工作機械は、欧米製に比べ精度が低く、耐久性も劣り、使い勝手も、デザイン性にも見劣りするものだった。精度が悪いだけでなく、動作中のギア鳴りが大きかった。よりいいものを作ることにかけては人一倍高みを目指すゴーハムは、来日時からのこうした工作機械の大改革に着手したかったという。当時の工作機械といえば、旋盤、フライス盤、ボール盤の3つだが、メインの生産は、旋盤だった。とくに旋盤の出来がすこぶるよく、高い評判を得た。
  おかげで、工場も横浜工場だけでなく、川崎、習志野、大森、我孫子など複数に広がり、規模が大きくなり従業員も1万1000名を数えた。
  この企業はそののち日立と合併し、日立金属になるのだが、ゴ-ハムのもとで薫陶を受けた当時のエンジニアの一人は、日ごろから聴いていたこんな言葉が耳に残っているという。
  「アメリカで大学教育を受け、技術家として社会に出ていくについて最も大切なことは、油で手を汚すことだ」と言われた。「頭でっかちで理論だけになっていては創造的な仕事ができない」というのが日頃からのゴーハムの主張だった。ゴーハムに会うごとに「手を汚していますか?」と聞かれたものだという。いかにも現場主義を重んじるゴーハムらしい言葉だ。

カーライフ大助かり知恵袋2

ぼくの本棚:キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』(ハヤカワ文庫NF)

マリスとPCR  いまや誰の口にものぼるようになったPCR。たぶん幼稚園の子供でも口にするアルファベット3文字だ。
  専門用語がいつしかごく普通の人々の会話の話題にのぼったり、TVやラジオ、ネットで頻繁に使われると、本来の意味などどこかにすっ飛んでいって、みんな分かったつもりで流行するものである。
  PCRとは「ポリメラーゼ連鎖反応(チェーン・リアクション)」。サイエンスの専門用語だ。
  ごく簡単に言うと“ポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きを利用して、DNAサンプルを、いわばネズミ算式に増幅させ、いろんな世界で活用できる装置”のこと。
  どんなところで活躍? といえば、新型コロナなど感染症の陽性・陰性判定だけではなく、DNA分析による犯罪捜査、古代DNA分析による考古学の新たな研究など分子生物学、法医学、考古学、犯罪捜査など幅広く使われている装置である。保健所や大学病院だけでなく、幅広く研究所レベルではポピュラーな機器(しかも比較的安価)なのである。だから、昨年来PCR検査が頭打ちになったとき、大学や教育機関にあるPCR装置の活用を強く期待されたのは、こうした背景がある。
  今回の面白BOOKブック紹介は、このPCRを発明しノーベル化学賞をとったキャリー・マリス博士(1944~2019年)の自伝である。翻訳は『動的平行』や『生物と無生物の間』などの著書でおなじみの分子生物学者・福岡伸一博士(1959~)。
  まず表紙の写真がぐっとくる。マリス博士、実はサーファーなのである。しかも、ホンダのクルマが大好き。ガールフレンドと別荘に向かう途中、いきなりインスピレーションを得て、PCRシステムをイメージするのだが、このとき博士の手に握られていたのは、シビックのハンドルだった。1983年5月のこと。バイオのベンチャー企業の一員だったのだが、じつはベンチャーからノーベル賞をゲット(1993年)したのも、彼が初という。
  OJシンプソン事件って、覚えているだろうか? アメリカン・フットボールのスター選手が妻を殺害したとして、当時のマスコミをにぎわし、大半のアメリカ国民はこの事件を扱うTVショーにくぎ付けになったものだ。このときDNAによる検証をめぐって、マリスは裁判にかかわっている。有力弁護士らの援護もあり、シンプソンは無罪となった。このとき、マリスは、サンディエゴの北の自宅から、裁判所のあるLAまでホンダ・インテグラで移動していたのだ。とにかくホンダ車ファンなのだ。
  はっきり言って、この本は、クルマの話はほとんど出てこない。でも、マリス独自の科学的知見が縦横無尽に駆け巡り、読者は知らず知らずのうちに知的好奇心の海で遊泳することになる。多数派の意見などに耳を貸さない。彼に言わせると、大騒ぎしている地球温暖化ガスCO2をめぐる環境問題が銭儲け主義の似非科学者のでっち上げだというのだ。このへん、トランプに似ているが、一読の価値ありだ。
  とにかく、本の原題が「DANCING NAKED IN THE MIND FIELD(心の原野を裸で踊る!)」。どんだけロックンロールしているんだか?

愛車メンテのプラスアルファ情報

1/4インチのL型“マスターハンドル”は使えるか?

マスターハンドル  いまから4半世紀前になるが、イタリアのベータ、フランスのファコムから、カド部におしゃれな樹脂グリップでまとめられたL字型レンチがあり、実にまばゆい存在だった。手に持つ部分を樹脂にすることで、エルゴノミックというか、人にやさしい工具として鮮烈に登場したのだ。こうした樹脂を使った癒し系の工具は、アメリカにも日本にもなかったと思う。(ラチェットハンドル自体も樹脂グリップタイプは少数派だった)
  今回ホームセンターで見つけたのは、台湾製工具である。ただ、企画して販売しているのは、大阪の商社・三共コーポレーション(℡06-6252-1712)である。樹脂グリップは、PP(ポリプロピレン:硬め)とTPR(エラストマー樹脂:柔らか目)のハイブリッド構造。ベータもファコムも、当時はソリッドの表面つるつるの樹脂だったことを思えば、進化したといえなくもない。
  手に持つとたしかに、グリップフィールは意図通り硬めと柔らかめを感じる。
  でも、全体としては、中指と薬指の一部が沿う形状としてはいるが、気持ちの良いピタリ感を抱けない。意外と、このへんの詰めは、人間のフィール(肌感覚)に左右されるので難しい世界。それと落下防止紐が付けられる穴が設けられている(ベータなどにもあった!)が、このおかげで、グリップが過剰にデカくなり、重さにも悪影響を及ぼしている。ちなみに重量は、106g、寸法は長手が160㎜、短手が95㎜だ。
  次に軸はどうか?
  ファコムやベータが、鏡面加工のピカピカだったのに比べ、こちらは細やかな梨地加工だ。このへんは好みかもしれないが、ピカピカの方がテンションが高まることは間違いない。
  差し込み角度1/4インチ(6.35㎜)の、いわゆるドライブ側(オス側)の寸法精度はどうか? 手持ちのKO-KENの1/4インチソケットをつなげてみたが、ふつう程度のガタがある。大き過ぎるとガタが多くなるし、少なすぎると取り外すとき厄介となるので、まぁ、標準寸法だと思う。
  驚くべきは、価格。504円+税だった。やはり台湾ツール、恐るべし、なのだ。


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