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2022年8 月 1日 (月曜日)

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16代目の新型クラウンはマルチ車種で勝負!?

新型クラウン

  「いつかはクラウン」とかつては憧れのクルマだったトヨタのクラウン。半世紀以上も前の1955年(昭和30年)に登場して以来、現行ですでに15代目。長いあいだ50代から60代の旦那グルマの代表でもあったクラウン。だが、セダンの凋落でいまや年間2万台の低空飛行。
  高級車レクサスシリーズもいわゆる富裕層のあいだで定着したことだし、フェイドアウトも頭に浮かぶ。
  ところがトヨタはセドリックをあっさり消し去った日産とは違った。クラウンは、カローラとともにトヨタにとっては看板銘柄以上に強い思いが込められたDNAと考えているらしい。それだけに、16代目の新型クラウンは、伝統のクラウンにどれだけの進化と革新を、曲がり角に立っている自動車の大変革時代にどんなカードを切ってくるのかが、注目だった。果たせるかな、それは・・・・想像を超えた大胆な大変身だった。
  永年頑固に守り続けてきた駆動方式であるFRをかなぐり捨て4WDにするだけではない。簡単に乗り降りできるSUVのクロスオーバー、スポーツSUVのスポーツ、正統派でありショーファーニーズにも対応できるセダン、それにキャンピングカーなどになりそうなエステート、この4タイプを登場させたのだ。かつてクラウンと言えばセダンの代名詞だったが、セダンは一角に存在するにすぎなくなった。“想像力のフラッグシップ!”とばかりコンセプト自体を変えてきたのだ。ちなみにエンジンは2.4と2.5リッター直4気筒でデュアルブースト・ハイブリッドと進化させている。
  半導体不足の影響などでクロスオーバーを今年の秋に販売し、その後1年半にわたりあとの3つのタイプを発売していく予定だという。一度にデビューさせるのではなく、1タイプごとメディアの話題を狙う戦略? 4タイプということは、多様性に対応し、従来の旦那クルマのイメージをかなぐり捨て、勇み足の評価かもしれないが、これってアバンギャルド(前衛)的! 30代40代の比較的若い層と女性ドライバーにも照準を合わせた? けだし、モノづくり側から見ると、形態の数を増やすのは、大振りの三振を防ぐ安全策とも取れなくもない。
  今回のクラウン4タイプ登場させた背景には、もう二つの理由があるとみた。
  2016年からのトヨタ社内カンパニー制の採用で開発速度が向上したのがひとつ、もう一つは新しいモノづくりの基本TNGA(トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャ)の熟成があったといわれる。開発陣は伝統と革新のはざまで苦悶して新型クラウンを生み出したようだ。
  新型クラウンの話題はクルマそのものだけではない。これが4タイプ登場の二つ目。市場をグローバルに拡大したのだ。
  クラウンと言えば、スカイラインや軽自動車同様ながきにわたり国内限定の商品だった。今回の16代目の新型はなんと世界40か国に販売するという。欧州と北米などでベンツ、BMWと戦うクルマに仕上げたということだ。年間販売台数を20万台とふんでいる。世界に足場を備えたトヨタの拡大路線がすかし見える。
  行き過ぎたデザインで当時のセドグロに抜かれた4代目クラウンの苦い記憶がある。だが、日本市場では、トヨタの圧倒的な販売力に物言わせ確実な受注が予想される。海外で新型クラウンのアバンギャルド性にどんな評価が下されるかが早く知りたいものだ。日本での価格は量産効果を背景に400万円台から600万円台と意外とリーズナブル。

カーライフ大助かり知恵袋1

『トヨタがトヨダであった時代』(第17回)

拳母工場

  刈谷工場では、大量生産を目指すには狭すぎる。これを見越し、数年前に愛知県拳母に191万㎡(58万坪)、いまでいうと東京ドーム約40個分の広大な土地を入手していた。ここに乗用車月産500台、トラック月産1500台の工場を目標に建設がスタートした。
  鋳造、鍛造、メッキ、ボディ、プレス、機械加工、組み立てなどの各工場と、事務所、研究施設、寮、社宅、食堂、グランドなどの厚生施設を完備した、日本最初の自動車一貫製造工場である。
  1937年9月に着工し、翌年9月に完成、11月3日に竣工式が執り行われた。豊田英二の指揮で、刈谷工場からの機械移設を1か月で完了し、従業員数4848名だ。
  なかでも、組み立てラインは、全長が100mのチェーンコンベア・ライン。これが2ラインあり、流れ作業による大量生産方式だ。乗用車組み立て工程は、2階にあるボディ艤装(車室内の組み付け)ラインと1階のシャシー組み付けラインで構成されている。2階で艤装されたAA型のボディをホイスト(クレーン)で吊り下げ、エンジン、足回り、トランスミッションなどが組み付けられた1階のシャシーと合体させる。
  と言葉でいうと、すんなりいったようだが、実際には当時はボディの寸法精度がお粗末なので、ボルトの締め付け作業はスパナなどの手工具でおこない、時間とスキルが要求されたという。組み付け完了後も、調整や修理をほどこすケースが多く、ラインとは別の作業場を設け、こうした手直しや調整、塗装の補修がおこなわれた。

カーライフ大助かり知恵袋2

ぼくの本棚:竹内一正著『未来を変える天才経営者イーロン・マスクの野望』(朝日新聞出版)

イーロンマスク

日本人が取材して書いたイーロン・マスクの伝記だ。
  直近ではツイッター社買収で物議をかもしている。実業家イーロン・マスクの名を知ったのは、かれこれ15年ほど前になる。電気自動車が海のものとも山のものともわからない頃。当時は「へ~っ!」という感じで、いきなりカリフォルニアで、EVオンリーの自動車メーカーを買収し挑戦するニュースが耳に入ってきた。イーロン・マスクは、南アフリカで生まれ、カナダにわたり、そしてアメリカにたどり着いた移民である。現在51歳。
  電気系のエンジニアだった父親とモデルで栄養士の母のもと、恵まれた家庭で育った男は、ペンシルベニア大学で経営学と物理学をまなび、24歳でソフト制作会社を設立。これを皮切りにさながら“わらしべ長者”のように、企業を売却、その原資で新企業を購入、さらにそれを育て高額での売却を繰り返し、雪だるま式に莫大な資産を手に入れる。
  凡人は、そこがゴールとばかりリタイヤして優雅で退屈な暮らしを手に入れるものだ。
  だが、イーロン・マスクの人生観はまったく異なる。ここからが本番の人生とばかり、テスラ・モータースをグローバルな電気自動車メーカーへと押し上げる。当初は、自動車のことがほとんど分からないベンチャー企業に過ぎなかったが、英国のロータスからシャシー技術を導入し、トヨタのレクサスでたゆまぬ仕事を続けてきた人材を取り込む一方、GMとトヨタ合弁のカルフォルニアの中古自動車工場を格安で手に入れ、ここをリニューアルすることで世界に高級スポーツカーのEVを送り出す。創業期のよちよち歩きがウソのように、いまや時価総額ではるかトヨタを抜く。
  イーロン・マスクのすごいところは、モノづくりへの絶えざる好奇心と理解力、即決実行力、それに人たらし的魅力で多額の資金を集められる人間力。
  驚くべきことに、このテスラのCEOだけではなく、同時進行で宇宙開発事業に乗り込み、着々と成果をあげている点だ。スペースX社の代表としての取り組みだ。
  とはいえ、艱難辛苦の連続。無人宇宙ロケット“ファルコン9”は、3回にもわたり打ち上げ失敗を繰り返した。それでもイーロンは、まったく絶望しない。それどころか、失敗は成功の元とばかり、知見を積み上げ、見事にNASAができなかったコスト1/10でのロケット打ち上げを実現して見せた。イーロンの夢である「火星への人類移住計画」に向けて進んでいく。
  考えてみれば、現在世界の経済を支配しているIT企業は、アマゾン、アップルにしろフェイスブックにしても宇宙開発や自動車づくりに較べると、リスク度が一桁も二けたも低い。投資する金額の多寡だけでなく、人間の命がかかっているかを思えば、段違い。イーロン・マスクは、なぜ二つのリスキーな企業体を同時進行でアグレッシブに運営きるのか? 「二兎を追うもの一兎をも得ず」でなく、イーロン・マスクは「一石二鳥」あるいは「一挙両得」のことわざを地でいくのである。
  「いずれ地球は、人口爆発でほかの星に移住せざるを得ない。だから火星への移住を視野に入れている。それまで、できるだけ温暖化を押える意味で電気自動車の増殖に力を注ぐ」とイーロンは、彼の事業を説明している。「そもそもEVは化石燃料で電気をつくれば元も子もないという説があるが、そうではない。化石燃料をエネルギーとするエンジンは、入力したエネルギーのわずか40%しか車輪を回す力になっていない。つまり非効率。その点電気はたとえ化石燃料で作り出したものでも、途中でのロスは10%もいかず効率的。それに電気を太陽光または風力で作り出せば、完璧なエミッションゼロとなる」という理屈だ。著者の竹内さんは元エンジニアだけに、技術的解説が手馴れているので、ハラハラして読む必要なしだ。(2013年12月発刊)

愛車メンテのプラスアルファ情報

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第6回)

チタンのボルト採用例

  結果的にはチタン合金のネジは頭部成形で活躍するパンチが3段、ネジ部成型のダイスが2段階という、やや手間がかかるネジづくり工程となった。
  このモノづくり挑戦ストーリーを日経系の新聞に取り上げられたところ、思いのほか反響があった。「キャップボルト(内6角ボルト)をつくれないか?」とか「チタンのボルトなら、市場はあるよ!」。ところが、これまでステンレスねじの世界でもキャップボルトをつくった経験がなかった。住宅関連のネジ市場にはキャップボルトはなかったからだ。
  これをきっかけに、ネジ径5mmとネジ径6mmを中心に自転車競技やモータースポーツ向けのチタンボルトを商品化している。たとえばMOMOのハンドルを止める6本のM5皿ネジ、自転車ではハンドルクランプやコラムクランプ、それにブレーキキャリパーのクランプネジ、いずれもM5,M6だが、一台の競技用自転車に合計27本、これだけで重量が従来ネジからチタンネジに変更して94.7g→70.1gとわずか24.6gだが、比較試乗してみるとさすがに軽くなった実感はないようだが、剛性感が高まるという。
  「4月にお台場で開催されたサイクルモードという自転車イベントで、チタンボルトと従来ボルトを比べる試乗会をおこなった結果、みなさんおしなべてしっかり感を得たというお褒めの声をいただきました。とくにブレーキの初期タッチがよくなり、コントロール性も上がったという評価でした。これって、譬えてみるとアイスクリームに醤油を一滴たらすとより甘く感じる、その感覚に近いと思います」(社長) 実食していないので良くはわからないが‥‥。
  ともあれチタンボルトの経験を踏まえ、2012年からインコネルボルトの開発にも挑戦している。
  インコネルはニッケルがベースの合金で、とくに耐熱性に優れスペースシャトル、原子力産業、化学プラント、産業用タービン、真空装置、発電プラント、航空機の部品で活躍。自動車の世界でもディーゼルエンジンの燃焼室に使ったり、エキマニやマフラーに採用しているケースもある。
  「インコネルは、塑性加工ののちのいわゆる加工硬化が起き、そこからの成形が困難になる傾向にあるんです。圧造過程で組織が変わる厄介さがある。そこで金型のデザインを見直したり、インコネル自体の種類を選択しなおすことで、製品化にこぎつけています。これもチタン合金ネジの製作過程での経験がずいぶん生かされ、とくに克服困難な壁ではなかったのはよかったです」
  経験とデータの蓄積が、モノづくりの世界ではおおいにモノをいうようだ。


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