カーボンファイバーなどの繊維分野、医療分野など幅広い事業で活躍している帝人(TEIJIN)が、注目を引く製品を横浜で行われた先の「自動車技術展」でお披露目していた。
「多機能天井トリム」というのがそれ。事の始まりは、「夏場、エアコンの吹き出し口から露骨な冷風は嫌だ!」という助手席の女性たちからの苦情。クルマの空調の♯me too!?
そこで、開発陣が発想したのは、「天井から冷風を出せないか?!」 フロントピラーから冷風を天井に導入し、さわやかな冷風を天井から吹き出す……。これがトントン拍子にうまくいったというのだ。
鍵となったのが、「縦繊維の不織布」。不織布は通常横繊維構造だが、帝人が縦配向のモノを開発していたからだ。天井に冷風層を設け、その縦繊維の不織布を介して車内に冷風を流すというものだ。この縦繊維配列の不織布は、光をも通すので、ルーフパネルの下部(ルーフトリム)にLEDを組み込んで、目にやさしい光を車内に届けられる。風の吹き出しだけでなく、光の演出もできちゃうということだ。
この斬新な機構、参考出品ながら、空調メーカーとジョイントすれば、すぐにでも量産車に取り込めるという。昔から「頭寒足熱」が健康にいいとされているだけに、実に理にかなった新次元のエアコンディショナーである。クルマの快適性が一段と高まるに違いない。
ちなみに、縦構造の不織布は、もともと新幹線のシートの座面に使われていて、蒸れ防止を狙ったものだという。聞いてみると、相変わらず技術は実に面白い世界です。
いまどきの軽自動車のクルマとしての性能は目を見張る。販売台数の約半数を占めるだけのことはある。
でも、軽自動車はたとえばタイヤだけを見ても、普通車にくらべタイヤの径が小さい分、同じ速度で同じ距離を走れば、累積の回転数が多くなるわけで、それだけ負荷がでかく、つらい! ホイールベアリングの耐久性が課題になりやすい、と推理できる。これは実は、ほかの自動車部品にも言える。
先日、NGKの技術者にお話しを伺ったところ「軽自動車のダイレクト・イグニッション(DI)のコイルは実は相当つらいんです」という。スパークプラグのギャップは従来の1.1ミリから例えば1.3ミリに広がり、より大きな放電エネルギーを要求される。となると、コイル内の巻き線の被膜が徐々に溶けたり、熱や振動で、回りのシリコン樹脂が劣化して、リークが起きるというのだ。排気量が1リッター以上のエンジンだと余裕があるが、660㏄3気筒はつらいというのだ。
症状としては、ウォーニングランプが点灯し、エンジンが息つく。
そこで、コイルの交換となるが、これは1本1~2万円と安くない。しかも、1本がだめになると、他のコイルも早晩ダメになる可能性大だという。この症状、ダイハツやスズキの軽で顕著で、ホンダの軽ではあまり聞かないという。読者の皆さん、もし情報があれば教えてくださ~い。
人間、プロの整備士でもねじを締める段になるとど~しても「締め過ぎる!」という傾向があるようだ。
先日あるイベントで、NGKプラグのスタッフが、「スパークプラグの締め付けトルク体験」をおこなっていた。トルクレンチの数字部を目隠しにして、新品のプラグを締めてください! というものだ。ねじ径12ミリの普通のスパークプラグだ。
さっそく、トライしてみた。トルク感覚は、ある程度自信があったのだが、ほんのわずかトルクオーバーしてしまった。15~20Nmのところ21Nmまで締めてしまったのだ。痛恨のミスである。
どうもいままで、感覚による締め付けに明け暮れた感が強い。
「できれば、かならずトルクレンチを使って締めてくださいね。実は、プロの整備士さんの大半も締めすぎの方が多いのです」とNGKスタッフのアドバイス。
スパークプラグの締め過ぎは、極端になるとネジ自体が伸び、ネジが切れてしまう恐れがあるだけでなく、受けた熱を逃がしずらくなり、ついには異常燃焼でプラグがだめになることもあるという。
再使用のスパークプラグの場合も、原則的には「グイ~っ!」とばかりバカヂカラで締め込まず、座面にあたってから「くいっ!」と約1/12回転締め込むぐらいで、大丈夫。ガス漏れの心配もいらないということだ。
変な質問だが、盗難ワースト3をご存じだろうか?
ズバリ言えば、プリウス、ハイエース、ランドクルーザーだ。なぜかみなトヨタ車。なかでも、ハイエースは、4輪のスーパーカブともいわれていて、世界でほぼくまなく大活躍している。このおかげで、エンジンから細かいパーツまで世界が欲しがっている!(例えば中南米からロアアーム2000個の注文を受けていた解体屋さんに遭遇して驚いたことがある!) ということもあり、長らく盗難ワースト上位をマークしているのである。
エレキによるイモライザーでセキュリティをカバーするというほかに、こんな手法もある。「ブレーキペダル」を強制的にロックしてしまうのだ。レバーを引くだけで簡単にロックが効き、解除するにはカギを差し込みまわすだけ。ハンドルロックのように、取り外した器具をどこに置くか、という心配がいらないので、ユーザーに「使うのが厄介で、いつの間にかロックしなくなった!」ということもなさそうだ。価格も4万円台とリーズナブル。扱いは「ブレーキロックジャパン」http://brakelock.jp
論語では「40にして惑(まど)わず」とあるが、筆者は古希になっても迷いの日々である!?
そんな古希ジジイが、免許の更新手続きに出かけてみた。
驚いたことに、70の手習いとばかり、自動車教習所のコースを5周ほどさせられた。箱庭のような教習所でハンドルを握ったのは、半世紀ぶり。恐ろしくくたびれたクラウンのAT車である。坂道発進こそしなかったが、助手席に乗る検査員の指示でクランク、車庫入れ、右折左折をさせられた。
お叱りを受けたのは、「一時停止違反」であった。停止線を越えて止まったのだ。かつて2回ほど、そういえば同じ違反で罰金を払わされた苦い思いがよみがえった! 陰険なお巡りさんが、物陰に隠れ、違反者を取り締まっていて、その網に見事に引っかかった経験だ。
運転の癖を指摘されたわけで、喜ぶべきところだ。(手数料4650円を払ってはいるが)
この後、動体視力を含む視力検査と視野の検査、それに座学を受けた。座学は受験する側6名vs.1人の教官。息子、あるいは孫ほどの教官である。双方向の講座なので、受験しているシニアに質問を浴びせる。瞬発力の衰えか、はたまた答えがわからないのか? あるいは孫ほどの若者から質問され、答えられないと沽券にかかわると感じたのか? 古希ジジイたちの額にしわが一気に増加! ムムムっとばかり、妙な沈黙が支配する異次元空間の不思議な授業でした。
(写真は、教習所のトイレに張り付けられた標語だ)
気持ちいい走りができて、燃費が良くて、コストが安い! そんなエンジンがあれば大流行するのだが、なかなか人間が開発するエンジンは、理想形にはならないようだ。
かつてM社が社運をかけてGDIエンジンを前面に押し出し、「わが社のエンジンはすべてこのエンジンで賄います!」とまで社長が大見えを切った。ところが、わずか10年もたたないうちに引っ込めてしまった。エンジンダイナモのある実験室やテストコースでは、何ら問題が出なかった直噴エンジンが、いざ市場に出してみると、ことごとくクレームの波が襲ってきたのだ。低速走行を続けたり、アイドリングを長くおこなうと、エンジンにススがたまり、ついにはエンジン不調を引き起こしたのである。プラグの接地電極を2つにしたり、3つにしても、根本的な解決にはならなかった。いわゆるシビア・コンディションでの走行には無理があったのだ(高速走行中心のオーナーは、いまでもM社のGDIエンジン車を愛用している!)。エンジンフードを開けると、途端にディーゼルエンジンのようなうるさい音を立てる! としてノイズの不満もあった。
でも、この直噴エンジンは、高負荷時に高い出力を得ることができ、直接燃料を燃焼室に吹くので、気化熱効果で、体積効率が向上し、耐ノック性がよくなり、圧縮比を高められ、燃費向上につながるなど魅力的な側面もある。だから、いまでも希薄燃焼方式からストイキ燃焼といわれる理論空燃比近くの燃焼方式にしたり、ススが溜まらないさまざまな工夫を凝らすなどして、各社それぞれ、徐々に改善を繰り返しているようだ。ということは、直噴エンジンは、「いま少しの未熟エンジン!」といっていいようだ。
パイオニアという存在は、いつの時代も退屈な日常にはない苦行が襲いかかっている!
他でもない、一番のエコカーといわれる燃料電池車FCVのことである。水素をどう作るかで、完璧なエコカーとは言い切れない面があるが、とりあえずエコカー・チャンピオンである。
そのエコカー・チャンピオンのオーナーがいま瀬戸際に立たされているのである。水素の充填時間はガソリン車並みの数分、一充填での航続距離も余裕で500キロを超え、大満足。水素ステーションの数は今のところ100店舗ほどとこの点での不便は購入時に織り込み済みだったとはいえ、数少ない水素ステーションの営業時間が午後5時で終了するところがほとんど。しかも土日が開いていない。
となると、例えば東京から商用で名古屋で仕事をしてその日に帰る、という芸当ができない。名古屋で商用をしていると、午後5時を回る可能性が大。そこからの水素充填が難しいからだ。「こいつは使えない! とばかり、普通のハイブリッドカーに乗り換えたオーナーさんもいる」という。
トヨタの某1級整備士さんは「じつは燃料電池車の車検はそろそろなんですね。エンジンもトランスミッションも付いていないので、オイル交換などはなく、この面では楽ちんなのですが、水素タンクの容量検査があるらしく、そのためには水素を満タンにして検査場に持ち込まないといけない。自宅から自走できず、車載キャリアカーで運ぶことになる。となると費用がかかる…」と戸惑い気味。
現在日本列島で活躍するFCVは、2000台足らずに過ぎない。もともとお金に余裕がある資産家や、好奇心旺盛なクルマ大好きおじさんに違いない。こういう苦行を経験すること自体を楽しんでいる人たちなんだろうか? 他人事ながら、心配になる。
人間、きちんと制服を着た、“プロと思しき人物の言葉”には、弱いものだ。
昨年の暮れ、名古屋から東名で横浜に向かっていたところ、岡崎近くのサービスエリアで給油することにした。エネオス系列の地元のガソリンスタンドが経営しているSSだ。給油も終わり、タイヤの空気圧を自分で確認していたところ、SSのスタッフが近づいてきた。ひと目見て「お客さん、前輪の外側が摩耗限界に来ていますね。どこまで帰られるのか知りませんが、このままでは危険ですよ」「よく見ると、縁石に乗り上げた際にできるピンチカットといって側面のコードが切れて、そのまま走り続けるとバーストの危険がありますよ」
でも写真で分かるように、100歩譲っても“さほど重症ではない!”。
明らかに、こちらがクルマのことなど何も知らないお客と見て、脅しにかかってタイヤを売りつけようとしているのである。こんないい機会はない。こちらも商売柄、どんなふうにセールストークを展開するのか知りたくて、しばらく聞いてみることにした。
すると、不思議なことに、いつしか「これだけ熱弁をふるってタイヤ交換を進めるスタッフがなんだか他人に思えなくなってきて(広い意味で同業者である!)、ほかにくらべて(通常のタイヤショップとかネット価格にくらべ)確実に高いのは承知で頼むことにした。とにかくどんな風に、仕事を進めるかも、見たかった。
で結論的に言えば、タイヤサイズ185/60R15で、BSの最下級ブランドのネクストリーが2本で2万6000円。バランス取り、古タイヤ処分量など含めコミコミ値段だ。販売窓口が増えたことにより、世はタイヤ価格戦争の様相ではあるが、後で調べてみると、トータルで2~3割ほど高かった印象である。
先日、夜間に友人宅の壁際にクルマを停めようとして、リアの左側にこすり傷をつけてしまった。
よくあること。ありきたりの出来事だ。この瞬間にもおそらく…‥何ら根拠がないのだが、100件以上同じ失敗をしている人がいるに違いない!?
でも、自分がやらかしたとなると少しショックだ。
次の日、こころを立て直して修理に取り掛かった。さいわい、凹みがなかったので、何とかコンパウンドとタッチアップペイントで、ある程度の修復ができる。そう考えたら少しこころに明るさがさした。
よく観察すると、こすった相手はモルタルなので、より硬いクルマのパネルが勝って、壁の塗装を持ち込んでいる(こすりつけている!)。そこで、シンナーで付着した壁の塗装を落とす。これだけでかなり擦り傷の面積が激減。さらにコンパウンドを使い、表面の塗膜をそぐことで、こすり傷面積を減らした。ここまでわずか7~8分。だいたい目立たなくなった。でもよく見ると、塗膜が削れ、黒色のアンダーコート(錆止め)がわずかに見えるところが、黒点のように3つほどあった。
そこで、タッチアップペイントの出番だ。
タッチアップペイントのカラー番号は、エンジンルームか助手席側センターピラーのプレートに書いてある。これを頼りにカーショップに出かけ、手に入れた。850円ほどだった。使う前によく振って…‥しかるのちに“付属の刷毛”で……というのは間違い! これだとはみ出して塗布するので、かえって傷口を大きくする。そこで、爪楊枝の出番だ。爪楊枝の先端に塗料を付け、まるでドットを打つように少しずつキズ部分に塗料を付けていくのだ。せっかちな人はイライラしそうだが、心を落ち着かせて、地道にこの作業をおこなうと、意外といい感じに仕上がる。といっても、プロが見れば、色も微妙に違い(元のカラーが太陽光などで劣化しているので!)、お金を取る仕事ではない、ともいえる。
でも、5メートル離れてみれば、ほぼ元通りに見える! 強がりに聞こえるかもしれないが、アマチュアの仕事も悪くはないと思う。
海外に出かけると、日本のことが外から見えてより理解が及ぶのと同じように、トラックのことを勉強すると乗用車の輪郭がよりクリアになるようだ。ここ半年ばかりトラックの取材をしていての一つの想定外の成果の一つである。
たとえば、ブレーキだ。
乗用車では、フットブレーキと駐車ブレーキの2つしかない。
ところが、トラックには、乗用車同様にフットブレーキをもちろん備えるが、このほかに排気ブレーキやリターダーと呼ばれる補助ブレーキが付いている。重い荷物を載せるトラックは、たとえば下り坂などで、フットブレーキだけでは、制動力がおぼつかないため、補助ブレーキを必要としているのである。
排気ブレーキというのは、普通ステアリングホイールの左から生えたレバーを上か下に押すことで(上か下かはトラックメーカーで異なる!)作動する。原理は、排気管の途中にバルブを設け、閉めることにより排気をマフラーに行くのを防ぐことで、エンジンの動きを抑制する。
乗用車で、かつて雑誌の取材の冗談ページで、マフラーの先端を大根でふさぎ、エンジンを止める! なんてことをしたことがあるが、まさにこれが「排気ブレーキ」そのものである。完全にフタをすると、エンジンが止まるので、トラックの排気ブレーキシステムのバルブは、隙間をもうけ排気ガスを少し逃がしている。
もう一つの補助ブレーキの「リターダー」というのはプロペラシャフトの回転に、直接負荷をかけることで速度を落とすという原理。電磁石の力でおこなうか、流体の力でそれをおこなうかいくつもタイプがある。50~60万円と高価なので、あまり使われないという。写真は、三菱ふそうの小型トラック・キャンターの排気ブレーキのスイッチである。
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