みなさん!知ってますCAR?

2022年10 月 1日 (土曜日)

フェイバリットツールのひとつは? と尋ねられたら

TOP六角棒レンチ

  かれこれ30年ほど使い続けているだろうか?
  誰にも1本か2本は、よく使う工具というものを持っていると思う。10mmのコンビレンチの人もいるし、2番のプラスドライバーの人もいる。使用頻度が高い工具であるはずだ。
  ぼくの場合、イの一番にあげたいのがヘキサゴンレンチの「6角棒レンチ」である。20年ほど前の自動車のエンジンルームではあまりヘックスボルトを見かけないので、使う機会はなかった。ところが、バイクの世界では、1980年代からすでにヘキサゴンボルトがかなりポピュラーだった。ふつうの6角ボルトの頭とくらべ、一回りコンパクトになるので、バイクではとくに、ハンドル回りに多くのヘキサゴンボルトが使われてきた。アクセルグリップ回り、ハンドルクランプ回り、ブレーキ&クラッチレバー回りなど、指折り数えると10本以上ある。サイズはだいたい4mmと5mmだったと思う。これらのボルトを脱着したり、バイク本体を背の高いトランスポーターのワンボックス車に乗せやすいように、バイクを低くするためハンドル回りのボルトを緩めたりする。こうした作業で、実に6角レンチの使用頻度はグイっと高まる。
  TOP製の「6角棒レンチFHW-4568」は、このバイクのハンドル回りにあるヘックスボルトを脱着するのに便利。鍛造製のハンドルの両端に短い両頭ビットが付いていて、クルクル360度回せるスタイルになっている。4mmと5mm、それに6mmと8mm、つまり計4つのサイズのヘックスボルトに対応できるというわけだ。軸と90度の角度にすればトルクをしっかりかけられるし、ハンドルと同じ向き(つまりストレート)にすれば早回しができるのだ。1本で4サイズに対応するだけではない。
  ナイフタイプ、L字タイプ、ドライバータイプ、ソケットツールタイプなど6角レンチはいろいろなタイプがあるが、TOPの製品は実にユニークで使いやすい。
  全体の重量が154gと重く、手に持つとずしりと重く感じるのは事実だが、使ううえではそれはマイナスにはならない。頑丈につくられている、質実剛健さを醸し出すうえでプラスに働いているかもしれない。だが、これをもし平成の時代に作り直すとすると、たぶんハンドルをアルミの鍛造製にするか、同じ鍛造のスチールでもなかをくりぬき中空にするかもしれない。となると価格はたぶん10倍程度になる。現行だと実質1000円以下と格安。そう考えると、このままの姿に落ち着く? せいぜい表面にローレット加工を施すぐらいか? (写真は今回新たに購入したもの)

2022年9 月15日 (木曜日)

頭がつぶれたネジが外せるドライバーの有効性は?

パーフェクトドライバー2-1

パーフェクトドライバー2-2

  ハンドツールのなかで、ドライバーほどごくごく身近なわりには使うのが難しい工具はない。
  “ねじ回し”という別名があるせいか、ついつい回すのに気が回り押し付ける力がおろそかになる。そこでカムアウトと呼ばれるドライバーが浮き上がり、結果としてネジのアタマをつぶしてしまう‥‥。ネジのアタマにきっちり食い込むには、押し付ける力をおろそかにできないので、押しつけチカラ7割、回す力3割、なんてことが言われる背景はここにある。
  ソケットツールで6角ボルトを回すときのように、ノー天気で使うと思わぬトラブルを招くのがドライバーなのである。相手のネジに正対する姿勢も大切だし、ドライバーの先端がねじの頭部からずれないように気を遣うことも大切である。
  とはいえそれでもトラブルときはトラブルものだ。かくゆう私もこれまで不本意ながら失敗を犯している。
  そんなときに問題解決法として、最近はいろいろな商品が出てきている。頭部をプライヤーでつかんで回すタイプとか、鏨(タガネ)状の工具で新しい溝を構築して回す……などなど。
  今回取り上げるのは、後者の仲間で、通常の2番プラスドライバーの超変形モデルという製品だ。先端部を観察すると、矢じりのような形状で、よく見るとギザギザが設けられている。
  矢じりのようになっている理由は、そもそもこれは貫通ドライバーの部類なのでハンマーでグジャグジャになったネジの頭部に新しい溝をつくる、ということだ。その前に、先端のギザギザが効果をあらわし、すんなり回ってくれることもあり得る。ハンマーで叩いて、溝を作り直すのは、それでも回らない場合なのだ。
  貫通ドライバーは、非貫通ドライバーにくらべ、重い。軸自体が、ハンドルのエンド部、つまり座金まで延ばされているからだ。だいたい非貫通に比べ1.3~1.5倍重いと考えてもらいたい。
  この製品「パーフェクトドライバー2」は、重量129グラム、全長212mm。これまで内外の10数本の貫通ドライバーを測定してきたが、だいたい常識的というか平均値のなかに収まる重量と全長だ。特徴的なのは、軸が4角だという点。通常は丸軸あるいは6角軸で、軸径がφ6~6.4mmだが、これは幅6.0mm。ついでにハンドルエンド部の座金の径は18mmで、これも標準サイズ。グリップは6角断面のハイブリッド樹脂構造。黒い部分は少し弾力がある柔らかめ樹脂、シルバーの部分(軸の根元)には、硬めの樹脂素材を配する。グリップの径は、太いところで34mmある。
  手に持ったフィールは、ずしりとした感じで、硬質感があり、アメリカンツールなどにくらべ小ぶりの印象。
  こうした工具は、1~2回の使用には耐えるが、数回使うと肝心の先端部が磨滅して、初期の機能を発揮できないというケースがある。このへんのテスト結果は、後日報告したい。
  発売元は、藤原産業(株) TEL0794-86-8200.価格は、近くのホームセンター調べで713円。

2022年9 月 1日 (木曜日)

わずか500円で手に入るパーツトレイは使えるか?

アストロの500円トレイ

  いまどきのクルマはあまり触りたくはなくなったが、少し旧いクルマの部品を取り外す際、必要になってくるのが、パーツトレイ。
  パーツをどこに一時保管するかを考えずに、いきなり分解作業に入って戸惑ったり、ひどく後悔する経験は何度もあるからだ。たとえば、後先を考えずやみくもに分解して、徐々に増えていくボルトやナットを「組付けるときを想定して整理しておかなくちゃ!」という考えが頭をもたげると、次にどこを外すのか!? という思いと交錯して、混乱するものだ。安直に手近で見つけた段ボールの箱に入れておくと、ちょっと触れただけで、なかのボルトやナットがごちゃ混ぜになり、あるいは箱から飛び出したりして、最後に組むとき頭を悩ませることになる。
  大げさに言えば“後顧の憂い”を絶つ意味でも、安心の『パーツトレイ』を準備することが、よい整備をおこなううえでの必須事項である。たぶん、というか優れた整備士はみなこのことをよく知っていて、事前に準備している。
  以上のことをふまえて、今回のパーツトレイを眺めるみる。
  ほぼ手のひらサイズの大きさの長方形。深さ33mm、横縦同じく33mmのスクエアなボックスが3×5、全部で15個ある。取り出すとき指の太さなどを考えての寸法だ。バイクのアクスルナットなら収まる。ただしアクスルボルトは長すぎて収まらないので、もう一つ別タイプのパーツトレイに入れておけばいい・・・・たぶん優秀な整備士は、事前にここまで考えるのだと思う。
  重量は300gとやや重めだが、それこそ迂闊に触れただけでひっくり返ることはまずない。底にマグネットが付いているので、工具箱にぴたりと張り付く。
  計15のスクエアがあるので、使ううちにそこに埃やゴミが堆積する。そこで時々、綿棒などでそこをきれいにする必要が出てくる。考えられる難点といえば、そこだけだ。価格も500円なので、2つぐらい準備しておくと安心だ。発売元は、㈱ワールドツール http://www.astro-p.co.jp

2022年8 月15日 (月曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(最終回)

食い付きゲージ

  この工場では、日に目が回るほどの大量のネジをつくっている。
  となると、当然ながらオシャカというか不良品も少なからず出るハズ。長年記事をつくっていても自慢じゃないが、数ページに1個や2個は間違いを犯すものだ。校閲という人が校正作業をおこなうと、赤字で真っ赤になることも珍しくない。それからいえば、一日100個や150個は、失敗するネジが生まれてもおかしくはない。流通コインでも、印字がずれたり、刻字洩れということもある。となればネジでも、異品種の混入、ネジ山がずれる、ネジ山付け忘れ、頭部の変形といったこともあるのでは? 
  といったことを説明すると、逆の意味で驚かれた。「うちの工場は、100万個に3個以下の不良品です。じっさいは一日200万~300万個生産しているのですが、多くて3個、ゼロという日もあるんですよ。というのは、通常のネジメーカーは最終的に選別機にかけて、不良品を文字通り選別するのですが、当社は工程ごとに自動不具合選別センサーで常に目を光らせている。社内では工程内品質確認と呼んでいるのですが、こうした“つくり込み思想”は自動車大手サプライヤーレベルでは、高く評価してもらっています」
  たとえばネジ径が4㎜、つまりM4の頭がプラスネジ。これはプラス2番のドライバーを使う。JISで、ある程度緻密な各部の寸法が指定される。早い話、しょせんそれはある範囲内に入っていれば許される話。許容範囲があるということだ。だから、ボルトやネジはしょせんアバウトだという印象を持つ。ユーザーの満足度を100%充たせているとはいいがたい。
  「そこでうちではドライバーの老舗・大阪のベッセルさんのA-14という両頭ビットのプラス2番をぴたり合わせているんですよ。JIS規格には、“ネジ用十字穴”の項目に“食いつきゲージ”というのがあります(写真)。このゲージの先端にネジの頭を押し込み、その状態で垂直にして落下しないかをみる。ゲージに対してガタがあったり、ゲージの底にぴたりと付かないネジは当然、落下する。ステンレスねじの場合、磁力を持たないので、よほどピタリと各部の面が合わないと下に落ちてしまう。でもうちのネジは落ちないのです」
  論より証拠とばかり、試してみたところ“食いつきゲージ”の先端部の溝にぴたりはまり、ネジが落下することはなかった。このことは、たとえば組み立てラインでねじを取り付ける際、大きな力になる。うっかりしてねじが床に落ちたら作業時間が無駄になり、余計なトラブルを引き起こすことにつながるからだ。ふつうのドライバーで、バイクやクルマを修理する際にも同じことがいえる。エンジンルーム内にネジを落とすと、探すのに一苦労するからだ。(ちなみに・・・・後日、新潟の某ドライバーメーカーに問い合わせたところ当然ながら食いつきゲージを日常的に使っていることはむろんだが、最近の輸入ネジのなかには規格を満たさないネジが増えてきていて、ネジが舐めるトラブルが起きて困っているということだった。)
  ネジの世界で、これほど注力をそそぎ作り込んでいる。ここにすでに取り上げた「ねじガール」の存在価値や仕事への情熱がつながっているようだ。…‥当方もこれまでの気の抜けた記事作りを反省し、ネジを巻いて仕事に取り組む気分になって、工場を後にした。

2022年8 月 1日 (月曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第6回)

チタンのボルト採用例

  結果的にはチタン合金のネジは頭部成形で活躍するパンチが3段、ネジ部成型のダイスが2段階という、やや手間がかかるネジづくり工程となった。
  このモノづくり挑戦ストーリーを日経系の新聞に取り上げられたところ、思いのほか反響があった。「キャップボルト(内6角ボルト)をつくれないか?」とか「チタンのボルトなら、市場はあるよ!」。ところが、これまでステンレスねじの世界でもキャップボルトをつくった経験がなかった。住宅関連のネジ市場にはキャップボルトはなかったからだ。
  これをきっかけに、ネジ径5mmとネジ径6mmを中心に自転車競技やモータースポーツ向けのチタンボルトを商品化している。たとえばMOMOのハンドルを止める6本のM5皿ネジ、自転車ではハンドルクランプやコラムクランプ、それにブレーキキャリパーのクランプネジ、いずれもM5,M6だが、一台の競技用自転車に合計27本、これだけで重量が従来ネジからチタンネジに変更して94.7g→70.1gとわずか24.6gだが、比較試乗してみるとさすがに軽くなった実感はないようだが、剛性感が高まるという。
  「4月にお台場で開催されたサイクルモードという自転車イベントで、チタンボルトと従来ボルトを比べる試乗会をおこなった結果、みなさんおしなべてしっかり感を得たというお褒めの声をいただきました。とくにブレーキの初期タッチがよくなり、コントロール性も上がったという評価でした。これって、譬えてみるとアイスクリームに醤油を一滴たらすとより甘く感じる、その感覚に近いと思います」(社長) 実食していないので良くはわからないが‥‥。
  ともあれチタンボルトの経験を踏まえ、2012年からインコネルボルトの開発にも挑戦している。
  インコネルはニッケルがベースの合金で、とくに耐熱性に優れスペースシャトル、原子力産業、化学プラント、産業用タービン、真空装置、発電プラント、航空機の部品で活躍。自動車の世界でもディーゼルエンジンの燃焼室に使ったり、エキマニやマフラーに採用しているケースもある。
  「インコネルは、塑性加工ののちのいわゆる加工硬化が起き、そこからの成形が困難になる傾向にあるんです。圧造過程で組織が変わる厄介さがある。そこで金型のデザインを見直したり、インコネル自体の種類を選択しなおすことで、製品化にこぎつけています。これもチタン合金ネジの製作過程での経験がずいぶん生かされ、とくに克服困難な壁ではなかったのはよかったです」
  経験とデータの蓄積が、モノづくりの世界ではおおいにモノをいうようだ。

2022年7 月15日 (金曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第5回)

チタンネジ

  面白いことにチタンはTiO2(酸化チタン)というチタンと酸素の化合物というカタチの鉱石で地球上には使いきれないほど埋蔵されている。マグネシウムを使い還元、つまり酸素分を除去して純チタンを生み出す。この精錬法が確立したのがわずか半世紀ほど前。チタンの量産はデュポン社が始めている。その意味では、まだまだ金属の歴史としては、まだ始まったばかり。
「ネジをつくるうえで重要な物理的特性に引っ張り強度というのがあります。ふつうの鉄のネジがだいたい400MPです。ここでのメガパスカルというのは、正確に言うとMP/mm2と表記する。1mm四方当たりにかかる力。ステンレスだとだいたい500MP、これがキャップボルトつまり内6角ボルトだと約700MPに高められるのです。これがチタン合金を金属組織から分類したβ型合金のなかのTi15-3-3-3と呼ばれるチタン合金だと、引っ張り強度をさらに780MPにまで高められたんです」と柿崎社長。
  このTi15-3-3-3というのは正確には15V-3Al-3Sn-3Cr。つまり重量比で15%のバナジウムとそれぞれ3%アルミニウム、スズ、クロム、残りが純チタンという構成のチタン合金だ。ちなみに、航空機や人工関節、あるいは人工歯根インプラントなどには比較的ポピュラーなチタン合金であるTi64(ロクヨン・チタン:6%のアルミニウムと4%のバナジウム)が用いられているという。これはコスト的には比較的リーズナブルだが、冷間時の加工性が難しい。いっぽう「15-3-3-3チタン」は、この64チタンにはない、冷間時加工性が高くネジに成形する際のトラブルが比較的小さくて済む特性だ。
  そこで、当初は、廃棄寸前の機械を使い、恐るおそるテスト的にネジづくりをしてみたという。
  つまりステンレスねじを加工する機械で、チタンネジがつくれるかを試した。心配なのは、素材が硬すぎると金型が割れたり、機械が急に止まったりのトラブルが起きることだ。
  小さな不具合が起きたものの、長年の知見で乗り切ることができた。金型を絞り方向の力を逃がすカタチに設計し直したのと、圧造のヘッダーを多段打ちに変更することで、大きな壁にぶつかることなく比較的スムーズに事が運んだ。これが2005年のこと。ネジ径M6のプラスネジを100個ほどつくることに成功したのだ。モノづくりとはことほどさように地味な世界。でも、ここから商品化がスタートした。モノづくりの醍醐味を企業内で共有できることになった。

2022年7 月 1日 (金曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第4回)

チタンの特性

  いうまでもないが、クルマばかりではなく、現在日本は大きな曲がり角に来ている。社会構造の変化の一つが、少子高齢化である。少子高齢化が進むと、いわゆる生産人口が減り、全体の世帯数が減り、それにともない住宅建築数が激減する。興津螺旋のネジを買ってくれるお客様の動向を眺めると、このことが顕著に分かるという。
  「たしか平成9年をピークにして、それ以降住宅建設が右肩下がりとなります。戸建て、マンションを含め全国で年間200万戸を超えていたのが、いまでは年間80万戸ほどになった。ですから、住宅関連の市場で使うねじに比重をかけているだけでは、興津螺旋の将来性は明るくはならない」
  大学で経済学をまなんだ現社長の柿澤宏一さんは、1996年に入社した。父親から3代目を受け継ぐにあたり次世代のネジづくりに期待された。振り返っても過剰なプレッシャーはとくになかったようなのだが、クルマが好きでなかでもトップエンドのポルシェが大好きだったこともあり、ネジ素材の頂点ともいえるチタンに関心をいだき始めたという。「とにかくチタン合金は、ゴルフクラブ、メガネフレーム、それに航空機などトップエンドの製品の素材の象徴的金属です。でも、加工が通常の金属にくらべ厄介だ」
  大学はモノづくりとは距離のある経済学部。だがサイエンスが好きだったこともあり、金属素材の研究を始めるのにさほどの苦痛を感じなかったようだ。1997年あたりからチタン合金の初歩から研究をはじめ、当初は、JISでいうところの2種のチタンを取り寄せ研究している。
  よく知られるようにチタンは、アルミの約60%の比重しかなく、単位重量当たりの強度はアルミの6倍、鉄の約2倍。優れた金属特性のため、航空機産業、具体的にはジェットエンジンのファンやファンケース。耐食性が優れているため、化学プラントや深海調査船のキャビンにも採用されている。柿澤さんはますます好奇心が高ぶったという。

2022年6 月15日 (水曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第3回)

ねじ工場内部

  創業者で初代社長の柿澤金男さんは、昭和46年に亡くなっている。バトンタッチした2代目社長(現社長の父親:現在81歳)には「次世代はステンレスねじを挑戦したらどうか」と生前に言い残したという。
  高度成長経済が始まり、ステンレスねじの市場が今後増えることを見越してのことだ。
  創業者のアドバイス通り、2代目はステンレスねじの研究に打ち込み、商品の種類を増やしていった。アルミ建材、家電、キッチン、バス、エアコンなど生活の身近なところにある装置や器具類で使われているステンレスねじを重点的に生産。興津螺旋をねじメーカーの上位に押し上げていったという。
  じつはステンレスといってもいくつもの種類がある。興津螺旋が使うのはSUS XM7である。SUSとはJIS(日本工業規格)でのステンレス鋼を意味し、英語のSTAINLESS USED STEELの略である。
  このSUS XM7は従来からあるSUS304の冷間加工性を高めたもので、18Cr-9Ni-3.5Cuつまりクロム18%、ニッケル9%、銅3.5%で、残りFe(鉄)。ねじ類に使われるポピュラーな素材。1977年にJISの仲間入りをしている。ちなみに、食器などに使われるポピュラーな18-8ステンレスは、クロム18%、ニッケル8%、残りFeである。このXM7は、銅が3.5%混じっているところがミソで、冷間時の圧造性を向上させているという。
  この工場では、ネジ径M3からM8(ネジの直径サイズで単位はmm)、首下が5mmから長いものだと150mmのネジをもっぱら生産しているので、線形は素材の違いがある。たとえばネジ頭部を成形する圧造時の滑りをよくするためボンデ処理(リン酸塩皮膜処理)を施すとか、いろいろな種類の線材を素材メーカー(正確には伸線メーカーだが)から購入している。その種類はなんと約40種類もあるという。

2022年6 月 1日 (水曜日)

知られざるネジメーカーの素顔! 静岡の“興津螺旋(おきつらせん)”(短期連載 第2回)

柿澤社長

昔のネジ切り盤

  こうした男女差別を撤廃した職場づくりのキッカケは、3代目の社長の価値観に根差しているようだ。
  このネジメーカーは、昭和14年に現社長の祖父・柿澤金男氏の手で創業された。小ネジ、木ネジ、小鋲と呼ばれたリベットづくりからスタートして、戦時中は海軍の軍需工場となり、戦後民需品ネジ工場として復活している。
  「昭和30年代には木ネジの生産ではトップメーカーだったと聞いています。といってもシェアは10数%でしたが。その後昭和30年代後半に入ると高度成長経済を背景に住宅建築が右肩上がりの時代が続きます。このころわが社は、木ネジや小ネジ、釘、鉄線など住宅関連の装備で使われるネジをもっぱらつくっています。ところが、昭和40年代になると、アルミサッシをはじめ、家電、キッチン、バス、エアコンなどに使われるステンレスねじに、着目しました。その研究の成果は昭和48年に初めてステンレスねじを生産したことで花を開きました。そして約10年後には釘や鉄線部門を閉鎖してステンレスの小ネジやタッピングネジに大きく比重をかけていきます」
  こう語る今年49歳になる現社長の柿澤宏一氏は、中学の夏休みの自由研究で、自分ちの工場のことをリポートしている。本人の記憶も薄れてはいるが、とにかくネジの種類の多さを級友に知らせたくて一心不乱に鉛筆を走らせた」ことだけはよく覚えている。「たったそれだけ?」とやや不満げな当方の態度に、遠くを見てさらに思い出したようだ。「そういえば、ネジの作り方についての研究発表もした」という。
  ネジの作り方と言えば、いまは生産性の高い転造と呼ばれる製造法が一般的。ギザギザの付いた金型に丸棒の素材を押し付け転がして、あっという間にネジ部を作るやり方だ。工場の機械を眺めても、まるで“瞬間芸のように!”次々にネジができていく。でも現社長が小学生時代には、まだ一昔前の「ネジ切り盤」がかろうじて活躍していたという。
  ネジ切り盤といえば、ネジの歴史を書いた本のページがすぐ思い浮かぶ。丸棒を回しながらバイトと呼ばれる刃物でネジ溝をつけていく、小型旋盤みたいな工作機械。英国人で世界で初めてネジの規格(ネジ山の角度が55度で、いまの60度とは異なる)をつくったウイットウォース(1803~1887年)のネジ切り盤。イラストでしか見たことがなかったが、実はこの工場の片隅に大切に鎮座していた。原理は、旋盤の超ミニ盤だが、M6とかM8のネジを対象とするのであるなら、両手で持てるほど小型であることが確認できた(写真)。

2022年5 月15日 (日曜日)

お気に入りドライバーANEXビスブレーカーが“ワニドラ”に進化した?!

ワニドラ1

ワニドラ2

  新潟にあるドライバー専門メーカーANEX(会社名/兼古製作所)は、このところ意欲的に新製品を世に送り出している。たぶん背景にはDIYブームがあるからかもしれない。
  そのANEXのドライバーで一番のお気に入りは、ビスブレーカーというアイテムだ。
  その名の通り、頭がつぶれたネジを回せるという「元祖お助けドライバー」である。ふつうの貫通ドライバーだけではない。先端部に注目(写真:右が従来型で、左がワニドラ)。先端部もクロス形状にすることで、舐めたネジの頭にハンマーで叩き、新たなクロス溝をつくる。これで舐めたネジを回せるというわけだ。
  しかも新しいネジにも使えるので、普段使いにもとても重宝するドライバーでもある。
  このドライバーのいいところは、かつておこなった“意地悪テスト”で一番いい成績をあげたことからも分かってもらえる。
  どんな意地悪テストかというと、意図的に油が着いた手という想定で、食器洗い洗剤を手のひらに付着させ、ネジを回せるかどうか? というものだ。5段階レベルで、5点が満点として、大多数は3~4だった。なかには、ウッドのグリップなどは文字通りツルツルしてまったくチカラが伝わらず、使い物にならず評価1というものもあった。
  ANEXのビスブレーカーのグリップ力の秘密はややユニーク。グリップ自体が合成ゴム系(TPE:熱可塑性エラストマー)でつくられ、断面が楕円形状のうえリブが付いている。これが劇的にグリップ力を高めてくれる感じ。握ったとき親指を置くディンプル(溝)が軸の根元にあり、これで使い勝手を高めている。このグリップのことをメーカーでは「クロコダイルハンドル」と命名している。“ワニドラ”という商品名は、ここからきているようだ。
  ともあれ、この洗剤手のひらの意地悪テストでの評価は、5点満点でライバルを圧倒してしまった。
  今回、品番も3980で、従来の3960から進化している。重量が、実測で133gから115gと18g軽くなっている。見えないところで、軽量化している。
  この点をANEX本社に問いただしてみると「とくに軽量している意図はないです。個体差ではないでしょうか? ただ、刃先の形状を見直し、よりネジに食いつきやすく、結果として自社テストですが、従来比1/5の力でネジを回し外せます。素材も少し手にやさしく柔らかくしています。それと刃先をクロムメッキ+黒染めからパーカー処理に変更しています」とのこと。
  このドライバー、使ううえで要注意なのは、熱処理した硬い素材のネジ(HRC硬度が40以上)には、残念ながら歯が立たない点。この場合は、ドリルでもんで、古いネジを取り外すなり別の手法をとることになる。
  ホームセンターでの購入価格は、712円。海外ブランドに十分太刀打ちできるコストパフォーマンスだといえる。

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