天井からぶら下がるシーリングライトをはじめ、家庭内ではLED発光ダイオードを使った照明器具がかなり浸透している。
消費電流が小さく、そのぶん電気代が少なくて済み、寿命が40倍ほども長く、しかも熱くなりづらいというメリットで増殖中だ。
自動車の世界でも、いつの間にか、LEDランプが増えている。
ヘッドライトはまだまだ少数派が、テールランプには多くLEDが活躍している。先日、トヨタ・ノアの一世代前のテールランプを取り外してみた(写真)ところ、ウインカーとバックランプの2つは昔ながらの白熱球だが、テールランプ(ウインカー)とストップランプはLEDバルブだった。
このLED電球は裏側を見るとわかるが、基盤が収まり、非分解式である。白熱球のときのように、「バルブが一個切れたから、切れたバルブだけを新品に交換する」という修理法が選択できないのだ。つまり一個でもLEDが付かなくなったら、ぜ~んぶ新品に換えるしかないのだ。もちろん、外側のレンズ自体に亀裂が入れば、同じく全部交換することになる(付属のLED電球の敗者復活はない!)
むろんLEDは白熱球ほどには壊れない(寿命が長いので)が、万が一球切れになると、片側だけで3万円台とかなり高い。価格は車種によるが、国産車はだいたいこんなものだ。ちなみに、トヨタのノアやシエンタのLEDの中古部品はいまのところほとんど市場に出ていない。運よく見つけても2万円台だという。
白熱球からLEDへの変遷は、ユーザーに福音なのか、それとも逆にユーザーの財布を痛めつけることになるのか? もう少し時間がたたないと見極められない。
次世代の乗り物は、EV(電気自動車)でほぼ間違いがないようだ。
EVは、モーターでタイヤを回転させ、駆動するのだが、キーテクノロジーは、高性能なバッテリーである。
高性能とひと口で言うが、早い話、軽くてかさばらず、ワンチャージでできるだけ遠くまで走れ(エネルギー密度が高い!)、しかも短時間で充電ができ、長寿命であること。もう一つ言うならコストが安い!
現在の最先端バッテリーのリチウムイオンよりも、ざっくり2倍強の高性能なものが求められている。移動の自由が今後持続的に可能な、環境にやさしいクルマ社会を維持するためのキーテクノロジーである。
“バッテリーの神様”がいたとしたら、実に虫のいい話である。
この虫のいい蓄電池の開発に世界のモノづくりメーカーは、いまや必死だという。
次世代型の蓄電池は電解液が液体ではない固体の「全個体電池」だそうだ。電解液が固体だと、液漏れによる発熱や火災の心配がないだけでなく、航続距離がより長くとれ、充電時間も短くなるのだという。コストなどが不明だが、現在トヨタは、この「全個体電池」にフルスロットルで研究に取り組み、2年後の2020年の前半には実用化する予定だという。(写真・左がリチウムイオン電池、右がその全固体化。全固体化電池をトヨタと共同開発している東京工業大学の菅野了次教授のホームページから)
じつは、トヨタグループの祖である豊田佐吉翁は、1925年に、飛行機で世界一周できるほどの電池の開発に100万円(いまの金額なら20億~30億円)の賞金を出しているが、いまだに実現されていない。その条件は、100馬力で、36時間連続運転ができ、重量60貫(約225㎏)、大きさ10立方尺(約280リッター)。この条件には遠く及ばないながら、すこしでも近づきたい。開発者のあくなき戦いが展開されているという。
大学は文学部だけど、高校は工業高校だというキャリアのせいか、モノづくり工場を取材するとコーフンして血の巡りがよくなる。旋盤やフライス盤などの工作機械に短期間だが触れたことがあるということもあるが、工場内の機械オイルの匂いがなんともなく、血を湧き立たせるようだ。
先日うかがった三菱ふそうバストラックの川崎製作所。ここはトラック組み立て工場でもあるが、実はエンジン組み立て工場も併設している。三菱ふそうのトラックのエンジンは大型スーパーグレートのエンジンはドイツのダイムラーから、小型トラックのキャンターは、フィアット製の4P10型を採用しているが、実は、中型トラックのファイターの排気量7.5リッター6M60型エンジンは川崎で組み立てられているのだ。これを約2時間30分つぶさに取材することができた。
詳細は、来年1月発売予定の単行本に譲る。何を発見できたかというと「板金部品、鋳造部品、鍛造部品などの部品で構成されたエンジンを組み立てるシステムは、一朝一夕にはできない合わせ技が散りばめられ、先達たちの長い汗と涙が見え隠れした」ということだ。失礼だが、中国でこうした工場をつくるには20年はかかるのではないだろうか?
シリンダーヘッド、シリンダーブロックなどは福島にある鋳造工場で、半製品化され、この工場で、細部を機械加工され、カムシャフトやバルブが組み込まれ、徐々にシリンダーヘッドASSYが完成。いっぽうシリンダーブロックも機械加工されたり、クランクシャフトが取り付けられたり、コンロッドやピストンなどがドッキングされ、さらにシリンダーヘッドASSYとここで合体。…‥と言葉で追いかけると簡単だが、実に作業員が動きやすく確実に間違いのない作業がおこなえる工夫をしたラインである。
いまや、チャップリンの映画「モダンタイムズ」のような非人間的な工場とはまるで異なる。声を掛け合いながらの組み付けシーンもあり、何やらリズミカルである。ちなみに、この組立工程の作業員は約2週間の研修で、ラインに立てるが、バルブクリアランスの部署だけは、感覚を必要とするため、一人前になるには1か月はかかるということだ。
タクシーは年に10数回ほどしか乗ることはないが、路線バスやトラックなどとともに街中の風景を左右する乗り物なので、とても気になる存在だ。
日本では、クラウンコンフォートが、ガリバー的存在。そのトヨタのタクシーがフルチェンジされた。「JPNタクシーLPGハイブリッド」である。JPNとはジャパンのことだ。
トヨタなら、専用プラットフォームの新型タクシーかな、と思いきや…‥手近なクルマをベースにしている。コンパクトカーである量販車シエンタ・ハイブリッドをベースにしたものだ。
今後40年50年街中の風景になると思うと少し肩透かしだが、気を取り直して、眺めると、いろいろな工夫が見える。ホイールベースと車幅はシエンタと同じだが、全長を165ミリ伸ばし、全高を75ミリ高くしている。これにより、左側のスライドドア開口幅720ミリ、開口高さ1300ミリ、乗り込み高さ320ミリを実現(右側リアドアは普通)。人にやさしい乗り降り性を具現化していると思う。重量はシエンタにくらべ約30kg重くなった程度だというから、なかなかだ。
一番苦労したところはどこか? と開発者に聞いたところ「アシストグリップです」とすぐ答えが返ってきた。「邪魔にならず使いやすくするため、トライ&エラーして素材と形状を決めたんです」とのこと。燃費はJC08モードで、19.4㎞/l(シエンタHVは27.2㎞/l)。価格は327万円台からと意外と高い。30万キロ走行後のダンパーなどの劣化具合が気になるところだ。
モノを運ぶ手段は、鉄道、船舶、トラックの3つだが、いまやトラックは全体の9割以上を占めている。ちなみに、半世紀前は、鉄道が物流のチャンピオンだった。
これが交通渋滞を引き起こす一因ではあるが、その陰の部分を小さくしようと、トラクターとトレーラーはどんどん増えている。トラクターは牽引する車、トレーラーは牽引されるクルマだ。いわゆるセミ・トレーラーというものだ。
トラクター(写真)は、キャビンの後ろにカプラーと呼ぶ連結装置を持ち、トレーラーの前方下部のキングピンと連結される。大量の荷物(最大50トン!)を一度に運べるだけでなく、荷台の切り離しができるので、運行と荷役を分離でき、トータルで素早い輸送が可能となる。だから、ここ数年でどんどん街中を走り回るトラクター&トレーラーの姿を見るようになったのだ。カーゴ系、ウイング系、タンクローリータイプ、車載専用車、海上コンテナタイプなどいろいろある。
このジョイント装置「カプラー」をつくっているメーカーに出かけてみた。1963年からだからすでに半世紀以上という国内唯一のメーカーだ。
面白いことに1軸タイプと2軸タイプがあり、前者は前後方向のピッチングのみ、後者はピッチングと左右のローリングにも対応するので荒れた路面でも追従性がいいというのだ。値段が2倍以上することもあり、日本では約7割が1軸タイプだという。
カプラーの重量は、100~250㎏とかなりの重量物だ。
調べると様々な安全装置も付いているものの、安全にジョイントしたり切り離すには、ある程度トレーニングする必要があるようだ。
ディーラー工場に出かけた経験のある人は、人的構成がセールスマン、整備士、フロントマンの3つで構成されていることが薄々感じているはず。ところが、もう一つパーツマンというのがいる。2万点ともいわれるクルマの部品を検索する専門職である。街の自動車部品商や整備工場からの問い合わせにスピーディに答えるプロフェッショナルだ。
でも、セールスマンやフロントマンなどとくらべると、一番地味な存在だ。整備士もいまどきは直接顧客と対話しなくてはいけないが、パーツマンはひたすら部品のことを考えればいいだけ! そんな職種だと思い込んでいたところ、「いやいやとんでもない! あなたの認識、間違ってます!」という答えが返ってきた。
先日、三菱ふそうトラック・バスのサービスマンコンテストを取材したら、そんな声が聞こえたのである。パーツマンの競技で、顧客に新商品の用品を説明しセールスする能力を競うプログラムが展開されていた。具体的には、先だって紹介した後付け可能な衝突安全装置「モービルアイ」を売り込むか? 接遇能力、商品知識が問われた。
競技を眺めていると、なかなか想定問答集のようにはうまくいかず、子供の学芸会ののどかな雰囲気を醸し出していたが、本人たちは必死である。
この競技とは別に、一昨年からできたパーツマンの認証資格をめぐる「3分間スピーチ」もあった。3分間は、意外と長い。アタマのなかで練り上げても、うまくゆかないものだ。ふだんの言葉遣いで、ジェスチャーを交えてしゃべるだけでいいのだ! と思うが、「それができればしゃべりの商売に鞍替えするよ!」といわれそう。外野席からは「接客能力が高い人はもともとパーツマンはやらないと思うし、そもそも、こんな場所に出てこないね」
う~ん・・・・困難を楽しめる気持ちで向き合う人でないと、いまの世間は渡れない! 若い人の苦労を垣間見た思いでした。
博物館や図書館は、すでに死んでいる“過去の遺物”を置いてる倉庫にすぎない!
学問から背を向けて青年期を送った筆者は、実は、そんなふうに長く博物館のことを考えてきた。
ところが、当方が大人になったせいなのか、はたまた博物館の方がじょじょに「見せる技術」が向上したせいのか、なかなかに侮れない存在であることに気がつきはじめた。
いすゞの創業当時の古いトラック・バスの復刻版を見ることもできるし、エンジンのモノづくり、シャシーからボディのモノづくりの動画を楽しめる。話には聞いていた「大型トラック一台が走れるシャシーダイナモ」の模型の断面を眺められる。このダイナモは、いすゞ独自のもので、気温・湿度・気圧を自在に設定して、世界中どこの環境の道路でも再現でき、詳細なデータをとることができる装置。メディアですら入れないとされている。模型だが、このなんたるかが分かるのである。
このほか、新旧のディーゼルエンジンの外観を眺められるし、トラックのドライビング・シミュレーションを楽しむこともできる。
幼児から大人まで、奥行きの深い展示物、好奇心を揺さぶられる展示品が並ぶ。今年3月にオープンしたいすゞの「いすゞプラザ」は、なかなか見ごたえがあった。最寄りの駅から1時間に2本のシャトルバスが走るし、駐車場も備えるだけに、盛況だ。平日は予約だが、1月先まで予約でいっぱい。ただし、土日は予約なしで入れる。土曜日に出かけてみたところ、ファミリーや昔を懐かしむシニアたちでいっぱいだった。入場料無料というのも魅力である。
2011年3月の東日本大震災以来、蓄電池が注目されてきた。万が一の時に電気を何とかしたい! という願いが背景にはある。
N-BOXのフルチェンジと同じ日に、「ハンディタイプの蓄電池E500」が発売された。クルマの12Vソケットや家庭のコンセントから繰り返し充電できるリチウムイオン電池を搭載する。充電時間は約6時間、300Wの電気が約1時間、500Wの場合は約35分間使えるという。たとえば、アウトドアで55Wの電気毛布なら約4時間使え、卓上の12WのLED照明器具なら約10~14時間、65Wのノートパソコンなら約4回も充電できるという。
重量は5.3㎏。2台並列に繋げば、より消費電力の多い電気製品が使えると、複数の電気製品を同時に使える。なかなかかわいいカタチをしている。
このホンダ製品の自慢のポイントは、独自の正弦波インバーターを搭載しているので、パソコンなどの精密機器やマイコン搭載の電気製品など、電気の質を受けやすい製品を安心して使える点だ。定格出力300W、最大出力500W。内蔵の電池容量は377Whで、充放電サイクルは、1000回以上。価格は7万9920円。
このところ、トラックの本作りのせいか、いつも頭の中にトラックエンジンの音が響いている。「ゴ~ッ!」て感じ。落ち着いて考えると、何のことはない……加齢による「耳鳴り」だった。
それにしても、トラックのエンジンはすごい。重い荷物を積んで乗用車と伍して高速道路や山坂を登ったり降りたり……。最近の大型トラックのエンジンは、直噴インタークーラーターボ付き6気筒エンジンで、排気量が8リッターとか9リッターが主流。少し前まで13リッターが普通だったので、トラックの世界でもダウンサイジング化がここでも起きている。
なかにはスポーツカーのようにターボが2個付いているものもある。驚いたのは、通常コモンレールタイプが主流の時代に、ユニットインジェクターを採用しているエンジンもある。UDトラックスである。もともと日産ディーゼル時代にも2サイクルのディーゼルを開発したり、ユニークさを持っていたが、ボルボに買収されてもオリジナリティを忘れていないようだ。
一見コモンレールのようにレールが見えるが、よく見ると6個のうち3本がユニットインジェクター。ユニットインジェクターは付属のプランジャーで高圧にするので、高圧ポンプがないのでコスト的に有利。UDトラックスのGH11エンジンは、ユニットインジェクターで高圧にし、それをいったんレールに溜め、ポンプが付いていないインジェクターにも高圧燃料を供給するというスタイル。これならコストを下げられる、なかなか賢いデザインだ。最高燃料圧は、240MPa(メガパスカル)だという。最高出力は420PSである。これをわずか1600rpmで発生する。採用しているトラックは大型の「クオン」だ。
このところ、トラックの本を作るべく、架装メーカーを取材している。
トラックのボディは、いすゞとか三菱ふそう、日野自動車、UDトラックスといった自動車メーカー(シャシーメーカー)が作るのではなく、全国におそらく50近くはある「架装メーカー」の手でつくられる。パネルバン、ウイング、冷凍車、コンクリートミキサー車、塵芥車、クレーン車、ダンプカー、タンクローリー車など多彩だ。
その時代によって、運ぶものが変化し、七変化も十四変化もするのである。
でも、基本は、「平ボディトラック」である。
後ろと左右に「アオリ(煽り)」と呼ばれる荷物が落ちるのを防ぐ敷居がある。昔はこのアオリは、木と板金でつくられていたが、いまの主流はアルミブロックと呼ぶアルミ製で女性でも扱える。
キャブと呼ばれる運転席と荷台のあいだにある少し背の高い塀のことをなんと「鳥居」と呼んでいるのである。神社の鳥居をイメージするので、そう呼ばれるのだが、なんだかスピリチュアルな呼び名。目的は後ろの荷物が、キャブに侵入するのを防ぐためのもの。いまではロープやフックなどいろいろな道具を入れる箱も付いているようだ。地方によっては、この鳥居のことを「バックネット」とも呼ぶそうだ。たぶん野球小僧が命名したのかもしれない。
働くクルマを覗いてみると、なんともドメスチックなモノづくり世界でもあり、職人の世界でもある。
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