少子化時代を反映して、きらきらネームはいまや不思議でも何でもない。
これまで何の変哲もないと思われてきた車の部品。しかもエアクリーナーエレメントは消耗部品である。台所で活躍する2月毎に換えている“浄水器の濾紙”みたいなもの。これに、わざわざきらきらネームに近いブランド名を付けるとはね? 平成も30年近くなると、昭和の自動車部品ではなかった現象が現れる。これもその一つなのかしら。
トヨタ紡織で造ったという「美濾(みろ)」というエアエレメントは、高級車レクサス専用だという。不織布を使った濾紙ということには従来と何ら変わりがない。が、担当者に言わせると「山折りの数を20%減らしたり、とにかく細かなところを見直し、1ミクロン以下の微粒子をキャッチできました。しかも10%ほど軽量化も実現しました」と胸を張る。
でも寿命は同じで、交換は5万キロだそうだ。ぎゃくに価格は1.2倍と高くなったという。
ひところ流行した湿式のフィルターはどうか? と質問すると「湿式は微粒子をキャッチしづらいことは10年ほど前から判明して下火になった」という。
この「美濾」というエレメント、開発に3年もかかったという。開発に携わった担当者としては、世間からは無味乾燥とおもわれる濾紙に愛情を込め、ついペットのようにかわいい名前を付けたくなったのだろうか? “美しい濾紙”とは見れば見るほど、考えれば考えるほどに変だ。
「これって、1400年の時空をこえて、古代の息吹と現代のテクノロジーのコラボレーション!?」
思わず、こうつぶやいてしまったのは、たまたま出かけた大阪市天王寺区にある四天王寺の境内での光景だ。
「大阪にも聖徳太子の遺訓が残されている!」と聞くと耳を疑う人もいるかもしれないが、推古天皇の御代、西暦593年に、聖徳太子が建てたとされているのが、大阪なんばから南東に1キロちょっと行ったところにある四天王寺だ。極楽浄土の庭に立つと、古人の息遣いが聞こえないわけではないが、昭和20年3月の大阪大空襲でほとんどの伽藍が灰となった。その後大部分がコンクリート製ではあるが、復興しつつある。松下幸之助も西重門を寄贈しているという。この寺院、中門、五重塔、金堂、講堂が一直線に並んでいる日本で最古の「四天王寺式伽藍」で、いまでも「太子信仰」の聖地という位置づけだ。
その四天王寺の五重塔が、7月8日、LEDランプでライトアップされた。
なんとその電源は、自転車のペダルをこいでつくった人力電源である。
子供の自転車、ママチャリ、それに普通の大人の自転車のリアタイヤに密着しているのがクルマのオルタネーターのプーリーだ。
「オルタネーターは、解体屋さんで手に入れました。えっ、つくるのに難しかった点ですか? やはり、プーリーと自転車のタイヤの密着度です。ゆるくすると発電できないし、強く密着させると人の足の力で回せない。具合よく、動かす力加減をスプリングの力で調整したところが大変でした」とNPO法人「チームエジソン」のスタッフ。あらかじめ、こうしてできた電気で小型ポンプを動かし、シャボン玉を周りに飛散させ子供の笑いを生み出し、夜間の五重塔のライトアップで、大人に達成感を感じさせたのだった。
横浜のみなとみらいの一角にあるパシフィコ横浜で、毎年5月に行われる「自動車技術展」は、素人には難しすぎて、大半が“木を見て森を見ず”の感じ。でも、なかにはがぜん興味を引く展示物にぶつかり、思わず立ち止まり話を聞いてみたくなる。
前回も同じ書き出しだったが、今回はちょうど梅雨時に入り「ワイパーモーター」の話題だ。ワイパーモーターは、長い間1個のモーターで、リンクといって、金属の棒(中空だが)で左右をつなげていた。だから、フロントガラスの下部にはリンクを存在させ、動くだけのスペースが必要なのである。群馬県の桐生市にある(株)ミツバは、ワイパーの4大メーカーのひとつだそうだ。そのミツバが、参考出品していたのが、「ブラシレス・ダイレクトドライブ・ワイパー」である。
早い話、左右に1個ずつワイパーモーターを持ち、そのモーターのシャフトの直接ワイパーアームがつながっている。一見非効率に見えるが、これが最新のトレンドだそうだ。左右別々に制御できるので、たとえば、右だけ稼働、左はお休み、なんて芸当ができる。むろん右ゆっくり、左は速くなんてこともできるのだ。
「それより、クルマのデザインが変わるんですよ」とミツバのエンジニア。「リンクが存在しないということは、そのぶんボンネット周辺の形状の自由度が高くなる」というのだ。どんなふうにデザインが変化できそうなのか想像できないが、エクステリア・デザイナーには革命的事件なのかもしれない。モーターがブラシレスということは、ブラシがないぶん静粛性が向上する。より静かになり、モーターの寿命が延びて故障が少なくなる。でも、逆にコストは今のところ1.5倍ほどで、量産化することで、コスト差を小さくする…これまでの自動車部品がたどってきた新機構と同じ流れをたどることになるようだ。
横浜のみなとみらいの一角にあるパシフィコ横浜で、毎年5月に行われる「自動車技術展」は、素人には難しすぎて、大半が木を見て森を見ずの感じ。でも、なかにはがぜん興味を引く展示物にぶつかり、思わず立ち止まり話を聞いてみたくなる・・・・。
「ダッシュパッド」といってもピンとこないけど、要するにエンジンルームと車室の境にあるパッド。エンジンの音が車室に侵入しないように隔壁に張り付けてあるものだ。
「少し前まで吸音材がメインの考えだったんですが、電動化つまりモーターでクルマの動力をアシストしたり、モーターだけに頼るクルマだと、モーター音を車室に入りづらくする遮音材が再注目されていますね」というのは、岡山県総社市にある三乗(みのり)工業の眞田達也社長。
そこで、今後の提案製品として、こんなダッシュパッドがあるという。
上部が吸音タイプ、下部が遮音タイプ。面白いのは、使っている素材だ。吸音材には再生綿と呼ばれるリサイクル品を用いているのだが、具体的にはジーンズやジャージの端切れ。
実は、岡山は知る人ぞ知る! 日本ジーンズの発祥の地であり、ジーンズやジャージの生産量が高い地域なのである。遮音をになうのは再生オレフィンシート(ポリエチレン系)に炭酸カルシウムを混ぜ合わせたものだという。重量は従来品が3㎏で、今回のが2㎏弱なので、約35%も軽量化されたというから驚きだ。
CAE(コンピューター支援エンジニアリング)で解析してのモノ作りだけでなく、作り込みや擦り合わせ技術と呼ばれる作業者の経験則がまだまだものをいう世界だという。
ハイブリッドカーは、オルタネーターやパワステポンプが付かない、つまり電動パワステそろそろ梅雨時だ。
ワイパーブレードという存在は、晴れていると何の役にも立たないが、雨の日はこれがないとクルマを走らせられない、そんな大きな存在。だから、いざ使おうとすると、拭きムラが出たり、ゴムが切れていたりして、慌てふためくことがある・・・・。
ちかごろのクルマのワイパーブレードは、空力を考えたフラットブレードである。従来のトーナメントタイプに比べると、金属部がごく少なく高さが低く、軽いので、実にスマートだ。それに高速走行での浮き上がりを抑制する、という機能上のアドバンテージもある。
従来タイプを簡単にこの新タイプのフラットブレードに換えられるタイプが登場した。商品名『バウアーブレード』。バウアーって例ののけぞるスタイルなんだろうが、見るからにスマート。650ミリタイプで、45%も軽量化されたという。
しかも、このブレードのすごいのは、撥水(はっすい)効果があるシリコンラバーで、高付加価値タイプ。ふつう、中国製がはびこる自動車部品の世界だが、どっこい、これは純日本製だ。ガラスに押し付ける効果のあるゴム内部の金属バネのクオリティが日本製にはかなわないという背景があるという。
価格も通常1万円前後するところ、これは左右2本で6000円ほどだという。しかも内部のゴムだけを交換する(価格は1000円以下)こともできるので、とても経済的。純正品のように専用品ではなく、汎用替えゴムが使える。発売元は、タイヤショップショウワの吉川店(電話048-981-6946)と越ケ谷店(電話048-970-0505)。
いざというとき困らないように、左右2本をスペアとして、トランクに忍ばせておくことをお勧めするね。
ハイブリッドカーは、オルタネーターやパワステポンプが付かない、つまり電動パワステになるなどで従来当たり前についていたVリブドベルトが消えている。
でもでも、まだまだ新車全体では従来型エンジンは半数以上である。
これをふまえると、Vリブドベルトは無視できない自動車消耗部品の一つであることには変わりがない。
そのVリブドベルトは、いつの間にか進化していることを先日お台場で開かれた「アフターオートマーケットショー」で再認識させられた。
従来のCR(クロロプレン)ゴムからEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)にシフトしたというのだ。そこで何が違うのか? というと「従来型ベルトはリブ面、つまり山側のひび割れ具合で交換時期を判断していたのが、EPDMの場合ひび割れが起きづらいので、山の側面の摩耗で見るんですよ」(三ツ星ベルトの担当者)という。交換の目安は5万~10万キロと考えられたが「いや、うちでは使い方にもよりますが3万5000キロとしているんです。摩耗で谷が深くなり、最悪リブがバラバラに脱落します」と脅かされてしまった。
ベルトメーカーにとっては早め早めに交換してほしいところだが、実際のところ、車検(2年)ごとに摩耗具合を手で触り確認すればらくに5万キロ以上、うまくいけば10万キロは大丈夫である。
写真は、最新のテンショナーが付かない「ストレッチベルト」で、これを取り付けるには専用の冶具(写真左側下部)が必要というお話だ。やってみると意外と簡単に装着できた。
「ハイブリッドカーは、がんがんブレーキを踏んでも、ほとんどブレーキパッドの減りはないし、かえってバッテリーに電気を蓄えられるので燃費が良くなる理屈なんですよ」
と説明するのは、筆者の知恵袋であるトヨタのディーラー一級整備士のKさん。初代プリウスからトヨタのいろいろなハイブリッドカーの不具合を見てきたベテランだ。
そこで、筆者が怪訝そうな顔をすると…「HV車においてはブレーキペダルは、いわば単なる回生ブレーキ・スイッチなんです。ブレーキパッドがブレーキローターを挟み込み物理的に制動をえるのは、およそ時速15キロ以下。赤信号でクルマが止まるほんの手前でしかないんです。ただし、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)がはたらく状況だとこれは言えないですけどね」
ということは、ハイブリッドカーは押しなべて、ブレーキパッドの減りはごくごく少なくなるってこと?「実はそうなんです。だから、HV車は、整備士が稼げないクルマなんですよ」と苦笑いを見せる。
FFのハイブリッド車の場合は、従来ならフロントは走行4万キロも走れば交換時期を迎えたが、10~15万キロは長持ちするという。これが、FRのハイブリッド車の場合、リアでの回生なので、リアのブレーキパッドの減りこそ劇的に少ないが、フロントのブレーキパッドはFF車に比べ減りが早いというのがKさんの実感だ。
「でも、HV車の苦情の一つは、ブレーキパッドからの異音なんです」。休日しか乗らないユーザーなどとにかく走行キロ数の少ないクルマは、何しろブレーキかけてもパッドがローターに当たらないので、ローター(鋳鉄製!)が錆びやすい。なるほどね。「ですから、ブレーキ回りの異音の苦情を調べると、こうした走行キロ数の少ないユーザーさんなんですね」
ちなみに、長い坂道で回生がうんと働きバッテリーが電気を受け入れなくなると、エンジンが稼働し、あふれた電気を使うという。こうした状況はめったに起きないとのことだが、電気がもったいない? いずれにしろ、Kさんは、ユーザーにいかにわかりやすく説明するかが仕事。エコカーをサービスするメカニックの仕事も少しずつ変化しているということのようだ。
「工具評論家」という怪しい肩書を持っているせいか、ときどき不思議な方と遭遇する。
先日のこと。「ぜひ30分でもお話ししたいので・・」と熱い電話で、拙宅に押し掛けてきたのが、ねじ屋さん。東大阪で60年の歴史を刻む三喜製作所の三宅さんという58歳の2代目社長。
小型のNC(ニューメリカリー・コントロール:数値制御)旋盤数台を駆使して、つまり切削で(転造加工は外注だそうです)ボルトの頭の6画加工をおこなうプロ。ボルトの頭といっても大まかに外6角ボルトと内6角ボルト(ヘキサゴンボルトだ)があり、両方とも対象だという。
わざわざ思い立って500キロ離れたところまでクルマを飛ばしてくるぐらいの情熱家だから、「規格外のこと」をやりたがる人物にちがいない。
「ナットを落とさないドライバーを作ってます」という。「ねじ径がM2という指先に載る小さなボルトからM8というバイクやクルマによく使われる比較的小さなサイズのボルトを相手にしたドライバー」で、しかも相手をしっかり捕まえる!
小さいサイズなので、内部にボール(鋼球)を忍ばせるとか、外部リングでホールドするという既存の手法はとれない。ズバリ答えは“テーパー加工”である。旧くて新しい加工!? 相手の6角部をしっかりホールドするためにドライバーのキャッチ穴を斜め加工を施しているのである。言葉でいうのは簡単だが、相手のねじの寸法交差(バラツキ)もあるので、普通は無理だ。現実味がない。うまくいくボルトナットもあるがそうでないボルトナットもある・・・・。
「ですから、注文生産なんです。注文を受けると、ねじのサンプル3個をいただく。たいていはISO規格外の特殊ねじですから。それとお客様が使っている工具、電動ドライバーが多いのですが、その品番を教えて貰い手に入れます。それに合わせて作るのです。一日1万個のボルトを締める製造ラインの機械化できない枝葉ラインで活躍するいわばニッチライン向けなんです」とほほ笑んで説明。「30ミクロン、つまり3/100ミリずつ旋盤で削ります…」
なるほど、ねじで困っている組み立て現場では、こんな格闘が展開されているんだな。思わずディープな世界を垣間見た思いでした。
(写真は、三宅社長とボルトやナットを落とさないというご自慢の工具)
「クリーンディーゼルの高性能インジェクターのテスターが日本初上陸したんですよ」
先日お台場の東京ビッグサイトでおこなわれた「国際オートアフターマーケット」でのひとコマ。
ディーゼルエンジンのインジェクターと聞いても、「ああ、あれだね!」とイメージできる読者はごく少数かもしれない。エンジンの燃焼室に燃料である軽油を1000バールから2000バールという超高圧で吹き付ける最重要な精密部品である。ソレノイドバルブを動かす電気装置も組み込まれているため、不具合が出ることもあるという。
これまで、エンジンの不具合が疑われればノーテンキに新品に取り替えるしかなかったが、このテスターがあれば、目視で噴霧状態を確認し、噴射量を緻密に測定でき、即座に良否判定ができるという。
「インジェクターはボッシュ、デンソー、デルファイなどの部品メーカーが作っているのですが、いずれもテストできます。ディーラー工場や整備工場さん向けのテスターで、価格は130万円です。インジェクターには、個々の噴射特性を微妙に変更するチューニングをする必要があるのですが、これをチューンする機能を持つテスターはその上のプロ向けで350万円です」
かなりマニアックなテスターだが、面白いことに、操作画面にはタブレット・コンピューターのような8インチのタッチパネルが組み込まれている。そのため、とくにスキルを必要とせずに誰にでも扱えるという。しかもWIFIに対応して、データをパソコンに送れ、プリンターに繋げばプリントアウトできる。ちなみに、このテスターは、ギリシャにあるCARBON ZAPP社製で、日本ではターボチャージャーとディーゼルの噴射ポンプの再生専門メーカーの㈱昭和(☎052-751-3493)が代理店だそうだ。もちろん乗用車ディーゼルインジェクターにも使えるが、おもにトラック&バスの需要のようだ。
「ハイブリッドカーはエンジン稼動割合が激減したぶん、冬場ヒーターが効かず足元ブルブル!」
そんなハイブリッドカーのウイークポイントの前号報告をめぐって、ながねん筆者の知恵袋的存在であるトヨタの一級整備士から面白い話を聞いた。
「30分たっても車内が暖まらないクルマはそもそも壊れているのではないか! そんな強行にクレームを言い募る年配のハイブリッドユーザーがときどき怒鳴り込んでいらっしゃるのですよ」
そんなクレームに向き合い、この一級整備士は、気を落ち着かせて「空調の温度設定をHi(ハイ)の位置にしてみてください。そうするとエンジンの稼働領域が広がり、容易にEV走行とならないので、従来のエンジン付きクルマと同じく早めに暖房が効きます」と説明するという。
ところが、この説明に納得できるユーザーは少ないという。
くだんのおじさんユーザーは「わしは自宅のエアコンも25℃以下の設定温度を長年守ってきた。いまさらめいっぱいのHiに合わせられない!」と主張。
エコをたてれば寒いし、エコを少しへこませれば快適! まるでハムレットの心境! ジレンマの真っ只中! まぁ、そこまで深く考えれば、HVの理屈は理解できるのだが、まだまだ理屈が不明なユーザーが少なくないのが現状のようだ。昨日免許を取ったばかりの若い女性からベテランドライバーを自認するおじさんドライバーまでを相手にするイマドキの整備士さんの苦労は、いかばかりか、である。
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