3月中ごろ、東京ビックサイトで開かれた「国際オートアフターマーケット2014」はなかなか面白かった。
なかでも、トヨタが提案していたのは、次世代のカーディーラーのサービスシステム。
セールスマンはじめ整備士など全員がタブレット型コンピューターを持っていて、顧客情報や車両情報を共有。スピーディでますます質の高いサービスを狙うというのだ。とりわけ、印象に残ったのが、リフトアップした車両の脇にグイッとくっつき整備士が仕事をしやすいように最大限考慮したヤグラ(というかツールキャビネットというかサービスステーションというか・・・)。エアインパクト、エアゾル、おもなハンドツール、パーツ置き場などが無駄なく置ける。そのコンパクトさと機能性に驚かされた。電子式のノギスでタイヤの残り溝を測定し、すぐ無線で情報を事務所に飛ばし、部品は部品子から無人搬送機で、作業現場にとどくのだ。
まるでそれは自動車工場の新車組み付けラインをフルに応用したかに見える。このシステムをトヨタではe-CRB(カスタマー・リレーションシップ・ビルディング)と呼んでいる。すでに中国のトヨタ直系ディーラーでは実証実験済みだという。日本のディーラーに導入される日はいまのところ未定だという。
2015年に発売予定のトヨタの燃料電池車は、セダンで大人4人が乗れるタイプだが、実は水素タンク2本を積んでいるため、トランク容量の不足が懸念される。
モーター、燃料電池スタック(水素と酸素の反応するいくつものセルから構成される)、それに水素タンクの3つの大まかな要素で構成される燃料電池車の、これは大きな課題。しかもその圧力が70MPa(メガパスカル)とかなりの高圧。ざっくり言えば1㎡に700kgの荷重がかかる、と考えていい。だから水素タンクは高い精度のアルミ製の内壁に強固なカーボンファイバーでぐるぐる巻きにして、さらにそのうえにエポキシ樹脂で硬化してある。
このタンクを2本備える車両はまるで、LPガス車のようにトランクルームが狭くなる。
もちろん、燃料タンクの価格高騰の背景には、この水素高圧タンクのほかに小型化学反応プラント工場というべき、燃料電池スタック(反応曹)のコスト高がいえる。ガソリンエンジン車はガソリンが持つエネルギーのわずか3割ほどしかタイヤに伝えていないが、燃料電池車は水素のエネルギーも83%を電気エネルギーに変えるといわれる。高効率な新世代の燃料電池車にはインフラだけでなく、いくつもの課題がある。
とにかく、自動車メーカーはこのところ燃費改善の大号令で「部品の軽量化」と「簡素化」が一段と加速中。先日東京ビックサイトで「第4回クルマの軽量化技術展」なる催しに足を運んだ。
ボーイング787の主翼に使われている炭素樹脂繊維をはじめ、さまざまな樹脂をクルマの各部に使うというのがひとつのトレンド。コストがやはり課題のようだ。たとえ軽くていいものでも、値段が2倍も3倍もとなるととても使えないからだ。
そんななかで、マフラーの樹脂化が着々と進んでいる情報を得た。
マフラーは、周辺温度が600℃近くになるので、これまで樹脂は使えない、というのが常識。
ところが、これをブレークスルーできそうだというのだ。あくまでも参考出品だが可能性は高そうだ。キーワードは、断熱技術だそうだ。排気ガスそのものが通るイパイプは従来どおりスチールだが、回りのタイコと呼ばれる部位に樹脂を使うというわけだ。そこでキーテクノロジーとなるのが断熱技術。高温をいかに遮断して、タイコの役目を果たすかだ。展示品はダミーでしかも、単純な構造のものだ。排気ガスが流れる部分を蛇行させたり、パンチングプレートを入れ込んだりして排気音をチューニングするという別の意味での高い技術を駆使していない。
ただ、マフラーメーカーでは、30%の軽量化と吸音効果は従来どおり。しかも射出成型なのでデザインの自由度が高くエアロダイナミック性にすぐれているというのがセールスポイントだ。いずれにしろ近い将来樹脂マフラーが登場するのは間違いなさそうだ。
日本語は外来語を取り込み進化している言語、とはいえこのところのカタカナ文字の氾濫には目をそむける!? そのカタカナ文字が直球ではなく、“間接球”だとよけい意味不明!? たとえば『インターフェイス』。もともとは、モノゴトの境界となる部分を指すのだが、いまや橋渡し的役割を果たす意味でもちいられる。
先日、三菱電機が発表した『簡単操作のインターフェイス』というのは、自動車内でインターネット、電話、カーナビ、エアコン、オーディオなど複数の機器を、安全運転を阻害しないカタチで操作するコンセプトで、誕生したものだ。少ない視線移動で見やすいヘッドアップディスプレー、操作履歴や運転履歴をもとに、行き先検索や電話などの操作を推定して3つ候補を挙げ、3択ボタンで選択。しかも指のタッチと音声による入力で、安全運転を確保するというものだ。見たところ、なかなか完成度が高く、4年後の2018年には自動車メーカーのOEM(相手先ブランド)として導入されるという計画も順調に行きそう。早い話、自動車のロボット化がさらに進むということ。
ところが、ここでひとつ課題がある。スマートフォンでもそうだが、欧米人は音声入力にまったく抵抗がないようだが、日本人は大きな壁がある。同乗者がいると声を出しづらいというメンタリティがあるからだ。実際私もスマホを使うとき、音声入力はあまり使わない。教室で手を上げて質問すると、目立つとして黙りこくっている生徒が多い。そんな日本の文化とそこでつながっている!? 文化の違いというか、価値観の差異が、音声入力機器の導入を阻んでいるのかもしれない。
恒例の「東京オートサロン」で見つけた注目のチューニングパーツがあるので紹介しよう。商品名は藤壺技研の「オーソライズV」。GPSで、マフラーの音を制御するシステムである。
よく知られているようにGPSはもともと軍事用に打ち上げた人工衛星約30個のうち、上空にある数個の人工衛星からの信号を受け取り、受信者が現在地を知るシステム。カーナビはこれを使うことで、わたしも日頃ご厄介になっている。そのGPSで、自車の速度を検知し、低速領域ならマフラーのバルブを閉じ、逆に高速で走行中ならバルブを開き、スポーツマフラーと同じサウンドを楽しめるという製品が登場したわけだ。お空の人工衛星にお伺いを立てながらマフラー制御をするシステムだ。これを凄いというか、あきれたというか?
なにもわざわざ、GPSに問いたださなくても、クルマにはスピードメーターがあるのだし・・・。
いずれにしろ付加価値を付けることで、ユーザーの購買意欲を高めるという意図は明らか。新規なものを好むユーザーはいつの世もいるわけだから。ちなみに、価格を聞いてみると、トヨタの86(スバルのBRZ)で15万6000円、スイフトスポーツで10万8000円、レガシーBRG 2リッターターボ用で、18万6000円と意外とリーズナブル。
ちなみに、GPSなので、トンネルなどに入るとセンシングできず、この場合は大人しめのサウンドを奏でる低速用バルブに切り替わるという。http://www.fujitsubo.co.jp
年に一度幕張で開かれる改造車を中心の「東京オートサロン」は、いまや完全に世界的注目のイベントになった。コアとなる日本の美意識が高く評価され、海外からのマスコミも押し寄せ、報道に余念がない。いまや2年に1度の東京モーターショーがソウルや上海などのモーターショーに押され、沈滞気味にくらべ好対照。表通りではなく、いわば「裏通り」が日の目を見るのは、コスプレやアニメが高い評価を受けているのと通底している!?
そのイベントで、従来の常識を覆す自動車部品を見つけた。“非鉛バッテリー”である。クルマのバッテリーは長いあいだ鉛蓄電池が支配してきた。安いけど、重い。10キロ近くもある。鉛の比重は何しろ11.34、アルミの約4倍もあるのだ。
ところが、BLITZ(ブリッツ)が発売したのは、なんとわずか2.8kg。スポーツカー86、スバルBRZに搭載用。鉛蓄電池にくらべ6kg以上の軽量化だ。片手で持て、まるで空箱を手にした感じ。「リン酸鉄リチウムバッテリー」というタイプで、13.2Vの高電圧で安定し、従来の鉛バッテリーの5倍以上のロングライフ。構造はシリンドリカルというから円柱タイプのセルだ。自己放電率もひと月3%以下というから休日しかクルマを動かさないドライバーには福音だ。30分で90%の急速充電ができ、充電容量が残り20%になると自動的に機能を停止する。完全に干上がる前に、リセットボタンを押せばエンジン再始動ができる仕掛け。
気になる価格は、定価で7万円だという。鉛蓄電池の3倍以上! 今のところモータースポーツ、航空業界、マリン向けだが、量産化で安くなれば普通のクルマにも使われる日が来るに違いない。
「自動車業界で一番元気のいいオジサンは誰?」と聞かれれば即座にスズキの鈴木修さん(83歳)だろう。1958年に、2代目社長の娘婿になって以来半世紀以上、いまでは会長兼社長の名実ともに“スズキの顔”だ。声だけ聞いていると、50歳代に見えるほど。その鈴木さんが、新宿でおこなわれた新型軽自動車ハスラーの記者発表に顔を見せた。
ハスラーは、ワゴンRのプラットフォ-ムを使ったものだが、最低地上高を175ミリと余裕。ワゴンRが150ミリで、バリバリの4WDジムニーは200ミリなので中間だ。つまりオフロードも平チャラなつくり。4WD仕様もそろえている。格好も見たことのない斬新さで悪くない。遊び心いっぱい。
その鈴木さん「これまでアルトからワゴンRと実用的なクルマばかりをつくり続けてきたので、反省して遊び心を満たしたクルマを提案します」とこのクルマの意義を説明。いっぽうで、2013年は軽自動車が売れに売れ、全体の4割を超える勢いだが、来年からは厳しい。税金が1.5倍になり、消費税が8%に上がるので、軽自動車が売れなくなるというのだ。
でも、いまや軽自動車は、市民権を得たとも。「少し前まで軽でも仕方ないな、というところからむしろ積極的に軽自動車を選択する」層が増えたと読む。安全性、燃費の良さを考えると、800ccぐらいにアップしたほうがいいとの考えもあるが、鈴木さんは「いや、エンジニアが限られた寸法と排気量のなかで、つくり込んだ芸術品ともいえる」「小さくつくるということは燃費以前にモノ作りで省エネなんです」と持論を展開。車幅3.8メートルの道路が全体の80%近くある日本では、いまの軽の寸法(全幅)がベストだということのようだ。
元気のいいジイサンが、日本の産業を牽引しているだね。
ニューモデルの試乗会でときどきお会いするのは、振動騒音の担当者である。NV担当とも言われる。Nはノイズで、Vはバイブレーションのことだ。
彼らは、担当するクルマの音の専門家。できるだけ耳障りな音を消しいい音を引き出すことに腐心している男たちだ。となると楽器のひとつ、あるいは声楽の勉強をした経験のあるひとか、というとまったく音楽には縁のない、むしろ音楽の素養のある人はまずいない。音を科学的にとらえているからだ。音圧、周波数、脈動、波形などクルマの音の蓄積データは自動車メーカーには相当あり、それに照らし合わせながら新車の開発をするという。
先日うかがったマツダのNV担当者は、乗員に心地いい音の追求をしているのだが、そのひとつの回答としてスピーカーメーカーのボーズと共同で、スピーカーからエンジン音をより明確にする工夫を凝らしたという。つまりアクセル開度やエンジン回転数などと連動させ、スピーカーから音を出すことで、心地いい音を作り出そうというのだ。まるで楽器?
ところで、人間に心地いい音はなんだろう? そんな素朴な疑問に、そのNV担当者は、「やはり自然界にある音に答えがあるのではないでしょうか?」と煙ならぬ、不思議な音声の回答に煙に巻かれてしまった。そういえばレディーガガの芸名の由来は、「RADIO GA~GA~」だそうだ。騒音のなかにも答えがあるのかもしれない!?
自動車解体屋さんを取材すると、とことん使われた状態のクルマが入庫されていたりして、これを観察すると「クルマがどんなふうに劣化するのか?」をズバリ教えてくれる。目からウロコ的感動をする。なかでも宅配便車や郵便局のクルマが凄い。助手席はまるで新品然としているのだが、ドライバーズシートだけが擦り減りなかのウレタンが顔を出している。シートベルトも一箇所だけ擦り減り毛羽立っていることもある。とことん使うとどうなるか? という素朴な疑問は贅沢大好き日本人には“知らぬ存ぜぬの世界”だからだ。
そのシ-トベルトだが、我が愛車も15万キロを超えシートベルトが毛羽立ち始めている。“車検は大丈夫なのか?”はたまた“万が一のときシートベルトとして機能するのか?”という疑問が頭をもたげる。前者は「どのくらい痛むと世界一厳しい車検にパスできないか」は不明だが、後者は「かなりボロボロでも充分機能します。安全基準を下回ることはない」という証言を得た。
東京モーターショーでの取材。シートベルトのメーカーであるトヨタ紡織でエンジニアからへのインタビューで得た情報だ。無地で味気ないシートベルトをカラー化したり(写真)、高級車向けのシルキータッチ化しようという試みの展示物がメインだったが、思わぬ情報を得ることができた。
「ついつい忘れていた!」ということはよくあることだ。
ほかでもない。エアクリーナーエレメントのことだ。大気が冷え始める秋ともなると、充填効率が高まるせいか、夏にくらべるとエンジンが微妙ながらも、活気を帯びる。ところが、11月の半ばに近づいても、エンジンが重々しい感じだ。先日1年ぶりにオイルとオイルフィルターを交換したんだけど・・・。そんなモヤモヤしていた気分で、いつもの上り坂に差し掛かった。明らかに従来にくらべエンジンの吹き上がりが悪くなっている!
そのとき突然ハッと気が付いた。同じエアクリーナーエレメントをかなり長期に使っていたことを。気付いたらさっそく点検だ。通りかかったコンビニの駐車場にクルマを停め、エンジンフードを開け、エアクリーナーケースの位置を確認。手前に2つクリップがあり、これを手で緩め、エアダクトのジョイントのホースバンドを少し緩める・・・エアクリーナーケースの取り外し手順を頭のなかでおさらい。2番のプラスドライバー1本あればすぐエアクリーナーエレメントの具合を目視できる。トヨタのクルマは整備性が高い。そのとき同じエレメントでもマーチのエアコンフィルターの交換に手こずったことを思い出しながら、作業。わずか1分で、エアエレメントが顔を出した。見れば、かなりひどい汚れだ。ユーザー車検のとき確認したのだが・・・。
メンテノートを確認すると、7万キロ近く交換していなかった。5万キロごと(埃の多い道路などを多く走るシビアコンディションだと2万5000キロごと)。さっそく近くのディーラーで、エレメントを購入(純正で約2400円)し、そこの駐車場で、交換。交換後坂道を登る勢いの違いに、あらためてエアクリーナーエレメントの偉大さを認識した。汚れたエレメントでは吸入空気が少なくなり、首を絞めて走っていたようなものだ。紺屋の白袴的失敗でした!
« 前 | 次 »