2013年1 月 1日 (火曜日)
タイヤ空気圧警報システムの可能性

「タイヤは命を乗せている!」
これほどタイヤの重要性を一言で表現したフレーズはない。なかでも空気圧の適正化は、クルマの歴史100数十年来の夢。空気圧がダウンすると、タイヤが偏摩耗して寿命が短くなるばかりか、乗り心地が悪化し、燃費も悪くなる。いくらいいエンジン、理想的なサスペンションを作ってもタイヤの空気圧がでたらめならすべて駄目になる。死者がともなう重大事の1%は、空気圧の管理不足が原因とされる。
そこで、こまめに空気圧チェックをおこなうことが大切だが、人間もともと怠け者なので、それも困難。タイヤの空気圧の見張り番の装置があれば・・・。後付けのタイプはたしかに10年以上前から登場しているが、値段が高いこともありポピュラーにはならなかった。しかもタイヤ交換時の移設も面倒。メガサプライヤーのコンチネンタルが、今年中に商品化し、新車装着されるのが、eTIS(エレクトロニック・タイヤ・インフォメーション・システム)。バルブに装着するのではなく、タイヤのトレッドの裏側にゴムベースを介して装着する。重量が11グラムと軽く、空気圧を伝えるだけでなく、タイヤにかかる荷重を検知。将来的には、4つのタイヤの荷重差で、カーブを曲がる際の安全性のフィードバックまでしてくれるという。
いずれにしろタイヤ空気圧システムは、2005年から北米で、2012年から欧州で、2013年から韓国でも、安全性を高める目的で装着が義務付けされている。軽自動車の販売が半分の市場の日本では、バルブタイプは装着性に課題があり、国土交通省が義務化に二の足を踏んでいるともいわれるが、このトレッド裏側装着なら課題はないといえそうなので、ちかぢか義事務化がおこなわれる!?
2012年12 月15日 (土曜日)
ドアロックができない!?

今年はフォードから始まり、日野自動車、フィアット&アルファロメオ、アウディ、プジョー&シトロエンと5つほどサービスコンテストを取材した。ブランドにより個性がありとても刺激的だ。ふだんユーザーからは見えづらい優秀な整備士さんが腕を競い合う晴れの舞台だ。
意図的に不具合を設けた車両を、持ち時間60分とか90分のあいだに正常に戻すいわゆるトラブル・シューティング技術がハイライト。よくある課題は「エンジンがかかりません。修理してください」というものだが、プジョー&シトロエンだけは、「ドアロックできない!」のでこれを60分以内に解決してください、というやや異色の問題。12人の選手のなかで、解決できたのはわずか3名しかいなかった。つまり8名は解決できずだが、こうした問題はそのプロセスを評価するので、入賞者の中にはその8名のうち1名が含まれ、解決した3名のうち1名は入賞できなかった。
正解は車内(トランクルーム)にスペアキー(スマートキー)が残されていたため、もうひとつのスマートキーを使ってもドアがロックできないという理屈。つまりイマドキのスマートキーを充分理解できているかどうかが問われたのだ。車内には3つのアンテナがあり、コンピューター診断機には、スマートキーのリサーチ機能があるので、これでどこにスペアキーがあるかおおよそ判断つくという。子供が鍵をおもちゃにして車内に置き忘れた、という実際起きそうな問題だともいう。かなりひねった問題ともいえるが、聞いてみれば「な~んだ!」とも思う。イマドキの整備士は、さまざまなことを日々勉強して仕事をしているということが、いまさらながら強く感じた。
2012年12 月 1日 (土曜日)
マツダのⅰ-ELOOPとは何ぞや?

最近デビューしたマツダのアテンザは、CX-5に続きクリーンディーゼルを搭載する車種を選択できることから、第3のエコカーとして注目される。
ガソリンエンジン車を含めてだが、そのアテンザ全車に標準で搭載している“新兵器”について報告しよう。ⅰ-ELOOP(アイ・イーループ)がそれ。「インテリジェント・エナジー・ループ」。新しい充放電システム「キャパシタ」を使ったもので、アイドリングストップとの相乗効果で、燃費を10%高めることができる新兵器だ。キャパシタはコンデンサーとも呼ばれるもので、バッテリーが電気のやり取りを化学変化でおこなうのに対し、化学変化なしで、すばやく電気を貯めたり出したりできるのが魅力。最大25V/最大電流200Aというスペックの可変電圧式オルタネーター(交流発電機)で従来の12Vではなく、12V~25Vまで自在にコントロールできる、キャパシタの電圧が25Vになるまで供給。つまり、これをクルマが坂を下るときなど減速時におこなうのだ。これまで無駄に捨てていたエネルギーをキャパシタで素早く回収し、キャパシタに溜まった電気をライトやオーディオなどボディ電装として使うのだ。従来オルタネーターがおこなってきたボディ電装の仕事をそっくり回収でき、そのぶん燃費が10%よくなるという理屈だ。
ちなみに、このシステム価格はエンジニアに聞きだせなかったが、システム重量は約8kgだという。量産効果で、今後コンパクトカーあたりにも付くかもしれない。
2012年11 月15日 (木曜日)
V6エンジンのイタリア車のオイル交換に挑戦

自動車関連マスコミの友人が乗る、イタリア車のオイル交換を手伝うハメになった。オーナーは一度も作業の経験ないという。「面白いじゃない!?」ということで、自宅前の路上で、作業をすることに。車両は、V6エンジンが載るアルファロメオのフラッグシップ・モデル「166」。
エンジンオイル容量は事前に調べたところ6リッターオーバーだという。
そこで、台湾製の吸引式廃油吸い上げ器を使い、オイルレベルゲージの穴から吸引。ところがいくらポンピングしても2リッターちょっとしか吸い上げない。吸い上げる前にレベル確認しなかったものの、オイルパンの底まで吸い上げホースが届いていないようだ。そこで、ガレージジャッキで車体を持ち上げ、安全のためにリジッドラックをかませ、下にもぐりオイルパンにあるドレンボルトを緩めようとした。ところが、このドレンボルトの2面幅が25センチの変なサイズで、手持ちの工具は使い物にならない。どうもインチらしい。そこで、やはり台湾製の多サイズに対応が効く怪しげなメガネレンチを使い、なんとか緩めドレンボルトを取り外した。どっと廃油がこぼれ落ちた。その量約4リッター! 廃油受けぎりぎりセーフ。やはりV6エンジンのオイル量はすごい。妙に感動しているいとまもなく、今度はオイルフィルターの脱着。ところが、肝心のフィルターが上から見ても下から覗いても見つからない。その間約20分。そこでオーナーがアルファのディーラーのメカニックに電話してフィルターの場所を確認。横置きエンジンなのだが、エンジンの背後にあるという。
今度は必ず見つかるという信念で、ふたたび下にもぐり注意深く観察したら、「あった~ッ!」。右フロントのロアアームの後ろに隠れてフィルターの頭1/4がチラッと見えたのだ。ところが一難去ってまた一難。今度はフィルターの周囲に部品があり、フィルターレンチが入らない。知恵の輪を解くように入れては見たが、今度はレンチを回せない。ウンウン言いながら、「ひょっとして手で回せるかも?」とふとヒラメキ、手で回したところ、なんと楽に回った。前回作業したメカニックがチカラを入れづらい場所にあるので、それなりのチカラで締め付けていたと考えられる。こちらとしては不幸中の幸い!? フィルター内にはほとんど廃油が入っていなかったものの、腕がほぼ水平なので、廃油が滴り落ちてヌルヌル地獄で大変。肝心の部分が見えないので触診の世界。しかもフィルターのセンタ-にある取り付けねじのピッチが、やけに細かく国産車のゆうに2倍手首をくるくる回すことになった。でも、無事古いフィルターを取り外し、新しいフィルターに換えることができた。なんと2時間30分の格闘でした。
2012年11 月 1日 (木曜日)
この液体はクルマのどこに使われている?

エンジンには潤滑油であるエンジンオイル、トランスミッションにも専用オイル、冷却水、ウインドウウォッシャー液・・・・クルマには7~8種類の液類が活躍している。
普通ノーテンキにクルマを運転しているユーザーは、そんなことに思いも及ばない。一方、いくら精密な機械部品でもオイルや液類がなくてはうまく作動してくれない。
ということで、先日VWのサービスコンテストの決勝戦を取材してきた。2年に一度の晴れ舞台にセールスマン部門を含め65名の予選を勝ち抜いた精鋭が横浜アリーナに集まった。ギャラリーは数千人。まるでオリンピック会場の雰囲気。そのなかで、サービスアドバイザー部門。ガラスのシャーレに入った液類が置いてあり、それが何なのかを当てさせるというかなりディープな設問があった。指に触れたり、味わうことはできない。
そこで、選手は思い思いに鼻を近づけ、臭いをかぎ、少しゆすって粘度を確かめ、目で見て色を知ることで日頃仕事で付き合っているオイルや液類を、何なのかを推理する。たとえば化学合成油のエンジンオイルは少し甘い臭いがするし、緑色をした液体はVW純正で使われるパワステオイルの色だし、さらさらした黄色味かかったオイルは、ATF(ATフルード)に似通った湿式のDSG(ツインクラッチ)で、どろどろしたのは乾式のDSG用のミッションオイル。別のテーブルでは、劣化した液類が何かを当てさせていた。ひとつはR134aというエアコンオイル、DOT4のブレーキフルード、それに汚れたエンジンオイル・・・クルマが入庫してきて、もしオイル類が漏れていたとして、それが何の液なのかを、すぐ分かればよりすばやい修理ができ、お客様に安心感を与える。液類推理問題、なかなか深いのである。
2012年10 月15日 (月曜日)
おじさんが要望する次世代型タッチパネルとは?

ⅰPhoneやⅰPadなどで一般化してしまった液晶画面のタッチパネル感覚。指でスリスリすることで画面を変えたり、親指と人差し指を使うピンチイン・ピンチアウトで画面を拡大したり、縮小したりする。使い慣れたら、とても便利な感覚。
ところが、意外なところからこの“タッチパネル感覚”にレッドカードが突きつけられている。ほかでもない、団塊の世代あたりからである。全部とはいわないが、50歳代以上のおじさんおばさんは、このスリスリやピンチイン・ピンチアウトが苦手なのだ。いわゆるカチッとした≪クリック感≫がないとして敬遠するのである。
そこで現在開発中なのが、京セラの『新感覚タッチパネル』。振動で指の神経を刺激することで擬似的な触感(クリック感)を得られる触感伝達テクノロジー。タッチパネルに圧電素子、制御ソフトを組み合わせることで、画面に触ることで、指先にはパネルを実際にクリックしているような感覚や刺激といった、多彩な操作感をえることができるという。つまりリアルなクリック感だけでなく、グニュッとした触感や長押ししたさいの多段押しの感覚を得られる。
擬似的な触感を科学が生み出す世界。先日幕張でおこなわれた最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC」で見つけたもの。実用化はもうすぐだという。そのうち、ダイエットのために食べた気がする、というマシンができる日もそう遠くないようだ。
2012年10 月 1日 (月曜日)
居眠り運転警報機スリープバスター

観光バスの過労運転による、高速道路での重大な交通事故の記憶はまだ生々しい。
バス・トラックだけでなく乗用車を長い時間運転するとなると、どうしても問題になるのは、居眠り運転による危険の増加。1時間ごとに休息をとるのが原則だが、それでも前日に仕事が長引いていたケースなど、不可抗力的な状態になるケースもないわけではない。意外と身近に危険は潜んでいる。
ドライビングシートに取り付けるだけで、ドライバーの眠気を感知し、危険状態に入る前に、ウォーニングランプの点灯と大声で、最大限に注意を喚起してくれる。そんな用品を先日の国際物流総合展で見つけた。
原理は人間工学的で難しい。マットに内蔵された体表脈波センサーが、微弱な自律神経活動の変動をとらえ、ドライバーの状態を7段階(集中している、注意散漫、疲労状態、眠気、体調急変など)で18秒ごとに判定し、注意散漫を超えるとコントローラー上に黄色で表示し、危険ゾーンになると赤くなり、さらに往年の自動車評論家・三本和彦さんの「カツッ!」と警告音を発する仕掛け。この装置は、もともとシートメーカーがいいシートを追求するうえで誕生した製品だ。おもに観光バスをターゲットにしたものだが、もちろん、乗用車にも取り付けられる。価格は、15万7000円。JUKI㈱ 電話042-357-2284。
2012年9 月15日 (土曜日)
女性を飾るべきか排気ガスの浄化に回すべきか!?

よく知られるように、白金(Pt),パラジウム(Pd),ロジウム(Rh)の3つの貴金属がなくては、ガソリン自動車の厳しい排ガス基準をクリアできない。この3つの元素を薄くコーティングしたハニカム状のセラミック担体に排ガスが通過すると、NOⅹ,HC,COの有害排ガスが、化学変化がおき、無害の窒素、水、炭酸ガスなどに変化させテールパイプから排出するというのが、そのメカニズム。
ところが、3つの貴金属のうち、白金とパラジウムは、グラムあたり50ドル前後を推移しているのだが、ことロジウムに関してはグラムあたり300ドルを越える高値になった経緯がある。排ガス規制の強化やリーマンショックなど経済動向で劇的に上昇・降下するのである。背景にはロジウム自体は他の貴金属にくらべ約1/10の採掘量しかないことも大いに影響している。
安定した自動車生産を目指したい自動車メーカーとしては、ロジウムの量を減らせれば減らしたい。減らせればよりリスクが小さくなるし、コストダウンにつながるからだ。このほどホンダが、ロジウム使用半減に成功したという。パラジウムの粒子を半分にすることと鼻薬のチューニングで、パラジウムの触媒効果を劇的に高め、ロジウムの役割を半減できたからだ。この触媒システムをホンダでは次期アコードで採用する。考えれば貴金属の世界は、装飾品として女性の美を増す役割のほかに自動車の排ガス浄化に役立つ。この2つの世界でせめぎ合っているのだ。ちなみに、ロジウムはギリシャ語でバラ色を意味するRODEOS(ロディオス)がその語源だという。
2012年9 月 1日 (土曜日)
e-MOBILEの時代はいつになる!?

電気自動車やハイブリッドカーといった、いわゆる電動化されたクルマのことを業界ではe-MOBILEという言い方をし始めている。電気が大きな役割を占める「電動化自動車」のことである。
これが多数派を占めるのはいつになるのか? 2025年なのか、2030年なのか? これが現在の自動車で飯を食っている人たちの大きな関心事。電動化が進めば、工場のラインも大変革されるし、そもそも従来の自動車メーカーが独占していた自動車造りが、たとえば電機メーカーにシフトすることが考えられる。自動車部品の関連工場も、大きな変化を強いられるし、整備の世界でも小さくない変化を起きるはず。
先日、巨大自動車部品メーカーのひとつである「コンチネンタル」(タイヤだけでなくエンジン部品やシャシー部品など幅広くカバーする世界的メーカー)の技術セミナーを取材。将来の見通しを聞いた。それによると、8年後の2020年では、世界の自動車生産の約9割は既存のガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン車。EVやハイブリッドカーは11%に過ぎないという。これはやはりインドなど発展途上国で求められる安いクルマは、既存のエンジン車。欧州やアメリカ、日本の先進国でもターボで過給したり、アイドリングストップ装置付きやブレーキ・エネルギー回生装置付きで、燃費を高めたクルマは当分主流になるという見通しだ。
たぶん背景には政治的不安定感のある中東の石油に頼らなくても、別の化石燃料で当分いける見通しがあるせい!? つまりシェールガスの発見と量産化のメドが、つきつつあるからかもしれない。地球温暖化ガス削減の掛け声はかすれつつあるようだ。
2012年8 月15日 (水曜日)
バッテリーのターミナルのナットにまつわるトラブル
まわりを見渡すと、車歴が長くトータルの走行キロ数が多いものの、年間の走行キロ数が少ないクルマが増えている。年間1万キロをあとにするクルマは、珍しいほど。
そこでいきおい、1か月も乗らずにそのままにして、いざエンジンをかけようとするとバッテリーが自然放電していた・・・・なんていうことはよくある。とりわけ、バッテリーの値段は材料高騰で、高値安定だからつらい。
それを防ぐためには、カーオーディオなどのメモリーが失われる弊害はあるが、バッテリーのマイナスターミナルを取り外すのが一番だ。この手段を取れば、もともと弱ったバッテリーでない限り、半年でもバッテリー上がりの心配は、まずない。
バッテリー・ターミナルのナットの2面幅は10ミリ(ネジ径は5ミリ)が多い。スピーディに締めたり緩めたりするには、スパナが便利だが、暗がりでおこなったり、そもそもメカに不案内なドライバーがおこなうと、ナットを緩めるつもりが逆に締める方向にねじ込み、ついにはナットの角が丸くなる事態というのもありえる。メガネレンチでも回せないというケースもある。でもこれは重大な失敗ではない。もしこんな事態になれば、プライヤーで無理やり回すとか、ロッキングプライヤーで無理やり掴まえ回す・・・という手があるからだ。あとは手持ちのナットに替えればOKだ。
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