ハイブリッドカーもそうだが、いわゆる第3のエコカーといわれるクルマも、こぞってアイドリング・ストップ装置を身にまとい、少しでも燃費をよくして商品性を高める努力をしている。これって、考えてみれば再始動時には当然スターターが動かすばかりか、吸気の汚れを招く原因を作っているようなもの。しかもエコカーは排気ガス再循環装置のEGRを組み込み、排ガスをもう一度吸気に戻したり、ブローバイガスも吸気側に戻している。これすべて、排ガス浄化、燃費向上、ひいては地球環境への負荷を減らすという“お題目”。
ところがこの“お題目”のおかげで、ときには肝心のクルマ(エンジン)が痛めつけられている結果になっている!?
意外と知られていないのがシビアコンディション。パトカーや宅配便のクルマをイメージして欲しい。チョコチョコ低速で運転し、エンジンをかけたり、切ったり・・・実はこれはいっけんクルマにやさしい運転に見えるが、まったくの逆。エンジンオイルの劣化を進め、吸気系にひどい汚れを付着させる原因ともなる。ときにはインジェクターを詰まらせ、燃費悪化を招いたり、排ガス悪化に陥ったり・・・。シビアコンディション状態は、通常の半分でメンテをおこなう。たとえばエンジンオイル交換は通常1万キロごとなら5000キロごととかだ。
では、宿痾(しゅくあ)とも言うべき吸気系の汚れやインジェクター(写真)の汚損は、どうするか? 定期的な洗浄が理想だが、なかなか難しく、現状ではお手上げというのが実情のようだ。
欧米のメガサプライヤーの日本進出は相変わらず活発だ。
先日も、ウインカースイッチやエアコンのスイッチなど自動車の電気部品を造り続けて半世紀以上の、老舗ナイルスをグループ化したフランスのVALEO(ヴァレオ)の、つくばにある研究所を取材するチャンスがあった。自動車の電動化が進むことでさまざまな新たな電動化部品が生まれているが、「駐車支援システム」(商品名:Park 4U)というのもそのひとつ。
車体に10個前後のソナー(超音波)を埋め込み、障害物にある一定以上の距離で、自動的にクルマをコントロールし、縦列駐車をおこなうというものだ。クリアランスが40センチ以上あれば縦列駐車が可能で、実際おこなってみると、案外便利なことが理解できた。とくに駐車が苦手な女性ドライバーには大いにうける仕掛けと見た。日本では、同じような仕掛けがカーナビを使ってすでに商品化されているが、ソナー方式はヨーロッパでは多数派だ。開発者に聞くと、商品化にはとくにさほど苦労はなかったという。ただし、クルマによりステア特性が異なるし、タイヤサイズでも微妙にチューニングをすることになるので、セットアップに時間がかかるという。価格は正確なところは不明だが、おそらく4~5万円のレベルか。
さらに近い将来、レギュレーションが許されるなら、クルマから降りて完全自動駐車システムも技術的にはすでに完成しているという。その時はスマートフォンで操作することになるようだ。
先日メガサプライヤー・ボッシュの興味ある技術セミナーを取材した。
メガサプライヤーというのは、巨大部品メーカーのことで、ボッシュをはじめデンソー、コンチネンタル、アイシン、デルファイ、日立自動車部品などが凌ぎをけずる業界。莫大な研究開発費をかけ、下手な自動車メーカーよりも順調にビジネス街道を歩んでいるところが少なくなく、メガサプライヤーなしには自動車は造れないほど。
自動車業界の最大の関心事は、どの時点で現在の化石燃料車が少数派に転落するか? つまりハイブリッドカーやプラグ・ハイブリッドカー、電気自動車が多数派になるかである。
現在、約350万台が電動化自動車〔eモビリティ〕だという。3年後には520万台、そして2020年には1210万台に延び、2025年には逆転するという見通しだ。もちろん、この予測はガソリン価格、法規制、それにその時代の消費者である若者の好みで大いに前後する。2025年に30歳になる人は、現在17歳。高校生だ。その人たちがEVなどを受け入れてくれるのか? ボッシュによるとEVになると、モジュール化、つまりパワーソースが標準化されるので、サプライヤーの役割はより大きくなると踏んでいる。いずれにしろ、これからの10年で、自動車の姿はがらりと変わることは間違いない。
写真は、ボッシュのアクスルスプリット・ディーゼルハイブリッドシステムを搭載したプジョー3008ハイブリット4。
いきなり、友人の愛車AK12マーチのバックドアの交換作業を任されることになった。凹みが大きいので、交換したいというのだ。
このクルマは比較的人気車。リサイクル部品ですぐに同じ色のモノを探すことができた。価格は、1万5000円+消費税。早い話、業者にまかせないで、工賃を浮かせる作戦だ。よく知られるようにリサイクル部品の外装品は、6等分をしてどこにどんな大きさのキズやヘコミがあるかを事前に知ることができる。静岡の解体屋さんが“生産”した中古のバックドア。一見すると、同じ色で問題ないと思われたが、いざ取り付けてみると、取っ手部分のカラーが退色して変! 取っ手部分だけが樹脂製なので、経時変化で退色していたのだ。そこで元のドアの取っ手を取り外し、移植。
一番の艱難辛苦だったのは、ワイヤーハーネスの取り回しだ。ドアパネルにところどころにコネクターが付いたハーネスを通すのだ。そのままでは通らない。あれこれやっているうちに日が暮れた。大きなコネクターをドアパネルに入れるところが、大きな壁だった。夜中に頭のなかで、シミュミレーションし直した。気を取り直して翌日。1メートルほどの針金をあらかじめドアポネルに通しておき、針金のエンド部に通すべきハーネスを繋げる・・・途中何度もひっかかり難儀するが、その都度少し戻し、また引っ張る・・・という作業を繰り返しようやく通すことができた! のべ3時間近くもかかった。たぶんプロの板金屋さんなら、10数分だろうが、経験とはなんとも豊穣なものだ。手の甲にいくつもの傷が付いていたが、不思議にも痛く感じなかった。組み立てラインでは、たぶん30秒前後でおこなっているはず。どんなジグを使っているのだろう? 想像をめぐらすチカラが湧いてくる。クルマの修復作業で味わった、ひさびさの醍醐味の実感だ。
≪美は細部に宿る≫とはよく言ったものだ。
レーシングカーの美しいシルエットは、量産車を圧倒する感動を与えるのはごくふつうで当たり前だが、レーシングカーの頂点である部品の一部を手にとって理解するときほどの感動を呼び起こせない。ふだん見慣れた小さな部品にこそ輝きを見出すということだ。
先日パシフィコ横浜で開かれた「自動車技術展」はしょうじき自動車開発者などエンジニア向けのため、難しすぎて門前払いを食らう気分になるブースが多い。
ところがふと足を止めたら、面白いものが目に飛び込んできた。ケブラー製のブレーキホースである。東京アールアンドデーのブースだ。通常ブレーキホースといえばゴム製あるいは外周にステンレスメッシュ製というのが通常だが、外周にケブラーを使いすぐれた屈曲性を持つという。目に焼きついたのは、ジョイント部分(ツナギ部分)である。通常の2面幅10ミリの6角部(エルボー)を持つのではなく、写真左のようなプラグタイプ。相手の穴に差し込み、スライドプレートで留めるという原理。金具はチタン製だ。軽量コンパクトで、狭いところにもセッティングできるという。ちなみに、ホースの外周はアラミド繊維のケブラーだが、インナーホースは従来どおり厚み0.8ミリのテフロン〔PTFE〕ホースだという。コストはステンレスメッシュの3~4倍なので、スポーツカーあたりに採用されるかもしれない。
旬(しゅん)の男優・小栗旬クンの1人二役の新型カローラのTV/CFは、いっけん別人だと思わせるところが面白い。そのカローラフィールダーのバックドアは実は、樹脂製なのだ。
樹脂にもいろいろあるが、TSOP(トヨタ・スーパーオレフィン・ポリマーの略)で、従来の複合PP(ポリプロピレン)にくらべリサイクル性を高めた熱可塑性樹脂。1991年からトヨタ車の新車の内装素材などにどんどん使われ始めている。
でも、バックドアのように大きな面積の外装部品にTSOPが採用されたのは、たぶん始めて。厚みは2.8~3.0ミリで、要所要所に板金の補強を追加している。開発者に言わせると、使用時の変形や寸法変化をいかに小さくするかだったという。面積が大きいぶん、熱変形も大きくなりがちだからだ。コストは、従来、つまりオール板金製にくらべ10%ほどダウンさせたという。単体重量は、金属製にくらべ2.5kg減の21.4kgだ。部品点数も内装トリム類を一体化、プルハンドル(取っ手のこと)を一体化するなどで、従来の13点から10点と3点減ったという。ちなみに、新型カローラは、車体全体で40~50kgの軽量化を実現しているが、バックドアの樹脂化もそれに貢献しているということだ。
このブログの読者にインチねじで苦労している人はまずいないと思うが、知ったかぶりをするうえで少しインチねじの入り口に招待したい。
たとえば・・・♯8-32×1 1/4
♯8は、「呼び径が8番のボルト」であることを示し、32は「1インチ(25.4ミリ)あたりにある山の数が32」であることを示す。1 1/4はそのねじの長さが1.25インチであることを示している。ネジ径の呼びは、ゼロから1,2,3,4・・・と12まであり、徐々にねじ山の数が減っていく。それ以上のネジ径の太いねじは1/4インチ5/16インチ、3/8インチ、7/16インチ・・・となる。もちろん呼び径が同じでも、山の数は異なるケースもある。たとえば、♯10には、比較的頻度の高い24山と32山タイプがあるし、♯3/8では16山と24山などがある。なかなか複雑だ。メトリックスねじ(メートルねじ)で一番頻度の高いM8(ネジ径が8ミリ)はインチでは♯5/16のインチねじと酷似。ところがこの♯5/16にも18山と24山があり、いずれもM8と同じ太さだが、前者はM8よりピッチが荒く、後者はM8よりもピッチが細かい。
ちなみに、インチねじを扱うねじ屋さんはごく小数だが、日本でもあり、ハーレーの愛好者とか旧いアメ車マニアには御用達だそうだ。
13万キロをあとにした愛車「ファンカーゴ」の車検が迫ったある日、フロントブレーキのパッド交換を決意した。数週間前から、ブレーキをかけるたびに、嫌な音がするのにだんだん気になりだしたからだ。前回パッド交換してから、約3万キロオーバー。そろそろ交換するには頃合(ころあい)だ。タイヤを外し、キャリパーを横から見るとギョギョ! いわゆる裏金(バックプレート)ぎりぎりまで摩擦材が磨り減っていたのだ。とくに内側がひどい。裏金にローターがぶつかっている形跡。これじゃ、威勢のいい音を奏でるはず。パッド側面に付いている板金製の摩耗を知らせるウエアインジケーターが左右ともに根元で折れていた。これでは、正常にパッドが限度厚さになったことを教えてはくれないはずだ。
さっそく、旧いパッドを取り外し、特殊工具のピストン戻しを使いピストンを目いっぱい押し込もうとする。ところが、ピストンが固着しており、ピストン戻しのハンドルにオキテ破りの延長パイプをつけないと動かせないほど。とにかく、今回はパッドを新品にして、車検をパスしてから、しかるのちにピストン回りのオーバーホールをするつもり。
その作業は後日報告として、持ち込みのユーザー車検に関しては、なぜか排ガスで再検だった。HCが多いと出たのだ。過去30回ほどユーザー車検を受けているが、初めて。O2センサーの故障か、はたまた触媒のつまりか? 近所の修理工場に持ち込み、測定しなおすと、あ~ら不思議、規定値内で、問題なし。ふたたび本番の車検場で、恐る恐る再検したところ、何のことはないすんなりパス。たぶんアイドリングを長くやりすぎたなど、ちょっとした調子でHCが多量に出たようだ。
いまや「ぶつからないクルマ」が急速に身近な存在になりつつある。
スバルのレガシーなどに採用される「アイサイト」は、当初カーナビとほぼ同じ値段の20万円を予定していたがいまでは約10万円台。
先ごろデビューしたマツダCX-5には、メーカーオプションで取り付けられるスマート・シティ・ブレーキ・サポート〔略してSCVS〕は、上級モデルには標準装備だが、はじめから付いていないグレードでも7万8000円の上乗せで付けられるという。しかもこの値段は、リアビューモニターとオートクルーズの3点セット、デフレとはいえ信じられないほど安い!? サプライヤーはコンチネンタル社。
あるデータによると追突事故の約6割が時速30キロ以内で発生するという。CX-5の衝突事故軽減装置は、時速25キロ以内なら完璧に衝突を防いでくれ、それ以上の速度ではダメージを軽減できるという。スバルの「インサイト」はカメラで障害物を捕らえるが、マツダはフロントガラスに取り付けられたレーザー(近赤外線)センサーだ。雨天時、逆光、夜間といった見えづらい環境下でも障害物をキャッチできるのが、自慢だ。近赤外線というとなんだか遠い存在だが、TVのリモコンと同じ波長の長い光線のこと。開発者に話を聞くと、三好のテストコースなどで、雪や霧のなかで約1年半かけてテストを重ね、信頼性を確立したという。写真のようにATの誤発進抑制制御もできるので、高齢者ドライバーにありがちな駐車場での衝突事故も防げる。
三菱のアイミーブと日産のリーフ。ジャパニーズ製電気自動車は、とりあえず出揃った。
車両価格は今後量産が進めばある程度解決するが、大きなハードルがある。1充電の航続距離が実用上100キロあたり、充電時間がクイックでも数時間もかかるという宿痾(しゅくあ)ともいえる足かせだ。充電設備というインフラの整備を数えると、計4つの大きな課題が横たわる。今後電気料金が高騰する予測もあるの、ランニングコストに夢を託せなくなる恐れもある。
だが、限りある化石燃料の現実を突きつけられれば次世代のパーソナルモビリティは、電気自動車しかないというのも共通した見通し。こうしたことを背景に自動車メーカーだけでなくさまざまな企業が次世代電気自動車の技術革新に心血を注いでいる。
自動車のオルタネーター、産業用モーター、鉄道のモーターなど多岐にわたりモーター技術を培ってきた三菱電機は、このほど電気自動車用のモーターの開発をお披露目している。電気自動車の主な構成は、モーター、インバーター、電池、それに制御システムだが、電池の直流を交流に変えるインバーターをモーターと一体化したモジュール化に成功したのだ。これにより容積比を半分に重量を10%減となったという。しかもモーターの集中巻構造により巻線密度を高め、インバーターのパワー半導体素子をシリコンカーバイト〔SiC〕にすることで、モーター出力を5%改善し、従来のインバーターに比べ損失を半減。
今後電池の性能向上も進み、車体の軽量化も平行しておこなわれる予測なので、5年後10年後の電気自動車は、たぶん見違えるほど性能向上するはず。でも、こうした進化も、いま販売している電気自動車が売れなければ現実とはならないわけで、技術の進化も一筋縄では行かない!?
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