ある調査によると3台に1台が空気圧不足状態。この背景には1ヶ月に自然のエア漏れが5~10%もあるからだ。指定空気圧の2割が減ると、乗り心地が悪化するだけでなく、タイヤの偏摩耗が進み、転がり抵抗が約10%増え燃費悪化につながる。だから、ガソリンスタンドにはいったら、できるだけエアチェックを励行することが大切。
ところが、指定空気圧を知らないユーザーが、半数以上にのぼるアンケート結果もあり、ユーザーへの啓蒙は難しい。
こうしたなか、「タイヤ空気圧警報システム」を備えたクルマが登場している。
先ごろ新発売したスズキのワゴンRにも付いている。ABS(アンチロックブレーキシステム)のホイールスピードセンサーを活用し、もし空気圧がダウンすると車輪速度が微妙に変化するのをセンシング。インパネのモニターランプが点灯し、ドライバーに空気圧不足を知らせるというもの。
ところが、一見便利なシステムにもウイークポイントがある。
タイヤが空転する未舗装路を走行したり、タイヤチェーンを取り付けた場合、スタッドレスタイヤに交換した場合にも誤作動の恐れがある。しかも、空気圧を調整したり、タイヤを交換した場合はシステムを初期化する必要がある、など厄介な部分もあるようだ
ハリウッド映画の新作「アイアンマン」を見た人は奇想天外なストーリーのなかに近未来のロボット技術を垣間見たはず。アメリカの武器製造企業の社長がアフガニスタンで囚われの身となり、洞窟内でITを駆使した飛行可能なロボットを作成、悪人をやっつける・・という、ある意味たわいもない物語だが、その翌日東京ビッグサイトの「国際福祉機器展」を取材。ホンダの歩行アシスト器具が目に飛び込んできた。
例の、階段をスタスタ登ることができる2足型ロボット・ASIMO(アッシモ)の技術から誕生したもの。正式には「装着型歩行アシスト」というそうだ。バッテリー、モーター、角度センサー、制御CPU(コンピューター)などを組み込んだギブスを身にまとうことで、歩行困難な高齢者の日常生活を改善するのが目的だという。下肢の蹴り力をアシストしたり、振り出しをアシストすることで広い歩幅での歩行をうながすという。ホンダではこの装着型歩行アシストの研究を1999年から始めていたというから研究歴10年近い。
この装着型歩行アシストは、いまのところ参考出品だが、近い将来には≪年寄りと乳母車(おんばぐるま)の世界≫は過去のものとなるようだ。
このほどホンダは、連続容量可変タイプの新型エアバッグを開発し、11月デビューの新型ライフに採用するという。通常のエアバッグは、衝撃を感知すると0.03秒で目いっぱい膨らみ、その後しぼむ・・・というかたちだった。
≪連続容量可変タイプ≫の新型エアバッグというのは、エアバッグの縫製糸に工夫を凝らし、徐々に糸が切れることで、エアバッグの大きさが段階的に増加し、展開時のエアバッグの飛び出し量を少なくし、かつガス発生装置の出力を押さえることで、従来あった乗員への衝撃をやわらげるというもの。
このエアバックは、内圧を一定に保ち、保護性能をより長く持続し、しかも素早く内圧を高め、乗員の保護性能を向上させているという。ホンダは1971年からエアバッグの研究に着手し、1987年国産車で初の運転席用SRSエアバッグシステムを商品化したメーカー。さらに1998年には世界初の2段階式インフレーターなどを開発。ちなみに、これまで約7000個以上のエアバッグを試作し、研究所にはエアバッグを縫製する工業用ミシンが多数並んでいるというのだ。
よく知られているように愛知県の豊橋は、ドイツをはじめ世界中から輸入車が陸揚げされる港である。
今回VW,アウディ、ポルシェなどが日本に上陸してディーラーに配送される指令塔(PDIという)を取材できた。写真のように、上陸したクルマは、まるで白装束の月光仮面のノリである。不織布と呼ばれる衣で覆われ、輸送中傷がつかないようにする配慮である。この到着ドックには、ドイツのエムデン港からパサート、トゥアレグなどが月に2000台、南アフリカからはゴルフ、ポロなどが2000台、メキシコの工場からはジェッタやニュービートル、ゴルフバリアントなどが1000台到着するのだという。約25日間の船旅だという。
陸揚げされたクルマがそのままディーラーに移送されるわけではない。
プロの目でいくつものチェックが入る。とくに外観や内装の不具合に関しては厳しい目を向けるユーザーが多い日本市場ゆえ、中にはフロントガラスの交換や塗装面の手直しが入る。エンジンやトランスミッションの不具合チェックは、100台につき1台の割でシャシーダイナモをつかい検査されるという。いわゆる抜き取り検査というものだ。検査終了後、車両は5300台収容できる立体自動パーキングでスタンバイ、その後全国の販売店に運ばれる。
日産は、2年後の2010年に電気自動車(EV)とハイブリッドカーをそれぞれ市場に投入すると決めている。数年遅れで登場する燃料電池車もそうだが、共通するコア技術は、高性能なリチウムイオンの開発である。
このリチウムイオン電池、ハイブリッドカーでは高出力型、EV車では高エネルギー型と性能が明確に異なる。つまり電池の内部の素材などをチューニングする技術が要求されるのである。
1992年からリチウムイオンの開発に着手した日産は、このほど電池開発の研究所をマスコミに公開した。この研究所で、電池の組成のチューニングやクルマに搭載した時の適合などを研究・開発しているという。NECとの合弁で立ち上げたオートモーティブエナジーサプライ社では、すでに量産に向けて動き始めているとのこと。
電池研究室に足を踏み入れたのは真夏のむしむしする日。湿度70%を超えていた。ところが、ラボ内部はそとに比べ、湿度が1/5000という超乾燥室。電池性能が湿度の大きな影響を受けることから、これほどドライにしているのだという。ナノオーダーの電子顕微鏡による電池内部構造の解析など、化学と物理学、電子工学のコラボレーションの世界。これからさらに技術進化が期待できるという。
マツダのミニバン・ビアンテに乗った。劇団ひとりがTVでCMしているあのクルマだ。ほかのメーカーが一応すべてミニバンを出したので、ミニバンの最終カードともいえる。
室内が広いというのが劇団ひとりのCMポイントだが、私は、操縦安定性の高さに感激した。ミニバンの中ではたぶんトップだと思う。
その裏には、ボディの変形ヒステリシスにある。ヒステリシスを辞書で引くと「履歴現象」とありなんだか煙に巻かれるが、簡単にいえばコーナリング時、ボディの変形の戻りがスムーズ(理にかなっているか)かどうかという意味。ボディ全体の剛性が高ければ走安性が高いかというとそうではないのである。これを発見したのが、先代アテンザの開発時だったという。リアゲートを開けた状態で走行した時のボディ剛性を高めたところ、ゲートを閉じた状態ではかえって剛性がダウンすることに気づいたのである。局部剛性の大切さを把握した瞬間だ。
この局部剛性(サスペンションの取り付け周辺)を高めることで、がぜん操縦安定性が向上するのだという。コンピューターによる解析力とベテランドライバーの泥臭い感性、それに好奇心が生み出したのがビアンテの高い操縦安定性だということのようだ。
クルマのセールスは、他の工業製品、たとえば洗濯機とかパソコンを販売するのとはまったく違う世界。そのことが痛いほど理解できるのがセールスマン・コンテストの取材である。
先日も、都内のホテルのダンスフロアにクルマを持ち込み、お客様役の役者を相手にセールスマンのコンテストがあった。ボルボの選りすぐりのセールスマン&ウーメン(女性もいるので)30名ほどが、応援団やマスコミの目が光る中、日頃のセールストークを競い合った。
取材してわかったのは、ただ滑舌(かつぜつ)がすぐれた人ではだめだということ。お客様の不満や不安を上手く引き出し、それを丁寧に解消できるかどうか? ボルボというクルマをいかに愛し、その優秀性に誇りを持っているかを、お客様に自分の言葉で伝えられるか。
もちろんお客様のライフスタイルのあったクルマを気持ちよく薦められる能力も大いに必要。≪契約のはんこを捺して以降のアフターフォローの大切さ≫もあるという。優れたセールスマンにとっては、クルマを売ることは自分自身を売ることだそうだ。
商売柄、ときどき「架空オーナー」となり、そのクルマのあれこれに思いをめぐらすことがある。この3月に5年ぶりにマイナーチェンジしたマツダのロータリーエンジン(RE)車RX-8に乗る機会があり、≪オイル消費≫を真剣に考えてしまった。
オイル消費とはいうまでもなく、エンジンが1リッターのオイルを消費するのにどのくらい距離を走るかで、評価されるもの。通常の1万キロ以上でないとユーザーから不満の声が上がる。なぜ1万キロかというと、オイルレベルゲージのLとHのあいだがちょうど1リッターだからだ。オイル交換は通常1~1万5000キロなので、オイル交換するとき、レベルゲージがHからLにダウンしたとしたら、「オイルが劇的に減った!」としてユーザーからのお叱りが増加するからである。
ところがRE車は、構造上から言ってオイル消費は当たり前。走り方によると3000㎞/リッターということもあるという。それでもオイル供給のポンプであるメタリングオイルポンプを機械式から電磁タイプ(写真)に変更し、オイル消費はさらに改善したという。しかも、今回は、オイル容量を5.8→7.2リッターに高め、HとLのあいだを従来1.6リッターだったのを2.0リッターにしたという。たかがオイル消費、されどオイル消費である。
煩わしいシートアレンジをユーザーに強いる必要のないようにあらかじめ5人乗り仕様、7人乗り仕様、8人乗り仕様と決め打ちをして完成度を高め、販売に結びつけているホンダ5ナンバーミニバン「フリード」は、フィット以上に爆発的ヒットを予感させる。車内の移動がスムーズにできるウォークスルーであるため、リアのスライドドアから全員が乗り込めるなどホンダ流の仕掛けがある。
ミニバンはデザイン的に退屈になりがちだが、インパネに面白い仕掛け、というか冒険を試みている。「レイヤードデザイン」と呼ばれる2つの互い違いの層で奥行き感を出しているのである。アッパー部は遠方に配置することで奥行き感を出し、大きなフロントガラスの面と合わせ、広々感を獲得。ロア部は、フラットに張り出した面がアッパー部とは逆のラウンドを描きながら左右に広がり、ワイド感を強調する。
スバル車などは、ドアトリムとインパネを一体にしたラウンド感に執着し遅れをとっているが、いまやインパネとドアトリムは別々にして、広々感を出すのがトレンド。ホンダのフリードはさらにそこからの冒険というかトライを敢行している。ユーザーがどう評価するか注目される。
いまさら言うもでもないが、イマドキのクルマは70個ほどの電子コントロールユニットを持つ。そのため昔のクルマを修理するときのように、勘を頼りにするだけでは不具合を発見することすらできない。
そこで、コンピューター診断機が活躍するのである。
ところが、この診断機、トヨタならトヨタ、ベンツならベンツという具合に個別対応が原則。マルチにどんなクルマでも苦もなく診断できるということは原則できない。
そこで、登場したのがボッシュの診断システム。いま日本で走っている乗用車の9割以上の整備データを備え、スピーディに愛車の点検をおこなえるという。しかも、日本の現状の車検の弱点を克服したメニューだという。たとえば通常の車検のブレーキテストでは踏みはじめや軽く踏んだときの性能をいっさい見ないが、ボッシュでは途中過程をつぶさにチェックし数値化とグラフ化でユーザーに分かりやすく見せる。ショックアブソーバーの良否判断も振動を与え収束具合をグラフ化し数値化することで、劣化具合を確認し、左右差まで示してくれる。
つまり車検ではわからない愛車の健康具合をよりつぶさに把握し、不具合個所をかなり的確に診断できる。日本の整備工場は急速に元気を失いつつある時代。勘の整備からITの整備に切り替えられるか? 課題が山積するなか、ボッシュ印の整備工場が今後増殖できるか、その行方をウオッチングしていきたいね。
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