海外を取材すると服装や習慣の違いと同じように、クルマに対するまなざしの違いでびっくりすることが少なくない。
上海のとあるカーショップに入ったところ、日本製のワイパーブレードを発見。英語、中国語、それに日本語の文字が入り乱れたパッケージに入った高級品だ。なかを開けてみてびっくりした。ゴムのブレードに樹脂製のカバーが付いているのである。
販売している日系の商社に問い合わせたところ「中国製のワイパーの約2倍の価格でも売れるんです。中国製だとすぐダメになるのですが、うちのは1年以上大丈夫という高い評価なんです。といってもこれも実は中国でつくったものなんです。日本の市場で学習したわれわれのノウハウを注ぎ込んだ製品です」
つまり逆輸入自動車部品だったのだ。それにしてもゴムブレードに過剰ともいえる樹脂のカバー。中国の市場では「ここまでやっているから高級品で長持ちする」というメッセージとして受け取るらしい。
40数年前、舶来のほろ苦いチョコレートやカラフルなレーズンのパッケージにまだ見ぬカルフォルニアのまぶしい太陽を想像した少年の日を思い出す・・・・。
「タイヤは命を乗せている!」 大昔にそんなTVコマーシャルがあった。
タイヤほど操縦安定性、乗り心地、燃費などを左右する最重要部品のわりにはふだんあまり注意を払わないケースが少なくない。 空気圧が10%下がっただけでも乗り心地や操縦安定性が微妙に悪くなり、燃費もダウンする理屈だ。それとトレッド面に山があっても経年劣化で硬くなり、乗り心地が悪化しているケースがある。走行キロ数が年間3000キロ以下で5年以上たったクルマのタイヤなどはたぶん山は5分山ぐらいだろうが、指で触ってみるとそれと分かるほど硬化しているケースがある。中古車を手に入れた場合、タイヤの山があっても安心できない。
どのくらい前のタイヤかは、サイドウォールに書いてある4桁の数字で判断がつく。 たとえば「4905」とあれば、2005年の第49週目に製造されたタイヤであることが分かる。つまり2005年の12月あたりという勘定だ。
とくにこの知識は、硬くなるとその価値がなくなるスタッドレスタイヤの中古を手に入れるときに活用できるので覚えておいて欲しい。
車検を受けたのだが、何らかの不具合で、不合格になった。
たいていはテールレンズなどの“バルブ(球)切れ”や“ヘッドライトの光軸の狂い”が多い。前者は近くの部品屋さんで手当てできるし、後者は車検場近くの予備車検場に駆け込めば解決する。困るのは安直に解決できないトラブルだ。
たとえば、筆者には過去にこんな例がある。ステアリングラックのダストブーツが破れていた。ダストブーツの破れなぞ、1年2年そのままでも大事故にはつながらない(水が入り、シールがダメになり、最悪パワステのオイルが流れ落ち重ステになる!)のだが、仕事に忠実な検査官の目はごまかせない。
そこで、ど~したか? こんなときは、火事場のバカ力ではないが、持てる能力がフルに活躍されるものだ。・・・・まず部品を手に入れ、自分で修理するシミュレーションを頭に描く。部品は修理工場に近くの自動車部品商を紹介してもらい即電話で部品在庫を確認。答えは「在庫アリ!」そこで、近くの顔見知りのタイヤショップのリフトを借り、作業を開始。特殊工具のタイロッドエンドリムーバーがあり、古いブーツを取り外すのは意外とスムーズにいった。狭い場所なので新しいブーツを入れるのに多少苦労。それでも1時間ほどで修理を済ませた。
まったくのズブのシロウトの読者にはあまり薦められないが、でもこうした難問を一度解決すると、見違えるほどクルマへの愛が高まるのは事実。
4月22日から始まった中国・上海モーターショーを取材してきた。
実際足を踏み込んだのはプレスデーである18日と19日だったが、とにかく怒濤のような人々の≪熱気≫に圧倒された。中国の人たちの自動車にたいする“アツ~イ思い”が頂点に達しているのである。足を運んだ中国の人たちは50万人を超えたという。
昨年の中国での自動車生産は720万台で軽く日本を抜いたのは記憶に新しいが、今年はさらに130万台上乗せした850万台が生産・販売される見通しだ。今年1月からの4半期で約22.2%の伸びだというからすごい。モーターショー自体も上海と北京交互に毎年おこなうスケジュールで、そのあおりで数年後には、おそらく東京モーターショーは地盤沈下する恐れである。
いわゆる民族系の中国ブランドの乗用車が29.1%、日系ブランドの乗用車が28.3%、21.5%が欧州系、13%がアメ車系、韓国車が8.3%という戦国時代の様相。中国ブランドではチェリーという大衆車メーカーがやや先行し、街中では日本車だけでなくヒュンダイ、GMの乗用車が目に付く。意外と思うかもしれないが、中国人のクルマに対するマインドとアメリカ人のそれにはかなり共通するものがある。労働力の廉価な中国で開発したクルマをアメリカで販売する、という仕組みもありなのだ。
競争の劣化とモノづくりの合理化などで、自動車の販売価格がこのところ5~7%下がり、ますます庶民にとってクルマは高嶺の花から≪買うことができる大型商品≫へと移行しつつある。
これって、日本の昭和40年代である。まさに、中国はいま「ALWAYS 三丁目の夕日」のど真ん中にいるのである。
欧州、北米、日本。世界には3つの大きなクルマ市場があるが、このなかで一番「異音」に神経質なのは日本だといわれている。
クルマの2大異音はベルトの鳴きとブレーキパッドの鳴きである。
とくにブレーキの鳴き消去作業が難しい。摩擦で熱を発生し、制動力を得るブレーキ。物理の世界でいえば、運動エネルギーを熱に変換する理屈である。このとき2つの物体がこすり合うのだから音が出るのが当たり前・・・といっても納得できないのが日本人。
そこで、ブレーキパッドやライニングの摩擦材をつくっている日清紡という企業の担当者が、デモカーで全国行脚するという。「ユーザーであるお客様にブレーキの仕組みをどう説明するか?」「ブレーキの鳴きを消す手法を伝授します」あるいは「いまどきのブレーキの素材、環境問題をやさしく説明する」・・・そんな役割を果たすというのである。
台数が少ないので遭遇する機会はまれだが幸運にも見かけたら、覗いて見てほしい。
ひところに較べドライブシャフトのゴムブーツの破れトラブルが少なくなった理由をご存知だろうか? 数年前から徐々にゴム製のブーツから樹脂製のブーツにシフトし、トラブルが劇的に減少したからである。
それでも少し旧いクルマは依然としてゴム製のブーツ。熱がこもったり、異物にヒットしたり、あるいは経年劣化などでその寿命は5年~6年というのは通り相場。リビルトのドライブシャフトに交換するのも悪くないが、≪割れブーツ≫で修理するという手段もある。
割れブーツというのは文字通り取り付けしやすいようにあらかじめ2つに割れた(あるいは割れ目が入った)補修用のブーツで、かぶせて→グリスを注入して→バンドで留める・・・というかなり簡略な修理。この修理法、かつては安かろう悪かろうの世界だったが、最近では割れ目部分に使う溶剤が進化し、かなり信頼性が高くなり、2年または走行2万キロ保証付きの製品が登場している。
大野ゴム工業(電話03-3690-5825)の「オーレッグ樹脂ブーツ」は、31アイテムもあり、価格は5700円だという。
実際作業したことがないので自信をもって薦めることはできないが、好奇心が豊かでブーツ破れに出会ったひとは試してみる価値はありそうだ。
車検を受けたのだが、何らかの不具合で、不合格になった。
実は、これは少しも不名誉なことでもなんでもない。慌てふためく理由もない。「検査を先におこない不具合を、あとで修復する」といういわゆる≪前検査・あと整備≫は、認められているからだ。昔のように不具合になっていない部品まで交換して車検にのぞむよりも、はるかに環境にやさしいともいえる。
総合判定のところで係官に、どこが不具合なのかをしっかり聞き取ること。記録紙にも明記されるが、念のため「どこに問題があったのか」を明確にすること。よくあるのはヘッドライトの光軸が狂っているケース。このときは、車検場近くにある民間の予備車検場で実費(約3000円前後)を払い修復する。ライセンスプレートの照明バルブが切れているなどのケースなら、近所の整備工場や予備試験場で部品を手に入れ交換する。ということはつまり、あらかじめプラスドライバーなどハンドツールを持参しておくことを忘れないで欲しい。
再び車検を受けることを「再検」と呼ぶのだが、当日であれば何度でも受験できるし、15日以内であれば受験料1400円(3ナンバーは1500円)を払えば何度でも受けられる。検査ラインの入り口の「選択ボタン」を押すか、電話で試験官に「再検です」と伝えてふたたび車検検査ラインに入ればいい。車検場周辺ではとても間に合いそうもないトラブルの話は次号でお伝えしたい。
プジョーのコンパクトカーである2シリーズのニューモデルが登場した。206の後継車、207がそれだ。2シリーズというのは、1929年に発売された世界初の前輪独立懸架を採用した201から始まり、ピニンファリーナによるデザインで刑事コロンボが乗っていた204(1965年)、日本にプジョーのイメージを植えつけた、おしゃれな2ボックス車205(1983年)、8700万台を販売した先代の206(1998年)と80年近くの歴史をもつクルマ。
新型207は4速ATと組み合わせたNA(自然吸気)の1600㏄、ボルグワーナー製のターボ仕様で直噴1600ccと組み合わせた5速MT車の2本立て。エンジンはいずれもBMWのミニとほぼ同じものだ。箱根のワインディングを走らせた結論は、日本車にはない上等の乗り心地とハンドリングが魅力。値段が239万円からと高価なこともあり、コンパクトカーの枠からはみ出た上質のつくりも二重丸。
日本車が≪ニューモデル≫でいられるのは4~5年。それに比べ欧州車は8年前後と長い。日本車にない≪何か≫を発見できるユーザーがたぶん財布のひもを緩めるものなのかもしれない。
でも、欧州車で気に入らないことが2つある。
ひとつは、たいていの場合プレミアムガソリンであること。せっかく燃費がよくても値段の高いプレミアムを入れるとなると結局高いものになる。
二つ目は、左ハンドルを右ハンドルに直したカタチになるので、ペダルの位置が若干不自然だったり、グローブボックスに付いたドリンクホルダーがやや斜めになっていたりする。207にもそれを発見した。欧州車に乗るドライバーは、このあたりを大目に見る広い度量が必要だ。