ユニバーサルジョイントは持っていてもユニバーサルソケットを持っている読者はあまりいないと思う。
ユニバーサルジョイントはセットツールのなかに入っているため保有しているが、ユニバーサルソケットは、通常のソケットの約4~5倍の高価格のため購入に躊躇する。KTCのソケットでいえば、ネプロスのソケットが3/8インチ差し込み角で1000円前後なのに、ユニバーサルソケットとなると5000円近くもする。
使用頻度の高い10ミリ、12ミリ、14ミリの3つを手に入れるには1万5000円近くの散財となる。これはつらい。
ユニバーサルジョイントはソケット+ユニバーサルジョイントとなるため、全長がどうしても長くなり、そのぶん使いづらいケースとか、なかには使えない場合が出てくる。理屈の上ではそうなのだが、では超高コストなユニバーサルソケットでないとダメな場合があるのか? といえば、あまりない、といえる。それにユニバーサルジョイントにもいえるのだが、曲がり角度が大きくなると使えない宿命。
ユニバーサルソケットを1個だけ手に入れ、このあたりをあれこれやってみると面白い。
累計1500万台という途方もない台数を生み出したT型フォードの背後には、今につながる生産方式の革命があった。
フォードの生産方式は≪ベルトコンベアによる流れ作業≫と一言でいわれるが、これはまずダイナモ(直流発電機)の組み立てラインで実験された。従来一人の作業員が組み立てたスタイルから29名の作業員が各部を分担させることで、高効率化でき、1台のダイナモを組み立てる時間が20分からわずか5分に短縮できたのである。これがそのまま車体組み立てに導入された。当初はロープとウインチを使い車体を移動させて流れ作業を具現化。46メートルあるラインに140名の作業員を配置させることで、これまでの1台あたり作業時間を12時間30分から半分以下の5時間50分に短縮できたという。
さらに効率を高めるため、ボディカラーを黒一色にしている。
自己完結型の自動車工場は、1918年に操業を始めたリバー・ルージュ工場だ。東京ドーム173個分に相当する広大な敷地(トヨタの田原工場の約2倍!)に、シャシー工場、金型工場、ギア・アクスル工場、圧延工場、鋳物工場、エンジン組み立て工場はむろんのこと、鋼板をつくる溶鉱炉、工場内の電気を生み出す発電機、ガラス工場、貨物船の埠頭まで備えている≪究極の自己完結型の自動車工場≫なのだ。年間200万台の生産はこうして軌道に乗るのである。
身近によく見かけるものの、そのメカニズムとなるとカイモク分かりません!そんなことは世の中腐るほどある。
バスの仕組みもそのひとつといえる。
ミニバスのなかには、ローザ(三菱ふそう)のようにトラックのキャンターのフレームとほぼ同じものを使い、FRレイアウトタイプのものもあるが、大半はリアエンジン・リアドライブ。RRというタイプである。RRということからいけばスポーツカーのポルシェと同じなんだな。
路線バスも観光バスも原則的にはみなRRだ。
エンジンとアクスルをがっちり取り付けるためのサブフレームこそ持っているが、トラックのようなフレームを持っていないのが特徴。だから、バスをつくる工場に行くと、両サイド、前後、それに天井にフロア・・・計6つのでかいパーツ。これを6面体と呼ぶのだが、その6つをシャコマンで仮止めして溶接で付けていく。出っ張ったところをディスクサンダーで削り取るため、工場内はあちこちで花火のように火花が弾け飛ぶ。まさに鉄工所というか鍛冶屋さんの世界。
リアエンジンは、熱がこもらないようにすることは無論のこと、前輪で立てたホコリを受けることになり、エアクリーナーの位置を上部にセットしたり、補機ベルトにゴミが絡まない工夫をしている。
「余裕の2.2リッター」あるいは「ゆとりの大排気量エンジン」という言葉は今や昔、乗用車エンジンのトレンドはいまやダウンサイジングである。
9月から発売予定のゴルフのスポーツワゴン「ゴルフバリアント」の主要エンジンが1.4リッターで10・15モード燃費が14.0リッターというところがウリ。スーパーチャージャー+ターボ付きエンジンとしては燃費がいいのはエンジン排気量が小さいから。≪小排気量ながら高効率なエンジンとそこそこの大きさのボディとの組み合わせ≫というのが、このところのトレンドとなりつつある。
先日フルモデルチェンジしたマツダのデミオもその流れと見て取れる。
ハイテンションスチール(高張力鋼板)をボディ全体の60%も採用し、サスペンション各部を軽量化。実に旧デミオよりも100kgも軽く仕上げている。しかも主要エンジンの1300には≪ミラーサイクルエンジン≫を採用。これは、膨張比を大きくするために吸気バルブが閉じるタイミングを遅くし、熱効率を高めた燃費重視型エンジン。アイシンAW製のすぐれたCVTとの組み合わせで、商品化できたという。10・15モード燃費はクラストップのリッターあたり23kmだ。ライバル・ヴィッツを打ち落とす勢いだ。価格は112万5000円から。
ただし、エンジン開発者に話を聞くと・・・このエンジンはトルクがダウンするため、アルミ製ブロックとスチール製クランクシャフトの熱膨張差によって、旭川あたりの厳冬地での始動性に難が生じたという。そこで、スターターの容量を1.0KWから1.4KWにアップし、クランクシャフトのメタルクリアランス(間隙)をミクロン単位で少し大きくしているという。
一昔前まではプロのメカニックのあいだでは、ラチェットドライバーと聞くと「おもちゃのドライバーだね」という評価だったが、スナップオンのラチェットドライバーの有効性が伝播するにつれ、その概念は葬り去られた。ワンタッチで左右切り替えができ、腕のスナップをきかせるだけでビスが回せる便利さは経験すると忘れがたい。
つい最近日本のハンドツールブランドであるKTCから「ラチェットドライバーDBR14」がデビューした。 さっそく使ってみた。ずばり言えば、グリップ感、使用フィーリング、重量バランス・・・などスナップオンが1馬身リードの感じ。重量もスナップオンの290グラムに対し、KTCは348グラム(実測値)と20%ほど重い。同じ作業を続けざまにするとKTCは不利となる。しかも、スナップオンはグリップが折れ曲がりピストル型(ガングリップ)にすることもでき、その点での使い勝手は3馬身のリードを許す!?
だが、KTCにも美点がある。ビットが全部で8本付いていて、先端形状が14種類もあるのだ。スナップオンも買い足せばいろいろなビットを付けることができるが、KTCは、わずか4、300円(スナップオンの約半値!)でプラス1番、2番、3番は無論のこと、マイナスビス3タイプ、ヘキサゴン4サイズにトルクス4サイズが始めから入っているのである。ちなみに、KTCとスナップオンのビットの互換性はない。
累計1500万台という途方もない台数が売ったT型フォードをめぐる人間像にも注目。
今回はそのうちの対照的な2人を紹介したい。
その一人が≪鋳物やチャーリー≫という愛称でヘンリー・フォードから呼ばれていたチャールズ・ソレンセン。1881年に生まれ、いまらか40年ほど前に87歳で亡くなった人物。4歳のときスエーデンからアメリカに移住し、成人になってストーブの鋳物工場の行員として働き、その経験を見込まれ1905年、24歳のときフォード社に入社。金型の開発や鋳造工程の合理化を進め鋳造工程の改革を実行。T型の大量生産を実現するハイランド・パーク工場や、リバー・ルージュ工場の建設に尽力。ベルトコンベアを使った組み立てラインの考案者でもある。
1930年代に入り、V8エンジン製造に携わり、第2次世界大戦中はフォードの軍需部門の責任者となり、ボーイングの爆撃機の製造に携わる。1944年に退職しているが、1937年には故郷のスエーデン王室からナイトの称号を送られ、ハッピーな人生を送ったとされる。
もう一人のノーヴォル・ホーキンスは、1907年に入社し、フォードの販売と宣伝の基礎を築いた人物。全米のディーラー網の確立に力を注ぎ、生産能力を上回る大量受注を獲得、これがキッカケで大量生産方式が誕生するのである。トヨタの神谷正太郎と似た存在だった。
広報誌≪FORD TIMES≫を発刊してパブリシティ戦略をしたり、鉄道網を活用した効率の高い輸送を実行した。ところが1919年にヘンリーと意見対立が表面化し、退社し2年後の1921年にライバルメーカーのGMに移籍、同じフォード退職組みのウイリアム・ムードセン(全米14の工場を設計と建設を指揮した人物)と共に新型車シボレーを盛り上げ、1927年にT型フォードを引退に追い込むことになるのである。
昔のクルマにはなかったが、いまどきのクルマには付いているという物に、エアコンのフィルターがある。
実はこのフィルターは、1990年前後に、寒冷地仕様車のみの装着だった。春先のホコリっぽい空気を吸い込み、ブロアモーターが壊れるというトラブルがあったからだという。つまり、当初は車内の人間の健康を考えてのものではなかった。人の健康を考えて取り付けられ始めたのは1997年ごろで、そこから徐々に軽自動車にも広がりつつある。ところが、フィルターを付けられる構造にはなっているが、なかには付いていないというクルマもある。ユーザーがそこまで気にしていないケースが多いことをいいことに、自動車メーカー側のコストダウン意識からだと推し量れる。
だから、ぜひ、エアコンのフィルターが付いているかどうかを確認して欲しい。
クルマにより多少の違いはあるが、たいていはグローブボックスの蓋を外すとフィルターが顔を出す。交換に要する時間はわずか3~5分だ。
純正のフィルターはあまり効果がないこともあり、少し値が張るが高規格のフィルターも登場。花粉を除去できるタイプ、活性炭で嫌な臭いを消すフィルターなどだ。でも、いずれにしろ、寿命は1年間といわれているので、グローブボックスのあたりに次の交換時期をメモしておくこと。
2代目のヴォクシー&ノアは、悔しいけど完成度の高いクルマといわざるを得ない。
「乗って、使って、走って! 快適で個性際立つジャストサイズのミニバン」というのがメーカーのキャッチコピー。予測される販売台数から言って、個性際立つ、ということは成立しえないにしろジャストサイズのミニバンだという印象を強くした。
運転席に座り、5分も走らないうちになんだか昔からこのクルマに乗り続けている感じがする。日頃少しくたびれたファンカーゴを愛用しているということもあるかもしれないが(トヨタ車に毒されている、とも言えるかも)、このあたりのモノづくりは凄いといえそうだ。
注目のメカニズムは、新世代のエンジン動弁機構を持つバルブマチック。吸気バルブのリフト量を1~11ミリの範囲で変えることができるため、動力性能と燃費性能を高い次元で両立。同じ排気量のエンジンにくらべ10%の出力向上と6%の燃費アップを実現している。ただし、価格は約10万円高い。ちなみに主力車種は240万円台だ。
感心したのはサードシートの跳ね上げ機構。ごくごく軽い力で跳ね上げることができ、あっという間に広い荷室空間が出現できる。セカンドシートにもいろいろ工夫があり、家族でツーリングにいくと楽しいな、という想像力が働く。そもそもこのクルマはウイークデーに奥様が買い物などに使い、休日に主人がハンドルを握る。そんな使い方が多いから女性ドライバーが楽に扱えることが必須だったのである。
≪軽いチカラで操作できる≫このキーワードが随所に浸透しているクルマ。かつての重々しいミニバンのかげはみごとに消えている。