人に歴史あり、人の顔は百人百様。
エンジンオイル内の金属粉やゴミ、カーボンを除去してくれるオイルフィルター。その中身にも、実は百人百様、歴史が隠されている!?
写真を見てほしい。上から「菊花型」「アフターマーケット用スポーツタイプ」「成形体型」「エレメント交換型」。すべて中身がわかるようにカットしたものだ。
上3つは主流のカートリッジタイプ。一番上の菊花型は、英語ではなぜかローズ・シェイプ(バラのカタチ)と呼ばれるタイプで、昔からある。上から2つ目のスポーツタイプはろ紙にメッシュと強力マグネットを内蔵し高濾過効率を高め、しかも耐久性を高めている。3つ目の成形体型は、量産性が高くトヨタ紡織オリジナルタイプで、日本では一番売れており(ブランド名はデンソー)、耐久性は菊花型と同じ。リサイクル性、つまり分別性が比較的高い。一番下の交換型は、欧州車の主流で、フィルターのみ交換タイプの意味で廃棄物を大幅に削減する。ちなみに、日本では1万500キロごと交換が一般的だ。
東京モーターショーのトヨタ紡織のブースで見つけたものだ。
ひところトラックのナットが走行中ゆるむ、という事故がおき、大型トラックのサービス事業にイエローランプが点灯した。ところが、大型トラックのホイールナットの締め付けは、2人でないとできない。トルクレンチが長くて物理的にガリバーのような大男でない限り不可能なのだ。
トルクレンチのメーカーとして世界的に知られる東日製作所では、こうした悩みを解消する機器をデビューさせた。
TW100Nという名称の≪大型車ホイールナット締め付け用トルクレンチ≫がそれ。
比較的持ち運びしやすいスタンドにレンチをかけ、さらにトルクレンチを付けてトルク管理を行うものだ。トルク範囲は400~1000Nm(ニュートンメーター)で、ひと目盛りが5Nmだ。重量は約2kgである。メカニズムは精度の高いギアを組み込んでいるところがミソ。
ちなみに、手動式のこの装備としては世界初で、価格は15万円だという。働くクルマの整備もこれでより安心度が増すといえる。
来年あたりにクルマを乗り換えようと考えている読者は、いつにも増してたぶん頭を悩ませそうだ。
燃料電池車は少し先になるとして、クリーンディーゼルエンジン乗用車が続々デビューする見込みだからだ。いまやディーゼル乗用車は欧州では乗用車販売の約半分。かつての≪臭い・トロイ(走りがのろい)・うるさい≫の3大悪の代名詞だったディーゼルがハイテク技術(コモンレール噴射、電子制御などの合わせワザ)で別人格ともいえるほどいいクルマになって蘇ったからだ。
あれほどディーゼルの悪口を言った石原都知事は、前言を取り消す時期に来ているのであるが、政治家という存在は悔い改めることは政治生命を失くすことぐらいに考えているらしく、たぶんそれはしないだろう!?
それはともかく、今回のモーターショーではマツダ、ホンダ、三菱、スバルなどがディーゼルエンジンを展示した。トヨタと日産はすでにお披露目しているので、ほぼこれで出揃ったことになる。なかでも、三菱の2.2リッターのディーゼル(写真)は、コンプレッサー側にも可変機構を組み込んだターボチャージャーを備える。つまりツインターボチャージャー同等の下から上までのターボ効果を発揮するということだ。このディーゼル情報、おいおいリポートしていきたい。
ケナフ(Kenaf)という植物をご存知だろうか?
アオイ科の1年草で、生長が早くあっという間に4メ-トル近くとなる植物。このケナフを使ったバイオ繊維がクルマに登場し始めている。植物はCO2を吸収するので、結果としてバイオ繊維を使えばCO2の発生を抑えられ、地球温室効果ガス低減につながる。
ラウムのバイオ製スペアタイヤカバーをつくっているトヨタ紡織もそうした企業のひとつ。東京モーターショーで登場したのは、射出成形によるバイオプラスチック。射出成形によるバイオ樹脂成形は世界初だという。ドアトリム(写真、背景はケナフ)である。ドアトリムはスペアタイヤカバーの耐熱要求温度60℃より50℃高い110℃。夏の車内を想定すればそのくらいの温度に耐える必要がある。そこで、ケナフとポロ乳酸(PLA)でつくるのだが、従来はせいぜいケナフが30%前後にとどまっていたのを、2倍の60%まで増量できたという。
耐熱性の向上のポイントは、ある温度条件下での加工によるPLAの結晶化がキー技術。現在PLAの価格が高いので安いケナフの使用率が高まるほどコストダウンにもつながる。従来のプレス成形に比べ射出成形は歩留まりが高く、その面でもコスト上有利。それでも通常の部品よりも5割り増しとなるようだ。
一方マツダでも、トウモロコシをベースにしてつくった樹脂をショーでお披露目した。シート表皮、シフトゲート、インパネの一部、フロントコンソールなど耐衝撃性の高い部位に使えることを実証。水素ローターリーエンジンとモーターによるハイブリッド車に採用、このクルマを来年中に企業・官公庁向けにリース販売するという。
バイオの樹脂は、今後ふつうのクルマに使われる動きが活発化し始める。
ラチェットハンドルを使ってボルトやナットを締めるとき、空転して共回りすることがたまにある。
そんなときは、ソケットを直接手で回すなどで対処するが、まわりがタイトだといらいらしてしまう・・・。上手く対処できないケースが出てくるからだ。
こうしたトラブルをいっきに解消してくれるのが≪スピンディスク≫(別名:クイックスピナー)
ソケットとラチェットハンドルのあいだにこれを取り付けておけば、もし共回りしてもスピンディスクの外周を指で回せば、いいだけ。あとは通常のようにラチェットハンドルで締めるだけだ。
スパークプラグを取り付ける際にも、エクステンションバーにスピンディスクを取り付け2~3山ほどねじ込めば、不用意なねじ山破損トラブルを完璧に回避できる。意外と使えるこのスピンディスクは、KO-KENやKTCのネプロスブランド(写真右)から発売している。たとえばネプロスだと3/8インチで2210円だ。
筆者が乗るアナログチックなクルマは別にして、いまどきのクルマはほとんどの部品が電子制御化されている。コスト比率で約40%が電子部品か電気パーツなのである。
多数派ではないが、オイルレベルゲージのないクルマがあり、オイル交換するたびにレベルセンサーを初期化しなくてはいけない。VWやアウディ車のなかにはATFの温度を指定して交換しなくてはいけないので、これもスキャンツールと呼ばれる電子テスターを使わないと正確な整備できない。ベンツやマイバッハなどは、制動距離を短縮できるSBC(センソトロニクス・ブレーキ・コントロールシステム)なる装置が付くため、ブレーキパッド交換するごとにスキャンツールが必要となる。
スパナとメガネレンチ、それに勘を頼りにした自動車のサービス(整備事業)は遠くへ過ぎ去ったのである。
そこで、具体的にどんなツールが活躍しているかというと、ボッシュのシステムテスターKTS200。これをクルマのコネクターにつなげば、故障した個所の履歴(故障コード)が発見できる。別売りの国産車と輸入車の大半の整備書を見ることができるDVDを重ね合わせれば修復ができるという仕掛け。トラブルの発見から修復まで、こうした電子機器がないとできないのである。ちなみに、このテスターだけで50万円近いという。
いまどきのエンジンに求められるのはよく知られるように、燃費、軽量化、高レスポンス、排ガス性能の4つだ。
この4つの要求をみごとに実現したメカニズムを、つい最近デビューしたスカイラインクーペの心臓部に採用された。450万円近くもするスカイラインクーペは、艶やかで躍動感のあるスタイリングで中年の心をギュッとつかむところがあるが、今回はエンジンフードの中身の話。
通常のエンジンはアクセルペダルを踏み込むとエンジンのスロットルバルブが開き吸入空気量を増やしそれに見合った量の燃料がインジェクターから噴射する・・・このスロットルバルブのおかげで吸入抵抗(ポンピングロス)が生じ、そのぶん燃費悪化を招いていた。このVVVEL(ブイベル)は、スロットルバルブをほとんど動かすことなく、吸気バルブの開閉で吸入空気量をコントロール。フェイルセイフのためにスロットルバルブを持ってはいるが、たぶん近い将来、このスロットルバルブはなくなる運命だ。
カムシャフトのうえにコントロ-ルシャフトを付け、それを作動するボールスクリュー機構とモーターを備えるため、ヘッドをやや複雑に作り変えなくてはいけない。エンジン自体も約10キロ重くなる。でも、CO2は10%低減でき、出力向上するし、燃費も高まる。
「よそ見をしていて前方不注意で、事故ってしまった」あるいは「カーオーディオをいじっていて気がついたら、前のクルマにお釜をほってしまった!」
重大な人身事故に至らないまでもクルマの事故はあとをたたない。そこで≪絶対に事故を起こさないクルマ≫は人類の夢だ。その夢が現実のものになろうとしている。
スバルが次世代型ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)を開発し、来年発売予定のレガシーに搭載する。
新世代ADAというのは新型高性能ステレオカメラと3D(3次元)の画像処理エンジンを用いることで、プリクラッシュセーフティ・システムを実現。レーダーを使わずにシンプルな機構でまとめ上げたスバルの技術陣に拍手である。
従来から開発されていたフラツキ警報や車線逸脱警報といった予防安全機能を組み合わせることで高度な事故回避支援性能実現に至っている。市街地走行時の事故回避と駐車時のペダル踏み間違いによる事故回避も盛り込まれている。あわせて時速ゼロから時速100キロまでのクルーズコントロール付き。これで装備価格が約20万円だという。
市街地での死亡事故の大多数は、65歳以上のいわゆる交通弱者と呼ばれる人たちだという。こうした安全装置の普及で、悲惨な死亡事故を激減できる日も間近だ。となると、軽自動車やコンパクトカーに装着できる価格、つまりABSやカーナビ並みに価格を10万円台にするのが今後の課題だ。