クルマの整備で欠かせないのは手袋である。通常は軍手を使うのだが、軍手で上手くゆかないケースもある。手狭なところにある部品をつまんだり、あるいは小さな部品を取ろうとするときには、医療の世界でもっぱら活躍している使い捨ての薄手の樹脂グローブがいい。ただ、この樹脂グローブも脱着がしづらいのと夏場には内部に汗がたまり気持ち悪くなるという欠点もあるが・・・。
ここで紹介するのは、NASCARやインディレースなどレースシーンで活躍しているメカニック専用のグローブ。MECHANIX WEARがそれで、ネットで探すとさまざまなタイプがあり、なかには熱いマフラーを握れるほど耐熱性の高いものもある。
このグローブがうれしいのは、値段が高い(1万円もするのも珍しくない!)せいか、5サイズあり、裁断ぐあいが優れているので装着感が抜群に高いことだ。はじめに少しニオイがきついが、もちろん洗濯すればニオイが消える。永く愛用するグローブとしてはお奨め。サイクリング、真冬のグローブ用としても使えるところもいい。
ターボチャージャーはディーゼルエンジンとのコンビで、いまや完全に市民権を得ているが、同じ過給機でもスーパーチャージャーとなるとあまり知られていない。ところが、日本にもスーパーチャージャーを自前で生産している企業がある。伊勢崎市の小倉クラッチがそれで、エアコンのコンプレッサーに付いているクラッチの世界シェア1/3のメーカーでもある。
このスーパーチャージャーはルーツ式と呼ばれるもので、もともとは産業用送風機からスタートし、ルーツ兄弟が1860年に溶鉱炉の送風機として特許を得たところからその名が付いている。1900年にゴットリー・ダイムラーがエンジンの過給システムとして採用したのが初めてともいわれる。繭型2葉式のローターが回転し、エンジンに圧縮空気を送り込み過給するのだが、プーリーの隣に電磁クラッチが付いていて、必要に応じてクランクシャフトからプーリーを介して動かすので、不要なときには駆動せず、そのぶん寿命が長く燃費にもプラスという。
つまりジェントルな運転を心掛ければ従来2速だったところを3速で走れ、エンジン回転数が低くなり燃費向上というシナリオなのである。
小倉クラッチではマリン用に年間2万機近く生産しているが、自動車用としてはこれからだという。
マスコミなどで知られているように、工業製品をつくるうえで欠かせない「素材」が高騰している。中国の急速な経済成長などがその背景にあるようだ。資源を海外に頼っている日本を考えると、不安が頭をよぎる。
自動車の素材といえばまず思い浮かぶのは≪鉄≫である。その鉄はクルマ一台にどのくらい使われているかというと、軽自動車でいえば約530㎏。その原料となる鉄鉱石はその約1.4倍なので741.7㎏ということだ。この数字で驚いてはいけない。アルミはもっとすごい。軽自動車1台にアルミは46.2kg使われている(エンジンやトランスミッションなど)。これを1円玉に換算すると4万6200個。つまり4万6200円分となる!? その原材料であるボーキサイトはその4倍なので184.8kgが必要となる。
銅はどうか? 軽自動車1台に銅の使用量は6.2kgといわれる。10年玉(1枚4.5g)は銅でできているので、約1377個分、つまり1万3770円分。この銅をつくる原料の銅鉱石に換算すると100倍の616㎏となる。ガラスもクルマには使われている。軽自動車でいえば約29㎏。これは牛乳瓶で約120本分なのである。
素材からクルマを眺めてみるのも面白い。
眼前に現れたのは直径7.1メートル、高さ4.5メートルのドーム。そのなかに入ると赤いLS460が鎮座している。よく見るとタイヤの替わりにアキュムレーターという機械が取り付けられ、頭上には8台のプロジェクター(映写機)があり、360度の球面スクリーンには御殿場の市街地が映し出されている。
乗車してクルマをスタートさせると球面スクリーンが動き、あたかもクルマが動いているのとまったく同じ感覚となる。このドームは縦35メートル、横20メートルの範囲で動き、ドーム自体も最大25度傾くことができる。精密なコンピューター制御で、ターンテーブル、傾斜装置、振動装置などが作動し、速度感、加減速感、乗り心地を忠実に模擬。
当初、ゲームセンターの機械に毛が生えた程度と思っていたところ、あまりのリアルさに軽い車酔いがともない、バーチャル世界の完成度に度肝を抜かされた。
実はこの機械とほぼ同じものがアメリカのアイオア州の大学に設置されて居眠り運転状態や酔っ払い運転状態などの運転特性を科学的に分析し、予防安全技術の開発につなげている。実車での走行では危険がともなう実験や特定の条件化で自動車を走行させる実験に威力を発揮する。ただ、酒を飲んでの運転もこのドームに入るとき、酔いが冷めるということもあり、リアルな酔っ払いドライバーをどう養成(?)するかが課題だという。
トヨタは、この実験システムを4年半の歳月を使い完成させ、来年春から本格的に実験に入るという。
ブレーキパイプやクラッチ系に使われているフレアナット。女子がはくフレアスカートの語源と同じで朝顔の形状でネジ径のわりには頭が小さなナット。そのため、通常のスパナで回そうとするとナットのカドを舐めてしまいアウト! 高い圧力が加わるところなので、締め付けトルクが大きくスパナだと確実に舐めてしまうのだ。パイプの途中なので、もちろんメガネレンチは使えない。
そこで、先割れメガネの異名持つ「フレアナットレンチ」の登場である。メガネレンチの一部が切れていて、パイプに楽に通すことでナットを脱着できる。
ブレーキのフレアナットは、ネジ径が8ミリのわりには2面幅が10ミリというのが通常(普通のボルトはネジ径8ミリなら頭の2面幅は12ミリとか13ミリ。これがさっき言ったスパナで舐めてしまいやすい別の理由)。ちなみに、フェラーリなどはかなり特殊で9ミリという2面幅を持っている。
フレアナットレンチには、オーソドックスな棒状のレンチのほかに、クローフット(カラスの足の形状)、ソケットタイプのだいたい3タイプがある。
マスターシリンダー周辺の棒状レンチでは使えないところには、ソケットタイプが威力を発揮する。いずれにしろ、もしブレーキ周辺をDIYする機会があれば、このフレアナットレンチのことを思い出してほしい。
いまどきのクルマのエンジンづくりの現場は、軽量化と低フリクションである。
低フリクションというのは、バルブ回りなどエンジンの動き回るパーツの摺動抵抗をできるだけ軽減することで、エンジンの効率を高め、燃費向上につなげるという狙いなのである。
そのためピストンリングを薄くし、クランクシャフトのメタル(ベアリング)も幅を小さくし、高効率にしている傾向だ。でもただフリクションを低くすれば不具合も起きる。
耐久性、ノイズ、振動などの問題が起きないことを確認するなど、いくつかのパラメーターを見ながら摺動抵抗を小さくしている努力を日々重ねているのである。
新型フィットのエンジンに登場した「パターンピストンコーティング」はピストンのスカート回りにユニークなコーティング(二硫化モリブデン)を施し、フリクションを低減。しかもオイル保持のためのドットを設けている。加えて、ピストンリングと接するシリンダーライナー表面は、プラトー(台形の意味)ホーニングといって、ならし時間の時間を大幅に削減し、摺動抵抗を小さくし、高レスポンスとなる加工を施している。
つまりそのぶん手間隙を費やしているエンジンともいえる。リッター24kmの背後にはこんな苦心があるのだ。
防錆鋼板というクルマのボディの鋼板をご存知だろうか?
通常の鋼板のうえに亜鉛メッキをして防錆力をうんと高くしたものだ。ところが、この防錆鋼板は価格が通常の鋼板より2割ほど高いので、ただでさえ材料高騰のおりできれば使いたくないのが自動車メーカーの本音。冬場に融雪剤をまかない地域なら、8年~10年はまず錆びることがないので、「防錆鋼板」を敬遠したいメーカーも出てくる。
仕向け地(海外)では、日本より錆びやすい環境があり、使い分けをしているメーカーもある。ズバリ、日産とホンダがこのコンセプト。この2メーカーは、日本仕様は防錆鋼板をあまり積極採用していない。逆にトヨタや三菱は地域に関係なくオールコンディション仕様。つまり値段の張る防錆鋼板を分け隔てなく使っている。
日本での融雪剤の塗布する地域は東北と北海道で全体の約3割。この3割をどう考えるかということらしい。サビ対策は8年後~12年後で、あるいは15年近くたたないと明確にその効果が見えない≪性能≫である。6~7年で乗り換えるユーザーには関係のない話しかもしれないが、10年~15年間同じクルマに乗り続けたい人は知っておいて損はない情報といえる。
≪ふだんは燃費を考えたジェントルな運転特性≫でも、急を要するとき、たちどころに≪ロケットの如し驚くべき加速で、あっという間に横にいたクルマを置いてきぼりにしてしまう!≫ かつて銀幕に登場した007のジェームス・ボンドが操るスーパーカー(ボンドカー)にそんな”夢のクルマ”が登場したものだ。
インプレッサWRX STI(写真:365万4000円)はまさにそのボンドカーをホーフツとさせるクルマだった。
「SI-ドライブ(SIは、スバル・インテリジェントの略)」と呼ばれる機構がこの夢の特性を具現化している。センターコンソールにあるパネルのツマミをS(スポーツ)、S♯、I(インテリジェント)にあわせると自由自在にエンジン特性を変化させるのである。Iは文字通り燃費重視のおとなしい走りを希望するとき、Sシャープがロケット走行を希望するときで、Sはその中間、つまりワインディングを楽しむときなどである。
エンジン特性を変えるとは、具体的に何を変化させるのか?
点火時期、ターボチャージャーの過給圧、それにバルブタイミング&リフト量可変機構。この3つをエンジンコンピューター上で変化させる。こうした夢の走りができた裏には、電子スロットルと呼ばれる従来の機械式なアクセル機構ではなく電気的にアクセルを制御するメカが組み込まれたからである。
このコントロール手法は、走りを楽しむクルマにも使えるが、実は超燃費重視のセッティングにもつくりこむことができる。つまり今後のクルマの柱のメカニズムになると思われる。