クルマには30㎏ほどのワイヤーハーネスが使われているのだが、そのなかでいささかカタチの変わったケーブルが採用しているところをご存知だろうか?
フラットケーブルと呼ばれる、文字通り平らなワイヤーハーネスだ。
導体の厚みが0.035~0.25ミリ、まわりにPETフィルム(PETボトルのPET:ポリエチレン・テレフタレート)でコーティングしたもので、総厚み0.125~0.47ミリだという。いわばラミネートされた電線である。
屈曲性が高いので、いまどきのSUVのスライドドアに必ずといっていいほど使われているこのフラットケーブル。そのほかに、ハンドルの根元にも使われていることはあまり知られていない。
ステアリング内にあるエアバックを事故時に瞬時にして膨らませるべく、電気信号を送ったりする役目。そのほか、ホーンやエアコン、カーオーディオなどのスイッチの電気信号を伝達する電線として活躍している。
内部を見るとフラットケーブルが幾重にも巻きつけられ、ハンドルを切っても絡まることなく、有線で電気信号が確実に送れるようになっている。
この部品を開発するエンジニアに言わせると、ハンドルをまわすたびにカサカサという擦過音(さっかおん)が当初発生し、その対策に苦心したとのことだ。
水の入ったバケツを横にぐるぐる振り回すと、水が底のほうに集まり重量に逆らって水がこぼれない・・・ということは子供のころ経験しているはず。
これと同じ理屈でサーキットを速い速度で走行すると燃料が燃料タンクの一部に片寄り燃料ポンプが吸い上げなくなる恐れが出る。そこで、燃料タンク内にもうひとつサブのタンクを付け、ガス欠状態を防ぐという仕掛けがレーシングカーなどには、なかば常識的な構造。
この仕掛けを市販車に付けているのが、レクサスISF。
ガソリンタンク自体は樹脂タンクではなく旧来のサンドイッチ鋼板と呼ばれる金属製なのだが、サブタンク付きというのが斬新である。
このクルマには、強い横Gがかかったときにエンジンオイルがオイルパンに戻りにくくなるのを防ぐ目的でシリンダーヘッドにスカベンジング・ポンプを備えてもいる。
このレクサスISFは、世界のサーキットを走りこんでつくり込んできたクルマだけに、ふつうのクルマにはない仕掛けがあるのである。速度計は300㎞/hまで表示され、エンジンはV型8気筒5.0リッター。ホイールは19インチの鍛造製である。
ちなみに価格は税込みで766万円だそうです。
レーダーで前方のクルマや障害物を認識し、衝突する危険があるとブザーや警告灯でドライバーに警告。さらにブレーキを作動させ、車両速度をダウンさせる・・・といったプリクラッシュセーフティ・システムは、徐々にいろいろなクルマに採用されつつある。
今回デビューしたマツダのアテンザには、プリクラッシュセーフティのほかに、「リアビークル・モニタリング・システム」という安全性能がメーカーオプションで選べる。
時速60キロ以上の高速走行時に、隣接する左右車線のドライバーのブラインドスポットを走行する車両、後方から接近する車両を左右のレーダーが検出。フロントピラーの内側のLEDを点灯させドライバーに知らせる。
この状態で、ドライバーがウインカーを操作した場合、LEDが点灯するとともに警告音を発し、車線変更の中断をうながす仕掛け。これでヒヤリ事故がなくなるというわけである。
ちなみにアテンザは排気量2リッターと2.5リッターがあり、価格は税込みで207万円からだ。
ダミー(DUMMY)は、替え玉という意味もあるため、悪いケースで使うことが多いが、自動車の安全実験での世界では、実際のヒトに替わって大活躍する貴重な存在。
昨年の交通事故の死亡者数は6000人弱と、7年連続の減少だが、負傷者数は9年連続で100万人を超えるなど楽観視できない深刻さ。日本が、未曾有の高齢化社会に突入するなかで、60歳以上の高齢者の事故が増えている。負傷者のうち8割が鞭打ちのダメージを受け、医療費の高騰を底上げしている面もあるという。
より安全・安心できるクルマ作りを支えるのがダミーなのである。
公的機関である筑波の「日本自動車研究所」には、50体ほどのダミーが活躍している。ダミーは大人、子供、女性という性別だけでなく正面衝突用、側面衝突用と種類がある。交通事故時での人の身体にどんなダメージが加わるかを研究するうえで欠かせないダミーは、もともとジェット機のイジェクターからスタートしている。事故時に上にポンと乗員が飛び出すシステムである。
この人の替わりをしてくれるダミーは、すべて欧州製で、一体なんと1200~1300万円もするという。胴はフランス製、お腹はオランダ製、腕はドイツ製というケースもあるという。しかもテスト終了後、すべてを分解し、規定値を外れたものはすべて交換する。ちなみに肋骨1本20万だという。
保管場所も厳しく管理されている。温度20~21℃、湿度が60~65度のお部屋に寝かされているのだという。
ETCを取り付ける、レーダー探知機を付ける、イルミネーションをセットする・・・こんなとき必要になるのが≪どこから電源を取り出すか?≫である。通常はヒューズボックスから、エレクトロタップといったやや野蛮で信頼性のない手法が従来タイプだった。これはワイヤーハーネスの被覆をせん断するため、表面の酸化皮膜で接続不良になったり、使用途中で断線トラブルが起きる可能性があるのだ。
そんなとき、カーショップをのぞくと、便利なものを見つけることができる。
エーモン工業(フリー℡0077-2369-8745:http://www.amon.co.jp)の「ミニ平型ヒューズ電源」だ。写真のようにホンモノのヒューズに管ヒューズ(5A)を介してハーネスが伸び、無改造で電源を取り出せるという便利製品である。ちなみに筆者は、ネットを通して無料で手に入れたETC車載機を取り付ける際に、差し替え側10Aのタイプ(価格は390円前後)を購入、無事電源を確保した。ACC(アクセサリー)のヒューズに変えて、この「ミニ平型ヒューズ電源」を取り付ける、後はアース線を車体ボディにつけ、ETC車載機を説明書どおりインパネ上につけた。作業時間はゆっくりやって40分ほどだった。
なお、このシリーズには平型ヒューズタイプ、低背タイプなどがあり、容量も10Aのほかに7.5A,15A,20A,30Aがある。
よく言われているように、日本のモノづくり世界はすばらしい。
自動車部品メーカーを取材に行くとそのことが痛いほどわかる。
先日うかがったのがワイヤーハーネス(クルマの電線のこと)をつくる滋賀県にある工場。米原からワンマン電車の近江鉄道に揺られ約30分のところにある古河ASという企業である。
ワイヤーハーネスのモノづくりは一部自動化がされて入るものの、文字通り人海戦術である。電線・端子・コネクターを適宜つなげた半製品を専用の台上で、徐々に組み付けてゆく。14名のうら若き女子作業員14名が、持ち場、持ち場で作業をおこない、2分30秒で一台分のワイヤーハーネスが完成。もちろんその直後に、専用の導通テスト台で、やはり2分30秒間で、検査が完了する。
そのときに必要な部品在庫が供給されるカンバン方式が展開されていた。
ちなみに、クルマ一台分のワイヤーハーネスは意外と重く約30㎏。ランドクルーザーなどになると40㎏を超えるという。そこで現在ワイヤーハーネスのアルミ化作戦が展開中だ。現在の銅の導体素材からアルミの導体に換えることで重量を30%前後軽量化できるからだ。アルミの耐食性、剛性不足など課題はあるものの、技術的にはほぼクリアしているとのことだ。ごく近いうちアルミ導線のワイヤーハーネスが登場するはず。
軽自動車のタントは、子育てユーザーの声を集約した「ママキッズ・プロジェクト」でさまざまな用品や仕様を≪発明≫している。子供の目線、あるいは運転するママの使いやすさとは具体的に何かを、マーケティングをフル活用して、とことん追求している。オムツが収まる後席天井のオーバーヘッドコンソールやフローリングフロア、助手席ロングスライド&助手席シートバックテーブルなどがこのプロジェクトで誕生している。
そのなかで誰もが欲しがり、かつDIYで簡単に作れそうなアイテムを見つけた。
カンガルーポケットと呼ばれるもので、助手席シートベルトを利用した収納である。急制動時に助手席に置いていたバッグが前方にど~っと飛び出し、不愉快な経験があるはず。これはそれを防ぐことができる。シートベルトの思わぬ活用法である。
ジーンズ地など少し腰のある布、または不織布を手に入れ(100円ショップで見つけられそうだ)、ホックを付けシートベルトに仮止めするだけ。ホックでなくてもマジックテープでもいけそうだ。ちなみにダイハツのディーラーで手に入れるときは、「カンガルーポケット」(写真)と言えばいい。価格は6950円だ。
新型インスパイアに登場した新開発V6・3.5リッターⅰ-VTECは、レギュラーガソリンで通常なら240PSあたりなのだが、なんと280PSを発生する。
その秘密は、吸気バルブの大径化、リフト量増加、それにエキパイと大径化とサイレンサーの内部構造を見直すなどで排気流量を約35%向上。さらにディーゼルのようにオイルジェットを追加して、ピストンの裏側にオイルを吹き付け冷却させるなどの合わせワザのおかげ。
燃費(9.8㎞/l)と出力特性を高めたもうひとつの主役は、気筒休止システムの高度化だ。
これまでの6気筒燃焼、3気筒燃焼に加え、4気筒での燃焼もできるようになった。つまり高出力のときは6気筒すべてを働かせ、クルーズ時には3気筒を休ませ、3気筒分(1.75リッター)状態。さらにこれまで気筒休止状態にはならなかった比較的高い速度域での緩やかな加速時に4気筒(2.33リッター)状態で走行することで、高速走行時の燃費性能を向上させている。
この技術の裏には、緻密な制御技術もあるが、油路通路であるロッカーシャフト内を4室にするなどミクロの決死圏をホーフツとさせるモノづくり技術が潜んでいる。
ちなみに、このインスパイアは、「若い頃スポーティカーを楽しんでいた団塊世代が、家族のために一時SUVに走ったが、いままた走りの質の高いクルマを求める」そんなユーザー像だという。価格は330万円からだ。