10・15モード燃費でリッター32キロ、より実走行に近いとされるJC08モードでもリッター30キロをマークする燃費チャンピオン「ミラ・イース」。価格が80万円を切る低価格で、いまのところ大うけだそうだ。ハイブリッドカーのプリウスより燃費で負けるが、車両価格を含むトータルでは、充分魅力あふれる商品という認証を受けているのだ。
開発者を取材すると、リッター32キロの裏には、実に涙ぐましい努力の跡がある。
ボディ担当は、サイドメンバー回りの構造を見直したり、強度メンバーをシンプル化したり、とにかくあちこちの無駄な肉を削ったりして約60kgも軽量化。エンジン担当は、圧縮比を上げ、メカニカルロスといわれる摺動面の抵抗を減らし、エンジン負荷を小さくしたCVTの設定・・・とにかく10g単位の軽量化と燃費重視の効率化を追求したクルマだ。燃費向上には、時速7キロからアイドリングストップしてしまう、そんな重箱の隅を楊枝でほじくるようなケチケチ大作戦を展開されたという。低コスト→プライスダウンには、部品の現地調達率を高めたことも大きい。このクルマは、大分で組み立てられているのだが、従来岡山、愛知、広島から調達していた部品を九州の自動車部品工場にシフトすることで、物流費用をスリム化。それが低価格にできた理由のひとつだという。
肝心のクルマとしての出来栄えはどうか?
はっきり言えば、ハンドルを握って面白くもなんともない。ファン・ツー・ドライブでない。あくまでも“日常の足として使うクルマ”なのだ。しかも、アイドルストップからの再始動時の騒音が、やはり依然としてノイジー。従来にくらべ騒音が1/3にはなったが、マツダのⅰ-STOPの後塵を拝している。それに運転席回りのトリム類に少しチープ感が漂う。
にもかかわらず、一点突破の低価格・好燃費が魅力のクルマ。それがミラ・イースといえそうだ。
フジキャビンの考察は、トヨタ博物館の学芸グループ長の杉浦孝彦氏がおこなっている。
それによると・・・フジキャビンは、1955年の日比谷のショーで「メトロ125」という名称で出品、さらに第3回の全日本自動車ショウにも出され、そのあいだに10台の試作車がつくられ、1956年末から57年までに100台弱が作られたという。ところが売れ行きは大不振。販売網の弱さだけでなかった。乗降性の悪さと真夏の暑さが思いやられる狭く閉鎖された室内だったからだ。 当時の広告には「キャビンスクーター 屋根付きだから雨も砂塵も暑さ寒さも避けられる快適な乗り心地。ボディはポリエステル製(FRP)で軽く強く、一人で持ち上げて移動もできる・・・」とあった。
製作した富士自動車というのは、スバルの富士重工とはまったくの別会社。戦前、輸入自動車の木製ボディや洋家具を製作していた日造木工株式会社が、終戦後日産の指定工場になり、1948年に「富士自動車㈱」と改名。在日米軍の車両修理事業(車両再生修理)を請け負い、1950年に始まった朝鮮戦争で特需企業のひとつとして急成長。1953年には高い技術力を持ちながら販売力になかった「東京瓦斯電気工業㈱」を吸収合併し「ガスデン」ブランドを引き継ぐ。だが、特需景気が終了すると徐々に企業力がダウンし、1962年に小松製作所の傘下となった。設計は、一時日産にも席を置いた富谷龍一(とみや・りゅういち:1908~1997年)がおこなったもので、FRPモノコックボディ車は日本初。「屋根付きスクーター」の発想自体は、BMWのイセッタ(1959年)やメッサーシュミットKR200(1955年)にも通じるものだ。
幕張であったIT技術の展示会“CEATEC(シーテック)2011”に足を踏み入れた。
時節柄ITを使った節電技術、省エネのスマートホームなどが目立ったが、クルマ関係だと、数社から出品の「スマート・コックピット」というべき近未来テクノロジーに興味がわいた。
たとえば、パナソニックの「eコックピット・システム」は、リアルな前方画面の下にほぼ同じ前方画像が表示。まず、クルマに乗り込むと、スマートフォンで、IDの認証を受け、今日のスケジュールを読み取り、カーナビにその情報を伝える。そしてエンジン始動。クルマが動き出すと、サブ前面画像に、死角になっている前輪周辺の情報、路地からの歩行者飛び出し危険情報、前面衝突事故防止システムなどで、安全性を確保しながらハイウエイに乗り込み、そこでも車線変更時安全装置などで、よりクルマを安全方向へと導きつつ快適に目的地まで移動できる・・・。しかも、クルマ自体は、エコキュートやエアコンで培った技術を車内の冷暖房に応用したり、電子レンジやIHクッキングヒーターなどの小型高効率電力変換技術や漏電検出技術を応用した省エネをクルマに導入。むろん、電気自動車なので、電動アシスト自転車やパソコンで培った蓄電池技術も駆使している。
エンジニアに聞くと、eコックピット・システムは、すでに技術的には完成し、いつでもクルマに搭載可能だという。鉄腕アトムの時代が、そこまで来ている感じ!?
手工具(ハンドツール)のなかで一番ポピュラーなのはドライバー。普通の人にはドライバーは≪工具≫の代名詞で、ひとつの家庭に4~5本はあるともいわれる。
そんなポピュラーさをとことん追求したと思われるのが、ここで紹介するANEX「ネジピタ目盛りドライバー」だ。目の覚めるような赤色の丸型樹脂グリップに、差し込み式の軸。プラスとマイナスの両方のネジにも対応。プラスネジ部に目を近づけると、正直に驚く! 刃先が3段階のピラミッド形状になっている。プラスビスは、小さいほうから1番、2番、3番とあるが、通常それぞれ専用のドライバーを使うところ、これはその3つにズバリ対応できるのだ。早い話精密ドライバーが見つからないとき、エマージェンシー的に使えちゃうのだ。「パソコンで使われている小さなビスには、不向きなケースがあるので注意ください」とは開発者のひとり羽賀貴広さん。
軸には、5ミリ刻みの目盛りが付いている。木工などの作業中に距離感の目安やガイドとして活躍する。マイナス部は、通常のマイナスではなく、ややフラット形状にすることで、コネクターに差し込み配線の取り外しに活躍。さらに樹脂グリップエンド部には、横一文字の大きな凹みを施し、蝶ネジやヒートンと呼ばれる金具回しに使える。いやはや、1本のドライバーに、てんこ盛りの機能を盛り込んだ製品。ドライバー専門メーカー・兼古製作所(http://www.anextool.co.jp/)ならではの“視線”を感じる一本だ。
日頃チョイ乗りで便利している排気量125ccクラスのスクーター。燃費も良く、維持費も安いこともあり、ホンダだけでも年間数100万台を世界で販売しているという。この単気筒4サイクル125ccの新エンジンがこのほど発表された。来年2012年から順次世界で販売するスクーターに搭載されるという。つまりグローバルエンジンだということだ。
この新型エンジンの注目点は、従来エンジンにくらべ、約25%も燃費が向上したことだ。
その背景には、2輪用のアイドリングストップ機構(電子制御式のACGスターター)が組み込まれていることだけではない。エンジン内部の低フリクション技術を多岐にわたり採用している。ピストンとシリンダーの摺動によるフリクションを低減させるオフセットシリンダー。コンピューターによる支援解析技術CAEによりとことん軽量化されたピストン、オイル消費を低減させるスパイニースリーブ。ロッカーアームシャフトに、シェルプロフィールタイプを使いバルブスプリング荷重を最適化。冷却効率の高いラジエーターの採用。トランスミッション各部の改良で、現行よりもオイル量を25%減らし、オイル攪拌ロスを低減。内部のベアリングを見直すことで転がり抵抗を現行エンジンより約20%(時速50キロ時)も低減。加えて、コンパクトな燃焼室と新設計の吸気ポートなどで燃焼効率を向上させている。
静粛性にもチカラを注いだという。ワイドレシオのVベルト式無段変速機構[Vマチック]には新開発の高弾性ゴムのドライベルトを採用し、耐久性と高効率な駆動力を実現することで、低燃費と静粛性を両立させている。
世界では、この排気量クラスのスクーターは、10インチから16インチまでさまざまなホイールサイズが選択できるが、もちろん、このエンジンは、ベルトハウジングの長さを調整することで、すべてのホイールサイズに対応できるという。日本でもこのエンジン搭載スクーターが来年デビューする予定。価格が気になるが、楽しみだ。
ここ数年「東京モーターショー」は、中国の北京モーターショーや上海モーターショーにおされ気味で、いささか元気をなくしているが、その始まりを眺めると、あの岡本太郎も真っ青になるほどの爆発的な熱気があった。
12月始まる2011年(今年)の東京モーターショーは、42回目を迎えるが、第1回は、「大日本自動車ショウ」という名称だった。1954年6月だからいまから57年前のことだ。場所は、東京の日比谷公園。10日間の開催で、実に54万7000人の人が押し寄せている。2009年の総来場者数が13日間で61万4400名だということを考えれば、戦後最大規模のショーだといわれるのも理解できる。若者のクルマ離れが叫ばれている昨今とは、ずいぶん乖離(かいり)がある!?
しかも、面白いことに出品されたクルマは全部でわずか267台。そのほとんどがトラックやオートバイで、乗用車はわずか17台! その乗用車も比のルノーやいすゞヒルマンミンクスなど、ノックダウン車を含めた数字で、純粋な国産乗用車を出品したのは、プリンス自動車、トヨタ自動車、日産、それにオオタの4社のみ。
翌年1955年の第二回全日本自動車ショウになると、相変わらず商用車が多いなか、トヨタの初代トヨペット・クラウン、トヨペット・マスター、日産のダットサン110型などの乗用車のほかに、フジキャビンやフライングフェザーといった超軽量車も出品され、純国産乗用車が花開く基盤ができていった。
ワンパク時代を振り返ると≪指を詰めた経験≫はざっくり2~3回はあるだろうか?
それがガテン系の職業となると、がぜん頻度が高くなるようだ。運送業の場合ならトラックの荷台に指がはさまれたとか、石材業なら石のあいだに指を詰めた。あるいはドラム缶と地面とのあいだに指が挟まった、水産&魚業なら冷凍マグロと土台のあいだに指を詰めた・・・自動車整備の仕事では、エンジンとクロスメンバーの隙間に指が挟まったというケースがあるという。
先日幕張メッセでおこなわれたDIYショーで、面白い製品を発見した。指詰め防止専用のヘルメット≪指メット≫である。クルマのヘッドライトなどと同じ素材のポリカーボネート製。200kgの圧迫にも40ジュール(J)という20センチの高さから20kgのものが落下したときの衝撃にも耐えるという。中指と人差し指に装着し、万が一挟んだときでもそのまま指が抜ける仕掛け。重量は44gで、価格はインナーサポート付きで1500円だという。発売元は(株)ウィンタス TEL:075-381-0436。
年配のメカニックに聞くと・・・スパナほどあてにならない工具はなかったという。熱処理不足で少し大きな力をかけると口が開いたり、なかには寸法精度が悪く、ヤスリで少し削ってやらないと使えないスパナも珍しくなかったという。
TONEの≪クイックラチェットめがねレンチ≫を手に取ると、そんなエピソードがまるでウソのように思えてくる。それほど完成度が高いのだ。片目片口、いわゆるコンビネーションレンチなのだが、スパナ部とめがね部の両方にラチェット機構を組み込んである。めがね部は72ギアで、振り角度5度ときめ細かい。しかも、肉厚がさほど厚くないので、タイトな場所でも使えそうだ。注目すべきは、スパナ部。ボルトの当たる部位が巧妙な曲線を描いており、ボルトのカド部に工具がヒットしない。もしボルトのカドにトルクがかかるとボルトがなめやすくなるだけでなく、トルク伝達が小さくなる。こうした工夫で、スパナにもかかわらず大きなトルクをかけられる。しかも、スパナ部内部にツメを設けことで、抜き差しすることなく、連続締め付け、あるいは連続緩め作業ができてしまう。なんのコツも不要。言葉で表現するのがもどかしいほど、使うと「な~るほど!」とちょっとした感動を覚える。サイズが8ミリから19ミリまであり、価格は12ミリで2490円。7本組みセット価格が2万680円。前田金属工業(株) http://www.tonetool.co.jp