2012年12 月15日 (土曜日)
TOP NEWS
バスのリサイクル工場を見に行く
『バスのすべて』(グランプリ出版)という単行本を手がけたとき、なぜバスのリサイクル部品が流通していないのかと不思議な思いがした。乗用車にくらべ市場が小さいから? でも、たとえばフロントガラスひとつとっても新品だと乗用車なら10万円だが、観光バスなら、その10倍以上の100万円以上する。乗用車ほど種類も多くないので、うまく在庫すれば充分ペイする。不特定多数を相手にするわけではないの、上手くやればビッグビジネスにつなげられる、とひらめいた。
それから約5年、ひょんなことから、イメージしていたのとほぼ同型のバス専用リサイクル工場に行き当たった。宮城県白石市にある『ヴィ・クルー(Vi-Crew)http://www.vi-crew.co.jp/』がそれ。1万6000㎡の敷地にバスが50台以上。航空機の格納庫を思わせる背の高いヤードでは、中古バスの修復作業が展開。平成6年に6億5000万円を投資して構築した、バス再生&リサイクル工場だ。全国のバス会社から仕入れた中古バスはここで修復され、ふたたびバス会社に販売されるという。バスが長く使われることによる一番のウイークポイントは、やはりボディのようだ。錆が浮いているところ、なかには錆が進行し、穴あき状態のボディもある。バスのボディには、値段の張る防錆鋼板は使われていないからだ。穴あきの場合、腐食個所の2倍に当たる面積をまず切り取り,当て板で周囲をカシメ、腐食個所を抱き合わせで溶接。裏面の補強材をプレスで加工しながら作り上げていく。もちろんパテ処理を施し塗装し、裏面にはアンダーコートで錆び防止。工場内には折り曲げ機や切断機が活躍。乗用車ではまずありえない、うれしくなるような泥臭い作業が展開。
ヤードの奥では中古部品の生産を展開し、バスの中古パーツが豊富に在庫。ネットでバス専用のインターネット・ショッピングモールを構築。
社長の佐藤全(さとう・あきら)さんは、バスの資源の国内循環をさせることで、「走れば走るほど地球を汚す現状から、走れば走るほど地球をキレイにする、そんな理念を創出したい」と希望に胸膨らませる。「バスほど楽しい乗り物はない」子供時代に噛みしめている、その喜びを仕事にしているおとなの言葉とみた。
カーライフ大助かり知恵袋1
現存する最古の国産乗用車アロー号のナゾ 第1回
大正から昭和期にかけて、綺羅星のごとく国産乗用車製造にチャレンジした人たちがいる。
豊川順彌の「オートモ号」、日産の源流となる橋本増治郎の「ダット号」、晩年は日本に帰化したウイリアム・ゴーハムの「ゴルハム号」や「リラー号」、日本初の前輪駆動車「筑波号」をつくった川真田和汪(かわまた・かずお)・・・そうしたなかで、歴史の闇の中に隠れているのが『アロー号』をつくった矢野倖一(やの・こういち:1892~1975年)だ。量産車でこそないが、日本初の乗用車。現在でも、動かそうと思えば動かせるれっきとした乗用車である。1916年(大正5年)に完成した『アロー号』は、現在福岡の博物館に保存されている。
歴史教科者に出てくる『漢の委(わ)の奴(な)の国王印』の金印が収められている同じ博物館で見ることができる。 その実物は、意外と小さいのに驚かされる。1辺が2.3センチ、重さ約10g。江戸時代末期に福岡の志賀島で農夫が農作業をしている最中に偶然に見つけたもの。いくら金製で光り輝いていたとしても、よほど注意深い性格の持ち主にちがいない・・・そんな想像をしてしまった。“偶然”といえば、その金印の展示物からわずか20メートルほどの距離に展示してある『アロー号』もいくつもの偶然が重なり、造られたものだ。偶然は別の側面から見ると≪必然≫ともいえるかもしれないが、凡人には、やはりいくつもの偶然が折り重なり、ひとつのクルマが出来上がった。およそ100年前に一人の気骨ある明治人が設計し、独力で創り上げた日本の最古の乗用車をめぐるナゾに満ちた知られざる物語を追いかける。
カーライフ大助かり知恵袋2
ドアロックができない!?
今年はフォードから始まり、日野自動車、フィアット&アルファロメオ、アウディ、プジョー&シトロエンと5つほどサービスコンテストを取材した。ブランドにより個性がありとても刺激的だ。ふだんユーザーからは見えづらい優秀な整備士さんが腕を競い合う晴れの舞台だ。
意図的に不具合を設けた車両を、持ち時間60分とか90分のあいだに正常に戻すいわゆるトラブル・シューティング技術がハイライト。よくある課題は「エンジンがかかりません。修理してください」というものだが、プジョー&シトロエンだけは、「ドアロックできない!」のでこれを60分以内に解決してください、というやや異色の問題。12人の選手のなかで、解決できたのはわずか3名しかいなかった。つまり8名は解決できずだが、こうした問題はそのプロセスを評価するので、入賞者の中にはその8名のうち1名が含まれ、解決した3名のうち1名は入賞できなかった。
正解は車内(トランクルーム)にスペアキー(スマートキー)が残されていたため、もうひとつのスマートキーを使ってもドアがロックできないという理屈。つまりイマドキのスマートキーを充分理解できているかどうかが問われたのだ。車内には3つのアンテナがあり、コンピューター診断機には、スマートキーのリサーチ機能があるので、これでどこにスペアキーがあるかおおよそ判断つくという。子供が鍵をおもちゃにして車内に置き忘れた、という実際起きそうな問題だともいう。かなりひねった問題ともいえるが、聞いてみれば「な~んだ!」とも思う。イマドキの整備士は、さまざまなことを日々勉強して仕事をしているということが、いまさらながら強く感じた。
愛車メンテのプラスアルファ情報
GISUKE フリーレンチ
長引く不景気で、DIYが日本でのある程度定着したのか、ときどき足を踏み入れるホームセンターは、平日にもかかわらず客は少なくない。そこで工具コーナーに直行すると、なんかしら不思議な工具を見つけることができる。今回の工具もそのひとつ。
高儀(たかぎ)製の「GISUKE フリーレンチ」という万能レンチで購入価格は798円。先端がYの字型になっていて、内側の股の部分にギザギザが付けられ、ボルトの頭をそこでとらえ回すという仕掛け。使い方はレンチの奥までボルトの六角部を押し付けることがポイント。片側が大きなギザギザでもう片側が小さいギザギザ。大きなギザギザでボルトの角を押さえ、細かいギザギザで面を押さえる。チカラを入れすぎると工具が外れるので、徐々に回す。使ってみると、緩めるときはたしかに上手くいくが、締めるとなるとなんだか手応えがないので、ボルトの角を舐めるのではないかと不安に駆られる。フリーレンチと謳うだけあり、2面巾が8~19ミリ、インチだと11/32~3/4インチまでをカバー。重量は133グラム、全長195ミリ。台湾製だ。
使用もごく限られ、あくまでのエマージェンシー用ツールだが、人が使う道具は無限大の広がりを感じる。ちなみに、高儀という企業は、大工道具や電動工具などを幅広く供給する新潟三条市にある企業。慶応2年創業というから、95年以上の歴史を持つ老舗。
2012年12 月 1日 (土曜日)
TOP NEWS
先祖がえりか、それとも21世紀のトレンド? クライスラーのイプシロン
自動車120年の歴史を振り返ると、エンジンは多気筒化の道を長く歩んできた。
軽自動車を考えると、スタートは2気筒360ccだったのが、それが3気筒550ccとなり、いまでは排気量660ccで3気筒エンジン。そのうえのコンパクトカーになると、4気筒1200ccからスタートする。
このほど日本デビューしたクライスラーの「イプシロン」という名のコンパクトカーは、なんと、2気筒で排気量875ccである。エンジンだけ見ると、まるでオートバイの世界だ。いくら静粛性が高い水冷エンジン(水が騒音を吸収するので)とはいえ、自動車として期待される静粛性と動力性を満足するものなのか? 昭和の頃の三輪トラックに近いバタバタというけたたましい音で走る乗り物を、団塊世代のおじさんは悲しいかな、妄想してしまう!?
ところが、実際ハンドルを握ると、意外なほどイケてるのである。電子制御のマニュアルトランスミッションを駆使すると、けっこう活発に走る。もっとも、ローギアでアクセルを踏み込むと、いきおいよく加速する。ややけたたましいノイズをともなうがけっして不快ではない。街中では「これで充分!」な気持ちにさせられる。この秘密のひとつは、ターボチャージャーによる過給だ。それと画期的な電磁油圧式の吸気バルブ開閉システムも一役かっているようだ。インテークバルブを電子制御化することで、ポンピングロスを低減し、燃焼効率をぐんと高めているのだ。このエンジンの名称は、ツインエアエンジン。85PS,145Nmの出力とトルクを発揮。実は、フィアット500と同じエンジン。アメリカブランドのクライスラーは、いまやフィアットの傘下。同じ傘下のアルファロメオともども、技術を互いに融通しあって21世紀の自動車戦争を勝ち抜こうとしている。
ちなみに、この5ドアは、見るからにスタイリッシュで、日本車にはない輝きを見せている。このエクステリアやインテリアのセンスのよさを見ると、やはりイタリアデザインに敬意を払わざるを得ない。実はこのクルマ、1年前に欧州で「ランチャ・イプシロン」の名称で発売され、当初は日本で売る予定はなかったが、担当者の熱意で1年後に日本デビューしたという背景がある。右ハンドルの英国仕様をすぐに持ち込むという単純なものではなく、いろいろな思惑で1年かかったのだという。ポーランドにあるフィアットの工場でつくられている。車両重量は、全長3835ミリ、全幅1675ミリで日本の軽にくらべそれぞれ約440ミリ長く、200ミリ幅広。重量も1トン少しで、約150kg以上重い。
気になる燃費は、JC08モードで、19.3km/l、しかもプレミアムガソリン仕様だ。車両価格は235万円から。
カーライフ大助かり知恵袋1
大正100年 日本人のクルマはじめて物語 第19回
ところで、「日米スター自動車」がフォードやシボレー上陸以前にアメリカ車の「スター」という名の乗用車を輸入し、日本で販売していた事実を発見した。このクルマは、GMの創業者ウイリアム・デュラントが大きく関わった自動車で、当時としては格安車というのが大きな魅力だった。いまで言うと“アフォーダブルカー(入手しやすいクルマ)”である。目をつけたのは、先に話した宇都宮の呉服商のもとに生まれた相羽有(あいば・たもつ)。元・飛行機野郎で、雑誌「スピード」を発行した人物だ。スターの代理店権を得て、横浜にノックダウン工場をつくって、事業を始めたのは大正12年。組み立て主任は、東京の蔵前工高の機械科新卒者・兼松魏(かねまつ・たかし)だった。一時隆盛だったもののスター自動車もフォードとGMの巨大資本の前に手を上げ倒産。兼松氏は、のちに日産に入社し、戦後の自動車の発展に尽力したという。
大正時代はわずか15年と短かった。あとから思えば、激動の昭和につながる大きな節目の15年間だった。でも、大正デモクラシーと呼ばれる民主主義が台頭し、女性の地位が向上し、新しい文芸や絵画、音楽、演劇、映画など芸術・文化の面で大きな広がりを見せ、大衆文化が花開いた時代でもあった。その15年間は日本人がはじめてクルマという近代を代表する高度な乗り物を目にし、あこがれた時代。現在、クルマの利便性が常識化し、むしろ退屈な乗り物という印象を若者に与えているようだ。“若者のクルマ離れ”という言葉がそれを物語っている。でも、クルマなしの庶民の暮らしはむろんクルマなしの社会は、もはやありえない。一方、車社会が持続できるためには、環境性能と経済性を劇的に高めた自動車が求められている。適切な答えは、現在模索中。だが、こうして大正時代のクルマをめぐる物語を考えることで、どこかにヒントがありそうな気がしてきた。
● 参考文献:「20世紀の国産車」(国立科学博物館)、「国産車100年の軌跡」(三栄書房)、「日本自動車史年表」(グランプリ出版)、「日本史年表」(岩波書店)
カーライフ大助かり知恵袋2
マツダのⅰ-ELOOPとは何ぞや?
最近デビューしたマツダのアテンザは、CX-5に続きクリーンディーゼルを搭載する車種を選択できることから、第3のエコカーとして注目される。
ガソリンエンジン車を含めてだが、そのアテンザ全車に標準で搭載している“新兵器”について報告しよう。ⅰ-ELOOP(アイ・イーループ)がそれ。「インテリジェント・エナジー・ループ」。新しい充放電システム「キャパシタ」を使ったもので、アイドリングストップとの相乗効果で、燃費を10%高めることができる新兵器だ。キャパシタはコンデンサーとも呼ばれるもので、バッテリーが電気のやり取りを化学変化でおこなうのに対し、化学変化なしで、すばやく電気を貯めたり出したりできるのが魅力。最大25V/最大電流200Aというスペックの可変電圧式オルタネーター(交流発電機)で従来の12Vではなく、12V~25Vまで自在にコントロールできる、キャパシタの電圧が25Vになるまで供給。つまり、これをクルマが坂を下るときなど減速時におこなうのだ。これまで無駄に捨てていたエネルギーをキャパシタで素早く回収し、キャパシタに溜まった電気をライトやオーディオなどボディ電装として使うのだ。従来オルタネーターがおこなってきたボディ電装の仕事をそっくり回収でき、そのぶん燃費が10%よくなるという理屈だ。
ちなみに、このシステム価格はエンジニアに聞きだせなかったが、システム重量は約8kgだという。量産効果で、今後コンパクトカーあたりにも付くかもしれない。
愛車メンテのプラスアルファ情報
3/8インチのインパクト用ダブルジョイント
手が入りづらいところで、スピーディにボルトやナットを緩めることができたら・・・そんな一昔前なら夢のような工具が登場した。
差し込み角が3/8インチ(9.5ミリ)のインパクト用のダブルジョイントだ。もちろん、ハンド用のダブルジョイントとしても使えるが、インパクトツールと組み合わせれば、スピーディにことが運ぶ。しかも、首振り部が2つあるので、最大60度の角度で相手のボルトに対することができる。早い話、機動力抜群なのだ。
ハンドツールにくらべ、頑丈なつくりのため、重量は120グラムと重いが、ハンドツールとして使えなくはない重さ。全長は75ミリ、最大直径部22ミリ。実は、このインパクト用ダブルジョイントは差し込み角1/2インチ(12.7ミリ)がすでにデビューしていたのだが、その下の3/8インチの登場が待たれていた。価格は、6040円と少し高いが、インパクトツールで作業する向きには、大活躍してくれるアイテムになること請け合いだ。KO-KEN製で品番は13772-Pだ。