多人数乗用車のパイオニア的ともいえるホンダのオデッセイが、このほどフルモデルチャンジされた。1994年にデビューした初代からかぞえて、20年目、5代目だという。
今度のオデッセイは、「3列すべてが広く快適で、上質な室内空間と走行性能をこれまでにない次元で両立した上級ミニバン」を目指したという。プラットフォームとパワートレインを一新し、居住性、走り、燃費性能、デザイン、使い勝手、安全性などすべてにわたり進化させたともいう。
とくに、ホンダ得意の低床レイアウトが効果をあらわし、大開口のスライドドアと地上高が約30センチの2列目ステップ高によるすぐれた乗降性やフレキシブルなシートアレンジは多少魅力ではあるが。今回からヒンジ式のセカンドドアをやめコストの高いスライド式に改めているのも注目ではあるが・・・。
現在日本のクルマ市場は、約半分は軽自動車、残りの半分がコンパクトカー、そんな時代。
そんな時代に平均で350万円の7~8名乗車の上級ミニバンが成功するのだろうか? これがもし、ハイブリッドシステムを積んで、燃費がノーマルの2倍近い、リッター25キロに迫れば話は違うのかもしれないが、排気量2.4リッターの直噴エンジンとCVTの組み合わせで、リッター14km/lでは、あまり魅力を感じない。むろん記者会見で、ホンダの社長は「ハイブリッド仕様も現在鋭意研究中です」というから、遠からず登場するのかもしれないが。
慶応義塾大学経済学部から、日産自動車に就職したのちのミスターKこと、豊(ゆたか)が配属されたのは、販売課だった。販売店に出荷した台数を管理し、販売店とノルマの折衝をおこなうという単なる橋渡しの仕事は、ひどく物足りないものだった。そんな不満がくすぶっていたある日、工場案内の人手が足りないので手伝ってほしいと上司から言われる。日本初の自動車の量産工場を見学したいという希望が多く、担当部署である庶務課では手が回らなかったのである。
豊は、工場内に足を踏み入れると、見学者以上に心が高鳴った。新しい自動車部品ができ、クルマが組み立てられていく工程を見ると自分もその中の一員のような気持ちになり、より多くの人にすばらしい物づくりの現場を理解してもらいたいと強く思うようになった。大学では経済を学んではいるが、もともと理工学部希望だった豊は、自動車を心を込めてつくっている日産という企業の姿勢を正しく伝える、「工場案内」のパンフレットを作ることを使命だと考えた。当時、自動車メーカーにおいて宣伝や広報という仕事はあまり重要視されていなかった。
自動車のボディは外注の架装メーカーに任せていたこともあり、自社のクルマのカタログの作成も、いまから比べるとずいぶんお粗末なものだった。広告代理店も今ほど発達していなかったので、制作担当の片山のもとで、撮影から割付まで手探りの状態でおこなったという。
こうしたなかで誕生したのが、映画≪ダットサンができるまで≫である。横浜市神奈川区宝町にある“エンジン博物館”で今でも見ることができる貴重なドキュメントである。
「ついつい忘れていた!」ということはよくあることだ。
ほかでもない。エアクリーナーエレメントのことだ。大気が冷え始める秋ともなると、充填効率が高まるせいか、夏にくらべるとエンジンが微妙ながらも、活気を帯びる。ところが、11月の半ばに近づいても、エンジンが重々しい感じだ。先日1年ぶりにオイルとオイルフィルターを交換したんだけど・・・。そんなモヤモヤしていた気分で、いつもの上り坂に差し掛かった。明らかに従来にくらべエンジンの吹き上がりが悪くなっている!
そのとき突然ハッと気が付いた。同じエアクリーナーエレメントをかなり長期に使っていたことを。気付いたらさっそく点検だ。通りかかったコンビニの駐車場にクルマを停め、エンジンフードを開け、エアクリーナーケースの位置を確認。手前に2つクリップがあり、これを手で緩め、エアダクトのジョイントのホースバンドを少し緩める・・・エアクリーナーケースの取り外し手順を頭のなかでおさらい。2番のプラスドライバー1本あればすぐエアクリーナーエレメントの具合を目視できる。トヨタのクルマは整備性が高い。そのとき同じエレメントでもマーチのエアコンフィルターの交換に手こずったことを思い出しながら、作業。わずか1分で、エアエレメントが顔を出した。見れば、かなりひどい汚れだ。ユーザー車検のとき確認したのだが・・・。
メンテノートを確認すると、7万キロ近く交換していなかった。5万キロごと(埃の多い道路などを多く走るシビアコンディションだと2万5000キロごと)。さっそく近くのディーラーで、エレメントを購入(純正で約2400円)し、そこの駐車場で、交換。交換後坂道を登る勢いの違いに、あらためてエアクリーナーエレメントの偉大さを認識した。汚れたエレメントでは吸入空気が少なくなり、首を絞めて走っていたようなものだ。紺屋の白袴的失敗でした!
前回に引き続きスイスのPBである。
「 インサイダー3」という愛称を持つラチェットドライバーを入手したのでリポートしたい。
ラチェットドライバーは、どこかで話したかもしれないが、かつてはプロが使うたぐいの工具ではなかった。かなり昔から、“便利だ”という理由で存在はしていたが、リンクというか、つなぎ目が多くなり、どうしても剛性感が失われ、オモチャでしかなかった。オモチャといって変なら家庭用のツールの世界に収まっていた。日本のドライバーメーカーも何度も挑戦してきたが、どうもうまくゆかない。1本1000円前後のドライバーを作りつつけているドライバーメーカーには、プロ仕様の上等品を創る文化がない、あるいは≪高くてもいいモノをつくれば売れる!≫という思い切った発想の転換ができなかったようだ。
その点、PBの『インサイダー3』は、悔しいほどに完成度が高い。値段も購入価格9000円弱と安くはない。グリップの赤い部分を指でうしろにスライドさせると、カチッという音がして、そのままグリップエンド部の一部がパカッと開き、ビットが納まるマガジンが顔を出す。ビット数は10本。プラス3本、マイナス3本、ヘキサゴン4本だ。ヘキサゴンは3,4,5,6ミリだ。ビットと脱着はなんの問題もない。ギア数は24とけっして多くはないが、フィーリングはすこぶるよしだ。先端部にはマグネット機能があるのでビットはぴたっと安定する。シャンクがないので、奥まったところのビスにアプローチできない。そんなときには価格が2000円強とやや高いが、別売りの1/4インチ・ビットホルダーを手に入れればいい。全長60ミリと75ミリがある。http://www.kiichi.co.jp/
スイスという国は、不思議な国だ。永世中立国にして軍隊を持ち、いまでもバチカンへの傭兵までいる一方、GDPは世界19位。金融、観光、精密機械、化学薬品などがおもな産業で、一人あたりの年収は8万ドル以上(約800万円)。全世帯数の約9.5%が、100万ドル(約9000万円)以上の資産を持つ富裕層だというから凄い。
そんなスイスに世界的に名が知れたドライバーメーカーがある。PB(ピービー)だ。創業者のPAUL BAUMANNの頭文字がその社名の由来。1878年農機具づくりからスタートしたPBは、1940年代からドライバーに特化。意欲的な新製品の投入で、世界のドライバーメーカーを牽引する存在だ。
そのPBで、注目したいのは、クロスハンドル型のドライバー。まるで大きなリーフ状のハンドルで、使うと実にチカラが入れやすく手にやさしい。赤色の樹脂製で、滑りづらい表面仕上げが特徴だ。通常ラチェットドライバーというと、おもちゃ感覚が多いが、これはプロ仕様だ。軸の途中に歯数24のラチェットギアが仕込まれており、気持ちのいいフィーリングで締め込んだり緩めたりできる。先端部には、1/4インチのビットが取り付けられる。軸のガタもまったくなく、しかも中立位置(左右の切り替えはラチェットの収まる黒い部分)でも遊びのないところは他を圧倒している。スナップオンなどに比べ重量が3割ほど軽いところもアドバンテージ。ビットの収納部はハンドル部にはないのが玉にキズだが、すぐ愛着を抱き馴染むことができるラチェットドライバーだと評価できる。価格はそれなりに高く、ビットが付かないで8、190円もする。喜一工具 www.kiichi.co.jp/