ハイブリッドカーにクリーンディーゼル車、電気自動車などエコカーといわれるクルマがこれほど目白押しに登場する21世紀の初頭。後世のひとからは『自動車の新世紀』と言われる!?
究極のエコカーともいうべき「燃料電池車」が来年には市販される。トヨタは今年1月からその生産ラインが動き出しているし、ホンダも一般向けの燃料電池車の発売を予定しているといわれる。ただし、日産はダイムラーとフォードなどと研究段階に入ったばかり。
水素と酸素の化学反応を利用して電気を作りモーターを回し駆動する、というのが燃料電池車だ。インフラである水素ステーションもすでに神奈川の海老名、名古屋の神の倉、それに豊田市のエコフルタウンの計3拠点で実証実験がスタートを切り、本格的水素ステーションを増やしていく予定? 疑問符を付けたのは課題が山積しているからだ。
市販燃料電池車で一番その姿を明確にしたのは写真のトヨタFCV。昨年の東京モーターショーでお披露目したものだが、市販車はほぼ同じと見られる。全長4800ミリ、全幅1810ミリ、全高1535とスタイリッシュなセダンだ。水をイメージした、流れるようなエクステリアデザインが近未来を感じさせる。航続距離はJC08で700kmというから実用では500km以上はいけそうだ。水素充填時間は3分前後というから電気自動車のようなイライラはなくなる。
燃料電池車が普及するかの鍵は、車両価格と水素ステーションの数、つまりインフラ。価格がたとえば400万円だとしても、インフラがある程度整わないかぎり普及は見込めない。逆にある程度の数の燃料電池車が売れない限り、インフラも期待できない。このジレンマを解消する秘策はあるのか?
たまたま覗いていた外国の新聞記事からオーストラリアのモービルガス・トライアルのことを知る。1万9000キロを19日間で走破する過酷な自動車レース。ちょうど東南アジア諸国への輸出が始まっていたころで、企業の宣伝効果と、将来モータースポーツで実力を極める足がかりにしようという目的を掲げ、片山は出場を提案してみた。当時日産社内は、1953年から始まった大規模な労働争議で経営者側・労働者側だけでなくそれぞれの派閥が入り乱れて浮き足立っていた。それ以後長く続く、労使の奇妙なもたれあい体質が始まりつつあった。内部抗争にエネルギーをそがれ、徐々に経営が弱体化していく時代だった。
こうした社内の空気のなかで、新たにモータースポーツの世界で打って出ようという彼の提案を受け入れてもらえる余地などどこを捜してもなかった。たとえ実現しても、ラリーに負けでもしたら、その責任を取らされて首になることは必至。しかし片山は心の中で考えていた。社内で縮こまっているよりは、自分を賭ける世界を切り開きたい。そんな思いにせかされていたのかもしれない。
当時、不思議なことだが日産では、海外への出張は組合との協議事項となっていた。
ラリーのレース出場も海外出張の範囲。結論から言えば、組合主導でオーストラリアでのラリーに参加することになった。ドライバーやメカニックの人選も組合の意向を汲んでのもので、片山はいわば蚊帳の外。組合推薦の選手と整備担当者は、海軍兵学校出身、戦車隊の元隊員、剣道の上級者、特攻隊の生き残りなど猛者ぞろいだが、およそモータースポーツが何たるかを理解していなかった男たちだった。しかし日産チームの中では、英語を操れ、外国人とコミュニケーションできるのは片山しかいなかった。
2015年に発売予定のトヨタの燃料電池車は、セダンで大人4人が乗れるタイプだが、実は水素タンク2本を積んでいるため、トランク容量の不足が懸念される。
モーター、燃料電池スタック(水素と酸素の反応するいくつものセルから構成される)、それに水素タンクの3つの大まかな要素で構成される燃料電池車の、これは大きな課題。しかもその圧力が70MPa(メガパスカル)とかなりの高圧。ざっくり言えば1㎡に700kgの荷重がかかる、と考えていい。だから水素タンクは高い精度のアルミ製の内壁に強固なカーボンファイバーでぐるぐる巻きにして、さらにそのうえにエポキシ樹脂で硬化してある。
このタンクを2本備える車両はまるで、LPガス車のようにトランクルームが狭くなる。
もちろん、燃料タンクの価格高騰の背景には、この水素高圧タンクのほかに小型化学反応プラント工場というべき、燃料電池スタック(反応曹)のコスト高がいえる。ガソリンエンジン車はガソリンが持つエネルギーのわずか3割ほどしかタイヤに伝えていないが、燃料電池車は水素のエネルギーも83%を電気エネルギーに変えるといわれる。高効率な新世代の燃料電池車にはインフラだけでなく、いくつもの課題がある。
砲金という合金をご存知だろうか?
調べてみると、銅90%、スズ10%程度の組成の銅合金のことで、靱性(粘り強さ)に富む性質があるところから、昔から大砲の砲身の材料として使われていた。成型が比較的容易で、耐摩耗性や耐腐食性にすぐれている。
この砲金をジョイント部(可動部)に使ったラジオペンチがある。
マルト長谷川の『ハイグレート ザ・ラジオペンチ』がそれ。よく見ると可動部が黄色身を帯びている。リターンスプリングが付いていないのがやや不満だが、グリップはブルーとイエローのツートンカラーで、しかも表面が細かい凹凸があり滑りにくい工夫がある。カタログには水に濡れても滑りにくい、とある。実際水でぬらしてみたがグリップそのものがガクンと落ちるが、すぐ乾きグリップ力が元に戻る感じがした。
ラジオペンチで一番のポイントは、掴んだとき先端部がよじれるかどうかだが、ドイツのクニペックスに近いフィールと見た。ちなみに、カッター部分の切断能力は硬線でφ1.6ミリ、軟線ならφ2ミリだという。
マルト長谷川の商品のブランド名はKEIBAというのだが、KEIBAには砲金サンドイッチ構造のペンチやニッパー類が多くラインナップされている。http://www.keiba-tool.com
小型航空機やヘリコプターの整備をする整備士に会いたい。どんな工具を使い、日々どんなことに気をつけ仕事をしているのか?
ということで、歴史的大雪の翌日、横浜から難儀に難儀を重ね「本田航空」の整備士さんを訪ねた。高崎線の桶川駅からタクシーで30分の荒川沿いの田園地帯だが、その日はいちめん銀世界。秩父地方で孤立した村に救援物資を運ぶ、まさにそのヘリコプターが飛び立つときに居合わせた。
整備エリアは、セスナとビーチクラフトが翼を休める格納庫内にあった。ひとつの格納庫は、小学校の運動場ほどの広さもある。
工具は個人持ち、ドックツールと呼ばれる共用工具、それに特殊工具の3つのカテゴリーだった。個人持ちのツールは、1/4インチのちいさなサイズの工具を中心にハンディな樹脂製工具箱にすべて収まるほど。航空会社の持ち物だ。つまり自動車の整備士のように自分好みのブランドやアイテムを自分の工具箱に入れ、仕事で使うということは原則的にできない。ドックツールは、大きめサイズの工具やヘキサゴンレンチなど。特殊工具はその航空機独自の専用工具。すべて本数と内容が完全に管理され、いつも員数合せといって、所定のところにあるか、過不足はないかを確認されるからだ。うっかり飛行機のなかに置き忘れ事故につながることを防ぐという厳しい安全思想があるからだ。
飛行機はクルマと違い、信号があるわけでなし、車線があるわけではなく、文字通り自由に移動できる(もちろんキマリがあるが)乗り物。ところが、それを整備する整備士の工具箱は、ある意味実に退屈といえなくもない。しかも飛行機自体は、50年ほど前に設計された空冷の水平対向エンジンなど。電子制御などどこにもないし、排気ガス清浄装置もない。これこそが、事実は小説よりも奇なりというのだろうか?
フライングフェザーは、1954年4月、日比谷公園内で開かれた「第1回全日本自動車ショー」で発表されたのだが、のちの東京モーターショーに続くこのイベントの開催に尽力したのも片山豊だった。シンボルマークのギリシャ神話の勇者が大きな車輪を抱えるユニークなロゴは、片山のアイディアを画家の板持龍典(いたもち・りゅうてん)が図案化したものだという。
展示車両267台、うち国産車229台が春の日の日比谷公園を飾った。乗用車がわずか17台で、大半はトラックとオートバイであった第1回の自動車ショー(写真)は、それでも54万人以上の来場者を集め10日間の日程を終えている。
第1回の自動車ショーに展示された乗用車のなかには、富谷龍一がつくったフライングフェザーのほかに「ダットサン・スポーツDC3」が展示されていた。戦後初の国産スポーツカーである。戦前多摩川レースで大活躍したオオタ自動車の経営者兼エンジニアで、日本初の4輪駆動車「くろがね四起(よんき)」(1939年)の車体設計をした太田佑一(おおた・ゆういち:1913~1998年)の作品だった。当時日産の宣伝課長であった片山は、このクルマの開発を推し進めたひとりでもあった。
とにかく、自動車メーカーはこのところ燃費改善の大号令で「部品の軽量化」と「簡素化」が一段と加速中。先日東京ビックサイトで「第4回クルマの軽量化技術展」なる催しに足を運んだ。
ボーイング787の主翼に使われている炭素樹脂繊維をはじめ、さまざまな樹脂をクルマの各部に使うというのがひとつのトレンド。コストがやはり課題のようだ。たとえ軽くていいものでも、値段が2倍も3倍もとなるととても使えないからだ。
そんななかで、マフラーの樹脂化が着々と進んでいる情報を得た。
マフラーは、周辺温度が600℃近くになるので、これまで樹脂は使えない、というのが常識。
ところが、これをブレークスルーできそうだというのだ。あくまでも参考出品だが可能性は高そうだ。キーワードは、断熱技術だそうだ。排気ガスそのものが通るイパイプは従来どおりスチールだが、回りのタイコと呼ばれる部位に樹脂を使うというわけだ。そこでキーテクノロジーとなるのが断熱技術。高温をいかに遮断して、タイコの役目を果たすかだ。展示品はダミーでしかも、単純な構造のものだ。排気ガスが流れる部分を蛇行させたり、パンチングプレートを入れ込んだりして排気音をチューニングするという別の意味での高い技術を駆使していない。
ただ、マフラーメーカーでは、30%の軽量化と吸音効果は従来どおり。しかも射出成型なのでデザインの自由度が高くエアロダイナミック性にすぐれているというのがセールスポイントだ。いずれにしろ近い将来樹脂マフラーが登場するのは間違いなさそうだ。
初歩的知識だが、締結の手段はボルトナットのほかに、接着とリベット、溶接がある。
このなかで、「リベットで留める!」というケースがたまに遭遇する。ナット側に手が入らないときだ。つまりボルトナットは、たとえば2枚の板を留めるとき両側からの作業となるが、ナット側が袋状になっていたりして手が入らないと、リベットの出番となる。
リベット(ブラインドリベット)というのは、リベット本体(フランジ)とシャフトで構成され、リベッターでカシメ、最後に余分なシャフトをカットする。サンデーメカニックが使うのは「ハンドリベッター」だ。ブラインドリベットの素材はアルミ、鉄、ステンレスで、リベットサイズはφ3.2、φ4.0、φ4.8。
ところが、それより大きいφ6.4というのもある。筆者が先日遭遇したのは、まさにこれ。トライアルバイクのシートのブラケットのリベット径がφ6.4ミリだった。余計な情報だが、林道ツーリングでマシンがまくりあがる大転倒をしたとき、見事に破損したのだ。
修復すべき、リベット径は6.4ミリ(インチでは1/4インチ)。ホームセンターなどで見かけるポピュラーは「片手タイプのハンドリベッター」では間に合わない。両手タイプのものでないとチカラが入らずカシメることができないのだ。
そこで、いろいろなところを探し、ようやく探し当てたのが、ストレート。品番12-1260というものだ。台湾製らしいが、これがなかなか使えるのだ。価格が、驚くべきことに2480円とウソみたいな低価格。大きく見えるが全長320グラム、全長1050gである。(http://www.straight.co.jp/)