小学生や中学生、あるいは高校生時代に見学した自動車工場を思い出してもらいたい。
車両が、縦に並ぶベルトコンベアで組み立てられていたはず。100年ほど前のフォードの古い自動車工場の映像を見ても、同じようにクルマが縦に流れながら大量生産されている。
ところが、先日愛知県岡崎市にある三菱自動車の工場を見学したところ、車両が横になって、まるでカニの横歩きのようにベルトコンベアで動いていたのだ。
ライン全体を上から見ると、アルファベットのUの字になっていて、エンジン+トランスミッションそれにフロントサスを組み付ける側とリアのサスペンションや電池などを組み付ける側に分かれる。電池というのは、アウトランダーのPHEV(プラグイン・ハイブリッド)だということだ。
この工場も実は、少し前まで縦型ベルトコンベアが長年稼動していたのだが、約45億円かけて、横歩き型「畳コンベア」に思い切ってフルチェンジしたのだという。そこで、何が変わったかというと、車両間の距離が5.6メートルから3.2メートルに約半減した。ということは、作業員の歩く距離が劇的に短縮し、作業効率が格段に高くなったということ。そのぶんクルマが安く造れるという理屈。
その工場に潜入して、もうひとつ大きなことを見つけた。
車両組み付け工程で当然あるはずの、ライン横の部品置き場がなくなっていたのだ。
替りにAGT(自動軌道輸送システム)と呼ばれる電動式の無人輸送装置で、ジャストタイムで組み付け部品を現場に運び込んでいるのだ。むろん、倉庫から必要部品を選び出し、AGTの車両に乗せるピッキング作業をおこなうのは人間だが。これでも、アジアでものづくりをするのにくらべ、生産コストはとても太刀打ちできない。
年間23万台生産で、うちPHEV車生産年間5万台体制が、これで整ったという。
次世代型先進ものづくり工場として、マザー工場としての位置づけは小さくないということだ。担当者によると、今後海外へも、この手法を広げていくという。
そんななか、打ちひしがれた片山にささやかな光明が見えた。
ロサンゼルスのある中古車店に飛び込みで入ったところ、はじめは取り合ってくれなかった店の親父が、たどたどしい英語ながら熱心に説明する片山の姿に打たれたのか、「金はないが、鍵と一緒にそこにクルマを置いておいてくれ!」といってくれた。売れたらお金を払うよ、ということだ。考えてみればこれはとんでもない賭けだ。しばらくして様子を見にその店に行くと、もぬけの殻ということもありえるからだ。実際、ごくわずかだが、詐欺にあったこともあった。
ダットサンを知ってもらうためには、すがるような気持ちで相手を信じるしかなかった。この片山の土俵際ともいえる熱意を込めたビジネスは、やがて実を結んでいった。片山は、こうしたドブイタ的営業を約1年間やりぬいたという。そんな体験の中で半世紀近くたった現在でも、片山が時々思い出しては反芻するエピソードがある・・・。
店先にはピカピカに磨き上げられた中古車がずらり並んでいて、中年のまじめそうな経営者である夫、奥さん、それに息子が家族一丸となって明るく仕事をしている。そんな感じのいい店に行き当たったときのことだ。敷地の片隅にはトレーラーハウスがあり、家族はそこで寝起きしている様子。豊かさとは距離のある家族だが、アメリカンドリームを夢見るハッピーさが伝わってくる。
人間関係で、長年付き合っていた人物が実は、学生時代の友人の親戚だった、なんてことがたまにあるが、技術にもそれに似たことがある。
自動車のABSが横滑り防止装置(ECS)、あるいはエンジンなどの制御系で縁の下の力持ち的に活躍する加速度センサーや角速度センサー、圧力センサー、流速センサーは、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)センサーと呼ばれる米粒ほどの半導体でできた部品。
ところが、このMEMSがスマートフォンやカーナビなどでも大活躍しているのだ。先日メガサプライヤー(自動車部品メーカー)のボッシュを取材したらわかったのだが・・・スマホの画面の縦位置横位置自動補正装置は加速度センサーであり、地図表示で今どちらに向かっているのかは電子コンパスだし、健康アプリで階段をいくつ上がりどのくらいのカロリーを消費したかは大気圧センサーを使っているし、マイクロフォンのノイズキャンセル機能もこのMEMSがあってのことだというのだ。楽屋裏で大活躍する小部品だ。
ボッシュはこの世界で累計1000件以上の特許を持ち、すべてを内製している。累計40万個以上をスマホやカーナビの企業に販売しているという。ネジやICが“産業の米”とはよく言われるが、MEMSは、“第3の産業の米”なのかもしれない。
「回す・つかむ・曲げる」という3つの作業をひとつでできるウォーターポンププライヤーは、とても重宝。クルマやバイクの整備だけでなく、水道の蛇口付近から水が漏れ、これを直すべく、コマを交換するときなども活躍する。
ところが、つかむ相手がメッキや樹脂、ステンレス、あるいは真鍮などの場合、傷つけるおそれがある。ウエスを介在させて・・・ということにも限界が! そこで、アゴ部分に樹脂を施したタイプが登場。「くちプラ・ウォーターポンププライヤー(WPP-250KP)」がそれ。文字通り、口元がプラスチックです、という商品名だ。くわえ部の形状を工夫することで、横滑りすることなく、確実に締め付け、捉える。なお、樹脂部はビスで留まっていて、もし破損したら交換できるところも良心的。
同じ250ミリのクニペックスのアリゲーターにくらべ、70gほど重い266gだが、ライバルに比べ、ごく平均的な重量だ。3枚合わせの口元なので、相手を正確につかみやすい。しかも、下あご部にストッパーがあるので、上下の柄がくっつくことはない。つまり、指を詰めるというトラブルもない。あご巾の調整は8段階方式で、くわえ能力はパイプならφ6ミリ~φ43ミリ。実勢価格は3000円前後だ。発売元は、新潟三条市にあるスリーピーク技研(http://www.3peaks.co.jp)だ。
トヨタは、セダンタイプの燃料電池車(FCV)を2014年度内に700万円程度の価格で国内販売すると発表した。販売チャンネルはトヨタ店とトヨペット店で、当面は水素ステーションの整備が予定されている地域および周辺地域での販売となるという。北米では2015年の夏あたりからという。
パワートレインの出力や外形寸法などのいっさいは未公開だが、見たところプリウスの外寸とほぼ同じの4ドアセダンで、低いプロポーションでフロントグリルが大きくデザインされた近未来的フォルム。航続距離は水素一回の充填で約700キロ走行でき、水素の満充填に要する時間は3分程度という。燃料電池車は、水の電気分解の逆の原理、つまり水素と酸素の化学反応で電気を起こし、その電気でモーターを駆動しクルマを走らせる。走行中に排出するのは水素と酸素の化学反応で発生した水だけなので、CO2や環境負荷物質をいっさい出さない“究極のエコカー”だ。
トヨタはFCVの研究はかれこれ20年以上取り組んできた。2002年にはSUVタイプのFCVを限定販売し、現在100台以上が走行しているという。こうしたデータの蓄積とハイブリッドカーで培ってきた技術などで原価低減ができ、当初は1000万円以上ともいわれたFCVを700万円程度で販売できるまでにいたったわけだ。
技術的には、FCスタックと呼ばれる部品の小型化によりシート下部に収められ、水素タンクも従来の4本から2本に半減しコストダウンを図っている。FCVのオリジナル部品というのはこの2つの部品に補器類だけで、バッテリー、モーター、コントローラーなどはハイブリッドカーの部品を流用するという。トヨタ式コストダウンが大いに活用されてのことのようだ。
ただ、FCVが多数派になるには、水素ステーションの増加や税法上の優遇処置などまだまだハードルはいくつかあるものの、夢のエコカーが、手が届きそうなところまできたことはたしかだ。
そこで、片山は、ユーザーに不便をかけないためにも、まだ買い手がつかない部品をあらかじめ予備として部品倉庫に在庫するという、今ではごく当たり前の手法を採用した。
部品がらみの笑うに笑えない問題がもうひとつあった。
当時日本へのオーダーはテレタイプといって、穴の開いたテープで情報を送る通信機器を使っていたのだが、情報の漏洩を防ぐために暗号化していた。たとえばAという文字は、「そうです」という意味とかBは「そうではない」という意味という具合。しかもそのテレタイプ通信は商社の丸紅を通しておこなうため、ヘッドライトやテールレンズなど部品に左右(RとL)の区別のある場合、取り違えたり、全く異なる部品を発注したりしたことが珍しくなかった。
商社に頼らない、自前の本格的なダットサンの販売網を作り上げるため、片山はみずから自動車の販売店に飛び込みで入った。
ところが、ダットサンに関心のある人たちはどこを探してもいなかった。アメリカ人は、キャデラックに目を輝かせても、東洋の小さなクルマなんかには誰も振り向かない。とくにGM,フォード、クライスラーのビッグ3の販売店に足を踏み入れても誰一人話を聞いてくれなかった。
樹脂は、製造コストが安く成形性が高いため、いつの間にかクルマのいろいろなところに樹脂が鉄に置き換わってきた。よく知られるところではフロントグリルはいまや樹脂製100%だ。エンジンの部品であるヘッドカバー、インテーク・マニホールド、フロントカバーなどの樹脂部品もすぐ思い浮かぶ。室内でもトリムとか、インパネ、ハンドルなどにも使われる。だが、1台のクルマに前席だけでも2脚あるシートについては樹脂化が遅れていた。やはり安全を確保する部品だけに、剛性が大きな課題だったようだ。
ところが、このほどシートのシートバックに樹脂を採用したタイプが登場した。
欧州車の一部には、すでに樹脂製シートバックが使われているが、写真はスプリングなどを作る「ニッパツ」の提案部品。素材はナイロン系にグラスファイバーを混ぜ強化したタイプのようだ。構造部材のフレームと外観面の共用で部品点数を減らすことができ、トータルで33%も軽量化が実現するという。剛性は金属タイプと同じ。エコカー、電気自動車、マイクロカーなど軽量化をとくに要求されるクルマをターゲットに自動車メーカーに売り込むという。肝心のコストについては聞き忘れたが、おそらく樹脂は量産効果があるので多く作れば安く出来るはずだ。
クルマの修理でイマドキ、ラジエーターのフィンを修正するということはサンデーメカニックレベルではあまりないが、バイクではさほど珍しくないといえる。水冷タイプのバイクが増え、とくにオフロード車の場合、転倒でラジエーターのフィンが潰れる(倒れる)ということはさほど珍しくない。脅かすわけではないが、そのままにしておくと冷却性が悪化してオーバーヒート気味になる可能性も無くはない。見た目にも悪いし・・・。
そんなとき、細身のマイナスドライバーや爪楊枝で倒れたフィンを起こしがちだが、これがあるともっとスムーズに作業が進むという専用プライヤーを見つけた。
「メタペン(ラジエーター修正用)」というタイプで、品番がMP-665。
先端部がL字型に曲がり、しかも3ミリ幅のフラット形状である。いわゆるフラットノーズ・プライヤーである。先端部の肉厚が0.5ミリと薄いので、実に作業性が高い。グリップのフィーリングも悪くない。掴んで修正するという作業がとても楽しくできる。全長が140ミリと小型のところもいい。重量は81グラム。発売元は、㈱マルト長谷川工作所(電話0256-33-3010)だ。