いきなり水を差すつもりはないが、フラッグシップカーというのは、自動車メーカーのいわば見栄を露骨に表現したクルマだけに、あまり営業的に成功したクルマはいない。発売は来年1月22日からだが、このほど10年ぶりにフルチェンジされた5代目レジェンドの月間販売予定数が300台(年間3600台)ということは、フィットの数パーセントの販売数に過ぎない。価格は消費税込みで680万円。フィットのざっくり3倍以上の高級車は、どこが違うのか?
パワートレインは3つのモーターとV6/3.5リッターエンジンを採用したハイブリッドカーなのである。車体の前部に直噴SOHC1カム4バルブエンジンと高性能モーターを内蔵した7速の湿式DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を、車体後部には2つのモーターを内蔵したツイン・モーターユニットを搭載。エンジンと3つのモーターを最適に制御することで、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動の3つの駆動方式と、うしろ2つのモーターのみで走行するEVドライブ、エンジンによる前輪駆動と車体後部の2つのモーターで走行するハイブリッド走行、エンジンのみで走行するエンジンドライブの3つの走行モード。そのなかから、ドライバーの要求する走行上に応じて、最適な駆動方式ともっともエネルギー効率のよい走行モードを自動的に選択するというものだ。減速時には4輪すべてのタイヤでエネルギーを回生し、16.8km/l(従来車は9km/l)というすぐれた燃費性能をたたき出している。
燃費を高める目的で、高張力鋼板をこれまで以上に使い、エンジンフード、トランク、ドアパネル、前後のバンパー・リンフォースメントなどもスチールからアルミに置換。それでも車両重量は1980kgと限りなく2トンに近い。しかも車幅が日本の道路を走るには苦しい1890ミリでこれまた1900ミリに限りなく近い。要求される燃料は、無鉛プレミアムで、タンク容量が57リッターと、無給油で800kmは走れそうもないレベル。ちなみに、エンジンとモーター合わせると、最高出力は382PSで、これはV8エンジン以上の動力性能で、燃費は直列4気筒並みだというふれこみだ。レーダーとカメラの2つによる自動ブレーキシステムもウリ。リアシートに座ってみたが、ヘッドルームは不足気味だが、レッグスペースは有り余るほどだった。
マツダはいまから7年前の2007年3月、技術開発の長期ビジョン「サステイナブルZOOM ZOOM宣言」を発表した。当初は、日産カルロス・ゴーンの企業改革の焼きなおしとして、業界ではさほど注目されなかったが、徐々に“魅力あるクルマ”を次々と世に送り、いまやスカイアクティブが業界で大暴れしつつある。デミオ1500ディーゼル(写真)などは、ひとつの到達点に見える。
サステイナブルというのは、「環境、社会的側面で現在だけでなく将来にわたり引き続き貢献できる」という意味。ZOOM ZOOMは、赤ちゃん言葉の“ブーブー”つまり“動くもの”への人間本来が持つ憧れや喜びを示す。
魅力あるクルマというのは、ただ単によくできたクルマという意味ではなく、時代に即し消費者にとって大枚をはたいて買うに値する、売れるクルマのことだ。見て乗りたくなり、乗って楽しくなり、そしてまた乗りたくなる、そんなクルマ。自動車という工業製品は、一般消費者を相手にするものだけに、多面的な側面を持つ。ある人はエンジン音に惚れたというだろうし、ある人はカタチが魅力的だから購入したという。またカラーリングにグッときたという消費者もいる。こうした購入動機は、言葉にすることで一人歩きするが、やはり本当のところはブランド力が大きな購入動機になっている。ブランド力とは、一体何か? “物語に裏づけされた高い品質”と言える。いろいろな要素で構成されているクルマの品質を決定付けるのは、エンジン、トランスミッション、シャシー、ボディの4大要素だが、ブランド力とはそれにいい意味での情緒が加わるといえそうだ。
今回から破竹の勢いとも言うべきマツダの歴史を18回にわたって探る。調べてみると、個性豊かなひとりの男が浮き彫りとなる・・・。
イマドキのクルマのなかには、やけにヘッドライトがいかしているクルマがある。
新型レジェンドのヘッドライトもそのひとつ。写真でみるように、磨き上げられた光学レンズがまるで宝石の輝きを連想させる、実に豪華に見えるヘッドライトである。
調べてみると、構造がユニークであることが分かった。これまでのLEDヘッドライトは、配光性能を確保するために、奥行きを必要としていたが、この「ジュエルアイLEDヘッドライト」と呼ばれるものは、ロービームを2回の反射により配光特性を高め、短い奥行き構造にしている。ランプを点けていないときにも、リフレクター(反射板)が外光を反射させ、見栄えのいい高級感あふれるもの。また、主光源とは別にブルーLEDを内蔵させることで、夕暮れ時の表情をより美しく演出できたということのようだ。コンパクトカーでは望み得ない世界!?
実はこのヘッドライト見栄えだけではなかった。従来のヘッドライトにくらべると、指向性を7度ずつ変えることで路肩まで鮮明に照らし出すことができ、夜間のドライビングをより確かなものとしているというのだ。
ただ、禍福はあざなえる縄のごとしで、万が一のフロントクラッシュで破損しやすいのはヘッドライト。となると、その価格が気になるが、おそらく目の玉が飛び出るほど高いことになるに違いない。
クルマのなかで、スマホやタブレットを充電したい、ポータブルDVDプレーヤーを楽しみたい、あるいはラップトップ・コンピューターを充電したい・・・そんな要望に、文字通りスマートに応えてくれる製品をコストコで見つけた。「エナジャイザー・カップ・コンバーター」がそれ。購入価格は2398円だった。本体(重量193グラム)は、見るからに“カップ形状”で、クルマのカップホルダーにピタリ収まる大きさ。上部には、4つのUSBポートとAC/100Vのコンセント1つが付いている。シガーライタープラグ付きコードが付属していているので、12Vバッテリー電源の直流を本体内部で交流に切り換える。まとめると、12V・DC→100V・ACに変換する“コンバーター”なのだ。
さっそく、使ってみたところ、まったく静かに粛々と充電してくれた。最大出力360Wなので、ヘアドライヤーとか電気ポットは使えないが、スマートフォンの充電やデジタルビデオカメラの充電などは朝飯前というわけだ。シガーライター部には管ヒューズが備わり大電流が流れた場合本体破損を防いでいる。温度超過による自動電源オフ機能も内蔵するという。本体裏側には、50㎐⇔60㎐の切り替えレバーも備わる。ちなみに、エナジャイザーという企業は、日本では馴染みはないが、ミズーリー州セントルイスに本社のある100年以上の歴史を持つ老舗。世界ではじめて消費者向けの乾電池や懐中電灯を世に送り出している。
秋葉原から神田の街の中を10分間ほど、電気自動車のハンドルを握り運転した。
クルマは来年早々価格366万9000円で、日本で発売されるVWの全長3.54メートルの5ナンバー「e-up!」である。
日本ではこのくらいの大きさがベストじゃない! そんなベストサイズのup!の電気自動車は、東京の下町をグングン走る。しかも静かに活発に。車内は明るいし、気分は悪くない。スタンダードだとドア枠などトリムなしで鉄板剥きだしだが、そのチープ感がなんだかカッコよく感じるから不思議だ。重量230kgのリチウムイオン電池を床に平たく積んでいるがそんなことなどまったく気が付かないほど乗り降りは不便ない。セル数は204個で、最大出力60KW(82PS)、最大トルク210Nmと聞けば、なるほどその走りも理解できる。モーターはなにしろシームレスだから気持ちがいいのだ。カタログを見ると、時速100キロまでの到達時間が12.4秒、最高速度130km/hだという。高速道路でも苦痛ではなさそうだ。
EVで一番気になる1充電での航続距離は、もちろん走り方(ヒーターを使うとダウンする!)にもよるが、JC08モードで185kmというのは、東京から箱根まで途中充電なしに走れるということだ。しかも急速充電では30分あれば80%充電完了できるという。
クルマはなかなかの出来だが、VWの本気度に疑問符が付く。補助金50万円としても、300万円以上は高すぎる。
240Zの爆発的人気で、スポーツカー史上が劇的変貌を遂げた。
英国、イタリアのスポーツカーメーカーは没落し、ドイツのポルシェは240Zを意識して914から924にモデルチェンジしたが、240Zの牙城を崩すことができなかった。
1975年、240Zが戦列に加わったこともあり、アメリカにおける日産(ダットサン)車の販売は、VWやアウディ、ベンツ、ポルシェなど欧州の輸入外国車を抜き去りナンバー1になった。片山は、夢を抱き続けそれをひとつのカタチにするためにチャレンジし続けた。それは大きく実り、その勝利の美酒をようやく心いくまで味わうことができた。やがて、クルマ好きのアメリカ人は、敬意を込めて片山豊のことを≪ミスターK≫と呼ぶようになった。
通常これほどまでに企業に貢献することができた人物なら、当然上層部はそれなりの処遇をするものだ。ところが人間社会の残酷さといってしまえばそれまでだが、帰国した片山が与えられたのは関連会社のポストで、いわゆる閑職でしかなく、その後、片山は日産を去る。
≪北米にZ(ジ-)カーを広めた男≫ミスターKが大きな話題にのぼったのは、皮肉にも日産が、ルノーとの提携で外資を導入し、生産中止だったフェアレディZを復活した日(日本では2002年7月30日)だった。日本の約4倍のメインの市場アメリカでの発表会は、ロサンゼルスでおこなわれた。そのお披露目は、94歳の片山豊が取り仕切ったのだ。アメリカではよく知られたミスターKの久しぶりの晴れの舞台だった。外国人の経営者の粋な計らいでもあった。片山はあらためて評価され、多くの自動車ジャーナリストは、その偉業を再認識することになるのである。
だが時は流れ、片山が全人生を費やしたDATSUNというブランド名は、北米のトラックでその名がかすかに残るぐらいで、実質上は消えてしまった・・・・。
●参考文献
「国産車100年の奇跡」(1978年/モーターファン)、新井敏記「片山豊 黎明」(2002年/角川書店)、黒井尚志「Zをつくった男」(2002年/双葉社)、片山豊・財部誠一「Zカー」(2001年/光文社)、「日産自動車30年史」(1965年/日産自動車)、「日産自動車40年のあゆみ」(1973年/日産自動車)、「21世紀への道」(1983年/日産自動車)、「日産自動車吉原工場50年史」(1994年/日産自動車 富士工場)、桂木洋二「日本における自動車の世紀/トヨタと日産を中心に」(1999年・グランプリ出版)、「戦後産業史の証言」(1977年/毎日新聞社)、高杉良「労働貴族」(1980年/講談社)、高杉良「覇権への疾走」(1984年/講談社)、「私の履歴書・鮎川義介」(1980年/日本経済新聞)、「トヨタ博物館」カタログ(1989年/トヨタ博物館)、「20世紀の国産車」(2000年/国立科学博物館)
●取材協力
清水榮一(日本モータリゼーション研究会)、木村良幸(日産自動車/エンジン博物館学芸員)、日産エンジン博物館
(次回は、マツダの基礎を創った「松田恒次物語」が始まります)
スバルのフラッグシップカーであるレガシーがフルモデルチェンジされた。
1989年に初デビューし、今回で6代目だという。実はレガシーは日本の道路ではあまり見かけない。年間1万2000台ほどしか売れていない。主要市場は北米(アメリカとカナダ)で、日本の10倍以上を売るという、スバルにしては、とりあえず北米に顔を向けておけばOKということらしい。日本仕様は2.5リッター4気筒NAエンジンだけ。エンジン各部を見直し、お得意のリニアトロニックCVTも見直し、静粛性と走りをチューンしたというが、全体的にはあまりやる気が感じさせない。
そのやる気のなさは、フロントグリルのデザインにも現れている。
あの旦那車の代表選手というか、保守的なクラウンですら、自己革新を迫られ、押し出しの強いフロントグリルに変貌を遂げた。大きな声ではいえないが、実はクルマの販売は、女性や子供の意見が大きく左右される。カッコよさの大部分が判定されるのはクルマの顔であるフロントグリルだ。
地味すぎるフロントグリルを眺めると、そのことをスバルの首脳陣はどうも理解していないようだ。エクステリアデザインの担当者に聞いても、そうした考えを申し立てるデザイナーはスバル内にはいなかった口ぶりだ。要するに富士重工のデザイナーのなかには、いい意味での異端児がいないのかもしれない。せっかく水平対向エンジンや衝突安全技術で高い評価を受けているスバルのクルマがいまひとつ訴求しない理由が垣間見えた気がした。価格は313万2000円から。
ネジ穴がつぶれ、ネジが効かなくなった! そんな時はタップを立てねじ山を修正する。あるいはタイムサートで新たにネジ部を作る。
先日ホームセンターを散歩していたら、変なものを見つけた。「ネジ穴補修キット」(16枚入り:価格284円)である。安物買いの銭失い、というコトワザが頭をよぎったが好奇心が勝り、手に入れた。
20ミリ×50ミリのブリキの薄板(肉厚0.3ミリ)に、写真で見るように細かくパンチングして、鋭い凹凸をつけている。このブリキを適当な大きさに切りバカ穴になったネジ穴に装着。このとき、穴に隙間なく覆うように差し込むのがポイント、とある。そして、そこにネジをねじ込もう・・・という、なんとも野戦的なトラブル解決法なのである。母材は木、鉄、プラスチック、セメントなど何でもOKだという。
どう考えても、エマージェンシーというか、応急処置的な対処法だ。
説明書どおりに、まず金バサミで適当(といっても難しいが)に本製品のブリキを切り、穴にあてがうが、帯に短しタスキに長し。隙間なく覆いかぶせるのは、かなり器用なひとでないとできそうもない。相手の母材にも食い込ませないといけないので、ネジの締め付けトルクも考える・・・
とにかくスキルが必要な道具だ。航海中帆を失ったヨットがなんとか岸までたどり着くための道具を探そうとする・・・そんなシチュエーションのボルトトラブル解決策に思えてきて、そんなことなら日頃のメンテナンスをきちんとおこなうことの重要さに目覚める・・・ということは、この用品、メンテの重要性を再認識させるお守りとなる!? 発売元は与板利器工業㈱ 電話0256-35-4311。