チャレンジングなクルマづくりで目が離せないマツダ。その最新モデルCX-3を試乗した。
CX-3は、スカイアクティブ技術とデザインの「魂動(こどう:ソウル・オブ・モーション)」というデザインテーマの流れを汲む、マツダの新世代商品の第5弾。「デミオ同様のホイールベース2570ミリでニューモデルを作るべし!」この一言を唯一のシバリとして経営陣から指示され、現場のエンジニアが2003年から企画から始動し、このほど商品化したクルマである。インタビューした開発陣からは「どこにもない、次世代のスタンダードのクルマを目指しました!」と胸を張るが、ユーザー目線から見ればクロスオーバーSUVのカテゴリー。若いカップル、もしくは小学生あたりの子供がいる若い家族向けというのがユーザーターゲット。
少し驚くのは、エンジンが排気量1500ccのディーゼルターボだけというだけでなく、230万~300万円とかなり強気の価格設定。そのぶん内装などステッチを多用するなど創り込み、クオリティは低かろうはずはなく、好感が持てる。デミオより車重が500kg前後も重いにもかかわらず、中低速トルクが太いエンジン特性で、実に運転が楽しい。エクステリアデザインも、欧州車を思わせるいい雰囲気で、クルマを持つ喜びを味わわせてくれそう。ディーラーの試乗会では、かなり高い人気を得る予感。
ところが美点が多いクルマにも、欠点がないわけではない。リアシートに座ると閉塞感が強いのだ。外観重視のアオリで、ベルトラインが高い。そのため、リアの左右のガラス面積が狭く、なんだか穴蔵にいる感じ。1時間以上の後席に座らされたら、気分が悪くなると見た。リアシートの左右の幅もさほど広くないので、リアの大人3名乗車は苦しい。ただ、リアシートを少し高めることとウレタンを厚くしてあり、乗り心地と前方の見晴らし具合は悪くなかった。もうひとつの盲点は上級モデルには、このクラスとしては掟破りの18インチタイヤ(扁平率50%)を履かせ、バネ下重量が重くなり、せっかくの操縦安定性を阻害している。走りで選ぶなら、16インチ車となる。
松田恒次が義足だったことに気づいていた社員は、ほとんどいなかったようだ。1960年代、マツダの品質管理部にいた私の知恵袋的存在のKさんもその一人。この原稿を書くため広島のKさんに電話したところ、当時東洋工業(現マツダ)の社長だった恒次は、部下2人ほど連れ目立たないように現場を視察に来て、よく現場の声を聞き、部下からも慕われる存在だったとエピソードを話してくれた。ところが、義足だったことを伝えると、電話の向こうで驚きの声を上げた。いまのいままで、まったく気付かなかったという。そのことに筆者は驚いた。義足を覚らせないほど恒次は自分のものとしていたようだ。そのぶん、健常者にくらべ過酷なストレスが身体にかかっていたのではないだろうか。
恒次が、のちのマツダに入社したのは、先にも話したとおり、父の重次郎(写真)がマツダの前身である東洋コルク工業の社長として、託された社業の挽回を図るべく悪戦苦闘していた時期だ。機械部門への進出計画が具現化し、図面書きの仕事からスタートした。
その後、オート3輪車の市場調査と部品調達。3輪車を造るうえで必要な部品、たとえば電気部品はどこで入手できるかとか、タイヤ、電装品は・・・一つずつ調べていった。さらにはオート三輪の基本コンセプトも創り上げた。いまから思えば、市場調査から、モノづくりのコンダクターまでいろいろな世界に首を突っ込みながら、仕事に邁進した。足で調べたところ、ある程度スピードが出せないとライバルに勝てないことがわかった。当時3輪車は前輪2輪、後輪1輪のスタイルが主流だったが、これでは安定してスピードが出せないことがわかり、前輪1輪、後輪2輪タイプにした。こうした企業の屋台骨を左右するモノづくりの全般を、義足の恒次が担っていたのだ。
「必要は発明の母である!」とは言い古されたコトバだが、いまなお自動車の世界でも、その言葉は十二分に生きている。エンジニアにインタビューするなかで、そうした発見が21世紀でも起きていると思うと、楽しくなる。
トップニュースに出てきたマツダのCX-3のエンジンには、従来エンジンにはなかった部品が一個追加されている。「ナテュラル・サウンド・ヒューザー」(写真の左)という聞き慣れないパーツがピストンピンの中空部分に納められているのだ。
ディーゼルエンジンには、走り出しから低速走行に移るとき、カラカラともガラガラともいわれる嫌な異音(ノック音)が出る。ディーゼル業界のひとはいわば「当たり前」としてあきらめていたのだが、これをマツダのエンジン実験班の提案で本腰を入れて追及し、解決に導いたのである。
解析すると、そのガラガラ音の正体はピストンが上下するときのコンロッドの伸びだった。伸びといってもわずか数ミクロン(1000分の1ミリ・オーダー!)これが3600Hz(ヘルツ)であることを突き止め、ノイズを元から断つ部品としてピストンピンの中空部分にダンベル状の小部品を圧入したのだ。正確にいうと中心部が内壁に固定され、両端部が上下動することで、ノック音を消すというものだ。ガラガラ音の大きなトラックに取り付けたくなる部品である。
ネジにまつわるトラブルのなかで、よくある頭部のつぶれ。こうなるとそう簡単には回せない。
タガネを使い、新しく溝をつくる、あるいはプライヤーのたぐいで無理やり回す・・・そんなとき、このドライバーがあればスマートの問題を解決してくれる。兵庫県三木市のある藤原産業㈱(電話0794-86-8200)が扱う「パーフェクトドライバー」。横浜・みなとみらいにあるホームセンターにて753円で手に入れたものだ。
いっけん何の変哲のないドライバーに見えなくはないが、先端部の片側がまるでマイナスドライバーのごとく薄くなっていて、タガネのようにつぶれたねじ山にハンマーで打ち込める仕掛け。あるいはその前に、強く押し付ければ、グイッと食い込み、回すことができるかもしれない! グリップが黒色でほぼ丸断面に近い。軸は「クロームバナジウム鋼をハードメッキしてあり、高い強度を誇る」とある。いじっているうちに、急に10数年前に一度使ったことがあることが、頭のなかでひらめいた。「そうだ! トーコマというメーカーのドライバーだ!」
調べてみると、やはりグリップにもTOKOMAの文字があった。実は、トーコマは、兵庫県小野市に本社を置き、大正13年創業のドライバーの老舗。ベッセルやANEX(兼古製作所)などと並び称せられる日本のドライバーメーカーだったが、平成26年に倒産している。これは推理だが、その在庫を藤原産業が扱っているということか!? でも、グリップエンド部(ポリカーボネイト製)にSK11 PERFECT-FIT というロゴが見える。となると、ただの在庫品ではない!?
夢のまた夢と思われてきた水素自動車(FCV)が、昨年発売するや、誰の目にも「CO2フリーの水素社会」のアウトラインがボンヤリながらも見えてきた!?
ただ、大きな課題は水素をクルマに充填する水素ステーションだ。いまのところ指折り数えるほどしか存在しないが、今年度中に東京、大阪、名古屋、福岡などに100個所つくるという。中心的企業は、現在JX日鉱日石エネルギーと岩谷産業の2社だが、通商産業省などがバックアップ。商用水素ステーションの第1号として注目を集める神奈川県海老名市にある「Dr.Drive海老名中央店・水素ステーション」を取材した。水素ステーションだけでなく、従来のガソリンスタンド一体型のSS。すでに、トヨタのFCVミライがスタンドというか充填設備(ディスペンサーという)に横付け、水素を充填していた。満タンまでわずか3分間ほど。水素の値段はいくらぐらいなのか? キロ当たり1000円だということは昨年末に決定している。
素人からみると、「ただ、水素ガスをFCVのタンクに入れるだけ」と単純に考えるところ。ところが、バックヤードというか、充填口のディスペンサーから20メートルほど離れたところにある建屋に足を踏み入れたところ、その疑問の一部が氷解。ひとことで言えば1億円近い凄い設備が並んでいたのだ。まず案内された建屋には、細長い鉄製容器の水素ボンベ30本をたばねた集合容器が2つ縦に並び、その奥には、ガス漏洩検知器、火炎検知器などの安全を担保する装置や計器類が並ぶ。その建屋の左側には、「水素圧縮機」があり、コンプレッサーで約4倍の82MPaに昇圧。昇圧された水素を一時的に貯蔵しておくカーボンファイバー製の複合タンクが12本並ぶ「蓄圧器」。そこからパイプで地下を通り、ディスペンサーへと導かれる。ディスペンサー内で、90MPaまで高められ、水素自動車のカーボンファイバーの複合容器に充填される、という流れだ。実は、付帯設備はこれだけではすまない。熱くなった水素ガスを冷却するための設備もある。通常のガソリンスタンドの建設費が1億円。その5倍の5億円近くかかる秘密はこうした背景だった。
本人が語るところによると、英語や国語といった語の付く学科は不得意であったが、数学と実習の時間は大好きだったという。当時高校野球の前身の中等学校野球がはじまったころ(第1回大会は1915年)で、野球熱が高まり恒次も野球に夢中になり取り組んでいる。
ガリ勉タイプではなく、どちらかといえばスポーツ青年だった恒次に悲劇が降りかかった。卒業後、京都の宇治にある火薬製造所に就職したのだが、1年と続かなかった。まだ子供心が残る恒次には、不案内な京都での一人暮らしはつらかったようだ。ちょうど父親の重次郎の仕事が順調で、ポンプ製造(写真)とロシアからの信管(爆薬の起爆装置のこと)400万個の注文が舞い込み、新工場を設立するなど上り調子。この家業を手伝うことを機に陸軍の火薬製造所をやめたのだ。
これから間もなく不幸が襲った。不運にも結核性関節炎に罹り、左足切断の憂き目にあった。この病は肺結核が多かった時代ではよく見られた病気で、脊椎カリエスとともに治りにくい病だった。
1年3ヶ月におよぶ長い入院生活のなかでの片足喪失。23歳の青年には、これは人生最大の災いともいえたが、この不運を乗り越えることで類まれな精神力を身につけたようだ。人生のなかで一度ならずともやってくる不運にいかに立ち向かうかで、その人の値打ちがきまる。そのときの恒次にそんな心の余裕はない。義足を付け歩行こそできはしたが、片足を失くしたというコンプレックスは長く恒次のこころを苦しめた。だが、その病院で知り合った看護婦の女性と結ばれたことは、恒次の苦痛をやわらげたと推理する。それに父親の重次郎が大きな仕事に立ち向かう姿勢を見るにつけ、そうした個人的な劣等感を打ち壊し、明るい未来を切り開こうという気持ちがふつふつと湧いてきた。
ホンダはフィットやべゼルなどに採用のハイブリッド+ツインクラッチをめぐるコンピューター制御設定の不具合で大きく足踏みをして、新車投入スケジュールの大幅見直しをせざるを得ない事態に陥ったのはよく知られるところ。1970年代なら「チャレンジングなメカニズムゆえ」とエクスキューズで済ませられたが、平成27年では食品偽装ほどでもないが、企業への風当たりは弱くない。
こうしたなか、ホンダは、地味に見えはするが、見逃せない技術を市場投入してきた。6名乗車の新型乗用車「ジェイド」である。1.5リッター直噴ガソリンエンジンにハイブリッドシステムとツインクラッチを組み合わせたフィットなどの流れを汲む新世代のパワートレイン。JC08モード燃費が25.0km/l。このクルマの凄い点は、これまでフロアに位置するのが常識だったリチウムイオン電池、冷却ダクト、制御コンピューターなどが収まるIPU(制御ユニット)をセンターコンソール内に配置している点だ。これにより室内空間が広くとれたということのようだ。ただし、通常のセンターコンソールボックスの空間はゼロだが。エンジニアに聞くと「苦労したのは側面衝突時の安全性だった」という。そのためにIPUのハウジングにはリブを設け、万が一の側面クラッシュ時にも耐える構造としている。ちなみにジェイドは272万円からだ。
手のひらサイズのガングリップタイプの小型ラチェットハンドル「ペッカーラチェット」である。
2ヶ月ほど前、ANEX製の同じタイプを取り上げたが、こちらのほうが少し値段が高いが、よりすぐれているようなので紹介したい。不思議なことにこちらもギア数は10しかない。ANEXのときにも不満を漏らしたが、通常のラチェットハンドルが80だ90だというときに、これでははじめから通常のラチェットハンドルの土俵の上に乗らない製品だとみた。
そうした目で見ると、悪くないかもしれないと思いはじめる。
対辺が6.35ミリ(1/4インチ)のビットを差し込んだときのガタも少なく、硬質プラスチック製という本体のグリップフィーリングも悪くないのだ。ラチェットを乗り越える力も軽く、音も軽やか。赤とグレーの色使いも悪くはないし・・・。もう一個のビットが納まるハンドル部の格納の様子もまんざらではない。「許容トルク30%UP」と謳っているのだが、モノづくりメーカーがときどき犯す癖で、何を基準に3割アップしたのかが不明。従来自社製品なのか、ライバル商品なのか? 重量を測ると105グラムあった。寸法は100×60×30ミリ。
なお、ビットの内容は、プラスの1番とマイナスの4.5ミリ、プラス2番とマイナスの6.0ミリの組み合わせ。もちろん、手持ちの6.35ミリのビットを使うことができる。購入価格は、1490円だった。サンフラッグ印の㈱新亀製作所製だ。電話06-6971-6131。