先日、日野自動車の整備士コンテストを取材したさい、同業の業界新聞社の記者から「実は、いすゞも同じ過ちを数年前やっているよ」と涼しい顔で教えられた。
調べてみると、2011年、東京都の調査で、いすゞの4トンディーゼルトラック「フォワード」が、排ガス対策を無効にする「ディフィート・デバイス(無効化機能)」でソフトウエアを改ざんし、NOⅹの排出量を規定値より最大で3倍出していることが判明。いすゞはこれをほぼ認めて、リコールに応じ、制御プログラムの変更と冷却システムの交換をおこなっている。実は、ソフトウエアのディフィート・デバイスについては、アメリカで1990年、ヨーロッパでも2011年に禁止となっている。日本はこの面で遅れをとっていたのだが、いすゞの不正行為のおかげで、一昨年の2013年に3.5トン以上のディーゼルトラックとバスにこの禁止事項が明文化されているだけ。つまり、乗用車のディーゼルについてはいまのところ無法地帯なのである。
それにしても、手口こそ小規模だが、4年前日本でもVWと同じやり口で反社会的な規制逃れをおこなっていたとはショックだ。今回のVWの組織ぐるみとしか思えない、ディーゼル車不正問題は、グローバルで1100万台という膨大な数もさることながら、長年にわたりユーザーを騙してきたこと、それもNOⅹ排出量最大20倍~30倍という“天にツバを吐く数値”。1年以上にわたり不正を認めてこなかったという点においても、救いようのない背信行為だといえる。クルマという生業で食べてきたものとして、恥ずかしい気持ちを抱くと同時に、激しく憤りを覚える。もうひとつすっきりしないのは、ディーゼルエンジン車の技術的コアを提供しているメガサプライヤー・ボッシュが、この件にどのくらい噛んでいたのかもいまのところ不明。
そもそもVWフォルクスワーゲンは、「国民のクルマ」という意味を考えると、これ以上の皮肉はない。人間は誤りをする動物だとはいえ、これをあずかる経営者や不正に手を染めた技術者が、この程度の人間だということに世界はなかばあきれ果てる。ジャパニーズカーのメーカーも、わが身を振り返る奇貨とする!?