トヨタの燃料電池車MIRAIの登場が、いまから2年前の2014年12月だから、それから1年3カ月近くたった2016年3月10日に、ホンダの「CLARITY FUEL SELL(クラリティ・フーエルセル)」が発売された。
いわゆる“後出しジャンケン”ということもあり、5人乗りで、ミライより定員がひとり多いだけでなく、だんぜんホンダのFCVのほうが性能的にすぐれたところが多い印象だ。一充填走行キロ数が750km、一回あたりの水素充填時間は3分程度。しかも、水素タンクと駆動用のリチウムイオン電池以外の部品(モーターや燃料電池スタックと呼ばれる反応モジュール)はすべてエンジンルーム内に納められているのだ。これはモーター部を90度傾け、その上にコンパクト設計した燃料電池スタックとFC昇圧コンバーターを載せたレイアウトゆえだという。その背景には、スタックのセルの厚みを20%薄くし、しかも1.5倍の高出力化することで、従来より33%も小型化できたからだという。全体で、V6エンジンほどの大きさだという。
このことは、従来の製造ラインを活用してFCVをつくれるという意味で、ホンダの本気度が見て取れる。しかも、同じプラットフォームをプラグイン・ハイブリッドにも流用するというのだ。イマドキのモノづくりはどれだけ互換性を持たせ(流用できるという意味)少しでもコストを下げることが至上命令なのだ。
リアエアカーテン・ダクトやリアタイヤ・カバーを備えることで、空力特性を高め、スタイル上の大きなポイントとするなど、ひと目でそれと分かるココロ憎いエクステリアデザインも悪くない。価格は766万円で、当初は自治体や企業を中心にリース販売だが、1年ちょっとで個人ユーザーにも販売するという。なお、写真横にあるのは外部給電機(価格が118万円)。これと組み合わせることで「走る電源」としてこのクルマが活用でき、一般家庭の7日分の電力を供給できるという。もちろんアウトドアでも活躍できる。
ちなみに、ホンダではFCVの本格普及は、2025年を予測しているようだ。
ホイールベースを決めてから、全体のレイアウトをまとめていくのは無理だった。それは最初スケッチ画を描いてみてよくわかっていた。百瀬の哲学は、「機械という存在が、人間にサービスするものだ。人間をさしおいて機械がのさばるのは技術屋じゃない」つまり、「人間ありきの技術」をいつも念頭においていた。いまの言葉でいえばMMI(マン・マシン・インターフェイス)である。
そこで、まずドライバーに必要なスペースを割り出してみた。ゆったりと座れ、ひどいオフセットをしなくてもいいシート、ステアリング、ペダルの位置を求めた。とりわけ着目したのはペダルの位置だ。「フロントタイヤのホイールハウスは半円弧状になる。その中心のくびれた部分、つまり車軸となる部分を車内から見ると、少しスペースがとれる。そのスペースにアクセルペダルを置けば、ドライバーの右足をまっすぐ伸びてアクセル操作ができるはず。普通の自動車のペダルがフロントタイヤの後方にある。そのペダルを少し前方にずらせば、車軸の当たる部分にできるスペースを無駄なく利用できる」。この着眼がすべてを決定した。
「フロントタイヤの車軸あたりにペダルを置き、大人4人を乗せるスペースをとったポンチ絵を描くと、リアのスペースが残った。通常のセダンであればトランクルームとなるところだが、そのスペースはまるでエンジンを置いてくれといっているようだった」リアエンジン・リアドライブにすればいいのだ。その絵はそのことを訴えていた。
だが、リアエンジン・リアドライブは、強い横風を受けたときに操縦安定性が悪いという側面があり、百瀬はそのことを充分認識していた。だが、限られた寸法のなかで、人間のスペース重視を優先してデザインするとどうしてもRRになる。FFだろうが、RRだろうが、どんな方式にも長所と短所があるものだ。だから、長所を活かし、短所をできるだけ技術で押さえ込めばいいのではないか、百瀬はそう考えた。
「インド製のクルマが日本の道路を走る!」と聞くと、なんだか不安になる読者もいるかもしれない。でも、スズキブランドと聞けば安心する!?
苦戦しているようだが、日産はタイ製のマーチを逆輸入しているし、かつてはアフリカ製のBMWが日本に上陸していたこともあった・・・鈴木修会長に言わせると「クルマは一番売れるところでつくり、余力があれば、外国に輸出するのが合理的な考え。インドは1983年に進出し、ようやくインドでのクルマづくりのレベルも上がり、インドの最新鋭の工場でこのクルマを造っているので、アジアまたはインドで造ろうがどこで作ろうが、確かなものは確か」という。「すでに欧州に出していても問題なく、日本はアジア生産車に対して変に考え過ぎなんじゃないですか」とも。
「バレーノ」というのがそのクルマだが、1リッターと1.2リッターのコンパクトカー。1.2リッターの方は4気筒の従来型エンジンだが、面白いのは1リッターのほうで、3気筒直噴ターボ。なんと6速ATとの組み合わせで、キビキビした走りが楽しめるという。ただし、燃費はJC08モードで20.0km/lと、CVTと組み合わせた1.2リッターのCVT24.6km/lの後塵を拝している。価格も20万円ほど高い161万円台。
インドでは、昨年10月に発売し、わずか5ヶ月で4万台を販売、バックオーダーをかかえる人気ぶりだという。ところが、日本での販売目標台数は年間5000台といやに弱気。スズキ経営陣の思惑は、軽自動車を含まない、いわゆる登録車で年10万台販売を目指しているのである。だからこのところ立て続けに、ソリオ、イグニスと登録車を送り出しているのである。なお、バレーノは、スイフトの「弟分」という位置づけなのだが、全幅が1745ミリで、1.7メートルを越えるため、3ナンバーなのである。スイフトは5ナンバーなので、弟のほうが幅を利かせているのである。
アルミ合金製の本体にギアレス機構を組み込み、ビットがプラス1番、3番、プラス2番とマイナス6ミリ、それにヘキサゴンレンチ3,4,5,6ミリの計7本がセットになった「ラチェミニZERO(ゼロ)」は、大阪に本社を持つ新亀製作所(ブランド名は“サンフラッグ”)の製品である。ZEROというのは送り角度がゼロという意味で、もちろん本締めができる本格派。手持ちのビットが使えるので、奥まったところのボルトの脱着にも充分使えそうだ。ただ、ビットの差し換えは油が付着した手では苦労しそうだ。左右の切り換えは黒色の樹脂部分を動かすことでおこなうので、両手での操作となる。
ギアレスの感覚ははじめ、なんだか心もとない感覚に襲われるひともいるかもしれないが、使い慣れると悪くない。逆に狭いところでも、細かく触れて具合がいいことが多い。
面白いのは、それ以外にプラス・アルファーの汎用性がある。というのは、本体のビッド取り付けとは逆面に1/4インチ(6.35ミリ)の差し込み角部があるのだ。1/4インチ(6.35ミリ)のエクステンションバーをつけ、その先にソケットを付ければラチェットハンドルとして機能することになる。
本体は重量感(本体98グラム)があり、Oリングを装着して、グリップ感を高めている。軸のガタツキも極力小さくしているようだ。ビットを取り付けたときの全長は64ミリなので、手のひらで隠すように持ち、狭いところでも、手首を動かすことでクルクルと、まるでスタビドライバー感覚で使える。なお、ビットホルダーは、作業ズボンのベルトに付けられるタイプで、表面に太い文字で、サイズ表示がなされている。メーカーの愚直さが表れているようで好感が持てる。
http://www.sunflag.co.jp/
「ひとには、深く付きあわないと心底理解できたとはいえない・・・クルマは使ってみないとその表情は読み取れない!」。そこで一番気になるPHEV(プラグイン・ハイブリッド)車のハンドルを握ることにした。いまや、三菱の顔になりつつある「アウトランダーPHEV」である。定員5名ながら車両重量が1.8トンオーバーのSUVだ。2.0リッター4気筒SOHC16バルブをフロントのエンジンルームに載せ、前後に60kWのモーターを付け、床下にはリチウムイオンバッテリーを搭載したハイブリッドカーである。近場を走るときはほとんど電気自動車として走り、休日の遠出では電気ときどきガソリンをエネルギーにして、どこまでも走れるという触れ込みの新時代のクルマだ。シフトモードはプリウスとほぼ同じであまり違和感はない。ツインモーター駆動による大きな初動トルクを発揮、滑らかな加速と発進性を味わえる。下り坂では、回生ブレーキが働き、バッテリーに電気を蓄えられるなど電気エネルギーが運転席から見える。回生レベルとハンドル近くのパドルスイッチで選択できるので、エコランをする楽しみもある。
今回横浜を起点に三重県の伊勢志摩、青梅、幕張メッセなど各往復など、比較的ロングドライブをおこない、ゆく先々で充電しまくった。驚くべきことに、ちょっと気のきいたホテルや旅館、ショッピングモールでは必ず「普通充電器」が備えられ、4時間でほぼ満充電できるし、コードも比較的細くて抵抗ない。でも、高速道路にある急速充電器は、充電時間こそ30分と短いが8割ほどしか電気を蓄えられない。しかも、大蛇を思わす太くて黒いコードを動かすのは非力な女性では厳しい。雨の日はとくに大変。しかも、静岡のとあるパーキングエリアでは充電器が故障で使えなかったことも。電気が空欠でも不自由なく走れるが、燃費を気にすると電気とガソリン2つのエネルギーをたえず考え、やや頭が重くなった。気になる燃費は、1300キロほど走り13.7km/lだった。車両価格は350万円~450万円台。
庶民に受け入れられる軽自動車はどうあるべきなのか? そのディメンジョン(寸法)、性能はどうあるべきなのか? 百瀬は考え続けた。技術者は大きな具体的な課題をみずからに課せ、モノづくりをおこなう。4人乗りのセダンを軽自動車の枠、つまり全長が3メートル、幅1.3メートル、高さ2メートル、360ccのエンジン。百瀬は当時としては、次のような高いハードルをかかげた。
・軽自動車の枠内で大人4人が乗れること
・悪路でも時速60キロで快適に走る(加速性能はバス以上、登板能力はバス並み:当時のバスは国産セダンが登れない山坂道を走ることができたとされる)
・車両重量は350kg
・値段は庶民に手が届く35万円
こうしたコンセプトを知ってまわりは驚き、次に絶望的な気分になったようだ。テストドライバーの福島時雄氏もその一人だった。昭和7年生まれの福島は地元伊勢崎工業高校機械科を卒業し、バスの動力艤装、サスペンションまわりやエンジンまわりを担当してもいた男だ。P-1開発では台車の時点からハンドルを握ったドライバーだ。「こんなクルマはできるんですか?」とストレートに聞いたところ、「この程度のクルマはできる。航空機の技術を使えばできる」と百瀬は言下に言い切ったという。百瀬の口癖のひとつにこんなのがある。「出来ねぇ、ということはやる気がないからだ」。困難な挑戦課題を目の前にしたとき、百瀬は表情ひとつ変えずに、涼しい顔で必ずこう言った。「ひとつ、やってみようじゃないか」
ときどき取材にうかがった先で、驚くべき個人的な発見をさせてもらい、心が開かれることがある。ながねん「含浸技術」に取り組んできた東京青梅市にある「㈱プラセラム」(プラスチックとセラミックの合成語だという)という30名たらずの企業を取材したときもそうだ。
含浸という技術は、細かい隙間のあるものに液体を内部まで染み込ませ、より性能の高い製品に作り変える技術として、古くからある。でも、意外にも自動車のエンジン部品、それもシリンダーヘッドとかシリンダーブロックの主要構成部品に施されていることは、気づきもしなかった。
「昭和30年代中ごろまでの日本のエンジンは、不良品が多く出たものなんです。それが含浸技術の導入で、瞬く間にオシャカ(不良品)の数が減り、それがより効率的なモノづくりにつながり、コストダウンに大きく貢献したのです」ということは日本の高度成長経済は含浸技術があったからこそ!?プラセラムの桑宗彦社長(78歳)は、そこまで断言しなかったが、聞いているほうは含浸技術の想像以上の偉大さに驚かされたのである。
そもそも、シリンダーヘッドやシリンダーブロックなどの鋳造品は、鍛造品と異なり、目では確認できないが、顕微鏡で観察すると、数ミクロンの巣が無数に生じている。桑さんによると、鋳物という漢字は、金偏に巣を当てた文字もあるという。
施工プロセスは意外と単純だ。直径1メートル、深さ2メートルの圧力容器に、たとえばシリンダーブロックなら10個近く入れ、内部をまず真空状態にし、そこにアクリル系の溶剤を入れ、0.5MPaほどの加圧で、隙間に染み込ませる。あとは円錐分離機で表面に付着した液を弾き飛ばし、次にお湯のなかで内部に染み込んだ液を硬化させる。対象物にもよるが10~60分ほどで完了。実は含浸技術は、なにも自動車だけでなく新幹線のモーターのベアリングに施すことで、100万キロ以上の耐久性を得ているともいう。恐るべし、含浸である。http://www.placeram.com
アメリカスタイルの巨大スーパーマーケットのCOSTCO(英語読みはなぜかコスコ!)を散歩すると、ときたま国籍不明の“バカ安工具関連GOODS“とでも名付けたくなる製品にめぐり合い、つい財布の紐がゆるむ。
TOOLMASTER(「工具はお任せ」というほどの意味)という名前の部品収納箱である。英語とフランス語の表記なのでたぶん出処はカナダと推理する。
横42センチ、縦29センチ、奥行き5センチほどのハンドル付きの樹脂製パーツケースである。透明のフタは取っ手の両端にあるクリップを上に持ち上げると上に開く。内部はパーテンションで区切られている。取っ手の両端を入れると全部で12個のコンパートメント。中央にやや大き目の空間があるが、樹脂製仕切りを取り外せば、そのぶんコンパートメントの数は少なくなるが、長物も収納できる。
この製品、部品収納箱としては比較的大きめなのと、手にやさしい形状のハンドルが付いていて、フタが透明で一目でわかるのはとてもいい。出張用でも使えるし、倉庫内での部品ストックケースとしても活躍できる。何もいれなくともやや重く(2kg以内だが)、多少の衝撃にも壊れそうもなく、安心感もある。
でも、開け閉めが、ワンタッチとはいかない点が、いささか不満。物理的には一ヶ所で開け閉めできる構造にするのは難しいが、たとえば、半分がひとつのクリックで開け閉めできるというのは無理だろうか? いずれにしろ、こうした使う側に自由度がありすぎる道具(この場合は箱だが)は、おのれの“頭の整理度”が試される気がする。急いでいるときは、モノが挟まりフタが閉まらないとか・・そんな不快な経験が蘇る製品だといえなくもない。ちなみに価格は、2個で、2398円と、かなりのバカ安だけに、逆にバカにされている気もしないでもない!?