いずれにしろ車両重量の目標350kgを実現するには、相当の革新技術を注入しないと成功しないことが、開発者グループのあいだで徐々にわかってきた。たんに航空機の技術であるモノコックボディ構造を採用しただけでは、その目標値には届かないということだ。
試作車P-1には当時標準の0.8ミリ厚の鋼板をボディの素材として使ってきた。これだと軽く500kgを超えてしまう。頭を悩ませていたボディ設計担当者のもとに、資材部のスタッフが0.6ミリ厚の鋼板を見つけだした。これなら劇的に軽量化ができるはず。ところが、手に持っただけで、薄すぎて使い物にならないことが分かった。
そのときボディ設計者は、百瀬が描いたスケッチ画を思い出した。「ボディを卵の殻のようにすれば、薄い鋼板でも充分な剛性が得られるボディをつくれるのではないか?」さっそくP-1のトランクリッドを活用し、試作してみたところ、この卵の殻形状デザインで解決が付くことがわかった。薄板は溶接も難しく成型にも神経をつかった。いくどとなくトライ&エラーを積み重ね、実現に漕ぎ着けた。そこで、まず1/5のクレイモデルをつくり、さらに原寸大のクレイモデル、さらには石膏で型をとった石膏モデルをつくり量産への足固めをすすめた。
いっぽう天井は強化繊維プラスチックのFRPを採用し、リアウインドウにはアクリル樹脂を用いることで軽量化に努めた。こうして、目標の350kgには10kgおよばないながらも360kgの試作車を作り上げることができたのだ。