この8月、都内で2日間にわたり開かれたNCAPフォーラムは、欧州、アメリカ、日本、アセアンのスピーカーを軸に、自動車メーカーの技術者だけでなく部品メーカーや保険会社の関係者を集め、熱い勉強会となった。NCAPとはいうまでもなく“ニュー・カー・アセスメント・プログラム(新車評価プログラム)”のことで、第3者機関がニューモデルの安全を評価し、ユーザーに安全に関する有益な情報を提供する役目。
3回目を迎えたフォーラムの注目は、やはり近い将来公道に乗り出すことになる「自動運転車」についてだ。完全自律タイプのクルマが早晩量産される。そのXデーはいつなのか? その安全性の担保についての情報が知りたい。NCAPは地域や国ごとに取りまとめているだけに、「完全自動運転車」の安全評価はどういう枠組みとなるのか? 現在、世界の自動車メーカーだけでなく、ボッシュやコンチネンタル社といったメガ・サプライヤー、異業種であるGOOGLEそれに新興自動車メーカー・テスラモーターなどが鎬(しのぎ)をけずっている。次世代自動車ビジネスを左右するものだけに、確たる答えを求めて耳をそばだてた。
碁の世界でコンピューターが勝利を収めたことが象徴するように、人工知能(AI:アーティフィシャル・インテリジェンス)の進化は著しい。AIが高度化され、その上の知能を持ったシステムをロボットみずから考え出すのが、約30年後の2045年だといわれる。つまり、人間はロボットに支配される日が来るということ!?
2016年8月の時点で、日産は、2020年までに「フル自動走行車両」を開発すると明言している。ホンダも「2030年の早い段階までに自律走行車両を世に送り出す」と表明。そしてよく知られるように、「グーグルの自動運転車両はすでに100万マイルの走行実験を終えている」。このグーグルカーは、ハンドルもペダルも持たない完全な自動運転車両だ。
自動車の≪自動運転化プロセス≫は4段階で考えられている。段階的に無人化カーが進化し、世の中に登場するということだ。この夏ステージ2のクルマがデビューするとして、話題になっている。ハンドルから手を離すと警告されるシステムが組み込まれている。自動車みずからが自律し、ドライバーなしに走行することができない。完全自動運転車との間にはまだ距離がある。(次回に続く)
すっかり都市化してしまった大阪市福島区福島地区。JR大阪環状線、阪神本線、JR地下(鉄)東西線などの鉄道網が張りめぐらされ、阪神高速神戸線と阪神高速池田線の2本に挟まれたエリアには高層ビルが建ち並ぶ・・・地上から見る景色は、いまにもビルの陰から大きな円弧を描いて鉄腕アトムが飛来してきそうな未来都市の世界である。この福島地区に、かつて卸業者が中心となった50~60軒ほどの自動車部品街が広がっていたことを知る人は少ない。
町の喧騒(けんそう)に耳を澄ませてみると・・・現在とはひと味異なった、どこか牧歌的ともいえる過去の賑わいが聞こえてきそうだ。表通りを外れ、少し横道に入って目を凝らしてみると、どっこいその当時の名残を色濃く残す街角を発見することも出来なくはない。
タイムスリップする気分で、思い切って時計の針を戻してみよう。
昭和2年(1927年)の大阪。大阪市営バスなど、路線バスが、日本の地方都市でも走りはじめた頃だった。
この年の1月、アメリカのゼネラルモータースが日本に進出し、大阪の大正区鶴町に「日本ゼネラルモータース」を設立。資本金800万円で組立工場を建設、4月からシボレーのノックダウン生産を始めている。
当時の「シボレー」といっても、現代人にはどんなクルマなのか、カイモク見当がつかない。愛知県のトヨタ博物館に足を運ぶと、当時のシボレー(写真)に会える。全長4220ミリ、全幅1760ミリ、全高1750ミリ、重量1400kgとかなりの巨漢である。エンジンは直列6気筒OHVの3179ccで、60HP/3000rpmである。
路線バスが、日本の地方都市でも走りはじめた頃だった。
メガ・サプライヤーのコンチネンタル社を取材したら、面白いことがわかってきた。
交通事故VISION(ヴィジョン)ゼロをスローガンに掲げている。その目標で必須となるのが「車車間通信と路車間通信」だという。いささか舌を噛みそうな言葉だ。
自動運転を目指すクルマに付くレーダーとカメラは、ドライバーが見える範囲を見張っているに過ぎない。これだと交差点での右折(欧米だと左折)での事故が起きてしまう。自分のクルマと近くのクルマの通信だけでなく、近くの路面設備との通信が必要となる。そこで、半径500メートルの範囲で自分のクルマとほかのクルマ、自分のクルマと周辺の路上設備をリアルタイムで通信させ、安全運転の支援をおこなわせる。
これにより右左折支援だけでなく、急ブレーキ支援、前方衝突警報、故障車の存在を知らせる、緊急車警報などが把握でき、自動運転をよりたしかなものにできるというのだ。
そのためには、より精度の高いGPSなどによる位置情報が必要となるが、コンチネンタル社では、技術的にはほぼ完成しているという。また近い将来、歩行者が持つスマートフォンを発信機として近くのクルマに存在を知らせるなど、2重3重の事故防止策もとられると見られる。でもこうなると人もモノも何もかも通信でつながることになり、人が孤独を楽しむことができなくなるばかりか、ひとつ間違えるとジョージ・オーエルの未来小説「1984年」が描く監視社会におちいる!?
「長時間の作業にも疲れにくく、軽くて耐久性にすぐれたニッパーが欲しい。そんなお客様の声をもとに企画・開発したのです」と新潟のスリーピークス技研の担当者は説明してくれた。
品番はLN-125S。持ってみると、たしかに軽い。バランスも悪くない。エラストマー樹脂のグリップが手にやさしいし、樹脂製のリターンスプリングが、いかにも軽さを表現している。軽いだけでなくライトな感覚でニッパーを使える。これなら女性でもらくらく使えるし、長く愛着を持って手元においておきたくなる。
面白いのは、この製品は時代遅れのJISの規格からは外れる。より使いやすい製品を目指して企画したもので、切断能力や耐久性はJIS同等だという。ならば、時代にあったJIS規格を構築すればいい、と素人の筆者は思うのだが・・・。
重量は、従来品の14~27%も軽くなった。幅があるのは、サイズ(呼び寸法)が125,150,175と3タイプあるためだ。ちなみに、125Sは、重量が実測で81グラム、切断能力は、ピアノ線や平形のVVF2芯ケーブルはカットできないが、鉄線ならφ1.5ミリ、銅線ならφ2.6ミリまでOKだ。http://www.3peaks.co.jp
トレッドの裏側に張り付けられた小指の先ほどのセンサーで、タイヤの空気圧を読み取り、ドライバーに知らせる「タイヤ空気圧モニタリング・システム」。日本では装着規制がないため、あまり知られていないが、すでに欧州市場ではポピュラー。このほど、そのシステムに付加価値として、“タイヤの残り溝”まで読み取ることができる仕掛けが完成した。
ドイツ生まれの自動車メガサプライヤーのコンチネンタル社が開発したもの。2019年以降からこのシステムを搭載した市販車がデビューするという。従来のタイヤ溝測定は、デプス(DEPTH:深さ)・ゲージというゲージを使うか、タイヤ溝にあるスリップサインが残り溝の目安としてきた。スリップサインが顔を出すと残り溝1.6ミリとなり、これ以上擦り減ると法令違反で車検には通らない。思えばこうしたやり方は昭和の匂いがする旧式だ。
コンチネンタルの“タイヤ溝検知システム”は、まさにスマートな次世代型。ただし、その原理を理解するのは、“昭和の頭”に凝り固まる筆者にとってはチト難解。「タイヤの内側に張り付けた指先大のセンサーが接地荷重を10数秒間ごとに測定。そのデータが新車時のデータとどのくらいの開きが出るかで、タイヤの残り溝を推定する」というもの。測定誤差は±1ミリという。タイヤの新品時のタイヤ溝が約8ミリ、タイヤメーカーの推奨残り溝が3ミリとして、走り方にもよるが5000キロで1ミリ減るとすると、2万5000~3万キロで交換というのが平均的とされる。
窒素ガスを充填すれば3ヶ月ほどは目立った空気圧の変化はない。今後ますますタイヤのメンテナンスフリーかが進むだけでなく、「通信でクルマのタイヤ情報をタイヤショップが把握し、セールスに結び付ける」(同)つまりタイヤにまつわるニュービジネスが生まれるという。結果、命を載せているタイヤへのユーザーの無関心が広がるかも!?
スバル360は昭和33年5月、発売された。正確には3月は東京地区で大阪地区は2ヵ月後の7月だった。価格は工場渡しで42万5000円。トップクラスの国家公務員の年俸に相当した。
なんとしても40万円以下の価格にしようと粘った百瀬だが、実現できなかった。ダットサン211が65万円、トヨペット・コロナが64万8000円であった。スバル360はこれらとくらべ安かったが、車両重量や馬力あたりの価格に直すと割高といえた。それもあってか当初はあまり売れ行きが芳しくなかった。ところが、じわりじわりと人気が高まり、発売2年間で5394台、1970年5月までの累計が39万台を超え、モデルチェンジなしに累計50万台をこえている。途中ダンパーをフリクション式からオイルダンパーに換えるなど小さな変更や改良こそあったが、いかに百瀬たちの設計が完成度の高いものだったかがうかがえる。それよりも百瀬たちのココロザシが世の中に受け入れられたことが何よりだった。
その後百瀬たちは、この360の成功を背景に多目的トラックのスバル・サンバー、水平対向エンジンにFF(フロントエンジン・フロントドライブ)、4輪独立懸架など先進技術を組み込んだ画期的乗用車を世に送り出し、スバルの基礎固めを果たした。こうしてスバル・スピリッツをつくり上げた百瀬晋六は、平成9年77歳で永遠の眠りについた。
★次回からは、大阪に花開いた、知られざる『なにわの自動車部品物語』をお送りします。日本のモータリゼーションを始まりのころから解き明かします。
かつては隅のほうに位置していた『福祉車両』と呼ばれる車両も、少子高齢化というか、シニア世代の比率が高くなったことから、その需要が無視できなくなったとみえ、カタログの一角に堂々と掲載される時代となった。
ところが、従来の福祉車両はたとえば車椅子を積み込むために、ノーマルの車両をベースに切ったり貼ったりのかなりの大掛かりな変更をする必要があった。別工程のラインを設けて作り込んでいた。メーカーとしては社会的使命があるものの、けっして儲かるビジネスとはいえなかったようだ。
新型フリードは、ここに抜本的に切り込んだ記念すべきクルマといえるかもしれない。
新型フリードには、6人~7人の多人数乗車のフリードと、かつてのフリードスパイクを受け継ぐフリード・プラスの2タイプ。5名乗車のフリード・プラスをベースに車椅子仕様の福祉車両を設定しているのだが、「開発当初から、福祉車両を視野に入れた全体のクルマづくりを目指しました」(担当者)というだけに、たとえば車椅子仕様は写真にあるように、福祉車両仕様専用のブラケットやトリム類をボルトオンで車体に固定するという、実に合理的なクルマづくり。具体的な金額こそ公表していないが、着実にコストダウンしている。
車椅子仕様車の価格はガソリンエンジン仕様で244万円。ちなみに、ノーマルの売れ筋、7人乗り2WDホンダセンシング付きハイブリッド仕様で、251万円台。
「あんな危ないドライバーを紹介するのはどうかと思うね? しかもメジャーな工具と比較するなんて・・・」
そんな良識派の声が聞こえてきそうだが、面白いから、近所の(といってもクルマで30分ほど)のホームセンターで見つけたユニークなドライバーをあえて検証してみたい。
商品名は『伸縮式差替えドライバー』とある。輸入販売元は、大阪府堺市にある「コーナン商事」である。軸に小さなドット(へこみ)を設けてあり、グリップ内部でこのドットをくわえ込み、ホールドする機構。グリップ根元のリリースリングを手前に引いて、軸を好みの長さにすることができる。軸自体の先端部はプラス2番と、逆側にマイナスの6ミリがあり、使い分けができる。グリップは硬い樹脂の上に比較的ソフトフィールの赤い樹脂がかぶせてあり、親指があたる部分はえぐり形状で、グリップフィールは悪くない。
実は、これドイツの「WIHA(ビーハ)のソフトフィニッシュ・テレスコピック」(写真後方)を大いに参考にしたと思われる。
ところがノギスで身体検査してみると、細かいところで大いに異なる。たとえば軸の6角部の二面幅が、本家本元は6ミリだが、こちらは、6.4ミリと太い。ドットの間隔は本家本元が3.5ミリのところ、5.6ミリとかなり広い。一番気になる軸のガタは、本家本元とさほど変わりがなく、いずれも“やや多し“の感覚。もうひとつのポイントは、伸縮のしやすさだが、ドイツの方はプッシュボタンがやや小ぶりで軍手だと難しい。しかも軸の動きが渋いのに対し、台湾は至極スムーズに出し入れできる。最少長さ・最大長さを比較すると、台湾が180-270ミリ、ドイツが160-230ミリ。より短くして使いたい場合はドイツが一枚上手だ。
価格はどうか?台湾が578円に対し、ドイツは、その6倍の3520円。先端部の精度はむろんドイツが二重丸になるだろうが、これってどうみる? だから、工具は面白い!