軽自動車が約半数のシェアとなったいま、ジャパニーズカーはどこにいくのか? かつて勢いがあったハイソカーも消え、重厚長大のクロカンもブームが去って久しく、SUVという名を変えたクルマは一部の富裕層の好みで、一般庶民はKカーかコンパクトカーに絞り込まれつつある。
そんななか、一台の1リッターコンパクトカーが登場した。
ダイハツの「トール」と「トールカスタム」である。実はこのクルマ、トヨタでは「ルーミー」もしくは「タンク」という名で、スバルでは懐かしい車名の「ジャスティ」で販売された。車名こそみな異なるが、みな同じクルマである。5つの名前を持つクルマとしてたぶん歴史に名が残る!?
このクルマ、調べてみると、ダイハツが企画から開発、製造(ダイハツの池田工場)を担っていて、トヨタとスバルにOEM(相手先ブランド)として供給する商品。販売予定台数は、ダイハツの1000台(月)に対し、トヨタサイドは9000台近くを予定している。初めから儲かる仕組みだ。
これだけ聞くと、「ひとを馬鹿にするにもほどがある。メーカー側の論理ではなく、もっと消費者側に立った個性的な製品作りをしてほしい!」といいたくもなる。そんな腹にイチモツ持った状態で、近くのトヨタの販売店にクルマを見にいった。写真は、トヨペット店があつかう「タンク」である。
ところが、このクルマ、走りこそ不明だが触れてみると、悪くない感じなのである。
全長と全幅は、シエンタなどにくらべると小さいが、1735ミリの全高が効いていて、車内はカタログが謳うどおりルーミーな感じ。運転席回りもチープ感がまるでないつくり。乗車定員も軽の4人にくらべ1名多い5名なので、現在NボックスやスズキのワゴンR,スペーシアに乗るユーザーは心動かされる要素がちりばめられている。トヨタの場合、広くて居心地がいいという意味を込めて、「1LDカー」という昭和の匂いがするキャッチコピーで販売するのが可笑しい。
税制の改正で軽自動車はかつてほど、お得感が薄れているところから、リッターカーが今後コンパクトカー市場に割って入るということらしい。ちなみに、価格は、ベースは140万円台だが、中心は180万円前後。NAとターボ車があり、燃費はそれぞれ24.6km/l、21.8km/lだ。4WD仕様もある。