前回もそうだが、ドライバーは、なんだか不当に安い印象である。
先日、横浜みなとみらいのホームセンターで手に入れたプラスドライバーはベッセル製だ。
ベッセルといえば、大阪にある創業1916年(大正5年)のドライバー一筋の老舗ドライバーメーカーだ。何度も取材に伺った経験があるが、一度も工場自体に足を踏み入れたことがない。そのせいか、正直に告白すれば、その都度リアリティのない、なんだか手応えがないモヤモヤが残る気分で記事を作ってきた。(むろん、工場を見たからといって新たな発見ができ、記事がレベルアップするという保証はないが)
このドライバーは、通称「デュアルトーンドライバー」と呼ばれ、品番が「400D P.2×100」。つまりプラスの2番で軸長が100ミリのごくオーソドックスなドライバーである。ところがこのドライバーをよく眺め、調べてみると面白いことが見えてきた。
なにが面白いかというと、3つある。一つは、手に持ってすぐ感じるのだが、やけに軽い。重量81グラム。非貫通ドライバーのプラス100ミリはだいたい90~100グラムのなかに納まるのだが、例外的に1割ほど軽いのである。その秘密は、この工具のデザインポイントである赤と黒がせめぎあう独特の味わいの6角断面のグリップ。プロプロピレンという樹脂グリップにあるようだ。通常の樹脂グリップはもう少し重い印象だ。
2つ目は、このグリップは、実はエコドライバーを標榜する金属軸と樹脂のグリップが分離分別できるリサイクル性の高いドライバーと同じ形状。どうやら金型自体を共有化しているようだ。コストダウンを図ったとみた。
3つ目は、エコドライバーのときは洗剤を付着させても確実にトルクがかけられたのが、このドライバーは(つまりポリプロピレン)スルスルで、まるでトルクをかけられず滑るばかりだった。
エコドライバーは、エラストマーと硬質樹脂のハイブリッド構造で、しかも表面に細かな凹凸を設けていたが、こちらはその工夫がないからだ。
それにしても、購入価格が248円はすごい。ネットを調べると150円を切るサイトも見つかった。コンビニのコーヒー一杯(サイズはトール)とほぼ同じなんだから。急いで、大阪のベッセル本社に問い合わせたところ「あれは別ラインの製品で、タイの工場で造っています。十分もうけを計算して生産しています」とのこと。どうも心配することはないようだ。