モノづくりという営みは、どうしても≪土着性≫みたいなものが顔を出すものらしい。精神性といってもさほど遠くないかもしれない。
それが色濃く出たのがダイハツの「ミライース」というクルマだった。
2011年9月デビューの初代ミライースは、東日本大震災の電力不足による節約ムード、日本国民総パニック精神状態を背景に、「とにかく他をぶっちぎる高燃費で、低コストのKカーを創る」という思いで世に出したクルマだ。
たしかにカタログ燃費はその当時エポックメーキングだった。リッター30㎞の壁を破ったんだから。話題にもなった。でも、試乗してみると、なんとも面白くもなんともないクルマ。30分もハンドルを握っているとやるせない気分が襲ってきた。ボディ剛性は軟弱だし、走り自体のきびきび感もなく、乗っていて少しも楽しくない。家事万端(かじ・ばんたん)は及第点だが、共に時間を過ごしてもワクワク感のかけらもない、キラキラ度ゼロの女性みたい! というとセクハラ発言だとしてお叱りを受ける? まぁ、大きな声で言えないけど、女性に譬(たと)えるとそんな感じ。すいません。
で、6年後に登場した今回の新型ミライースは、かなり進化したようだ。
燃費自体は35.2㎞/lで、とくに群を抜いてはいないが、車両重量を730㎏から80㎏軽い650㎏(重い4WDは740㎏もあるが)になったのはホメていい。リアゲートやフロントフェンダーを樹脂にしただけでなく、燃料タンクを樹脂製にボディと足回りを見直し軽量化に力を注いだという。日本最軽量の13インチのタイヤとホイールの開発も評価すべきか。加えて、トヨタ流(とにかくダイハツはトヨタの子会社だから!)のDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を導入した第一弾がこのクルマだという。ちなみに、耳にはするが意味不明なアーキテクチャーという英語は、そもそも「建築などの構造」のことで、簡単に言えば、クルマの構造変革ということのようだ。自動ブレーキはじめとする安全装備もKカーとしては進んでいる。
気になる価格は、84万円台。一番高いモデルでも150万円台どまり。足元をしっかり見据えたいいクルマに仕上がっているようだ。
ここにきて、ダイハツの大阪あきんど魂(たましい)も、正常進化したようだ。