大学は文学部だけど、高校は工業高校だというキャリアのせいか、モノづくり工場を取材するとコーフンして血の巡りがよくなる。旋盤やフライス盤などの工作機械に短期間だが触れたことがあるということもあるが、工場内の機械オイルの匂いがなんともなく、血を湧き立たせるようだ。
先日うかがった三菱ふそうバストラックの川崎製作所。ここはトラック組み立て工場でもあるが、実はエンジン組み立て工場も併設している。三菱ふそうのトラックのエンジンは大型スーパーグレートのエンジンはドイツのダイムラーから、小型トラックのキャンターは、フィアット製の4P10型を採用しているが、実は、中型トラックのファイターの排気量7.5リッター6M60型エンジンは川崎で組み立てられているのだ。これを約2時間30分つぶさに取材することができた。
詳細は、来年1月発売予定の単行本に譲る。何を発見できたかというと「板金部品、鋳造部品、鍛造部品などの部品で構成されたエンジンを組み立てるシステムは、一朝一夕にはできない合わせ技が散りばめられ、先達たちの長い汗と涙が見え隠れした」ということだ。失礼だが、中国でこうした工場をつくるには20年はかかるのではないだろうか?
シリンダーヘッド、シリンダーブロックなどは福島にある鋳造工場で、半製品化され、この工場で、細部を機械加工され、カムシャフトやバルブが組み込まれ、徐々にシリンダーヘッドASSYが完成。いっぽうシリンダーブロックも機械加工されたり、クランクシャフトが取り付けられたり、コンロッドやピストンなどがドッキングされ、さらにシリンダーヘッドASSYとここで合体。…‥と言葉で追いかけると簡単だが、実に作業員が動きやすく確実に間違いのない作業がおこなえる工夫をしたラインである。
いまや、チャップリンの映画「モダンタイムズ」のような非人間的な工場とはまるで異なる。声を掛け合いながらの組み付けシーンもあり、何やらリズミカルである。ちなみに、この組立工程の作業員は約2週間の研修で、ラインに立てるが、バルブクリアランスの部署だけは、感覚を必要とするため、一人前になるには1か月はかかるということだ。