東京モーターショーでは、ときどきとんでもない仕掛けがお目見えして、戸惑うことがある。
今回は、ブレーキの老舗「曙ブレーキ」の展示物だ。
「MR液体ブレーキ」である。MRは「マグネトー・リューオロジカル」で、無理やり訳すと「電気式物質変形ブレーキ」? 液体の中に分散している数ミクロンの鉄粉が、磁場を加えることで、整列し、鎖状の粒クラスターを形成し半固体化する、という理論を応用したものだ。
車両に固定された円盤に、ハブ・ベアリングとともに回転する円盤が交互にレイアウトされているあいだにMR流体が充填されている構造だという。
ブレーキ内部に配置された電磁石コイルに電流を流し、円盤と垂直の方向に磁場を発生させることで、固定円盤と回転円盤のあいだに鎖状粒子クラスターができる。回転円盤は回転し続けているため、鎖状粒子クラスターがせん断変形を受け、崩壊され、隣のクラスターとつながり、また崩壊される。これが繰り返され、回転円盤に抵抗力が発生。これがブレーキ力となる。……生半可に考えると頭が痛くなる難しい理屈。
東北大学の流体科学研究所との共同で、研究中だという。2020年には実用化を目指すという。このブレーキシステム、物理的な摩擦をうまないので、ノイズの発生はないし、ホイールを汚す摩耗粉の発生もないという、夢の制動システムなのである。