約510万人が住む北欧のノルウェーは、すでに5台に一台が電気自動車(EV)で、一足先に「脱ガソリン・脱ディーゼル車時代」に足を踏み入れつつある。イギリスとフランスが、23年後の2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を中止する方針を先取りしているとされる。この背景には、ノルウェー政府によるEV優遇策を講じているのである。どんな優遇策かというと、EV購入を誘導する補助金を出すだけでなく、高速道路やフェリーの料金を無料にすることで、「ユーザーにEVに乗ると断然有利!」というリアリティを与えている。ただし、この政策により財政不安がちらついていることは見逃せない。
いっぽう日本のEV事情はどうか? 開発の遅れだけでなく、EV優遇策についても遅れを取っている感がある。
先日、日産が7年ぶりに新型リーフ(写真)を世に出した。無資格検査員による車検業務のチョンボで、出鼻をくじかれはしたが、ワンチャージ400㎞は、カタログ上とはいえフツーの人にもEVが身近な存在に見えてきた。
ただ、もう一つの課題が横たわる。バッテリーの寿命である。
従来型のリーフは、7年間でわずか28万台しか売れなかったことから、下取り価格がガクンと下がり、ユーザーを裏切る結果となっている。たとえば、6~7年落ちは10万円前後まで下落模様。昨年モデルでも400万円台だったクルマがいまや100万円ほどなのである。「買ったとたんに1/3以下に価値が下がるクルマ!」となると、よほどそのクルマへの愛がない限り、二の足を踏んでしまう。そういえば、日産は当初「使用済みバッテリーは家庭で再利用したり、リサイクルするシステムを構築します」とメディアに大見えを切っていたが、そうした動きは販売数の想定以上の少なさから腰砕けになったようだ。リーフは、日産のイメージアップになっているのか、逆にブランドイメージに傷を付けているのか? EVフロンティアとしてのアドバンテージがいまのところ見えない。
となると…‥‥トヨタとホンダが、EV戦線に加わらない限り、この国の庶民がEVを身近な存在に感じることができないということのようだ。
オフィスビルが立ち並ぶ福島駅周辺から一歩足を踏み入れると・・・ペンキが剥げ落ちてはいるが「電装品専門店○○商事」、あるいは「ベアリングの◇◇商会」という文字が読み取れる。
シンガポール、フランスなど海外にも店舗をかまえ、国内では600以上の店舗展開をするエンドユーザー向けオートバックスセブンは、いまでこそ本社を東京としているがそのルーツは福島にある。昭和21年に故住野敏郎氏が自動車部品の卸売りを目的に個人経営の「末廣商会」を創業、その後「富士商会」「大豊産業」をへて現社名になったのである。
過日、オンボロのマイカーのボディについた小傷を自分で修復しようと近くにあるオートバックスに足を踏み入れた。例によって社員教育の行き届いたスタッフから、カラーナンバーの見方など初歩的知識を教えてもらった。マニュアルどおりの接客ではあるが、悪くない感じだ。
≪好奇心≫といえばかっこいいが、物書きとしての悲しき習性で、ふとこんな言葉を彼に投げかけてみた。「そういえば、先日お宅の店のルーツである大阪のオートバックスの前を通りかかりましたよ」。すると、その社員は何を言われたのか分からなかったようで、返事はなかった。中年男の唐突な質問に引いたのかもしれない。「大阪の・・・」ではなく「大阪福島にある・・・」と言えばなにかしらの答えが返ってきたのかも知れないと、少し悔やまれた。
・ インタビューに答えてくれた方々(敬称略)松田鶴義(廣見商会・代表)/長安敏夫(パシフィック工業株式会社・会長)/上田長之輔(上田興業株式会社・代表)/中島功(SPK株式会社・会長)/森山峯明(守山自動車工業株式会社・会長)
・ 参考文献 大同自動車興業「60年の歩み」/大阪府自動車部品販売組合「30年の歩み」/「50年目の日本陸軍入門」(文春文庫)/「日本における自動車の世紀」(グランプリ出版)/「日本自動車史年表」(グランプリ出版)/「自動車販売王・神谷正太郎伝」(自研社)/「国産車を創造った人々」(トヨタ博物館)/「ヘンリー・フォードとT型フォード」(トヨタ博物館)/「日本史年表」(岩波書店)/「近代日本総合年表」(岩波書店)
(次回からはスズキの知られざるヒストリー「浜松スズキ物語」をお届けします)
次世代の乗り物は、EV(電気自動車)でほぼ間違いがないようだ。
EVは、モーターでタイヤを回転させ、駆動するのだが、キーテクノロジーは、高性能なバッテリーである。
高性能とひと口で言うが、早い話、軽くてかさばらず、ワンチャージでできるだけ遠くまで走れ(エネルギー密度が高い!)、しかも短時間で充電ができ、長寿命であること。もう一つ言うならコストが安い!
現在の最先端バッテリーのリチウムイオンよりも、ざっくり2倍強の高性能なものが求められている。移動の自由が今後持続的に可能な、環境にやさしいクルマ社会を維持するためのキーテクノロジーである。
“バッテリーの神様”がいたとしたら、実に虫のいい話である。
この虫のいい蓄電池の開発に世界のモノづくりメーカーは、いまや必死だという。
次世代型の蓄電池は電解液が液体ではない固体の「全個体電池」だそうだ。電解液が固体だと、液漏れによる発熱や火災の心配がないだけでなく、航続距離がより長くとれ、充電時間も短くなるのだという。コストなどが不明だが、現在トヨタは、この「全個体電池」にフルスロットルで研究に取り組み、2年後の2020年の前半には実用化する予定だという。(写真・左がリチウムイオン電池、右がその全固体化。全固体化電池をトヨタと共同開発している東京工業大学の菅野了次教授のホームページから)
じつは、トヨタグループの祖である豊田佐吉翁は、1925年に、飛行機で世界一周できるほどの電池の開発に100万円(いまの金額なら20億~30億円)の賞金を出しているが、いまだに実現されていない。その条件は、100馬力で、36時間連続運転ができ、重量60貫(約225㎏)、大きさ10立方尺(約280リッター)。この条件には遠く及ばないながら、すこしでも近づきたい。開発者のあくなき戦いが展開されているという。
ストレートで購入した1/4インチのラチェットハンドルである。
通常、小判型だと、ギア数が36程度だが、これは72ギアもある。ギア数が多ければ多いほど,振り角度が小さくなるので使い勝手は上々だ。でも心配もある。小さなギア数で、大丈夫なのか? 歯飛びとか、歯欠けの心配はないのだろうか? と心配のあまり、内部を眺めてみることにした。
ヘッド裏側にあるΩ状のスナップリングをプライヤーで取り外したところ、作り込まれた感のあるギアと爪がおもむろに顔をあらわした(写真)。
おそらく焼結金属といって粉末の金属粉を金型に入れて成形し焼き固めつくられた爪だ。よく見ると、3枚のギアで受けているデザインだ。これなら多少オーバートルクがかかっても、トラブルの心配はないと推察できる。
全体のデザインはどうか? ハンドルとヘッド部が30度オフセットしていて、なかなか使いやすいデザインだ。ハンドル部はH断面でごついイメージだが、上下に小洒落た樹脂をサンドイッチすることで、ごつさをやわらげ、逆に新鮮さを与えている。そもそもラチェットハンドルに新鮮さを付加するのは難しいのだが、プッシュボタンを6角形にすることで、チラッと個性を醸し出す。切り替えレバーのフィールは悪くなく、よく見ると切り替えレバーのピボット部も6角形がデザインされていて、デザイナーの心憎さがうかがえる。
使い勝手、デザインともに合格点だが、惜しい点は、「軽量」と謳うほどには軽くないのだ。実測で、113グラム。これは、たとえばKO-KENのZ-EALには80グラムを切るタイプもあるので、軽々しくも「軽い!」とは言えないのだ。全長は142ミリ。ストレート扱いでもFLAGとあるので、たぶん日本製に違いない。にもかかわらず価格は1980円。お買い得感が高いと感じた。www.straight.co.jp
東京モーターショーでは、ときどきとんでもない仕掛けがお目見えして、戸惑うことがある。
今回は、ブレーキの老舗「曙ブレーキ」の展示物だ。
「MR液体ブレーキ」である。MRは「マグネトー・リューオロジカル」で、無理やり訳すと「電気式物質変形ブレーキ」? 液体の中に分散している数ミクロンの鉄粉が、磁場を加えることで、整列し、鎖状の粒クラスターを形成し半固体化する、という理論を応用したものだ。
車両に固定された円盤に、ハブ・ベアリングとともに回転する円盤が交互にレイアウトされているあいだにMR流体が充填されている構造だという。
ブレーキ内部に配置された電磁石コイルに電流を流し、円盤と垂直の方向に磁場を発生させることで、固定円盤と回転円盤のあいだに鎖状粒子クラスターができる。回転円盤は回転し続けているため、鎖状粒子クラスターがせん断変形を受け、崩壊され、隣のクラスターとつながり、また崩壊される。これが繰り返され、回転円盤に抵抗力が発生。これがブレーキ力となる。……生半可に考えると頭が痛くなる難しい理屈。
東北大学の流体科学研究所との共同で、研究中だという。2020年には実用化を目指すという。このブレーキシステム、物理的な摩擦をうまないので、ノイズの発生はないし、ホイールを汚す摩耗粉の発生もないという、夢の制動システムなのである。
モータリゼーションが始まった当初売れる部品は、クラクション、ランプ類、ブレーキライニング、それにクラッチディスク、クラッチカバーである。当時は、まだ道路もさほど混雑していなかった。生まれてはじめておもちゃを手にした子供のように、好奇心たくましく、クルマをあちこち乗り回し走行キロ数が伸びるから、こうしたパーツの要望が劇的に増加したのかもしれない。
戦前のプレ・モータリゼーションは都会など人間が多く集まり局地的な車社会であったが、昭和40年からはじまった真性モータリゼーションは地方都市のみならず地方の町や村でもクルマが活躍するようになり、大げさに言えば日本列島全体が車社会に変貌したのである。
そこで大阪の福島界隈の余力のある自動車部品卸業者の多くは、中国地方、九州地方、あるいは山陰や北陸に営業に出かけた。なかには広島や九州に営業所を出す会社もあった。
平成4年(1992年)にSPKと社名変更した大同自動車興業は、その後国内に15以上の営業所を展開し、海外にもビジネス・ネットワークを構築している。
福島に戦前忽然と誕生した自動車部品のビジネス街は、戦時下、統制会社に集約されて壊滅的となったが、終戦後、灰燼となった大阪の町から再生し、モータリゼーション誕生をキッカケに急成長を遂げるも、時代に吹き飛ばされたのか、いままた何事もなかったように元の静寂さを取り戻そうとしている。
大学は文学部だけど、高校は工業高校だというキャリアのせいか、モノづくり工場を取材するとコーフンして血の巡りがよくなる。旋盤やフライス盤などの工作機械に短期間だが触れたことがあるということもあるが、工場内の機械オイルの匂いがなんともなく、血を湧き立たせるようだ。
先日うかがった三菱ふそうバストラックの川崎製作所。ここはトラック組み立て工場でもあるが、実はエンジン組み立て工場も併設している。三菱ふそうのトラックのエンジンは大型スーパーグレートのエンジンはドイツのダイムラーから、小型トラックのキャンターは、フィアット製の4P10型を採用しているが、実は、中型トラックのファイターの排気量7.5リッター6M60型エンジンは川崎で組み立てられているのだ。これを約2時間30分つぶさに取材することができた。
詳細は、来年1月発売予定の単行本に譲る。何を発見できたかというと「板金部品、鋳造部品、鍛造部品などの部品で構成されたエンジンを組み立てるシステムは、一朝一夕にはできない合わせ技が散りばめられ、先達たちの長い汗と涙が見え隠れした」ということだ。失礼だが、中国でこうした工場をつくるには20年はかかるのではないだろうか?
シリンダーヘッド、シリンダーブロックなどは福島にある鋳造工場で、半製品化され、この工場で、細部を機械加工され、カムシャフトやバルブが組み込まれ、徐々にシリンダーヘッドASSYが完成。いっぽうシリンダーブロックも機械加工されたり、クランクシャフトが取り付けられたり、コンロッドやピストンなどがドッキングされ、さらにシリンダーヘッドASSYとここで合体。…‥と言葉で追いかけると簡単だが、実に作業員が動きやすく確実に間違いのない作業がおこなえる工夫をしたラインである。
いまや、チャップリンの映画「モダンタイムズ」のような非人間的な工場とはまるで異なる。声を掛け合いながらの組み付けシーンもあり、何やらリズミカルである。ちなみに、この組立工程の作業員は約2週間の研修で、ラインに立てるが、バルブクリアランスの部署だけは、感覚を必要とするため、一人前になるには1か月はかかるということだ。
大きな声では言えないけど(小さな声では聞こえない!?)、不肖広田、5月から、地方のコミュニティFM放送で、毎週月曜日の午後16時から15分間、番組を持たせていただいています。『タミーの自動車のここが知りたい!』という番組です。
テーマは、自動車のメンテナンスをやさしく説明して、リスナーに「格安カーライフ」のお手伝いをしたいというのが狙い。ごくごく身近なオイル交換の時期とか、リサイクル部品を使ったDIYによる修理などなど。知っているようで意外と知らないことを、これまで数限りない失敗談をときどき織り交ぜ分かりやすく、面白く伝えます。15分のなかで、一つでも「へ~っと!」とか「そうなんだ?」と感じてもらいたい! これを聴いていると、いつしかお得な知識がたまり、カーライフが一味違ったものに変わる、そんな番組です。
この番組が、このほどスタジオを飛び出し、タイヤショップの店長に直撃インタビューします。中古タイヤの選び方から季節がらスタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤのことなど、タイヤのプロに、ユーザーを代表して、ズバリ知りたいことを聞いています。11月20日が前半、27日が後半。これを聴き逃した方は、12月4日が前半の再放送、12月11日が後半の再放送です。同じように1月1日、前半の再々放送、1月5日、後半の再々放送、そして2月5日と12日にもそれぞれの再々再放送があります。
手前味噌ですがクルマの番組のなかではユニーク度120%だ。インターネットでの配信もしています。「ハロー・ハッピーこしがやエフエム」(FM86.8MHz)http://www.koshigaya.fm/ ホームページからでもネット配信が聞くことができます。