パイオニアという存在は、いつの時代も退屈な日常にはない苦行が襲いかかっている!
他でもない、一番のエコカーといわれる燃料電池車FCVのことである。水素をどう作るかで、完璧なエコカーとは言い切れない面があるが、とりあえずエコカー・チャンピオンである。
そのエコカー・チャンピオンのオーナーがいま瀬戸際に立たされているのである。水素の充填時間はガソリン車並みの数分、一充填での航続距離も余裕で500キロを超え、大満足。水素ステーションの数は今のところ100店舗ほどとこの点での不便は購入時に織り込み済みだったとはいえ、数少ない水素ステーションの営業時間が午後5時で終了するところがほとんど。しかも土日が開いていない。
となると、例えば東京から商用で名古屋で仕事をしてその日に帰る、という芸当ができない。名古屋で商用をしていると、午後5時を回る可能性が大。そこからの水素充填が難しいからだ。「こいつは使えない! とばかり、普通のハイブリッドカーに乗り換えたオーナーさんもいる」という。
トヨタの某1級整備士さんは「じつは燃料電池車の車検はそろそろなんですね。エンジンもトランスミッションも付いていないので、オイル交換などはなく、この面では楽ちんなのですが、水素タンクの容量検査があるらしく、そのためには水素を満タンにして検査場に持ち込まないといけない。自宅から自走できず、車載キャリアカーで運ぶことになる。となると費用がかかる…」と戸惑い気味。
現在日本列島で活躍するFCVは、2000台足らずに過ぎない。もともとお金に余裕がある資産家や、好奇心旺盛なクルマ大好きおじさんに違いない。こういう苦行を経験すること自体を楽しんでいる人たちなんだろうか? 他人事ながら、心配になる。