意外と思われるが、現在の日本のバス工場は、北陸に偏っている。
日野自動車といすゞの合同バス会社「Jバス」が小松(石川県)と宇都宮(栃木県)、「三菱ふそう」が富山県である。その富山のバス工場に、ちょうど10年ぶりに伺った。朝から夕方まで、バスづくし! 工場内の社員食堂で、ランチを楽しみ、近在のシートメーカーや内装メーカーまで虱潰しにインタビューしまくった!
詳しくは、この夏出版予定の単行本を見てもらうとして、今回一番印象に残ったことを3つに絞ると、2年後のオリンピック・パラリンピックで、インバウンド需要というやつで、バス業界はかつてないほどの活況を呈している。貸切りバス(観光バス)をどんどん作っていた。
ところが、その景気を分析すると、2極化しつつある。都市部の路線バス事業者と高速バス事業者がやけに元気で、やれ連結バスの導入だ、ネット予約の女性向けの都市間高速バスを走らせる。いっぽう地方の路線バス業界は、急速に進む少子高齢社会を背景に業績が振るわない。コミュニティバスでなんとか凌ごうという、いわば「あまり儲からない業種」に沈没。これが2つ目。
3つ目は、モノづくりの世界の質の変化。工場に入る若者がかつては工業高校卒だったのが、いまや大半が普通科卒。そこで、工具の使い方、溶接のテクニックなどを一から教えなくてはいけなくなった点。バスをめぐる世界が、こんなに違っていることに驚くばかりだ。
昭和30年ごろ、エンジンを前に置き、駆動輪をリアとするFR(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトが常識だったが、スズキはあえてFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式を採用した。
VW,ロイトLP400、シトロエン2CVなどを購入し、事前に徹底的な分解・研究をおこない、シャシーにエンジンを載せただけのものだが、3ヵ月後には試作車を完成させている。≪2サイクル2気筒エンジン、排気量360㏄,FFレイアウト≫というコンセプト。ロイトLP400に強く影響を受けた試作車だった。
軽自動車用の部品はもちろん、それを作る専用の工作機械もない時代。溶接や板金作業も人の手が頼り。トライ&エラーの連続で研究室はいつしかシリンダーブロックの山ができたといわれるほど。それにテスト基準も何もあるわけではなく、ただ走るかとまるか、折れるか壊れるかの繰り返し。失敗の山を積み重ねていったという。
休日も返上して、こうしてまともに走る試作車2台が完成し、箱根登坂テストを兼ねて、東京まで試走する。いまでは想像できないが、当時のクルマは、全山砂利道の箱根の山坂を満足に走れるかどうかが大きな課題だった。(写真は、試作車の箱根登坂テスト。真ん中の黒いスーツ姿が鈴木道雄初代社長。「歴史写真集・スズキとともに」から)
いまどきの軽自動車のクルマとしての性能は目を見張る。販売台数の約半数を占めるだけのことはある。
でも、軽自動車はたとえばタイヤだけを見ても、普通車にくらべタイヤの径が小さい分、同じ速度で同じ距離を走れば、累積の回転数が多くなるわけで、それだけ負荷がでかく、つらい! ホイールベアリングの耐久性が課題になりやすい、と推理できる。これは実は、ほかの自動車部品にも言える。
先日、NGKの技術者にお話しを伺ったところ「軽自動車のダイレクト・イグニッション(DI)のコイルは実は相当つらいんです」という。スパークプラグのギャップは従来の1.1ミリから例えば1.3ミリに広がり、より大きな放電エネルギーを要求される。となると、コイル内の巻き線の被膜が徐々に溶けたり、熱や振動で、回りのシリコン樹脂が劣化して、リークが起きるというのだ。排気量が1リッター以上のエンジンだと余裕があるが、660㏄3気筒はつらいというのだ。
症状としては、ウォーニングランプが点灯し、エンジンが息つく。
そこで、コイルの交換となるが、これは1本1~2万円と安くない。しかも、1本がだめになると、他のコイルも早晩ダメになる可能性大だという。この症状、ダイハツやスズキの軽で顕著で、ホンダの軽ではあまり聞かないという。読者の皆さん、もし情報があれば教えてくださ~い。
米国式倉庫型スーパーマーケットであるCOSTCOを散策していたら、面白いものを発見した。
Dickies(ディッキーズ)の「ヘビューデューティ・カーブーツ・ライナー」(商品名)。簡単に言うと、高い耐久性を狙ったトランクルームの敷物、である。BOOTというのは、イギリス英語で、トランク、という意味だそうだ。ちなみに、ディッキーズは、ワークウエアなどで有名なアメリカの老舗ブランド。
これが面白いのは、手持ちのはさみで、自分の車のトランクの形状に合わせ、フィットさせられる点だ。
かなり肉厚のあるゴム製で、たぶん冬場でも硬くなりづらい感じ。ある程度肉厚なので、端がペラペラしないのがいい。かといって、重量はさほど重くないので、取り外してすぐ隅に折りたためる。表面はノンスリップ形状で、もし汚れても、汚れを拭き取りやすい。質感も悪くない。原寸は、横137センチ、縦110センチ。
トヨタ・シエンタで使ってもみた。横方向は十分だが、サードシートを倒した状態だと前後方向がやや不足する。でも、価格が2,298円と安いことを思えば、あまり文句は言えない。
装着してすぐ、走り出したら、ゴムの臭いが車内に充満し、いまにも窒息しそうな気分になったが、2~3日したら、慣れたのか、それともある程度臭いが飛散したせいか気にならなくなった。アウトドア道具を積むドライバーには悪くない選択だと思う。
1台のバスで2台分の乗員を載せて運ぶことができる「連節バス」が、いま熱い注目を集めている。
いすゞあたりが2020年を期して開発中だと聞くが、いまのところ、日本製は存在しない。でも、三菱ふそう経由で、メルセデスベンツの「シターロ」号が、すでに日本の路線バスとして数十台も活躍している。そのうちの4台を保有し、運行している関西にある神姫バスにうかがった。
平成25年から2台、今年の4月からさらに2台追加し、兵庫県の三田(さんだ)駅周辺を毎日27便。なにしろ全長が18メートルと通常の路線バスに比べ1.8倍の長さ。実際走行前に何度もシミュレーションをしたところ、20カ所ほどに課題が見つかった。右左折で曲がり切れないとか……。もちろん警察など関係部署などへの事前の根回しも必要。
担当者の不安のなか、実際走らせてみると、意外に小回りがきき、大半の課題はクリア。それでも、左折時に反対車線にはみ出すため、反対車線の停止線を少し下げたのが2カ所。交差点で右折するところで、右折だまりが短いので、長くするところが1カ所あったという。
1年目の運転手に聞くと死角をモニターする画面を見るなどで、かなり運転に疲れを覚えるというが、5年のベテラン運転手に言わせると「高速バスに比べ小回りが利くし、低床でワンステップなのでベビーカーの乗客もらくらく乗れていいですよ」とのことだ。筆者も実際乗ってみると、やや足回りが硬く跳ねる傾向にあるが、床がフラットで、見晴らしがいいので、乗っていて気持ちいい。ちなみに、メンテナンスは、定期的に連結部のボルトを30本ほどトルク管理することだという。
念願の自動車の開発は、1954年(昭和29年)、つまり国産車トヨタ・クラウンが完成する前年。
当時東京の街中で見かけるコンパクトカーは、ノックダウン後に国産化となるオースチン1200、ヒルマン1400、ルノー750あたりで、日本車と輸入車の技術的な格差は、目を覆うほどの開きがあった。
とはいえ、この年に試作車の製作にこぎつけ、本格的バイクの販売も重なったこともあり、鈴木式織機という社名から「織機」の文字が消え、新たに「自動車工業」の文字が追加され、「鈴木自動車工業株式会社」となった。ここから、スズキは2輪と4輪の製造に邁進することになる。
思えば、「パワーフリー号」(空冷2サイクル・排気量36㏄)をはじめスズキの戦後の復興は、2輪車への積極的なチャレンジだった。安定成長を求める大半の経営陣や銀行筋の反対を押し切り1954年、スズキは平均年齢わずか27歳のエンジニア6名で4輪車の開発に乗り出した。大いなる挑戦だった。
人間、プロの整備士でもねじを締める段になるとど~しても「締め過ぎる!」という傾向があるようだ。
先日あるイベントで、NGKプラグのスタッフが、「スパークプラグの締め付けトルク体験」をおこなっていた。トルクレンチの数字部を目隠しにして、新品のプラグを締めてください! というものだ。ねじ径12ミリの普通のスパークプラグだ。
さっそく、トライしてみた。トルク感覚は、ある程度自信があったのだが、ほんのわずかトルクオーバーしてしまった。15~20Nmのところ21Nmまで締めてしまったのだ。痛恨のミスである。
どうもいままで、感覚による締め付けに明け暮れた感が強い。
「できれば、かならずトルクレンチを使って締めてくださいね。実は、プロの整備士さんの大半も締めすぎの方が多いのです」とNGKスタッフのアドバイス。
スパークプラグの締め過ぎは、極端になるとネジ自体が伸び、ネジが切れてしまう恐れがあるだけでなく、受けた熱を逃がしずらくなり、ついには異常燃焼でプラグがだめになることもあるという。
再使用のスパークプラグの場合も、原則的には「グイ~っ!」とばかりバカヂカラで締め込まず、座面にあたってから「くいっ!」と約1/12回転締め込むぐらいで、大丈夫。ガス漏れの心配もいらないということだ。
コンビネーション・プライヤーは、少し前までクルマの車載工具の一つとしてラインナップされていた。
この付録のコンビ・レンチ、お世辞にもいい工具ではない。ジョイント部のガタは大きいし、そもそもハンドル部が細くて同じ作業を続けると、指が痛くなる、そんな代物である。お世辞にも、愛着を抱けるハンドツールではなかった。
でも、「タダ(ではないが)ほど安いものはない!」という暗黙の了解で、いつの間にか、このおまけのコンビ・プライヤーは工具箱の中で、定位置を占めて、何か事あるごとに出動し、いつしか、「コンビ・プライヤーはこんなものか」という思考停止に陥っていた! 愚かだったことか!
ホームセンターで手に入れたKTCの定番「コンビ・プライヤー」を手にした瞬間、これまでのことがまるで走馬燈のごとく浮かんできた。自分が思考停止になっていたことを、気づかせてくれたのだ。
品番PJ-150-Sという製品だ。手に持つと、いつも使っているおまけのやつにくらべ、確かに重い。
でも、おまけのプライヤーは、ガタがでかく、使えなくはないが、なんとも貧しい! ホームセンターにて1229円で手に入れたこれは、俄然いいのだ。なにがいいかというと、持っただけで、安心感がまるで違う。グリップのフィール、モノをつかんだ時の確かさ、アゴ幅を広げるさいの節度感。付録のコンビ・プライヤーとは似ても似つかない。月とスッポンとはこのことだ。
こんなことなら、なぜもっと早くこれに変えなかった? 今までのショボい工具を使った時間を返せ! そんな思いが込み上げてきた。ちなみに、重量は200グラム、全長163ミリだ。