「子供のころにこんなイベントがあったらな~っ!」
思わず、そんな思いが込み上げてきた。先日、パシフィコ横浜でおこなわれた小学生のための「キッズエンジニア」。その続きである。
スズキのブースでは、小学生がホンモノのスクーター「チョイノリ」のエンジンに向かって、工具を手にオーバーホールの挑戦! 2003年デビューだから少し古いけど、偽物でも樹脂製でもない本物の空冷式4サイクル単気筒エンジンだ。手作りの木枠の上に置かれたエンジンは、本物だけが醸し出す威厳がある! M8とM10(単位は㎜)の2つのT型レンチを片手に、ひとつずつエンジンを構成している部品を取り外していくのだ。
もちろん、バラして終わりではない。組み上げて終わりなので、バラすとき、「どんなふうに組み付けられていたか?」を常に頭に描きながら、バラしていく。もちろん、この作業はインストラクターの説明と懇切丁寧なB5版の全28ページのマニュアル(総ルビ付き!:写真)があるのだ。
このマニュアルは、「エンジンの基本」から始まり、「エンジンの分解」「エンジンの組み立て」と続き、「キッズエンジニア認定試験」で終わる。そのなかで一番しびれるのが、「エンジニアの心得」。「工具は大切に扱うべし」から始まり、「けがに気をつけるべし」「部品をなくさないようにするべし」「わからなくなったときは、すぐに何でも聞くべし」などと続く。でも、「心得」など、たぶんどの子も心に留めていない。目の前にあるホンマ物のエンジンをとにかくばらしたい! その気持ちが強いからだ。工具を失くした、擦り傷をしてしまった……そんな失敗を通して「心得」を読み返し、「なるほど、そうかな」と思うものだ。こう考えると、工具でエンジンをバラすのは、人生のすべてが詰まっている、そんな感じもしてくる。