じつはスズキの海外展開は、北米よりも先にインドだった。インドでのビジネスの始まりは、1982年のことだ。
鈴木修社長(写真)は、「とにかく、どんな小さな市場でもいいからナンバー1になって、社員に誇りを持たせたい」というのがかねてからの信条だった。
当時スズキは排ガス規制をめぐる技術的な失敗から屋台骨を揺るがす危機に陥ったが、何とかアルトの大成功で持ち直したところ。そんな時、未知な市場であるインドに挑戦したのは、修氏の先見性、それに指導力と決断が大きくものを言ったといえる。
いまでこそインドは資本家たちには、地球上最後の巨大市場として大注目されているが、30年以上も前のインドに自動車産業が確立されるとは、誰しもが想像できなかった。そのため世界の大手の自動車メーカーは、どこも手を付けなかったのだ。
だからして、当たり前のことだが、そうやすやすとインドへの足掛かりを確立できたわけではなかった。