わずか5分ほど、という短時間ではあったが、それは夢のような体験だった!
運転席にドライバーのいない自動運転車の後席で不思議な移動体験をしたのである。要はドライバー不在の車に乗ったのだ! レベル4の自動運転車両。
ゆりかもめ、シーサイドラインといった無人の電車には何度も乗ったが、ドライバーシートに人がいないクルマに乗せられるというのは、なんとも不思議な異次元感覚である。公道を何事もなく、右左折し、信号が赤ならきちんと停まるし、横断歩道に人がいるのを見つければ、粛々と停止する。なかなか賢いクルマ・ロボットの印象だ。ところが、耳を澄まし、こころを落ち着かせて、そのロボット運転テクニックを評価すると、いくつもの疑問符が付いた。たとえば、ややブレーキングがヘタッピーなのだ。路面が荒れたところを通過するとき、上手なドライバーはアクセルとブレーキでうまくいなすものだが、これもできていない! 乗員にやさしいフレンドリーな運転ができていない。
開発担当者に聞くと、「いまのところせいぜい初心者かシニアの下手なドライバーのスキルどまり」だと正直に告白してくれた。ライダー(Lidar)で障害物を感知し、詳細で常にアップデイトする地図で自立運転を実行している方式だ。
まだまだ課題があるようだ。ところが、その開発者たちは、プログラム製作が東大初のベンチャー企業、通信はNTTの関係企業、それに3Dの地図製作の企業がそれに絡んでいた。およそ、かつてのカーガイといわれた、どこか油の匂いがする“自動車野郎”はそこにはいない。
『自動車はここにきて大きな曲がり角!』という言葉が、真に迫っているのが痛いほど感じられた。