今回の東京モーターショーは、クルマ自体が大きな曲がり角に来ているだけに、チャレンジングな試みが多かった。そのなかの一つが、「キッザニア」がお目見えしたことだ。キッザニアは、“子供向けの職業体験型テーマパーク”。世界19か国24カ所にあり、年間900万人以上の来訪がある人気のテーマパークだ。
そのキッザニアが、東京モーターショーにお目見えしたのだ。プレスデーにそのうちの何カ所かを取材した。
ひとつは、ダイハツが運営する『クルマの組み立て工程』を体験させるというもの。左右のフロントフェンダーとヘッドライト、それにフロントバンバー、計5つの自動車部品を車体にボルトで留める、というものだ。たとえばフロントフェンダーは、M6(6ミリ)のトルクスボルトだが、ここでは6角ボルトに変更していた。これを電動の工具で子供が操作して、取り付ける。ヘッドライトでは、コネクターをまず繋げないといけない……バンパーはクリップで留める・・・・自動車の部品を取り付けることで、クルマの部品がどんなふうに取り付いているか? どんなネジが使われているのか? 工具をどう使うのか? そうした学校の教室では、ありえない世界に足を踏み入れることを意味する。
もっとマニアックなのは、マツダのブース。ロードスターのフロントフェンダーの金型。これは3次元のプレス担当者泣かせの形状なのだが、これの金型を磨くという作業を子供に挑戦してもらうというもの。お土産として自分が磨いた金属の小片をいただける。
ホンダでは、リアリティ度120%のレーシング・シミュレーター(価格が200万円ほど!)を使い、鈴鹿のコースを走行するというものだ。排気音、タイヤの走行音、バックファイアー、それに風切り音、マシンの振動やステアリングのインフォメーションが実車さながらでワクワクのし通し! コース取り、アクセル操作、ブレーキングポイントのシビアさに目覚めるというのだ。このほか、「クレイモデルを作り上げるコーナー」「差動装置のトルセンを組み立てるコーナー」など計10数か所だった。なんだか、みんな子供だけでなく、大人もやりたくなるプログラムばかり!
後日取材したところ、希望者が多すぎてほとんどの子供が、けっきょく“ぬか喜び”で帰宅したようだ。実は、友人の孫もそうだった。高校生以下無料だったので、当然の成り行きとはいえ、次回は善後策をぜひ考えてもらいたい。
かくして大阪の発動機製造は、社業の進展により、従業員が昭和22年末の1900名から、25年末には臨時従業員を含めると2300名となった。昭和22年10月には、全従業員の月給制が採用された。当時の工員は、日給や週給制が常識だったのだ。社名も、発動機製造からダイハツ工業へと改められた。
昭和26年、3輪乗用車の「BEE(ミツバチの意味)」が発売された。
これは、オート3輪の駆動レイアウトとは全く異なり、リアにエンジンを載せ後輪を駆動するRR方式。全長4080㎜、全幅1480㎜、全高1440㎜、ホイールベース2400㎜、車重960㎏。エンジンが強制空冷4サイクル水平対向OHV2気筒804㏄18PS、3速のトランスミッション。定員4名。低床シャシーに木骨ボディ。アポロタイプの方向指示器。価格が55万円。
関西地方でタクシーとして活躍する目的だったが、リアの伸縮式ドライブシャフトのスプライン部がぜい弱で、発進時や悪路走行時に破損し走行不能になったという。このスプラインを太くすれば、解決する見込みもあったが、1年余りで、生産中止となった。(ちなみに、BEEは発売数がわずかだったため、数台しか現存していない)
このBEEのつまずきは小さくなかった。だが、3輪トラックの世界は、右肩上がりで、技術もどんどん向上していった。オート3輪の基本スタイルは、昭和20年代後半まで、バーハンドルに、オートバイのような座席にまたぐタイプで、ヘッドライトも1頭式、というものだった。それが30年代になると、ヘッドライトが2灯式になり、丸ハンドルが当たり前、エンジンも空冷式から水冷式で静粛性が劇的によくなった。
前回お話したとおり、秋は日ごろあまり注目されることのない整備士(メカニック)に、スポットライトが当たる季節だ。
ディーラーは、それぞれの銘柄別のサービスコンテストがあるが、それ以外の、つまりディーラー工場をのぞく(例えば○○モータースとか、△△自動車整備工場といった)整備士さんたちの腕の見せ所は、「全日本自動車整備技能競技大会」という受け皿で展開される。全国には、こうした自動車整備工場が9万軒ほどあり、いわば、その代表選手が、各県2人一組(北海道だけは3つのチーム)で、北は北海道から、南が沖縄まで、精鋭の整備士が東京ビックサイトに集まった。今年は51チーム、102名の選手だ。
車両競技とフロントマン競技がメインなのだが、2人一組で、持ち時間87分のあいだに、モデルのクルマ(今回はトヨタ・シエンタ)の不具合を直し、ついでに12か月点検をおこなうというものだ。なかには、軽自動車専門という工場の整備士さんもいるので、一ト月前から車両競技のモデル車を公表しているというが、有利不利はどうしても生じる。
今回の不具合の大きなテーマは、「エンジンがかからなくなった!」というものだが、原因はスターターのリレーの断線だった。ということで、さほど難しい設問は設けられないという事情もある。そのほかバックランプのバルブ切れ、エアコンの配線の断線など計6個の不具合個所。ディーラーのコンテストに比べ、かなり難易度が低いようだ。このへんが、ディーラー工場との技術力の差が期せずして表れているようだ。
それにしても、同じクルマが26台、広い会場に置かれ、一斉に整備士が不具合に取り組む光景は壮大だった! 整備の世界の甲子園をホーフツさせる、バスを仕立てての上司&同僚応援団の熱いエールにも驚かされた。
「こういう補助工具って、たぶんじわじわと売れるんだろうな? それとも良さが浸透せず消えちゃうのかな?」
そんな印象を受けたのが、新潟燕市のWISEの「リターンハンドルSP」である。
WISEは知る人ぞ知るヘキサゴンレンチの専門工具メーカー。創業者がアイディアマンだったせいか、いろいろなヘキサゴンレンチがあり、そのいくつかはこのサイトでも紹介してきた。今回のは、そのヘキサゴンレンチの補助工具である。補助工具、と言って軽く見ちゃいけない。そもそも、たとえば壁に接したところにあるヘックスボルトをL字型のヘキサゴンボルトで締めたり緩めたりすると、クルクル工具自体を回せない。壁にぶつかるたびに、工具を一度ネジから外し、差し込み直す・・・・。う~ん、これじゃとてもじゃないが作業効率が悪い!
と、そこで、この補助工具「リターンハンドルSP」の出番。先端部が水道管のツナギ部のような形をしていて、レンチの先端部をこの補助工具の穴に繋げ、回す。次にクルっと向きを変えることができるので、ちくいち工具を離れ離れにさせることなく、クルクルとごく自然に回せる。相撲の決まり手の「かいなひねり」のような・・・・言葉でいうと、わかりづらいが、とにかく手に取り使うと、「な~んだ!」というふうに合点がいくはず。延長工具なので、樹脂製の延長グリップ(プラス35㎜)で締め付けトルクが4倍近くになるのも利点といえば利点。ヘキサゴンレンチが小さいとカタが大きく、スムーズに回せないので、樹脂製の小パーツが準備されている。それが「マジカアダプター」と呼ぶ早回しアダプター。“マジカ”は、この場合、“マジか?”ではなく、MAJICの意味らしい。使うと、なるほどね! という思い。価格は1919円(マジカアダプタは200円)。http://www.niigata-honmono.jp/wise/
このほど、半自伝的小説『クルマとバイク、そして僕』(写真)ができました。
内容は、70~80年代の自動車雑誌編集部員の青春迷走物語で個性あふれる男たちが登場します。文庫本、311ページ、価格800円(税別)です。AMAZONなどのサイトでも購入可能です。クルマやバイクに興味のない方にも面白く読める本にしています。
この小説を5名様にプレゼントします。①お名前、②ご住所、③ブログ記事の感想などを添えて、下記のアドレスに応募ください!! 締め切りは、すこし延長して12月末とします。発表は発送をもって代えさせてもらいます。
[email protected]
10月23日プレスデーを迎えた東京モーターショーは、新たなチャレンジをしていた
そのひとつの展示物は、ドアが上方に跳ね上がるガルウイングのスポーツカーだ。
「環境重視の世の中、いまどきスポーツカーとは解せない!」
そんな声が聞こえてきそうだが、実は、これ「可能な限りの植物由来のパーツで構成した未来のクルマ」だという。植物由来とは何だ? 早い話、これまで無駄に捨てられることが多い木材だという。木材なら、いまのところ無限にあるし、そもそもカーボンニュートラルである。加工時の熱源に目をつぶれば、CO2の排出はゼロだ。
ドアアウターパネル、ドアトリム、ルーフパネル、バックドアガラス、ボンネット、リアスポイラー、フロントアンダーカバー、ルーフサイドレール、バッテリーキャリア、フロア素材など計13の部品が、CNF(セルロース・ナノ・ファイバー)と呼ばれる次世代素材だという。
ところがよくよく調べると、13品目のうち100%CNFというのがボンネットとルーフサイドレールの2品目だけ。そのほかは10~15%に過ぎない。これでは環境重視、と言えそうもない。でも担当者は「近い将来クルマの重量を10%減らせます!」と胸を張る。
このプロジェクト、実は2016年から環境省の肝いりで、京都大学を軸に22の大学、研究機関、それに自動車部品メーカーが協力して動き出したという。「植物の骨格成分をナノレベル(1/10億ミリ!)で細かく解きほぐすことで、強度が鉄の5倍、熱膨張がガラスの1/50という魅力的な素材に変身する」というのだ。単にCO2の削減だけではないところに新味がある。しかも、従来こうした新素材は“走る・曲がる・止まる”のクルマの3要素と直接関係のないボディ部品だけだったが、エンジンのインテーク・マニホールドやエアコンの樹脂ハウジングにも、この新素材の取り組みを検証中だという。
このところの異常気象による被害を前に、差し迫る地球温暖化の危機にどれほど効果があるか不明だが、まじめ度はけっして低くないようだ。
1トン積みのSN型とその大型SSN型がデビューしたのは、昭和27年である。
V型2気筒1000㏄の空冷エンジン、油圧ブレーキに、前輪支持の油圧式ダンパーを加え、さらにセルモーター(スターター)を付けることで始動性を格段に向上し、より扱いやすくしている。キックスタートはある意味コツがいるが、スターターを付けることで、誰にでも始動ができるようになり、ユーザー層を増やしたのである。また前面にウインドシールドを追加し、運転手保護を狙ったのもこのころだ。ごく初期のクルマの安全性向上のレベルはこの程度だった。
この当時の3輪自動車は様々な使い方をされていたので、エンジン、荷箱の種類、積載量、車体寸法などの組み合わせで、市場に受け入れやすいように豊富な車種を発売。こうした努力が実り、生産台数の年々増加した。4年前の昭和23年には前年の倍の3880台、翌24年には戦前の最高記録である5200台を抜いて、7200台となり、日本での3輪自動車生産の27%を占めた。26年には、発動機製造㈱からダイハツ工業㈱に改称したのである。
当時のオート3輪メーカーとしては、マツダの東洋工業が、ほぼ互角のシェアで、そのあとを「くろがね」の日本内燃機、ジャイアントの愛知企業、三井精機の「オリエント」、明和興業の「アキツ」、「みずしま」の三菱重工業などが連なった。
写真は、昭和25年登場の全長3.68mの大型車SSH型。空冷4サイクル2気筒1000エンジン。油圧ブレーキを採用している。
秋の催しで、多いのはサービスマン技術コンテストだ。
日頃は、かげに隠れてあまり注目を浴びることのないメカニックが脚光を浴びるタイミングである。数が多いので、まばゆい世界で晴れて賞賛されるのは、ごく一部のメカニック。とはいえ、自動車ビジネスにサービス(メンテナンスと整備)は、絶対欠かせない! ということを思い知らされる季節だ。PCや家電の世界ではこうしたコンテストはないようだ。
トラック・バスを扱う日野自動車のサービス技術コンクールは、今年で48回目だという。
場所は、横浜線の八王子みなみ野駅から徒歩10分の研修センターだ。全国から予選を勝ち抜いた精鋭たち計36名のメカニックが、朝から日が落ちるまで、熱い戦いを展開した。
3人一組で、90分間とトラブルブルシューティングをはじめとする車両競技は、一番のポイントだ。
モデル車は、小型トラックのデュトロだ。これまで車両競技といえば大型トラックだったのが、小口配送の活発化で、小型が主流になりつつあるのか? それとも新発売したばかりだからか?(だとしたら地方の整備士は触れる機会が少なく不利になるが)
課題は、エンジン始動時にクラッチが重くなる! といったいっけん不可解な不具合から、ライト類の点検、補器ベルトの交換、タイヤのバルブ交換など、課題がバラエティに富んで選手たちは文字通り大車輪で動き回る! 修理したら、きちんとお客様役の審査員に報告しなくてはいけない。加えて、メーカーへの報告書も作成……日頃のメカニックたちのお仕事の一端を拝見し、感嘆し、やがて憧れの気持ちがわくばかり。
ソケットツール専門の工具メーカーKO-KENが、ドライバー部門に進出してかれこれ10年以上になる。
この差し替え式のナットグリップ・ソケットドライバーは、新製品ではないが、なかなかよくできているので、紹介したい。
全長が235㎜ということは普通のプラス2番ドライバーに比べ少し長め。重量は130gと軽い部類だ。
手に持つとバランスも悪くはない。この工具の面白いところは、軸が差替え式で、7,8,10,12㎜の4つのサイズが準備されている点だ。写真は10㎜だが、10㎜単品だと2680円。4本の長い軸セットだとメーカー小売価格6170円だという。国産にしてはリーズナブルなプライスだ。
差し込み式ドライバーにありがちなのは、軸とグリップの穴に遊びが多く、剛性感が小さいという点。ところはこれは、名うてのモノづくりメーカーであるKO-KENだけあり、遊びはほとんど感じない。ソケット部は、KO-KEN得意の内側の2個の鋼球(ボール)を忍ばせ、外からスナップリングで押さえている構造。これにより、ついうっかりすると落下しがちなナットやボルトをしっかりホールドして、シュアの作業ができる。
グリップは、KO-KENドライバー共通のデザインで、乾いているときは手のひらにフィットする形状である。ただ、いじわるで石鹸を付けた状態でグイっと握ってトルクを掛けると、スルスルと空転しなんとも頼りない。こうしたシチュエーションは稀とはいえ、ないわけではない!? いささか興覚めするのである。
このほど、半自伝的小説『クルマとバイク、そして僕』(写真)ができました。内容は、70~80年代の自動車雑誌編集部員の青春迷走小説で個性あふれる男たちが登場します。文庫本、311ページ、価格800円(税別)です。AMAZONなどのサイトでも購入可能です。クルマやバイクに興味のない方にも面白く読める本にしています。
この小説を5名様にプレゼントします。①お名前、②ご住所、③ブログ記事の感想などを添えて、下記のアドレスに応募ください!! 締め切りは、11月末。発表は発送をもって代えさせてもらいます。
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