いつの間にか喫茶店がほぼ消えて「立ち飲みコーヒーショップ」が定着したかと思うと、今度は「立ち食いステーキハウス」あるいは「立ち食いフレンチ」。このところの世の中の急激な変化は、目が回るほどだ。これって“人々のライフスタイルの変化”が、ビジネスモデルに変化を及ぼしている。
タイヤショップも、大きく変わりつつあるようだ。
「待ち時間なし!」を売り物にしたタイヤショップが登場したのだ。たとえば昨年9月オープンした「タイヤショップ・ショウワレイクタウン店」がそれ。
実は、このタイヤショップ、乗用車のタイヤはもちろんだが、大型トラックのタイヤに対応するお店。
大型タイヤは、21インチやときには22インチといった大きなサイズのタイヤなので、サイズを網羅して在庫するのは無理がある。大型車のピット数に限りがあり、しかもトラックタイヤは1台当たりの本数も多いので、作業時間が乗用車に比べ長くなりがち。
そこで、あらかじめ電話もしくはホームページから事前予約をしておけば、スタッフがスタンバイしているので、「待ち時間なし!」で無事タイヤ交換完了だという。ホームページではピットの空き状況が一目でわかるので便利。1か月先から予約可能だという。
「といっても、5分かそこらは、お待ちいただくので、事務所内にカフェを併設しています」とニコニコ顔の店長。店内に足を踏み入れると、吹き抜けの気持ちいい空間が広がり、カフェと見まがうほどのテーブル席が複数並ぶ。「大人のお客様にはコーヒー、日本茶、お子様にはジュースをお出ししています」。これなら、わずかな待ち時間でも快適に過ごせそうだ。
聞けば、大型車のお客様は、ほとんどが近在の運送業者さんで、事前にナンバープレート4桁の数字で、タイヤサイズと履歴などを把握しているとのこと。パンクして緊急で入店するトラックはあまりないという。トラック大好きの乗用車のお客様にとっては、トラックの“あるある知識”をキャッチできるお店かもしれない。営業時間は9時~19時。℡048-967-7600
ダイハツはトヨタグループの中で、軽自動車の生産・販売に重点を置きながらトヨタのパブリカの受託生産をしたり、トヨタからの役員を招聘して、経営を強固にしていった。
グローバル経済が進む中で、経営の安定は大前提としても、やはり独自の商品を生み出し、ダイハツのアイデンティティを世の中に示す。そんな野心がダイハツの開発陣の中でムクムクと生まれてきても、不思議ではない。むしろ自然の流れである。
昭和52年にデビューした「シャレード」は、おそらくそんな野心を秘めたコンパクトカー(当時は“大衆車”と呼んだ)「シャレード」と聞くとオードリー・ヘップバーン主演の同名の映画を思い出す。が、実はシャレードとは、身振り手振りである言葉を言いあてる“ジェスチャー・ゲーム”をさす。“言葉に頼らず、何かに託して表現”する意味らしい。
ダイハツの関係者が、意味深長な車名に込めた当時の気持ちを、つい忖度してしまう。開発を指揮したのは、西田弘専務だった。
このクルマは、“5平米カー”と喧伝され(写真)、大人4人がゆったり乗れるミニマムな、それでいてどこかおしゃれなクルマだった。しかもダイハツの技術があちこちに散りばめられていた。その一つが直列3気筒という実にユニークなエンジン(写真)。3気筒1000ccエンジンは、過不足なく回り燃費もよく心地いいエンジンだった。「驚異の1リッターカー」とか「小さな大物登場!」という触れ込みで、その年のカー・オブ・ザ・イヤーに輝いている。各地のエコランでも大活躍している。この3気筒エンジン、いまにつながるエコエンジンの走りだともいえる。
「カットモデル」というのをご存じだろうか?
エンジンやクルマのボディをカットして、ところどころにペイントをして、エンジンやクルマの仕組みを理解してもらう教材。たとえば直列6気筒エンジンともなると、6個の気筒があるので、ピストンの上下と吸気と排気バルブの動きが、教科書ではとりあえず理解したとしても、リアリティを持てない。そこで、モーターのチカラで上下動するカットモデルがあれば、たちどころに理解できるというものだ。ロータリーエンジンや水平対向エンジンなどのレアモノもある。じつは、こうしたクルマのエンジンやボディのカットモデルは、長いあいだ自動車メーカーのいわば“専売特許”的な教材だと思っていた。自社の技術を広く理解してもらい、ブランド力を高めたり販売増進に結び付ける、そんな狙いだと…‥。
ところが、こうしたエンジンやボディのカットモデルを学生に作らせ、自前の教材としている自動車整備専門学校がある。4年間で1級整備士資格も取れる「埼玉自動車大学校」(埼玉県北足立郡伊奈町)がそれだ。この学校に在学中、年間1個はつくるという。
作り方をこっそり教えてもらった(といっても簡単にはいかない)ところによると、すべて弓のこぎりでカットするという。まず、何を見せるのかを考え、どこをどう切るのかをケガキ線を入れ、あとはギコギコと切るのだという。「ピストンを動かそうとしてカットすると、シリンダーが半分になり、ひずみが入りリングが邪魔してピストンが上下しなくなる。そこで、リングをみえるところだけ残しあとはカットする」(菊地室長)という。
このカットモデルづくり、学校創設以来約60年間恒例行事のようにおこなっているという。すべて在庫できないのでかなり廃棄しましたが、と言いながら、いまでも80点近く校舎内にあるので、いつでも見ることができる。ビッグサイトや幕張メッセなどのイベント会場での貸し出しでも活躍しているカットモデル。意外なところで活躍しているようだ。
「いまどきのオイルフィルターレンチは、エンジンルームが手狭なので、お椀型でないと使えない!」
走行5000キロあるいは7000キロごとにオイル交換&フィルター交換をおこなっている真面目な向きは、年2回はフィルターレンチを手にする。たしかにオイルフィルターのいわゆる“家庭環境”にもよるが、押し並べて、お椀型が便利だ、とされる。でも、お椀型だとラチェットハンドルとエクステンションバー、合計3つの合体となり、ある意味面倒。
今回扱うフィルターレンチは、「オイルフィルタープライヤー」と呼んでいるように、あくまでもプライヤー(グリップのある!)である。オールインワン・タイプなので、この点では使いやすい。
全長250㎜とコンパクトにできているので、狭いところでも意外と使えるのだ。重量も315gとそれほど重くないので、クルマの下にもぐっての作業もさほど苦にはならない。
このプライヤー、クルマ以外でも活躍の場がある。
個人的なお話で恐縮なのだが、先日直径90㎜ほどの瓶詰の蓋を開けるのに、苦労した。手だけを使い、思いっきり力を込めてもダメだった。あらかじめお湯で温めてもうまくゆかなかった。
そこで、このプライヤーがあるのを思い出し、試しに使ってみたら、何のことはない、さっきの苦労がウソのようにあっさりと蓋を開けることができた。とりたててのコツも不要で、相手の蓋も傷つかなかった。あらためて、爪をよく眺めると、アゴ部分にある3カ所の爪の形状が、実によくできていることに気付いた。緩めと締めはプライヤー本体を逆にするだけ。相手の直径に合わせて、3段階で調整ができる。品番P-115。㈱涌井製作所 新潟県三条市塚野目2171 ℡0256-32-0351
自動車整備工場の仕事というのは、大きく分けて点検整備とトラブルシューティング(故障診断)に分けられる。
前者の点検整備というのは、12か月ごと、あるいは24か月の車検整備ということで、国が定めた50個ほどの点検項目を一つずつチェックし、整備記録簿にレ点を付けたり、部品を交換したときはバツ印を付けたり、調整の場合は英語のアジャストの頭文字Aを付ける。締め付け不足を補うときはトルクのTを付ける。じつは、この点検作業は、クルマ1台につき1人もしくは2人でおこなう。ランプなどの灯火類を確認するには2人の方がやりやすいからだ。
この点検・整備をAI技術でおこなう試みがダイハツでスタートした。メカニックの胸元にウエアラブル・マイクを取り付け、ブルートゥース通信でPCとやり取りする。女性のロボット音声で点検項目を伝えられると、メカニックはその作業をおこない、その都度マイクに「良好!」と発話する。すると自動で記録簿にその結果が記入されていく……という仕組み。
つまり、スパナを持った手にいちいちボールペンを持ち替えることもないし、その都度手袋を取り外す手間もいらない。記録簿自体も油のついた手で触ることがないので汚れる心配がない。これにより、15~30%ほど効率が高まり、ひいては作業コストが下がるという。
しかも、不具合個所のデータを蓄積することが容易になるので、より信頼性の高いクルマづくりにフィードバックできるという。このシステムを開発した担当者に聞くと、一番のポイントは音声をいかにノイズの多い工場内で、クリアに聞き取れるかだったという。音声学のデータから、女性の2~8KHz(キロヘルツ)が一番聞き取りやすいようだ。一説によると、人間は赤ちゃん時のお母さんの声が一番聞き取れるということと通底しているようだ。
このAIによる点検・整備システム、2018年2月から高知を手始めにダイハツの全国のディーラー工場で、順次導入されているようだ。
そこで、知人で1級整備士のKさんに、このAI技術の導入について意見を聞いた。すると意外な答えが返ってきた。
「点検は駄目な項目だけ覚えておけばいいだけで、もし忘れそうならそこらの紙にチョチョイとメモして、あとは事務所で記録簿に書き写せばいいだけですよ。効率だけを追いかけると、整備士の究極のタスクである、その先の故障診断能力がおざなりになると思います。感覚的にはなんだか機械の奴隷に成り下がる、そんな印象ですね」う~ん、職人の世界にAIの導入。なかなか難しい。今後、他のブランドのディーラーの動向が注目される。
モータリゼーションの機運が高まりつつある状況を背景に、ダイハツは軽乗用車の進出を図った。
昭和41年11月発売の「フェロー」(写真)である。エンジンは水冷2気筒2サイクル29PS。変速機は4速MT。車両重量495㎏。エンジン縦置きのFR方式で、大人4人がゆったり乗れて最高速時速100キロを誇った。居住性、走行性などライバル車を凌駕し、価格も抑えたことで、軽のダイハツというイメージを強く定着させた。
昭和30年代後半から40年代初めになると、日本の自動車産業は大きな転換点を迎える。
貿易・資本の自由化が進むなか、海外の自動車メーカーとの本格的な競争が始まろうとしていた。
具体的に言えば、当時圧倒的存在感を示していたアメリカのビッグ3(GMゼネラルモーターズ,フォード、クライスラー)が日本市場にやってくる。江戸末期の黒船襲来のように、今にも市場を独占するのではないかという危機感が日本の産業界を覆っていた。
弱小の自動車メーカーではこれからは立ち行かなくなる。通産省の指導のもと業界再編の動きが沸き起こったのだ。昭和39年、軽自動車メーカーの愛知機械工業㈱と日産が業務提携、41年にはプリンス自動車と日産が合併。同じ年トヨタと日野自動車が業務提携している。生き残りをかけて、脇を締め敵に立ち向かおうという体制だ。
こうした流れの中で、ダイハツもトヨタグループの一員になることを昭和42年に決定する。
当時の2社の概要は、ダイハツが年間約22万台の生産に対し、トヨタは約83万台。従業員数ダイハツが7600名、トヨタが2万8000名だった。トヨタはダイハツの約4倍の規模の自動車メーカーだった。
ダイハツとしては、大資本のもとで経営がより安定するし、トヨタとしてはダイハツの小型車技術や日本屈指のディーゼルエンジン技術を得られるという思惑があった。
先日鬼籍に入ったノムさんこと、野村克也元監督。「勝ちに不思議な勝ちあり、負けるに不思議な負けなし」など、数々の名言を残し、引退に瀕した選手を再生させるなど長年にわたり名将ぶりを発揮した。王、長嶋が常に日の当たる場所で咲くヒマワリだとすれば、自分は地味な“月見草”だと自嘲した。そんなハングリー精神を抱え、他を寄せ付けない高い頭脳をもった野村監督。その相似形をクルマ業界で見つけるとしたら、ホンダの創業者である本田宗一郎氏ではなかろうか? ややこじ付けに聞こえそうだが。
本田さんを知る人が語るエピソードはいずれも桁外れなものが多い。現場であまりに鈍感な仕事ぶりをした部下に、スパナが飛んできた! そんないまではパワハラもどきのエピソードもあるが、今回取材を通じて知ったエピソードは、「一つのエンブレムと10億円」とでも言いたくなるテーマだ。
上野と浅草のあいだにあるクルマのエンブレムをつくって60年以上の歴史を持つ上原ネームプレート工業。日ごろ何の気なしに眺めているエンブレムの周辺情報を取材したのだ。材質、モノづくり、歴史、エピソードなどなど聞くことは山のようにある。デザイナーには申し訳ないが、たとえばクルマのエンブレムを取り外したら、よほどのクルママニアでない限り車名はわかない。逆に言えばエンブレムこそそのクルマのアイデンティティを示す唯一のモノ!?
そんなエンブレムと本田宗一郎の関係とは何か?
アメリカ市場での高級車ブランド・アキュラをリリースした1990年、いまから30年前の話。本田さんが元気な時だ。アキュラがほぼ完成し、あとは本田さんの認可を受けるだけ。そのとき、本田さんはエンブレムのHのデザインに待ったをかけたのだ。ブーメランが向き合わせてHと読ませるデザイン。これを本田さんはHとは読めないとしてNO!を突き付けたのだ。
さぁ、大変。横浜港から第1弾のクルマがアメリカに向け積み込む数日前。デザイナーが、急遽手直ししてようやく本田さんがOKを出したのが、写真のロゴ(右)。ビフォア(左)のモノに横一本棒を追加したのだ。カタログをつくりなおし、エンブレムをみな張り替えたという。鶴の一声で、当時のお金で、ざっくり10億円のお金が吹っ飛んだという。
“クルマが路上でエンコした!”
そんな時に役立つ! ・・・・かもしれない道具一式が入ったセットである。見つけたのは、たまたま出かけたCOSTCO。タイヤに空気を補充する電動エアコンプレッサー、立派そうに見える3.6mもあるブースターケーブル、車内に閉じ込められた時ガラス窓を割るセーフティハンマーなどなど合計7個の部品、というか雑貨。これが紺青のおしゃれなキャリングケースに入って、価格が3498円(税込)。どこかのTV通販のCMではないが、「エアコンプレッサーだけでも3000円はします!(だからお買い得!)」と頭のなかでそろばんをはじき、購入してしまった。
こういう商品って、「安物買いの銭失い」の気配があるものの、正月の福袋を求めた子供時代に戻ってなんだワクワクする。
冷静に、ガレージで広げて一品ずつ検証してみた。一番引き付けられたキャリングバックは、今流の言葉ではEVAケースというそうだ。ネットで検索すると出てくるが、EVAが何の意味か? 語源は何かが分からない。取っ手がやや弱そうだが、軽いものを入れて運ぶには、街で使うバックとしても、イケそうだ。
ところが、撮影のために三角停止板を広げようとして、ガビ~ン! となった。ややチカラまかせに広げようとしたら、ジョイント部のリベットが抜け落ち、あららという間に各パーツがバラバラになったのだ! ノギスで測定したら、わずかφ3㎜のリベットを使っていて、「これじゃ駄目だっ!」とため息をついた。
ブルーの軍手は、イボイボが付いていて悪くないようだ。セーフティハンマーはアメリカ人の手にもなじむように大振りで使えそうだ。ブースターケーブルも、見たところ信頼がおけそう。タイヤの空気を充填するコンプレッサーは、スペアタイヤなしのイマドキのクルマに標準でついている中国製だが、これまでの経験から言えばあまり信頼性がない。薄手のブランケットは、万が一の場合クルマの下にもぐりためのモノのようだ。
見逃しそうだが、ダクトテープというのも入っている。これは色こそシルバーだが、ガムテープそのもの。バンパーが破損したら、ガムテープで応急処理する‥‥そんなことだろうか?
とにかくこのキット、GOOD YEARのブランドで「プレミアム・セーフティ・キット」と謳うだけに、それなりの雑貨(アイテム)があるにはあるが、長く愛着を抱いて使うという代物ではないようだ。ちなみに、重量が3㎏、大きさが330×200×130㎜で小型のスーツケースほどだ。
どうでもいいコトかもしれないが、自動翻訳機が普及したせいか、こうした輸入製品の説明書には、とんでもない日本語がかかれていることが多く、日本語の乱れを加速する役目をしているようだ。たとえばThis is not insulating tape を「これはテープを絶縁していません」と訳している。もちろん「このテープは絶縁タイプではありません」の意味だ(写真)。