みなさん!知ってますCAR?

2021年2 月15日 (月曜日)

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ホンマに? 前のめり気味の“脱化石燃料車時代”にシフトできる!?

脱化石時代①

脱化石時代②

すでにいろいろな媒体で明らかなように、2050年までにCO2などの温室効果ガスを「実質ゼロ」にする動きが本格的に動き出そうとしている。そのおもなターゲットは、乗用車から出るCO2だ。計画の実効性を確実にする意味で「2030年代に新車の乗用車をすべて電動化、つまりEVあるいはFCV(燃料電池車)に切り替えるとしている。
  菅さんの発言の勢いから「クルマの排ガスをゼロにすれば、日本列島から出るCO2はゼロになる」雰囲気。だが、コトはそんなに単純ではない。そもそも自動車のマフラーから出る排ガス(写真は、シエンタHVのマフラー)がワルモノの代表選手なのかどうかだ? 
  そこでエンジンの消滅に哀愁をいだく一人として、日本のCO2の排出量の内実を調べてみた。
  一昨年のデータでは、日本で全CO2排出量は、なんと11憶3800万トン! うち鉄道や航空を含めた運輸部門が18.5%を占める。そのなかで自動車が占める割合は約90%。さらにそのうち約半数が乗用車。ちなみに、全体のうち一番CO2を多く出しているのは工場などの産業部門で、約35%。家庭からは約14.6%である(図参照)。
  要するに、「乗用車のマフラーからは、約10%のCO2を出している。その量は約1億トンにもおよぶ!」ということになる。
  この10%をどう見るかだ。これからの10年で、いっきに脱化石燃料車に切り替えるか? となると、夏の電力不足が引きおこると予測できる。それだけではなく、これまでのエンジン技術が消滅し、モノづくり日本の屋台骨が大きく傾く恐れ大。現在自動車関連で日々仕事をしている人口は約540万人。家族を含めると、ざっと日本の1/4を占める。明治初期の士族の没落、あるいは敗戦後の農地解放による237万人の地主の没落といった大きな社会の変化、いやそれ以上の革命に近い社会変動が起こる可能性がある。
  そして、そもそもEV化が進んだとしても、電気自体をCO2がバカスカ出る火力発電所でつくる間抜けなことをしていたら、とんだ悲喜劇が演じられることになる。それにモノづくり工場から出る35%のCO2をどういう手段でゼロにするのか? こう考えると、なんとも不透明感が覆う世界だ。

カーライフ大助かり知恵袋1

遅れてきたお雇い外国人 ウイリアム・ゴーハム伝(第4回)

ウイリアムゴーハムさん  1888年というから日本の元号でいえば明治21年、ゴーハムはサンフランシスコに生まれている。父親はアメリカ初の空気入りタイヤを開発したBFグッドリッチタイヤの代理店を営んでおり、経済的にも何自由なく育てられた。
  時代は、ちょうどガソリンエンジン車が優位に立つ少し前の時代。
  電気自動車そして蒸気機関自動車も次世代の乗り物として注目されていた。子供時代のゴーハムは、裕福な父親から蒸気エンジン車をプレゼントされている。とにかく子供の頃から機械ものが大好きだった。
  10代の中頃ですでに手作りのエンジン付き木製クルマを作り、走らせていたという。そして青年となり、地元サンフランシスコの工科大学で電気学科を学んだ。電気を学んだのは、広くテクノロジーを知りたいという好奇心からだった。
  大学を卒業後、ゴーハムは10代のころ木製エンジン車を作った自宅内の工場で、本格的なモノづくり工房として、エンジンの設計・製作した。それも自動車だけでなく、航空機用、船舶用、発電機用、農機具用などあらゆる分野での動力として小型エンジンを多角的に研究開発し始めた。小型エンジンは、芝刈り機、製粉機、噴霧器、ポンプ、耕運機、ボートなどの動力として使用用途がどんどん広がっていった。
  そこで、こうした小型エンジンを使った事業をさらに本格化させるため、父親と組んで「ゴーハムエンジニアリング・カンパニー」を設立した。1911年、ゴーハムが23歳のときである。
  この初のビジネスの挑戦は、順調にいきあっという間に従業員100名を超える企業へと成長した。オークランドにも工場を立ち上げ、消防ポンプ用のエンジンを製作したことで、一段と企業規模が大きくなり、スタッフの数も数百人となっていった。

カーライフ大助かり知恵袋2

700ページの桂木洋二『日本における自動車の世紀』(グランプリ出版)

+日本における自動車の世紀  前回、折口透(本名伊藤哲)の岩波書店刊『自動車の世紀』を取り上げた。新書で、240ページほど、速読テクを駆使して、集中すれば5~6時間もあれば読める。
  ところが、今回取り上げる本は、速読テクを用いてもそう簡単に読破できない。桂木洋二著『日本における自動車の世紀』。A5版(縦210横148㎜)で約700ページもあるからだ。
  普通の読者は、この異常な分厚さに恐れおののき後ずさりするに違いない。そんな本である。普通の単行本の約3倍の厚み(ノギスで測定したら37.4mmあった! 重量は1㎏に迫る970g!)、しかも各章ごとに虫眼鏡でないと読めないほど小さな注釈・備考(NOTE)がこれ見よがしについている。正直私も、いっきに読破する気力は初めからゼロでした。
  いつも拾い読み状態で10年ぐらい書斎の隅に置いてある、そんな本である。もちろん電車のなかや茶店でひも解くことができない、そんな本でもある。
  じつは、この本、本体価格が4800円もするので、筆者本人曰く「あまり売れてはいないようだ」(かくいう私も筆者から進呈された口だ)。ちなみに奥付を見ると1999年8月刊だ。20年以上も前の本。
  ところで、調べ物をしてこの本を開くと、ついつい引きこまれ、探していた内容を忘れてついつい読みふける、そんな本でもある。苦言をいえば、目次がやや詳しいので多少はリカバーしているが、索引を作成する労を惜しんだばかりに、検索するのに苦労する。
  “トヨタと日産を中心に”と謳うだけに、両社のクルマづくり、企業としてのありようを深いところで調べて書いている。その面では他の追従を許さない。なかでも、日産の没落のキッカケをつくった川又克二氏(1905~1986年)の内実に迫る。このへんは、高杉良さんの小説「労働貴族」(講談社文庫)と合わせ読むと、よく理解できる。
  それにしても、こんな厚い本をよく書いたものだし、版元もよく企画を通したものだと思う。秘密は・・・・筆者自体が、版元の社長をしていたからできた。でも、それだけではない異常な熱い情熱のたまものである。突然変なことを言うようだが、本ができるかできないかは、地球上に人類が生息できたに近い、まさに奇跡的世界なのである。
  ちなみに、筆者の桂木氏から直接訊いたエピソードだが、フェアレディZを北米で売りまくった“ミスターK”こと片山豊氏(1909~2015年)には、晩年ひとつの習慣があったという。生前枕元にこの本を置いていて数ページ目を通してのち眠りに入った、そんな習慣を愛したということだ。私の場合は、ときどき枕代わりにしている、そんな本である。

愛車メンテのプラスアルファ情報

ホームセンターオリジナルのコンビレンチ?

ビバホームのコンビレンチ1

ビバホームのコンビレンチ2

  工具業界も10年前は、考えられなかったほど、いつの間にか輸入工具が日本市場に進出している。ざっくり言えば中国製は、安かろう悪かろうで、百均の売り場でも手に入るもの。
  だが、台湾製はけっして侮れない工具が多くなった。たぶん、日本のバイヤー(販売元)が、台湾の工具メーカーにオーダーするカタチで商品化しているからだ。早い話日本人のテイストが入っている、たぶん。台湾の工具メーカーは、(10年ほど前取材したところによると)たいていは家族経営で、規模はせいぜいスタッフ10~30名ほど。なかには中国に工場を持つところもある。
  とにかくモノづくりの技術も高まり、日本のユーザーに満足を与えるクオリティの高い製品づくりを短期間でつくり上げるレベルまで高まっている。そのため、従来の日本の工具メーカーだけでなく、体力のある日本のホームセンターも、台湾製のオリジナル製品を日本で販売し始めている。今回取り上げるコンビネーションレンチも、そのひとつだ。
  ところが、この工具、不思議なことに、製品名はどこにもない。品番もない。シールには大きな文字で「ラチェットレンチギア式」とあるだけ。まさかこれが商品名とは思えない。
  ただ、輸入販売元はしっかり明記してある。㈱LIXILビバ(スーパービバホーム)である。埼玉県さいたま市に本社があり、全国に104店舗を展開するホームセンターである。
  今回取り上げたのは、軸の部分に大胆にも軽量化のための穴が開いているコンビネーションレンチである。メガネ部はラチェット式になっていてギア数が72とこまやかで、スムーズだ。ギアの音も心地よい。ブランド名も品番もないのが、不気味な気分を醸し出すのだが、CHROME VANADIUM(クロームバナジウム製)とサイズの12が明確に表示しているがなんとも変だ。
  う~ん、これを深読みすると、ラベルさえ張り替えれば、どこのバイヤーにも卸せるからなのか? 
  とりあえずいつものように、身体検査をしてみた。
  といってもこの場合は、全長をはかるのと重量を測定するだけだ。長さが200㎜で重さは79gだった。これまで累計30数ブランドほどのコンビレンチ(サイズはみな12㎜)を手に取ってみて、データを採取している。
  これに照らし合わせると通常は170㎜ぐらいで重さ70~80gなので、今回の台湾製は普通よりも1割強長い部類。長いということはそれだけ大きなトルクがかけられるが、工具箱のなかで邪魔になる側面を持つ。重量は穴あきのわりには平均値。見掛け倒しともいえなくもない。
  ところが、何度も触り、使うと悪くない面を発見した。角が滑らかなのだ。手に触れる感触が悪くない。そして、軽量化のための凹みが、実はトルクをかけるときの指の滑りをカバーしてくれる、そんな狙いも発見した。それにしてもブランド名がないのが、なんとも恨めしく感じた。価格は、12㎜で、998円だった。
  この記事を書いた翌日、念のためビバホームの本社に電話(フリーダイヤル0120-87-1146)で聞いたところ、面白いことが分かった。「この商品は、横浜の長津田店でしか販売していないもので、そのためHPで写真が載っていません。えっ、商品名が書いていない? これは失礼しました。実は、こちらでは、“ラチェットレンチ軽量タイプ”と社内で呼んでいます。ラベルと本体に商品名がないのは、たしかにお客様に不信感を抱かせるので、担当者に伝えておきます。…‥貴重なお話、ありがとうございます。ちなみにサイズは、8,10,12,13,14,17,19㎜があります」とのことだった。おそらく、長津田の担当者が商社的なゲリラ・ビジネスで、手に入れ販売している商品のようだ。

2021年2 月 1日 (月曜日)

TOP NEWS

新型ホンダN-ONEのRS・5MTの試乗で知る! イマドキKカーの素顔

ホンダN-ONE  ずいぶん前から、軽自動車が乗用車市場の約半数を占めるにいたった。
  ということは、Kカーを無視してジャパニーズカーを語れなくなった。そこで、8年ぶりにフルモデルチェンジしたホンダのN-ONE(エヌワン)に注目してみた。
  このクルマ、よく知られるようにそもそもF1を担当していた浅木泰昭氏らが中心で、作り上げた経緯のあるKカー。コスト無視のレースのエンジニアが、コスト最優先のカタマリのような商品「軽自動車」に向き合うとは? まさに我ながら、岡目八目の無責任ただよう好奇心120%で、かつて彼らに迫った覚えがある。
  そのとき印象的だったのは、プレミアムなヘッドライトの採用の背景だ。外装部品で一番壊れやすいヘッドライトをわざわざ、超高級仕様にしたことへの疑問。万が一のクラッシュでユーザーに不本意な修理代を突き付けていいのか? 下駄代わりの軽自動車に不釣り合いではないか? 
  ところが、これは当方の勇み足というか、余計なお世話だった。プレミアムなヘッドライト(ばかりではないが)のおかげもあり、ダイハツとスズキの牙城をいっきに崩すだけのパワーをNシリーズが発揮したのだ。N-BOXだけで、年間20万台以上というからすごい。お金があれば、何でもできる。勝てば官軍だ。
  で、今回発売したばかりのN-ONEに試乗してみた。
  それも超プレミアムで走り優先モデルRSの6速MTだ。黄色と黒のツートンカラー仕様。
  車内に入って、びっくりだ。文字通りインテリアの質感がヘタなコンパクトカーがぶっ飛ぶほど上々なのだ。走り出すと、ややノイジーだが、それでもかつての軽自動車から比べたら高級車でござい! の貫禄。適度に路面の凹凸を伝える感じも悪くない。6速MTはとてもスムーズで、「開発者が欲しいクルマづくりだな、これ。そうしたユーザーが少なくないクルマなんだな、これって」という印象で、どこまでも“ホンダ万歳!”なのだ。前モデルとカタチがほとんど同じで、なんだか新鮮味がないと思われがちだが、カタチは保守路線、中身は、たとえば安全装置がてんこ盛りで、質感向上、燃費そこそこ。・・・・こうなると、どこか死角はないか! とついつい考える悪い癖が頭のなかに持ち上がる。
  降りるとき痛いほど気づきました。ドアの開閉時の安っぽさ。開閉音、開閉時に手に伝わるドアの重みなど、いかんともしがたい宿痾が顔をのぞかせた。そして、無理難題をいえば、かつてのホンダ車が得意としたびっくり箱的クルマづくりが影を潜めている。これって、足踏みしている世相を反映している?! 車両価格は、なんと206万円だそうだ(ベースは159万円台から)。ドメスティック商品の軽自動車は、令和の時代にはいり、さらにジャパニーズ4畳半の唯我独尊の世界を構築している!?

カーライフ大助かり知恵袋1

遅れてきたお雇い外国人 ウイリアム・ゴーハム伝(第3回)

鮎川義介  振り返ってみれば、幕末から明治初期にかけての「お雇い外国人」の活躍は、自動車が地球上に登場する以前の19世紀の出来事である。
  「自動車の世紀」ともいわれた20世紀にはいると、「お雇い外国人」はすでに遠い昔の物語となっていた。
  ところが、日本の自動車産業の黎明期。いまや長い時間の経過でカスミがかかり見えづらくなっている。でも、よくよく調べてみると、まぎれもなく「お雇い外国人」がいるのである。初期の「お雇い外国人」から見ると「遅れてきたお雇い外国人」? 「20世紀のお雇い外国人」。その人こそが、この物語の主役ウイリアム・ゴーハムである。
  ゴーハムは、日産の前身・戸畑鋳物時代に鮎川義介と出会い、日産の生産技術と品質管理など自動車メーカーとしての土台作りの司令塔になった。のちの日産の飛躍に大いに貢献するのだが、13歳で父に連れられて日本にやってきたころ(1901年)のゴーハムは、自分の運命を大きく揺さぶる未来の出来事など予想できなかった。このときはわずか3か月ほどの滞在だったが、日本の自然、神社仏閣、そして日本人の礼節に接して、すっかり日本びいきになったようだ。

カーライフ大助かり知恵袋2

折口透『自動車の世紀』(岩波書店)に見る激動の自動車史

+自動車の世紀  筆者の折口透、本名伊藤哲さんは、1925年仙台に生まれ。東大理学部中退後、たぶんいろいろないきさつがあったんでしょうね、新橋にある雑誌「モーターマガジン」の編集長をへて、翻訳者として活躍されてきた人物だ。調べてみると早川書房や創元社から数多くの翻訳本を世に送り出している。
  残念ならが、面識こそないが、彼の書いた『自動車はじめて物語』(立風書房:1989年)は、参考文献の一つとして常に机上にすぐ取り出せるようにスタンバイしている本の一冊である。重要参考文献の一つだ。
  今回取り上げる『自動車の世紀』は、それまで雑誌や単行本に記してきた様々な記事を編集し、さらに書下ろし記事を加えたものだ。20世紀が終焉する3年前に発行されたもの。つまり岩波の編集部からの依頼でつくり上げたものだ。奥付を見ると1997年9月初版。
  発売するやすぐ手に入れ、期待をこめて通読した。そのときは、ふだんクルマとは縁がない岩波がどのように日用品化とかしているクルマを分析し、切り口の違いを見せるのか、そこに関心があった。だが、そうした期待は肩透かしを食らった。だから「自動車はじめて物語」のように、何度も読み返しはしておらず、本箱の隅に追いやっていた。
  岩波のクルマ本といえば1974年に出た数理経済学者・宇沢弘文氏の「自動車の社会的費用」だ。高度成長経済下で肥大化する自動車文明への衝撃的な警告書だった。この衝撃を持って受け止められた宇沢本が念頭にあったので、過大な期待をかけたのかもしれない。そこには岩波流のマジックはなかった。
  でも今回、あらためて『自動車の世紀』を冷静に読み直してみて、少し考えが変わった。
  この本のいいところは、20世紀の近代を形づくった自動車の歴史を数々のエピソードで語っていく。とくにクルマに関心がなくても、とっつきやすい。
  ただ、多くのエピソードとカタカナ文字が多すぎて、日ごろ自動車のことを書いている私ですら置いてきぼりを食らいそう。だから、緊張を強いられる。逆に言えば、わずか240ページほどの新書の一文一文のなかには、さらに分け入りたい好奇心を高ぶらせるテーマや挿話が散りばめられている。紙数のわりに内容の豊富さ。料理でいうとプレート料理に多くの食材を盛りつけすぎなのだ。その意味では、この本は、あくまでもそうした自動車の歴史をさらに知りたい人の手引書。皮肉をこめれば、予告編に過ぎない。
  ……それにしてもだ。エンジンを動力にしたクルマが、いま終焉を迎えつつある時代。エンジン付きの移動手段はすでに“お払い箱”になりつつある。「人間を時間と距離の制約から解放させてくれる自動車はフランス革命の延長上にあった」(26ページ)
  これって自動車への大いなる賛歌だ。19世紀からこれまで野心的な発明家が手掛けた自動車の数は3000車種とも4000車種、それ以上。自動車を作り出し、自動車を使い生活を愉快にした人々の数は累計どのくらいだろう? こうした人々の愛が、いっきに失われていくのだろうか? そう考えると、この本は、皮肉にも20世紀のもう一つの墓碑銘なのかもしれない。

愛車メンテのプラスアルファ情報

フジ矢の万能電工ペンチを使ってみた!

万能電工ペンチ1

万能電工ペンチ2

万能電工ペンチ3

  いろいろな分野で高いパフォーマンスを演じる人のことを世間は、こう呼ぶ。万能選手、マルチタレント、オールラウンドプレーヤーなどと。
  道具の世界でもよく探すと、マルチツールが登場している。
  でも、たいていは“八方美人”的である。いずれの分野も中途半端か、機能同士が足の引っ張り合いをして結局は“単能工具”に軍配が上がる場面が多い。だから、マルチ工具は、ポピュラーになれず、いつしか忘れられる運命が多い。
  ところが、今回取り上げる「電工ペンチ」だけは、しぶとく生き延びている。昭和40年代にはすでに出回っていたのではないだろうか? となると半世紀以上にわたり「万能電工ペンチ」は第1線(でもないが)で工具箱に収まり、ときどき大活躍を見せる。
  正直、バイクやクルマの整備で、万能ペンチの活躍する場面は少なくはなった。でも、先日自転車に付けた後付けのデジタル速度計&積算計のコードの不具合を修復するとき重宝したし、バイクのリアランプの取り外しを容易にするためギボシを取り付けるさいにも活躍してくれた。使用頻度は低いとはいえ、これ一つ持っていると、なにかと便利だ。
  今回ホームセンターで見つけてきたのは、ペンチやプライヤーで有名な東大阪のフジ矢ペンチブランドの「万能電工ペンチ」(購入か価格2178円。アマゾン価格は1627円と知るがっくり!)。台紙にMADE IN TAIWANとあるが、“クオリティ・ファースト”を謳うフジ矢だけに、期待をもって購入した。
  まず身体検査だ。手持ちの万能ペンチ(エーモン製)に比べ、重量で3割重い304グラム。これは全長が20m㎜長い240㎜もある。エルゴノミックなデカいグリップがそのぶん長く大きくなっている。
  刃部を研磨しているという触れ込みだが、ワイヤーストリッパーの切れ味というか、被覆をもぎ取る機能は、さほどの差はないと見た(強引にもぎ取る感じだ!)。ターミナルの圧着作業も、「こんなものかな!?」という程度(写真)。
  M5の小ねじまでなら切断できる機能は、心強い感じだ。ためしにM3ボルトを切断してみた。両手で比較的軽々切断できた。そのうえのM4ボルトも、何とかグリップに力を込めて切断完了。でも、切断面を見ると、ネジ部や傷んでいるので、ダイスで修正して新たにねじ込んだ方がベターな感じ。(ちなみにエーモン製はM4も切断能力が怪しい)
  で、気を取り直し最後M5ボルトの切断に挑戦した(写真)。う~ん、死ぬほど両手で力を込めてもダメ、そこで床に置き、全体重をかけでもとてもじゃないが食い込みすらしない。大ハンマーで上からぶっ叩けばどうかな? となるとせっかくの樹脂グリップがだめになる! 結論をいえばM5ボルトの切断は、不可ということのようだ。となるとこの工具、点数をつけるとすれば75点ぎりぎりで合格かな?


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