みなさん!知ってますCAR?

2021年3 月 1日 (月曜日)

TOP NEWS

トヨタみらい都市“ウーブン・シティ”の期待と不安

ウーブンシティ  トヨタの実験未来都市プロジェクトウーブン・シティ(WOVEN CITY)が、2月23日工事スタートした。“富士山”=233にゴロ合わせしたのだ。
  70万ヘクタール、東京ドーム15個分という富士山の裾野に広がる用地。ここは、もともと関東自動車工業を前身とした高級車センチュリーなどをつくってきた東富士工場(従業員数約1100名)の跡地。
  静岡県の裾野市と御殿場市にかかる広大な土地で、数10年後のクルマが走るとされてきた東富士研究所ともごく近いロケーション。ここに、自動運転車だけが走る道路、歩行者だけの道路、混流の道路、地下を走る物流用の道路など計4つの道路が、まさに人工知能や自動運転テクノロジーを組み込んだウーブン(編み込む)な未来都市。インフラと一緒にクルマの開発も進むので、加速度的に知見が蓄積できるというのが、大きな狙いだ。
  シニア世代、子育て世代、それに各国からのエンジニア合計約2000名が生活をおこない、これからのクルマ社会に必要なCASE(コネクティッド、オートノマス、シェアリング、エレクトロニック)をとことん実証し、研究するというものだ。
  このウーブン・シティ、今後20年かけて完成させていくというのだ。完成させながら、これからの未来社会のヒントにしていくというのが、大筋なハナシらしい。むろん、トヨタがコア企業ではあるが、内外からの企業を呼び込んでのプロジェクトで、NTTなど計2000社ほどが参加する見通し。
  このプロジェクトを地元はどう見ているか? ちなみに日本の地方都市が抱える課題は、少子高齢化や人口減少による税収入の減少などによる疲弊化だ。東海道メガロポリスの範疇にある裾野市や御殿場市は恵まれている地方だと思いがち。ところが、ほかと同じような課題を抱えているという。両市および静岡県は、こうした難題を一気に解決できる切り札としてこのトヨタのウーブン・シティをとらえているようだ。いわば、もろ手を挙げての賛成。まるで、アメリカの西海岸のシリコンバレーのように、海外から大注目され、インバウンド需要があふれかえる、という無邪気な夢を描いている向きもあるようだ。
  ところが、このプロジェクトは、そう簡単には成就できない面が透けて見える。
  このプロジェクトをスムーズに効率よく押し進めるには、街の住民の個人情報を緻密に管理される可能性がある。ということは、開かれた街づくりとバッティングすることになる(昨年中ごろ、カナダのトロントにグーグルがスマートシティを創設しようとして、個人情報の扱いが争点になり住民の反対をうけ、けっきょく撤退したという事例もある)。それにほかの地域からのクルマや人が入り込み、万が一事故が起きた場合を想定して、ちくいち地元警察の許可を取る必要も出てくる。これをクリアするには、特区制度で規制緩和という手もあるが、果たしてできるのか? となると豊田章男社長の言う「開かれた街にしたい!」という未来像も揺らぎがち。
  ともあれ、まだ工事が始まったばかりで、トヨタは、その青写真の全貌をほとんど公開していない。未知数の部分が多すぎるだけに、期待だけが肥大化し、今後必ず起こりうる不安に霞がかかるばかり。

カーライフ大助かり知恵袋1

遅れてきたお雇い外国人 ウイリアム・ゴーハム伝(第5回)

リバティエンジン  カルフォルニア州の地方都市に過ぎないオークランドでの数百名規模の工場経営の成功。いわば小さなアメリカンドリーム。
  でも、この成功は、若いゴーハムのこころの充足感を、埋めることができなかった。これだけでは満足していなかったのだ。
  次に取り組んだのが、航空機のエンジンである。飛行機の歴史は、よく知られるように1903年のライト兄弟の初飛行から始まる。ゴーハムは、とにかく持てる力を発揮して、最新の技術を投入して高性能な航空機エンジンを作り出すべく励んだ。そして出来上がったのが、V型6気筒150馬力のエンジン。このエンジンを搭載した飛行機に同乗して、彼はサンフランシスコのゴールデンブリッジのうえを試験飛行したという。1916年のことだ。
  このエンジンは、アメリカ政府によっておこなわれた厳しいテストを通過し、高い評価を得た。だが、ゴーハムのエンジンを凌駕する航空機エンジン「リバティエンジン」がその後しばらくして完成したからだ。
  結論を先走れば、アメリカにおけるゴーハムの航空機への野心は、この先絶たれることになる。その背景を駆け足で探ると‥‥。
  時代はちょうど第1次世界大戦のさなかである。1903年のライト兄弟の飛行からわずか10年少ししかたっていないながらも、航空機が戦争の新しい道具として欠かせないものとして捉えられ始めた、そんな時代。
  アメリカ政府は、対ドイツ戦線を決断した1か月後の1917年5月、航空機生産委員会の名のもとに、えりすぐりのエンジニア2人(パッカードのエンジニア/ジェシー・ヴィンセントとホールスコット・モーターカー所属のエルバート・ホール)をワシントンDCに招き、英国、フランス、ドイツなどの航空機を凌駕する航空機エンジンの設計を命じたのだ。高性能で量産化できるエンジン。そしてわずか2か月後に図面ができ、デトロイトにあるパッカードの自動車工場でV型8気筒の試作エンジンが組み上がり、さらに8月には、V型水冷12気筒エンジン(写真)が完成し試験され始めたのである。その秋には2万2500機が発注され、ビュイック、フォード、キャデラック、リンカーン、パッカードなどの自動車メーカーやエンジンメーカーに生産が割り振りされた。だが各工場の生産設備などの問題があり、一部はモジュールといってシリンダーならシリンダーだけの生産という具合に部品別生産がおこなわれ、2年間の間に2万基以上のエンジンが生み出されている。

カーライフ大助かり知恵袋2

梶山季之の産業スパイ小説『黒の試走車』(岩波現代文庫)

+黒い試走車  私が小学生のころ、昭和30年代に“トップ屋“と呼ばれる商売があった。
  高度成長経済が始まりかけていたころだと思う。週刊誌ブームが沸き起こり、出版社の依頼で週刊誌の記事を書くライターやジャーナリストが登場した。スクープ記事を追い求めるライター達。彼らのことを「世の中のトップの話題、美談も醜聞も先んじて追い求める男たち」という意味で、どうやら“トップ屋”と揶揄されたようだ。
  その代表格の作家が、梶山季之(1930~1975年)だ。今回取り上げる本は、その梶山がトップ屋から流行作家となった第1作と思われる作品「黒の試走車」である。文庫本で410ページばかりで、かなりの長編だ。読むのに4日かかった。
  日本に急速に訪れたマイカーブーム(モータリゼーション)で、憧れの存在だった自動車が高額商品には変わりないが、庶民の手の届く存在になりつつある、そんな時代。高度成長経済の陰で熾烈な戦いを演じる「産業スパイ」の世界を小説のカタチで展開した企業小説の走りともいえる。
  この本の初デビューは、カッパ・ノベルスである。1962年。光文社のカッパ・ブックスの姉妹版として、カッパ・ノベルスは、当時の出版界に旋風を巻き起こした。松本清張の「ゼロの焦点」「砂の器」、小松左京の「日本沈没」などミリオンセラーが少なくない。森村誠二や赤川次郎、西村京太郎などの小説も並ぶ。
  それにしても、いまから半世紀以上前(正確には60年前!)の本をホコリを払い、なぜわざわざ取り上げるのか? 不思議に思う読者も少なくないと思う。かくゆう私もこの本のタイトルは承知していたが、手に取ったことがなかった。この本がブームになったころ、日産の村山工場で少し仕事をしていた。1962年プリンス自動車の村山工場としてスタートし、1966年に日産に改組。2004年カルロスゴーンの改革で閉鎖したいわく付き工場だ。ここのプレス工程で工員として夏休みのアルバイトをした経験があり、その時の片腕のない高飛車な態度のガイダンスのおじさんがこの本を引き合いに出して説明してくれたことを覚えている。仕事は見上げるほどのプレス機の4隅に工員を配し、指を挟まないように同時に両手で大きなボタンを押すと上から金型が降りてきて、平板をあっという間にフェンダーなどのカタチにしてしまうというものだ。
  当時荻窪のアパートに住んでいたのだが、この工場には電車とバスを乗り継ぐため予想外に時間がかかり、3回ほど遅刻をして、その場で即刻首になった。けっきょく10日ほどしかプレス工としての経験はない。(ちなみに、数年まえホンダの狭山工場でプレス工程を取材したら、ほとんど無人ですべて自動でプレスされていた。マジシャンがトランプ・カードを右から左にシュシュッと移動させるように、すさまじい速度で成形されていた!)
  今回この本のタイトルを見て、そんな苦い経験が思い出された。
  この小説の主人公は、プリンス自動車とおぼしき自動車メーカーの企画PR課のサラリーマン。実は、この課の実態は産業スパイそのもので、業界誌に中傷記事を書かせてライバル企業を窮地に陥れようとしたり、ライバル企業の経営者会議を向かいのビルから覗き見て、読唇術を駆使して、ライバル社の新車価格をいち早く知ることで事業を有利に展開しようとする。でも、こうしたスパイ活動に身を染めるうちに、信頼していた同僚を失い、頼りにしていた仲間に裏切られる。そして、結婚を約束していた女性を使ってまでライバル企業の機密を盗もうとまでしていくことで、自分を失いかける。昭和時代における企業戦士のむなしさを読み取ることもできる。
  …‥そもそも行き過ぎた忠誠心はいまの若者の目にはギャグもしくは喜劇としか映らないか!?
  この本カッパ・ノベルスでデビューしたのち、43年後の2005年に京都にある人文関係のどちらかというとおかたい出版社(松籟社)から再版され、その2年後にはもっとお堅い版元岩波書店の岩波現代文庫に収まったのである(写真)。半世紀前の企業小説のどこが、必要とされているのか? それを探った。
  とにかく60年前の情報なので、駄目だしする箇所は少なくない。でも、当時30歳そこそこの梶山が短期間で、これだけの内容の本(とにかくクルマづくり、クルマの販売の世界などが詳細を究める)をよくまとめたことを思えば、素直にリスペクトせざるを得ない。情報自体が古さを否めない。でも、よく読み込んでみると昭和の貴重な記録と位置付けられるし、この本を読めば、だいたいクルマをめぐる産業の流れの大筋が掴める。存在価値があるのだ。
  登場人物は、業界紙の社長、銀座のマダム、それに美人ディーラー社長などいずれも濃い人物ばかり。サスペンスあり、えぐいラブシーンありの昭和の香り120%の企業エンタテイメント小説。ところが、よく眺めてみると、ところどころに東京の風景や、風俗(たとえば飲酒しての運転シーンが何の躊躇なく登場する!)が描かれている。移ろいやすいもの、たとえば人気の芸人などを登場させるのは、作品が早く古びるとして、こうした物語にはご法度なのだが、あえてそうしなかった。昭和39年の東京オリンピック以前の東京の風景や風俗が、作者が多分意図して入れ込んだのではないのだろうか? そう思わせるところがある。
  企業への行き過ぎた忠誠心と言えば、この本がデビューする数年前、実の姉貴がトヨタに勤める男に嫁いだ折、その披露宴での出来事が秀逸(皮肉だが)だった。披露宴で興にのった新郎側の上司や同僚が、奇妙な歌を歌い出したのだ。当時ライバル会社だった日産への露骨な悪態を並べた(第3者の耳には)聞くに堪えない歌詞を並び立てた歌だった。なりふり構わないライバル心剥き出しのサラリーマンの無邪気すぎる従順さに辟易した覚えがある。
  こう考えると、この企業小説は、働くとはどういうことなのか? 企業とはどういう役割なのか? 企業に所属するとはどういうことなのか、そんな基本を教えてくれる一冊なのかもしれない。梶山は早書きだと後ろ指を指されながら、60年後の時代でも読まれる小説を書いたことに深い敬意を表したい。

愛車メンテのプラスアルファ情報

IPSのコンビプライヤーは、ガタが少なく軽量が美点だが・・・・!?

IPSコンビプライヤー  長いあいだクルマやバイクの標準工具として“付録で付いてくるコンビネーションプライヤー”は、「この程度のものじゃない!?」という、いわば自嘲とあきらめがにじむ黄昏のツールだった。なにしろ、ガタが大きく、握ったときのココロがいまひとつ定まらない感じだし、表面処理もざらざらして、少しも愛着を感じない。・・・・それでも仕方なく使っていたのは、付録でタダで付いてきている(本当は車両価格に含まれるのだが)から。
  だからして逆説的に・・・・ドイツのクニペックスが輝いて見えるのかもしれない!?
  ここをなんとかせんと・・・・いけない! 今回取り上げるプライヤーはそんなモノづくり側のココロザシが、ほのかに見える製品である。新潟の五十嵐プライヤーIPSの製品である。品番がLPH-165である。
  このコンビプライヤーは、クニペックスとは正面対決を避けている。グイグイ使い込み、プロのメカニックの相棒として、いい仕事を支えるプライヤーがクニペックスだとすると、こちらは、ソフトタッチなのである。アゴ部分に樹脂のカバーを付け、つかむ相手にとてもやさしいのである。これなら、メッキ品をつかんでも、化粧ナットをつかんだ時も、相手がプラスチックで弱っちいものでも、とにかくキズが付きずらい。だから、あらかじめ、保護目的にウエスを軽く巻き付け、用心深くつかみかかる…‥なんて忖度(心遣い)をしなくても大丈夫。
  そしてこのコンビレンチのいいところは、ガタがまるでない。従来のコンビプライヤーの悪評を吹き払う。
  それに軽量だということ。実測128gである。数値的には従来品の約3割軽い。実際手に持つとフィーリングとしては約半分の重さだ。ということは、バイクのツーリングのお供工具の仲間入りを許してもいいかもしれない。
  あえて、不満なところをあげると、グリップがやや貧相なところ。それと全体のデザインももう一工夫してもらうと、購入価格1738円がお買い得プライスと認識できるのだが。それと商品のパッケージは、魅力があるが、商品名が意味不明に近い。「ワンタッチソフトコンビ」なのだから。


▲ページの先頭に戻る

Copyright © 2006-2010 showa-metal .co.,Ltd All Rights Reserved.