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2021年11 月 1日 (月曜日)

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ミステリー女流作家・高村薫氏のEVシフトへのまなざし

高村薫氏

  日々新聞を眺めていて、ハッとさせられる記事にときどきぶつかる。
  10月19日付の「朝日新聞」朝刊のオピニオンのページ。パブリックエディターから「新聞と読者のあいだ」というコラム。社会派のミステリー作家高村薫さん(68歳)の著す「EV時代 数字の先の醍醐味」というタイトルの1000字ほどのコラムだ。
  高村さんの経歴を調べると、大阪住吉区に生まれ同志社高校を卒業後、国際基督教大学教養学科卒(つまりリベラルアーツ科)ということは、話題の眞子さまの先輩にあたる。
  経歴を見た限りにおいては、なにかと注目のリ系女子でもなさそうだ。なのに、物理や化学の世界にやたら詳しい。親戚に東大阪あたりの工場のおっちゃんがいて、好奇心旺盛な少女時代の夏休みにでも機械がわんわんうなっている世界に馴染んできたのだろうか? とにかくモノづくりの領域にも詳しく、小説のなかでも残忍な殺人事件の凶器に工業高校機械科レベルでないと口にできない専門単語が登場するのだ。成長過程で旋盤やフライス盤が身近で活躍していたに違いない。
  このコラムでも、2030年代半ばには新車市場からガソリンエンジン車が排除されるという、いわゆるEVシフトについてのアウトラインを手短に説明。いまだ1%にも満たないEVシェアがわずか10数年で、本当にガソリンエンジン車が買えなくなる現実が到来するのか? という素朴な疑問から始まる。日本は優位に立っていたはずのテレビやPCで海外勢力に負け、半導体でも敗れたパナソニックや東芝。トヨタもホンダも、敗北の道をたどるのか?
高村さんは、トヨタ、ホンダ、日産など日本の乗用車主要メーカーの微妙なEVシフトへの取り組みの旗幟(きし)を鮮明にしたうえで、トヨタの名古屋本社を緻密に取材している経済担当記者の言説に注目し、鋭く近未来を俯瞰しようとしている・・・・。
  この記者、海東(かいとう)さんというそうだが、その海東さんが言うには「日本人はクルマへの独特の好みがあるため、コロッとEVに乗り換えるということはない」という。明治維新で侍のヘアスタイルがちょんまげからザンギリ頭に1日で変わった、そんな劇的なことはないだろう、という。
  結局のところ、「問題は世界での生き残り方だ」という。「仮に世界市場がEV一色になっても、日本が培ってきた内燃機関の技術は水素エンジンというカタチで復活するかもしれない。それに、トヨタがEV用の電池の開発に1.5兆円の巨額の開発費を投じたことに注目すべきだ」。「このことは(本流ではないが)EVの普及に欠かせない、将来性のある投資そのもの」という。
  こうした動きは、日本企業が形を変えて生き残りを模索している一例だというのだ。生産も消費も縮んでいく日本で、製造業の正しいサバイバルは、カタチを変えながらすでに始まっているというのだ。

カーライフ大助かり知恵袋1

新連載『トヨタがトヨダであった時代』(第1回)

トヨダAA_2

  数年前のこと、突然ロシアのウラジオストックの農家の納屋で発見された1台のボロボロになったクルマが、大きな話題を呼んだ。塗装がはがれ、ドアがゆがみ、雑な修理のあとも見られ、室内もいわば目をそむけたくなるほど傷んでいる。
  そんな、ほとんど価値のないように思われるオンボロ状態のクルマ。でも、そのクルマは、ボロボロの状態でなぜかオランダのハーグにあるローマン・ミュージアムという博物館に収まっている。ちなみにハーグといえば、アムステルダム、ロッテルダムに次いでオランダの第3の都市である。人口約50万人弱の八王子ほどの地方都市だ。
  この無残にくたびれたクルマ(写真)。よく見ると、フロントグリルは付いておらず、バンパーも消えている。ヘッドライトやホイールはオリジナル部品ではない。ハンドル位置も右ハンドルから左ハンドルに改造を受けている。塗膜が剥がれ落ち、室内もいかにも厳しい風月にさらされた感じ。まるで水害で長らく水に漬かり、数か月後に水のなかから姿を見せた、そんな無残なクルマだが、実は大きな価値があるのだ。
  このクルマ、トヨタが長いあいだ、探し求めていた「トヨダAA型(濁音に注意!)」だったのだ。日本が泥沼の戦争に突き進んでいった分岐点ともいわれる若手将校らによるクーデータ未遂事件・二二六事件。まさにその大事件が起きた同じ年の1936年(昭和11年)に発売し、太平洋戦争が始まる1941年の末頃生産中止を余儀なくされたクルマなのだ。
  延べ15年間のあいだに累計1404台を世に送り出したトヨタ初の純国産乗用車である。
  じつはこのクルマ、トヨタ博物館の1階のエレベーターの乗り口に収まり、博物館を訪れる人の目には否応なくイの一番に飛び込んでくる同型のクルマである。実はトヨタ博物館にある黒塗りの高級セダン「トヨダAA型」は、まったくの復元車なのである。1989年(平成元年)トヨタ博物館のオープンにあわせ、数億円をかけて丸一年を費やし2台復元したものだ(あとの一台は、名古屋市西区にある「産業技術記念館」に展示してある)。
  だから、トヨタの関係者にとって「トヨダAA型」というのは、レゾンデートル(存在理由)を語るうえで欠かせないクルマなのである。その意味で、無残な姿だったとしても、オリジナルとトヨダAAがこの世に存在していたという事実は、僥倖だったのである。あれほど探し回ってなかったクルマだけに、原形をとどめないながらも、ロシアで現車が見つかったことは“奇跡”だといえる。
  これから、このトヨダAAをめぐる物語を見ていくことにする。

カーライフ大助かり知恵袋2

ぼくの本棚:ケン・パーディ著『自動車を愛しなさい』(高斎正訳:晶文社)

クルマを愛しなさい

  『自動車を愛しなさい』と聞くとなんだか、言外に「わたしを愛しなさい!」と恫喝されているような年上女房を持った男の悲哀を思い描いてしまう。
  そもそもタイトルからして、なんだか押しつけがましく、変な匂いのする本だ。しかも1960年にアメリカで出版されている。邦訳された単行本(写真)が日本の本屋に並んだのは、12年後の1972年のことだ。半世紀前! はっきり言って相当古く、それこそトウの昔に忘れ去られていた感じの本である。ひょっとするとエルビス・プレスリーの「LOVE ME TENDER」(やさしく愛して:1952年リリース)に影響を受けたのか?
  ところが、読書家ならわかると思いますが、本の世界は芋ずる式というか、互いに細い糸でつながっている世界。古本屋でふと手にしたリンドバーグの創業者が著した書籍「私のとっておきの本棚」(CGブックス:2007年刊)のなかで、この本を見出したのだ。原題は、『WONDERFULL WORLD OF THE AUTOMOBILE』。そのままの邦訳「自動車の素晴らしき世界」より「自動車を愛しなさい」の方が、本屋の店先で手に取ったときのインパクトは大きい。本のタイトル(映画もそうだが)を付けるのは、結果論でしかないが、本当に難しい。あまり知られてはいないが、タイトルは実は筆者ではなく、チカラ関係から編集者が独断に近いかたちで決められることが多い。だから、ときどき内容とは裏腹な頓珍漢なタイトルが世に晒されることになる。
  いささかこの毒を含むタイトルのおかげで、営業的にはあまりよくなかったと推理する。
  しかも、この本の序で、筆者(KEN PURDY:1913~1972年)みずからが「毛色の変わった本だ」と告白。「私の興味をそそったものだけを書き連ねた、いままでの本の書き方とは異なったものだ」。エッセイだと思いきや短編小説が登場したり、自動車メーカーの辛辣な寸評だったり……。いわば予定調和なしの著者好み120%の構成!? 
  世は、カタチでつくられているとなれば、破綻に限りなく近づく。そんな絶望的な本!? 
  ところが、数ページ読み進めてみると、そんじょそこらのクルマの雑学本とはまるで違うことがわかる。余人をもって替えがたい独自性というものか。一筋ならではいかない、複雑なクルマをめぐる歴史や社会、人間とのかかわりを分かりやすく腑分けしていく。なかでも、伝説的な公道を使ったカーレース「ミレ・ミリア」(1927~1957年:イタリア語で1000マイルの意味)の常に死と背中合わせな世界がよく描かれている。この本で、当時のレースの実態があらためて理解できた。
  この本の底に流れるものには、凡人にはとてもうかがい知れない教養と知性、それに人生の深い悲しみがまじっている。筆者パーディのモノを見る視座が、たんに独自性だけでなく、緻密な取材で構築された強固な背骨を持つのだ。自動車が現在とは比べ物にならないほど“危険な乗り物”だったがゆえに生まれた、触れると血が出そうな、そんな引き締まったシャープな文体も魅力だ。
  彼のプロフィールを眺めると、6歳で父親を失い、地方の大学でまなび、そしてニューヨークに出て3流雑誌(低俗マガジンPulp MAGAZINEの類)への寄稿から始まり、「プレイボーイ」誌など一流雑誌の執筆陣の仲間入りをし、1972年、59歳で銃による自殺を遂げている。一語一語かみしめる価値がある、すぐれた自動車ジャーナリストの仕事ぶりを味わえる一冊だ。自動車関連書籍の≪古典≫と位置付けていいと思う。

愛車メンテのプラスアルファ情報

パームサイズの1/4インチ・ラチェットハンドル!

SK11

  パームサイズ(PALM SIZE)、「手のひらサイズ」という言葉があるが、今回取り上げる工具は、文字通り「手のひらに収まる超小型ラチェットハンドル」である。正式な製品名は『ビット差替え式スリムラチェットドライバーセットSRD-224』。台湾製で、発売元は、兵庫県三木市の藤原産業(株)だ。SK11シリーズのなかの一つだ。ちなみにSK11という奇妙なブランド名の由来は、炭素工具鋼の品質レベルを示すSK(硬度と靭性などを1~10まで示したもの)の基準を一つ越えた11という意味だそうだ。ココロザシはすごい。
  ところで、この製品、10個のビットが収まる1/4インチ(6.35mm)の樹脂製のホルダーとハンドルを含め、重量わずか71gしかない。非貫通のドライバーよりも軽い。ハンドルの全長もわずか95mmで100mmを切る短さ。左右の切り替えレバー付きで、早回しリングも付いている。ギアのフィールも悪くない感じだ。
  こんなに短いハンドルで、しっかりねじを締めこむことができるのだろうか? 心配が募りそうだが、対する相手のネジ径がせいぜい8mm程度なので、杞憂だ。
  付属のビットは、プラスが1番から3番、マイナスが6mmそしてヘキサゴンレンチが2.5,3,4,5,6mmの5サイズ。それに1/4インチのオス側が付いているので、手持ちの1/4インチのソケットを取り付け、活躍することができる。だから、対するネジの守備範囲はググ~ンと広い。いわばオールマイティなイメージだ。
  実際使ってみると、たしかに振り角が小さい。なにしろ52ギアなので、通常の板ラチェットに比べ使い勝手が高い。ヘッド部の厚みが16mmとごくごく薄いので、従来あきらめていたタイトなところにあるネジでも対応できるのが大アドバンテージ。
  ところが、この極薄ヘッドが、一面使いづらさを露呈するシーンがある。キャブレターなど、手前でカチャカチャとハンドルを回したいとき(つまり相手のネジとの距離感がある時!)に、エクステンションバーが必要となる。
  このエクステンションバーが付いていない。そこで、手持ちの1/4インチのエクステンションバーの出動となる。
  手持ちのエクステンションバーを付けてみると、またまた別の問題が現れた。受け部分がマグネット式だったため、短いビットが奥にしっかり収まり、抜けづらくなったのだ。ラジオペンチでつまみだすしかなかった。このように、便利は一面不便を生み出すのが世の常。そこのところをしっかりと把握するとなかなか便利なツールである。
  もう一つの不満は、収納である。ホームセンターでの購入価格1518円と格安なので、ケースを付けるのは無理かもしれない。とにかく小さいので紛失しやすいので、100円ショップで、適当なケースを見つけてこようと思う。使いうえの注意点としてはハンドルが極端に短いので、ついついパイプをかましたりして使いたがる恐れがある点だ。これをやると、かならずやギアが壊れるに違いない。


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