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2021年12 月 1日 (水曜日)

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クルマづくりの新手の助っ人はシリコンバレーから!

シリコンバレーから

  カルフォルニアのシリコンバレーを拠点にしたIT企業が都内で記者会見を行う、というので恐るおそる駆け付けた。なにしろテーマが、半導体LSI(大規模集積回路)を使った電子部品のテストをおこなう企業の戦略説明会だ。
  自嘲気味に聞こえるかもしれないが・・・・筆者は、真空管ラジオ時代で育ち、オームの法則(I=E/Rという空念仏!?)とサーキットテスターの世界の知識しか持ち合わせていない。いわば枯れた知識で、最新のハイテクが理解できるか? 
  STAY FOOLISHを説いたスティーブジョブズを頭に描きながら、しつこく食い下がってインタビューした。するとどうだろう、おぼろげながらも全体像が見えてきた。できるだけわかりやすくリポートしよう。
  つながる世界のコネクティビティや自動運転などクルマが大きな技術的な“曲がり角”に来ている! というのは耳タコの話だよね。これって要するに電気仕掛け装置がクルマにどんどん投入されつつあるということだ。「クルマはすでに半分は電化製品だ!」と主張する人もいるほど。
  このクルマの電気や電子の世界を支えてきたのは、ボッシュやデンソー、コンチネンタルといったメガサプライヤー(巨大部品メーカー)。高度な電子化により電子部品間の通信速度がよりスピードアップし、複雑化していくため、より専門の力を借りる必要が出てきたのだ。高度なテスターも必要となるし、高い専門知識を備えたマンパワーを要求される。
  そもそも、イマドキのクルマは、数10個もある各ECU(コンピューター)間のデータのやり取りをCAN通信でおこなっている。CANとはコントローラー・エリア・ネットワークの略なのだが、実はこれボッシュが1985年に開発し、5年後の1990年から量産車に採用され、4年後の1994年に国際基準となり、あっという間に広まった。つまりクルマの電気関係の技術は燎原の火のように瞬く間に進化し、それが常識になる世界。このへんはゲームの世界と似ている。(ちなみに、こうしたECU間の通信の規格のことをイーサーネットというそうで、CANはシリアル通信プロトコル。シリアルは直列で、プロトコルは規格。CANを引き継ぐ立場の次世代通信プロトコルにFrexRayはCANの10倍の伝送速度だそうだ)
   とにかく、これじゃとてもじゃないが自動車メーカーの電子部門エンジニアとサプライヤーのエンジニアだけでは、追いつかないという。そこで、半導体とその周辺知識に特化した組織が必要とされる。それが今回取材したシリコンバレーの企業GRL(グラナイト・リバー・ラボ)。2010年創業で、台湾、上海、横浜、シンガポール、ドイツなどにグローバルにラボを持ち、スマホやPC,医療、生産工場、データセンターなど各分野で実績を積んできた。自動車分野にも本格進出しつつあるという。スタッフエンジニアは、NECで長年ICを研究してきたベテランやドイツのTUVで評価に携わってきた人たちだ。
  電子部品のテスティングやトラブルシューティングばかりでなく、設計、評価といったクルマの電子部品システムを構築するうえで必要な各セクションを横断的にアシストする企業が業界内で高く手を挙げたというわけだ。いわば、新たなクルマづくりの新しい担い手なのだ。まさに、エンジンの時代やシャシーの時代の次は、高度な電子パーツシステム構築の時代なのである。
  目の前で見せてくれたのが、スマートフォンのワイヤレスタイプの予備バッテリーのテスト。コンプライアンス(認証)を受けている製品と海賊版の予備バッテリーの性能比較を瞬時におこなってみせた。なんと200項目のテストを短時間でおこなうオリジナルのテスター機まで造り上げ、商品化しているのである。
  「当初の予備バッテリーのなかには、満足にいかない製品もあったが、いまは探すのが大変。つまり、市場に出ているのはほぼ大丈夫と考えていいと思います」とのこと。それと「意外と知られていませんが、導通テスターでOKの製品も、たとえば半田のノリが悪いとか接点が酸化被膜気味で、微妙に電気特性に変化が出て不具合を引き起こすということもある」これもハイスピード化が遠因のトラブルで、こうした不具合を見つけ出すテスター機は数千万円、なかには1億円を超えるものもあるという。
  (写真は、GRLジャパンのホルガ―・クンツ社長(右)と高橋幹副社長。手にするのはボタンひとつでコンプライアンス試験ができるワイアレス充電機器テスター)

カーライフ大助かり知恵袋1

『トヨタがトヨダであった時代』(第3回)

T型フォード

  オンボロとはいえ、いまのところ唯一無二の生き残った「トヨダAA型」が発見され、オランダの博物館に収まった。
  豊田章男社長は、ハーグの博物館にいち早く出向き、草創期のトヨタが苦労の末作り上げたクルマと対面した。
  章男氏は、トヨダ自動車創業者・豊田喜一郎(1894~1952年)の孫にあたる。このときの章男氏のコメントは入手してはいないが、85年の時空を超えて伝わる何かがあったのは間違いない。トヨタのアイデンティティ、つまりトヨタが自らの存在を指し示すにふさわしい「トヨダAA型」とは、なんだったのか? このクルマを作るプロセスに何があったのか? 当時の人々はどんな気持ちでこのクルマに向き合っていたのか? わずか1404台しか発売されなかったこのセダンとこのクルマの中心にいた豊田喜一郎の周辺を追いかける。

 「トヨダAA型」が世に送り出された1930年代の世界とはどんなだったのかをまず眺めてみよう。
  欧米ではひとことでいうとかなりモータリゼーションが深まっていった時代だった。アメリカでは、フォードのT型が1500万台売り切ったのが1927年。一時はアメリカの道路には黒塗りのフォードT型(写真)があふれかえった。その後アルフレッド・スローンの手腕でGMが巻き返す。フルラインアップ戦略と買い替え需要を掘り起こす数年で手持ちのクルマが古く感じさせる陳腐化政策で、1927年にはフォードを生産台数で抜き去った。1925年に発足したばかりのクライスラー社も、斬新なデソートなどの中型車を武器にフォードT型からの買い替え需要ユーザーに食い込んでいった。
  つまりこのころのアメリカ自動車市場は、80数社の乱立時代からビッグ3に絞り込まれつつある時代。モータリゼーションの成熟期を迎えつつあった。ファミリーカーの普及と一家に2台のクルマ所有、それに女性のドライバーの増加が後押しした。
  ヨーロッパでも、クルマ市場は活況を呈し始めていた。イギリスのモーリスやオースチン、フランスのシトロエン、プジョー、ルノーそれにアメリカ資本のイギリスフォード、ドイツフォードが設立され、小型車の普及が進んでいる。GMは、英国のボクスホールを買収し、ドイツのオペルも買収している。インフラとしては、1933年ドイツの首相となったヒトラーの命に沿って最盛期12万人を動員してアウトバーンの建設も始めている。

カーライフ大助かり知恵袋2

ぼくの本棚:沢村慎太朗著『自動車小説』(文踊社)

自動車小説

  『自動車小説』というのがタイトルである。筆者は1962年生まれの気鋭の自動車ジャーナリストである。経歴を見ると、早稲田で美術史を専攻し、自動車雑誌の編集を経験したのち現在自動車の評論に携わっているという。
  それにしても、タイトルが奇妙というか面白い。私の理解だと、そもそも小説という形態は、明治期に強烈な西洋のイブキに触れた文人がある意味自我に目覚め(覚醒?)、自分の体験や見聞を軸に読者のココロに刺さる物語を書き連ねた。それが、読者を獲得し市場を形成して、雑誌文化や映画文化、演劇の世界にまで広がった。ざっくり言えばだ。
  いまやその小説のジャンルは、幅広い。思いつくままに書き連ねると‥‥推理小説、恋愛小説、青春小説、経済小説、政治小説、歴史小説、ホラー小説、冒険小説、SF小説、官能小説などなど、人間が人として動きまわるフィールドだけ小説の種類はあるともいえる。
  だから、自動車をテーマにした小説も、さほど数は多くはないがなかったわけではない。たいていは産業スパイ小説やSF小説にカテゴライズされていたケースである。
  ところが、この本は、『自動車小説』とわざわざ謳っているぐらいだから、自動車のことがざっくり8割がたを占めている。木でできたピノキオ人形が命を吹き込まれ、活躍するように自動車そのものが主体性を維持して主人公となるわけではない。あくまでも元気のいい青年がもっぱらスポーツカーやスーパーカーをあやつる世界。
  これを11個の短編集で描いている。たとえば、『辻褄(つじつま)』という作品では…‥「電装系を確認する。後輪デファレンシャルの作動制限装置は電制。おそらくXKRのそれと同じGKN社製の電制LSDだろう。4輪に適宜ブレーキをかけてクルマの姿勢を整える挙動安定システムは、アクセルを踏みすぎて駆動輪が空転したときにエンジンを絞ることでトラクションコントロールと協調して制御されていて、これはコンソール上のチェッカーフラッグ印スイッチを押せば、通常モードよりも割込みが遅れ、わざわざ姿勢を崩すような運転を許容する辛口モードに切り替えることができる。ここも以前と同じだ。ディメンジョンも1810キロの車重もXKRと同じ。その一方で機械過給されるV8は、排気量も圧縮比もXKRと同じままで馬力が一割ほど盛られている」
  難しい! よほどのマニアでないと理解できないと思う。しかも、息の長い文章だ。野坂昭如もたまげるほど。短文を肝としている新聞社のデスクなら、複数の文章に分解され、赤入れされるに違いない。
  なかには男女の微妙な心のやり取りを織り込んではいるが、こうして切り取られてしまうと、オートメカニックやかつてのカーグラフィックの記事のような特定のマニアにしか通じない世界観。しかも登場するクルマは、ジャガーXKR-S(上記の例文)、ランボルギーニ、フェラーリ、ロータスエラン、ベントレーコンチネンタルGTCなど、生活感のない、とてもじゃないが庶民には手が届かないクルマ。その意味では「トップエンド・ブランド小説」ともいえる。だからか登場人物の造形は、クルマの陰に隠れている。
  たしかに、こうした文章が色濃く表現した小説はこれまでなかった。その意味ではチャレンジングで、筆者の野心が伺える。小説は、人間を描かなければだめという強迫観念が支配的な読者には受けないが、いまや、ケータイでの「ライトノベル」というカテゴリーもあることだし、な~んでもOKなのかもしれない。ともあれこの書物、40~50歳台のクルマ好きには受けるんだろうな。
  ……たとえば、阿部公房の代表作「砂の女」のような一種の幻想小説という器に自動車を投げ込んだ、そんな小説はありうるか? あるいは、70年代にキャブレター(気化器)のパイロットジェットの調整を通して哲学を論じたロバート・パーシングの小説『禅とオートバイ修理技術』のようないっけん親和性のないハイテク機械と哲学の融合など……。大きく飛躍することで新しい物語の地平が開ける。『自動車の小説』のページを閉じて、ふとそんなことを考えた。

愛車メンテのプラスアルファ情報

660円のバッテリードライバーは使えるか? 

バッテリードライバー

バッテリードライバー2

  1年以上前に近所のホームセンターの工具売り場で手に入れたものの、使いもせず工具箱の隅に追いやっていたのがこの「バッテリードライバー」。台湾製で兵庫県三木市にある藤原産業が販売元になっている製品。購入価格660円だった。
  「バッテリードライバー」といわれてもピンとこない。
  バッテリー本体の上部にある6個の樹脂キャップを脱着するとき、半月形の溝を利用して通常は10円硬貨を使う。でも、それじゃオシャレじゃない! と、このツールを使いなさいとばかり誕生した工具のようだ。さっそく使ってみると、なるほど10円コインとくらべると格段に使いやすい(写真)。コインだと手が滑ってどこかに消えてしまう恐れがあるが、長さ143mmのこのドライバーは存在感がありそうした心配はいらない。
  いい忘れたが、この樹脂キャップを外すときは、あまりないが、単独で充電する際内部から水素ガスが出るので、緩めて置いたり、あるいは内部の電解液の水位を確認するとき、とくに横から眺められない状況で、このキャップを取り外すというケースもある。
  この製品のもう一つの役割は、バッテリーのプラス・マイナスのターミナルに取り付いている2面幅10mmのナットを緩めたり締めたりする。カタカナのコの字というか、先端部がスパナになっていて、ここでナットをとらえ回そうというわけだ。いざ使ってみると、たちどころにOUTであることが判明した(写真)。
  そもそもスパナは、相手のナットの角2カ所でしか当たらないため、少し締め込みすぎたナットを緩めようとすると“オッと!”と思わず声が出かかり、ナットの角が舐めそうになったのだ。やはりここは、メガネレンチが断然有利だし、無難だ。
  ソケットツールでもやれなくはないが、工具が横になるので、使いづらいと思う。メガネに限る!
  さてこの製品、狙いどころはさほど悪くはないが、やや詰めが甘かった。そこで提案だが、ターミナルナットの脱着作業はメガネレンチに譲り、キャップの脱着だけに特化したらどうだろうか。スタビドライバーのように全長をごく短くし、同時にグリップ自体を二回りほど小さくして、さらに貫通穴を再考してキーホルダーとしても使えるようにする。これならいま以上に売れると思うだが?


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