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2022年2 月15日 (火曜日)

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エンジンマウントの交換は不文律のメンテナンス!?

エンジンマウント

  森羅万象の事象が掲載されている百科辞書のなかにも、意外と知らない言葉や出来事が見落とされている。それと同じで、完璧と思われる“自動車の整備書”のなかにもスポっと抜け落ちた項目がある。
  さしずめ、エンジンマウントの交換は、その代表例だといえる。
  先日、若い読者Y君からのメールで、「ぼくの19年目を迎えたマークⅡ。走行12万3000kmなんですが、思い切ってエンジンマウント2個とT/Mマウント1個を交換しました」と伝えてきた。「おかげで始動時のブルッという震えが消え、アイドリング時にステアリングに伝わる振動がずいぶん軽減されました。加速時のざらついた振動もほぼなくなり、直列6気筒のスムーズ感が回復した印象です」とそれなりの効果を得られたとのこと。使用済みの部品を目視点検したところ、大きく剥離こそしていないものの、細かな亀裂が入っていたという。
  モノの本によると、人間が騒音と振動を感じる周波数は、20~100Hzなので、これがエンジンマウントの交換で減衰したと読み解ける。ただ、「左右のエンジンマウントが液封タイプのため単価が1万3000円(T/Mマウントは6000円)と高価で、工賃を入れると4万6000円と馬鹿にできない費用になった」とY君はもろ手を上げて喜んではいない。早い話、費用対効果、つまり“コスパ”が大きな課題というのだ。
それを聞いて昔の体験がよみがえった。KP47スターレット(エンジンはOHV1200㏄)のエンジンマウントを走行8万キロあたりで交換した。騒音計で測定したところ、たしか4デシベルほど車内騒音が低下して、びっくりしたことがある。当時、部品代も気にするレベルではなかった。
  この経験があり、90年代にエンジンマウントの開発担当者数名に寿命を聞いたことがある。「たしかに80年代あたりまでは亀裂が入って迷惑をおかけしたこともありましたがいまは一生ものと思ってください」と太鼓判を押された。
  そこで今回、あらためて知恵袋のトヨタディーラーの1級整備士Kさんに聞いてみた。
  「エンジンマウントの交換作業依頼は、数は少ないです。整備士歴30年のあいだに10件ぐらいかな。むかしのFR車は交換作業が楽でしたが、いまどきのクルマとくにFF車(イラスト)とか、縦置きエンジン車でもV6だと横の出っ張りがあるので、車体を持ち上げた状態でエンジン本体だけを浮かすことが難儀なクルマが少なくない。なかにはフロントサスの一部を取り外すとかしないと、作業スペースがとれないケースもあります。だからクルマにもよりますが、作業時間が4~5時間に及ぶことも…‥」となると、部品代込みで10万円近くになる計算。
  ところが、このエンジンマウントは定期交換部品には入っていない。トヨタの整備士向け技術テキスト(イラスト:少し古いが1995年版)には、「エンジンマウントは、振動騒音の伝達系の重要部位なので、アライメントは正しく保つ必要がある」そこで「エンジンマウントのスグリの隙間をチェックする」あるいは「同系他車との比較をする」とあるだけ。
  「自分たちのエンジンが市場でどうなっているのかをときには自動車解体屋さんで中古エンジンを購入して研究することもあるんです」とざっくばらんに楽屋裏を吐露してくれたダイハツのエンジン開発部長がいた。その彼から「クルマの耐久性を突き詰めていくと、ゴムにいきつくんです。一定以上の耐久性を持たせようとすると、量産車の領域を超え、宇宙開発技術の世界に踏み込む……」という意味の部品についての踏み込んだエピソードが耳に残る。
  いずれにしろ10万キロとか15万キロを後にしたゴム製品は、劣化が進んでいるとみて間違いない。・・・・でも、これってエンジンレスのEV時代になると、まったく意味をなさなくなる!?

カーライフ大助かり知恵袋1

『トヨタがトヨダであった時代』(第8回)

アツタ号

  開発スタッフの大半は、エンジンの知識がほとんどなかった。
  そこで、クルマのエンジンをじかに触れさせる目的で1933年製のGMシボレーの6気筒ガソリンエンジンを分解調査しはじめる。分解し、部品をスケッチし、その材質を調べたりしながら、自動車の基本を徐々に学んでいった。
  この当時、外部からもスタッフを招聘している。いわゆる“中京デトロイト化計画”で、「アツタ号」のエンジンを設計した菅隆俊(1886~1961年:のち拳母工場の建設、豊田工機の設立に活躍)や、「オートモ号」の設計を手がけた池永羆(いけなが・ひぐま)。それに3輪自動車の経験を持つ伊藤省吾や、自動車部品製造業界に詳しい元白揚社の大野修司などである。
  ちなみに、中京デトロイト化計画は後世のマスコミがいささか気負った表現だとおもう。当時の大同メタル工業の社長川越庸一(1893~1983年)が中心となった壮大なプランだったことは確かだ。川越は、福岡の修猷館を経て熊本工業高校機械工学科(現熊本大学理工学部)を卒業後、1922年にアメリカにわたりハドソンやダッチの工場を見聞、働きながら自動車の研究をした人物。帰国後1929年にGMの代理店の昭和自動車㈱のサービス部長をするなかで、中京地区で自動車づくりの機運を盛り上げようとした。
  川越は、名古屋商工会議所の主要メンバーで愛知時計電機の青木鎌太郎(1874~1932年)に声をかけ、さらに名古屋市長や愛知県知事に協力を依頼、さらには豊田自動織機や大隅鉄工所、日本車両といった名古屋の地元有力企業5社が、中京地区をアメリカのデトロイトのようなクルマ生産拠点を目指した。資本金1000万円を軸にした企業体での試みで、約2年がかりで「アツタ号」を完成させた。AA型乗用車が世に出る4年前の1932年(昭和7年)のことだ。
  これは、アメリカのナッシュをお手本に数台作り上げられた。もちろん量産にはほど遠い、手づくり乗用車だ。
  当時難所とされていた神戸の六甲ドライブもこなすほどの性能だったという。このエンジンを流用した乗り合いバス「キソコーチ号」も数台作られ、名古屋市バスとして走らせている。水冷8気筒、排気量3.94リッター、85馬力の大型エンジン搭載の高級車にちかい。
  「アツタ号」は価格6500円で売り出された。昭和7年ごろ米1俵(60kg)が8円20銭だったので、現在米1俵が約1万5000円とすると6500円は、いまの貨幣価値でいえば約1200万円。スーパーカーの値段だ。ちなみにフォードなら3000円(現在の貨幣価値で約500万円)で手に入った時代。2倍以上の価格ではとてもじゃないが売れない。よほどの富裕層でないと買えない。とてもじゃないが、庶民にはクルマを持つこと自体が、夢のまた夢というか、高根の花。
  しかも「アツタ号」はコスト自体が実は1台あたり9200円もかかったという。完全なコスト割れ。作れば作るほど損をする! くわえて、そこへ不況(昭和4年アメリカから始まった世界恐慌)が襲ったことで、デトロイト化計画はあえなく頓挫した。振り返ると中京デトロイト化計画は、絵に描いた餅でしかなかった。

カーライフ大助かり知恵袋2

ぼくの本棚:神林長平著『魂の駆動体』(ハヤカワ文庫)

魂の駆動体

  赤い二人乗りのクルマが、空を飛んでいる。よく見るとハンドルから、シート、タイヤ、エンジン、サスペンションなどありとあらゆる部品がボディから外れバラバラになりかけている。人は誰も乗っていない。でも、そのうえにはなぜか猫が一匹飛び出している……そんなシュールで絵本のような表紙の文庫本。しかも本のタイトルが意味ありげ、逆に意味不明とも言えなくもない『魂の駆動体』である。表紙からして、まさにSF小説だ。
  目次を眺めると、過去、未来、現在の3部構成。トータル500ページ近い大作。
  読み始めて、いきなり場違いなところに連れていかれた気分となる。「過去編」の世界は、実は近未来なのだ。読者の頭のなかの時系列が大混乱! でも読み進めると、止まらない不思議さが!? さすがSF界の大御所だ。
  ところで、「過去」とは、たぶん2040年あたり? その時代、人間はデジタル社会が進み、“人格をデータ化し、仮想空間で管理。肉体は処分する”そんな時代に突入していた。これってディストピアの世界。
  平成に青春を送っていたとおぼしき主人公の2人のジイさん。社会的には、まったく無力。正面から社会変革こそできない。せいぜい隣の果樹園からリンゴをちょろまかすぐらいが関の山。でも“最後のあがき”とばかりある情熱に熱中する。自動車はそのころすべて自動運転化されている。ゆりかもめの電車とかエレベーターのような≪無人運転車両≫になっている。ジイさん二人の情熱とは、自分の手でハンドルを握る乗り物「クルマ」を自分たちの手で作るということ。チカラおよばず、実物のクルマこそできなかった。それでも、二人の魂が生み出した設計図が完成する…‥。
  それから何世代のち、というからたぶん100年後…‥人類はすでに地球上から忽然と消えていた。原因はどうやら、大多数の人間が人格だけを仮想空間に管理することを選択し、肉体を放棄したからだ。でも、その選択をしなかった人間が、亜種を生んだ。翼人(よくじん)だ。背中に翼を備え、空高く飛び立ち自由に移動することができる空飛ぶ新人類。
  その翼人のなかに滅び去った人間を研究する青年がいた。2つ目の「未来編」の主人公キリアだ。キリアは、研究のため、あえて翼をなくし、人間の身体に変身した。人間研究のためにつくられた人造人間アンドロギアと暮らすうちに、かつて自転車という移動手段があったことを知り、職人集団の翼人たちが営む工場で自転車を製作してもらう。滅んだ人間たちが残した遺跡から発掘した設計図をヒントに作り出した自転車で人間世界を見直し始める。そしてキリアとアンドロギアは、自転車だけには満足できず、次に「クルマ」の企画に乗り出す。人造人間アンドロギアのデータのなかに、「過去編」で登場したジイさんのデータ(記憶)が残されていたのだ。
  自転車づくりではキャスター角のうんちくが縷々述べられ、メカに興味のある読者の心をおおいに揺さぶる。自動車づくりの場面では、その100倍ほどテクニカルタームが登場し、モノづくり、クルマづくりの場面が出てくる。物語のなかで、読者はクルマづくりのプロセスをたっぷり味わうことができる。このへんが、長岡高専卒の筆者神林長平の真骨頂。ちなみに、高専とは中学から、5年間学べる工業系の専門学校で、1962年にスタートしている。ちなみに筆者(広田)の中学からも8人ほど受験し、わずか合格者1人! 不肖広田は不合格者の仲間でした! せっかく合格した彼はそこを振り地元の進学校にいき京大に進んだようです。
  …‥クルマづくりのなかで、なぜ人間が破滅したかの理由がおぼろげながらわかってくる。人間の身体を獲得したキリアは、ようやく完成したクルマを前に工場長の翼人に、ドライビングシューズを作ってほしいと要求。すると翼人の工場長は「裸足ではだめなのか? 人間というのは生まれたままの身体では何もできないんだから」と呆れられ、「ひとつのモノを作ると、それに倍する付属物がどんどん必要になる。だから人間が大量にものを作らざるを得なくなったわけだ」と。どうやら大量にモノを作ることで、地球温暖化が進み、人類が死滅した! そんな暗示が読み取れる。
  でも、一方でキリアは、できたばかりのクルマのハンドルを握り、エンジンをかけるとクルマの魅力に取り付かれる。「アクセルペダルを踏み込むと、エンジンは生き物のように吠える。その息吹きを駆動輪に伝えるべくクラッチをつなぐと、まるでエンジンは“あなたに従う”といった感じで、少し回転を落として唸り、乱暴にクラッチをつなぐと“嫌だ”とばかり止まってしまう。機嫌をとるようにうまくやると、クルマはずいと前に進む。人間が出せる力とは比べ物にならないほどの巨大なパワーを秘めた物体が動く。これを操っているのは自分だ。この瞬間、人間は身体のイメージが拡大し、大きな快感を得る」
  こうした二律背反の近代社会。ディストピアの世界に陥らざるをえなくなった人間の過去を振り返る…‥。人間と機械、意識と言語、現実と非現実をえがく神林長平(1953~)の世界は、こんなところにあるようだ。門外漢には刺激的な1冊。(2000年3月発売)

愛車メンテのプラスアルファ情報

100ギアのメガネ部をもつコンビレンチ

メカレンチ1

メカレンチ2

  “ついに登場! ギア数100で超スムーズなフィールを味わえるコンビレンチ! これでキミの整備力はぐ~んとアップ!”
  あえてショーワの臭いのするキャッチ―な宣伝コピーを添えるとなると、こんな感じだろうか。
今回取り上げるのは、首振りメガネを持つコンビネーションレンチ(略してコンビレンチ)。製品名「メカレンチ」。ここ数年、メガネ部にこのスタイルを選択する製品がかなり増えてきている。単なるメガネとスパナを両端に配するオーソドックスなコンビレンチは、なんだか20世紀の遺物として隅の方に追いやられた気分。
  付加価値を付けると、工具に求められる「軽量でいてほしい!」という切なる願いが、置いてきぼりを食らう。そこで、さっそく重量を測定してみた。サイズ12mmで95g。重量はたとえばKTCネプロスなどにくらべ20g重い。割りあいでいえば約25%増し。まぁ、許容範囲といえる。全長は172mm。ライバルに比べとくに長くもなく、ごく標準タイプ。このあたりの長さがちょうど使い勝手がいいといえる。
  メガネ部のギア数100についての評価はどうか?
  たしかに使うとチチチッというラチェット音が、心地よく、この面ではライバルをはるかにしのぐ。新境地といっていい。でも使用するうえでどうか? と言われると、振り角が小さくなるぶん悪いハズはない。が、それよりもメガネ部の幅27.4mmが気になる。通常のタイプより1割増しだからだ。これをそぎ落とすには、相当の技が必要だ。
  とはいえ、この製品には美点が少なくない。スパナ部に、ボルトの角を舐めないように滑り止めが施されている。スナップオンのフランクドライブとほぼ同じ感じだ。たぶん特許が切れて自由に使えるようになったのか? もう一つは、サイズの表示が両面に大きく、計4か所も施されている。これはとてもありがたい。それと細やかな梨地の表面処理は個人的には悪くないと思う。メガネ部のジョイント部は、ボルトで締め付けられるタイプなので、調整ができるので、クタクタになる心配はない。
  気になる価格は、ホームセンター購入で2290円。台湾製にしては、かなり高めといえる。


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