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2022年5 月 1日 (日曜日)

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トヨタbZ4Xはまるで“走る! プチ・モーターショー”!?

bZ4X

BZ4X2

  「ホームプラネットである地球という美しい故郷を、次世代に引き継いでいくことを目指して作りました!」
  こんなイマドキ美辞麗句を並べ立てて、登場したトヨタのBEV(100%電動自動車の意味)。
  今年中ごろから日本、北米、中国、欧州で販売される“bZ4X(ビージーフォーエックス)”だ。この車名、はやりの欧文と数字だけなので、いくら眺めていても頭に入ってこない。
そこで、昭和人間は、ついつい連想してしまう・・・・ビージーフォーといえば、正式にはスペシャルが付くが・・・・あのグッチ裕三やモト冬樹が参加した不思議と本格的名演奏で一世を風靡した80年代のものまねコミックバンド。脇道にそれました!
 まじめな話、このトヨタ車、日本では定額制、つまりサブスクリプションでの販売(トヨタのKINTO)となるが、スバルでは通常通り「ソルテラ(SOLTERRA)」という車名で店頭販売(600万円前後)。
  トヨタのサブスクKINTO(キント)はカローラクロスやRAV4,ノア/ヴォクシーなどで既に展開。車両代はむろんのこと自動車保険、税金、保守点検費などの費用を月額で支払うため、ユーザーは駐車代と充電費のみ負担。
  10万円から手に入るランクルより高価なbZ4Xだからこそ、KINTOで初期費用の負担増を減少して、ユーザーの負担感を軽減する作戦らしい。もう一つの狙いは、EV独自の課題である電池の回収リサイクルがある。
  7~8年前だったか・・・・「LAの修理工場には、劣化したプリウスの電池が山のように廃棄されている」という生々しい情報を現地に住む友人を通して耳にした。「すわっ! 日本でも同じ問題が!」と思いきや日本では走行キロ数が短いのとリサイクルのループが構築されているため、そうした問題が起きていない。
  でも世界的にみると、じつはBEVには、劣化したバッテリーの廃棄問題が横たわっている。サブスクのKINTOを導入することで、確実に使用済みバッテリーがメーカーのもとに戻り、高価な素材が回収できる。この電池リサイクルを確実なものにすれば、BEVのコストダウンにつなげられ、中古車価格の暴落も防げる。ひいてはユーザーにもプラスになるという青写真。少し前に起きた日産リーフの悲惨な中古車暴落を横目で見ているだけに、トヨタの深謀遠慮がこの売り方に見える。
  bZ4Xには、もうひとつ注目点がある。一部車種にステア・バイワイヤーを導入したことによる異形ステアリングの登場だ(写真)。ステア・バイワイヤーとはリンクなどによる従来から続いた機械式のハンドル構造ではなく、エレキ仕掛けでステア(ハンドルを切る)できる夢のハイテクメカニズム。四角いかたちのハンドルを約+-150度クイッと動かすだけでUターンでき、峠道を意のままに走行できる。丸いハンドルで、手を持ち替えクルクルと回す労働からドライバーを開放。これなら箱根の旧道を走っても疲れない。
  オプションで付けられるルーフソーラーパネルにも注目だ。従来型プリウスにも同じような装備があったが、せいぜい夏場の車内の熱気を外に排出するためのファンを動かすほどでしかなかった。今回のルーフソーラーは、がぜん性能アップし、年間で走行キロ数1800kmに相当する発電量を稼ぎ出すという。頼もしいソーラーパネルだ。
  とまぁ、このクルマ、総額700万円近い高級車だ。日本では、スバルあわせ年間約7000台売るという。
  庶民には、とてもじゃないが手が届かない。次ぎ、もしくはその次に出るBEVが手に届く車両になるに違いない。でも、bZ4Xをつくづく眺めていると、地球のことをホームプラネットというだけに、ハイテクがてんこ盛り! そこへオールデイズの楽曲が流れる……これって“駆け抜けるプチ・モーターショー的クルマ”ではないかと思えてくる。

カーライフ大助かり知恵袋1

『トヨタがトヨダであった時代』(第13回)

カールブリア

  トヨダAA型のボディについては、喜一郎は特段のこだわりを持っていたようだ。
  当時のボディは、「木骨ボディ構造」と呼ばれるもので、木材を主体にしたボディが当たり前だった。が、これをシトロエンやクライスラーがいち早く先取りした「オールスチールボディ構造」に変革しているが、これをいち早く取り入れた。
  それだけでなく、10年はデザインが旧くならないとされた最新鋭のデソート・エアフローのクライスラーをコピーすることにした。これは流線型のモダンなエクステリアで、ドイツ系移民のエンジニアであるカール・ブリア(Carl Breer1883~1970年/写真)の手によるもので、風洞を使ったエアロダイナミックス・デザイン。
  数年前LAにある自動車博物館を取材したとき、たまたまクライスラー社の基礎を作ったひとりカール・ブリアの特別展を開いていた。ドイツから新大陸アメリカにやってきたブレアの父親はLAで鍛冶屋を営み、馬の蹄鉄などをつくっていた。スタンフォード大学で学んだ息子カールの輝かしい業績をパネルなどで紹介されていた。しかもそのクルマのデザインの背景にはもうひとつ知られざる事実を見つけた。初飛行を成功させたライト兄弟による飛行機をデザインしたデザイナーを仲間に引き入れていたのだ。空力を特徴づけた斬新なデザインを作り上げたのは、こうした時代の背景があった。
  そのデソート・エアフローのクライスラーは、デザインがあまりに斬新だったせいか、営業的にはあまり振るわなかった。でも、クルマの歴史のなかではエポックを作り上げたクルマとして、いまでも高い評価を得ている。ちなみに、デソートとは、15世紀のスぺイン人探検家・エルナルド・デ・ソト(1496~1543年)のことで、ミシシッピー川を白人として初めて発見した、とされる人物でもある。
  トヨタ初の試作乗用車「A1型」と呼ばれたプロトタイプは、1934年に完成する。ボディのパネルはいまのように薄板鋼板を素材に金型にプレスで成形するという手法ではなく、すべて職人の手による手叩き製法だった。木の金づち、金床、定盤、それにゲージという実にシンプルな道具を使いながら成形していった。シャコ万と呼ばれるC型クランプで隣り合うパネルを仮り組み、しかるのちに溶接をおこなう、そんな手法である。

カーライフ大助かり知恵袋2

ぼくの本棚:伊東信著『イラスト完全版 イトシンのバイク整備テク』(講談社プラスアルファ文庫)

イトシン

  “失敗は成功のもと!” 失敗すれば、その原因を反省し、かえってその後の成功につながる。いまや、この素朴なことが信じられない時代になった、といえそう。資本主義社会が成熟し、モノがあふれているから、あるいは現代人はせっかちになり過ぎて回り道ができなくなったからかもしれない。
  とはいえ、この300ページ足らずの文庫本は、一行もそんなことが書いてはいない。
  分かりやすい文章と愛のあるイラストで、バイクの修理はこんなにやさしく、楽しくできるよ!! とすべてのページで謳い上げている! イトシンさん(伊東信/1940~2010年)の人柄がにじみ出た懇切丁寧、無駄な言葉を用いず、面白くてためになる実用書のお手本のようだ。
  壊れたら修理して長くバイクを楽しむことこそが、環境にやさしくカーボンニュートラルにつながる行為。そういうふうにはイトシンさんは正義を大上段に振りかざさない。意識すらしていなかった。単にその方が楽しいから。よりバイクとユーザーとの距離が近くなる。
  しつこいようだが、この本が出て20年過ぎて素直に読むと・・・・SDGsという言葉が飛び交う、いまの時代の欺瞞性に警鐘を鳴らしていると読めなくもない。
  ここで広田の個人的体験を。バイクに本格的に付き合いだしたのは、中古で手に入れたホンダCB250からだ。このバイクを通していろいろなことを教わった。
  フロントフォークのクッションオイルを交換するためネジ径M6ほどの小さな+ネジを緩めようとして、頭がもげたトラブル。完全にお手上げとなる。当時ホンダにはホンダSF(サービス・ファクトリー)という自前の整備工場を全国に持っており、そこに駆け込んだ。
  そこの整備士は冷酷に、こう云った。「お客さん、これはフロントフォークを交換するしかないです。修理代は4~5万円はかかります」。10万円で手に入れたバイクの修理費が購入費の半分! そのときの気分は、まるで死刑を宣告されたような気になった。そこで、なんとか頭のもげたボルトを取り外すべく、いろいろと聞いて回った。そしてポンチとハンマーで根気よく緩む方向に力を加え、緩め、2日がかりで取り去ることができた。そのときの喜びは一生忘れない。
  すり減ったリアタイヤの交換作業も、印象強く残っている。当時はチューブ入りタイヤ。タイヤレバーを使い古タイヤをリムから取り外し……新しいタイヤを装着する……。この作業は、ボルトを緩め取り外す、といった工程ではない、数々のスキルが要求される作業。なかのチューブをタイヤレバーで傷つけないとか、リムとタイヤの耳を均一に密着させるため、石鹸水を塗布するとか……。言葉だけでは通じない、言うにいわれない技が必要なのだ。これはどこか楽器の演奏に似ていて、ある程度訓練しないとうまくゆかない。つまり1回2回失敗しないとゴールまでたどり着けない、そんな世界。
  じっさいには上手な人の作業をじっと観察し、その模倣をする。もちろんそれでも数回失敗するのだが、その失敗の上に成功が見えてくる、そんな世界。むかしは、そんな作業を見事にやってのける、頼もしいお兄さんが回りにいた。なんだか、そうしたお兄さんの手際いい作業を見ると、まるでマジックを見せられている気分だった。
  イトシンさんは、じつは、筆者(広田)にとって頼もしい先輩のひとりだった。バイクや整備の楽しみや深みを教えてくれたのも、イトシンさん。むかしの工具をめぐる話をしてくれたのも彼だった。
  『ヤングマシン』というバイク雑誌の編集部員のときは、企画でツーリングに出かけたものだ。なかでも2日間の岩手で展開されたイーハトーブ・トライアルではずいぶんお世話になった。モノにこだわらない、生き方も示してくれたように思える。彼ほど読者を大切にしたライター兼イラストレーターもいなかった。編集者時代に「ヤング・ジンマシン」(蕁麻疹をもじった自嘲気味なタイトル)というイトシンさんのファンクラブに、一度も参加できずに終わったことが残念。イトシンさんの話は、実は彼が書いた記事の3倍ぐらい面白かった。いま思うと、その面白い話を浴びるほど聞いていた。“イトシン語録”としてまとめればよかった、と悔やまれる。(2011年12月20日発行)

愛車メンテのプラスアルファ情報

420円で手に入れたアストロのボール形状のパーツ・トレイは使えそう?!

パーツ・トレイ1

パーツ・トレイ2

  イトシンさんの本のレビューのところでも触れたが、30代の中頃、バイク雑誌の編集記者だった。そのころ、こんな面白いというか貴重な体験をしたことがある。
  イーハトーブという宮沢賢治の言うところの理想郷を表す造語を、そのまま車名にした125ccのトライアルバイクがあった。これを新車で手に入れ、2~3か月後の岩手の、それこそ同名のイーハトーブ・トライアル2日間大会に取材を兼ねて出場した。ワンボックスにバイクを載せ、1日がかりで現地に到着、さっそくバイクを降ろし、試運転したところ、しばらく走って突然エンジンがストール。そんな馬鹿な! 東京のSF(整備工場)で整備したばかりで止まるなんて……。
  その場にいたベテランライダーに見てもらったところ、とんでもないことが判明した。SFの整備士がACジェネレーターを点検したとき(点検項目にはなかったが、なぜか好奇心が働き覗いたらしい)、取り外したボルト数本を間違って入れたままカバーをしてしまった。だから、なかのボルトが躍って内部のコイルを断線させ、エンジンが二度とかからなくなったのだ。
  きめられたパーツ・トレイに取り外したボルトは入れ、管理すべきところ。魔がさしたのか、ホンダの整備士はあり得ない致命的な失敗をしでかしたのだ。(推測だが、取り外したカバーをパーツ・トレイ代わりにして、外したボルト複数本をカバーに入れた。取り付け段階でなぜか1本を紛失。しばらく探したが見つからない。ふつうなら必死で探すところ、職場の工場には同じサイズのボルトが腐るほどある。安直に部品棚から同サイズのボルトを探し、解決。ところが、カバーに無くなったと思った元のボルトが紛れ込み、ボルトを中に入れて作業を終えてしまった・・・・)
  こんなことなら点検など出さなければよかった。でもいまさら悔やんでも遅い。
  このままでは、記者として走れないから取材ができない。いち選手ならそこで、「はい残念でした! また来年」となるのだが、主催者側がこの事態に気付いた。報道してくれる媒体がひとつなくなるのは、つらい。そこで、詳細は忘れたがとにかく手を尽くし、ありがたいことに当時の岩手ホンダが動いてくれた。展示車両からACジェネレーターをそっくりそのまま取り外し、おいらのバイクに移植して、翌日軽やかにスタートできた。
  けれどコースさえ満足に走れない腕での成績はさんざんだった。土のうえで転びまくり、流れる川の中にもんどりうって倒れたり・・・・リザルトは、不名誉にも150人の選手中後ろから5番目ぐらい。2日間山を越え、川を渡り、極端な路面を300km以上走ったバイクもおいらもヘトヘトでくたびれ果てた。挙句に、ライバルのバイク雑誌に悪い見本として、無様な転倒写真を数限りなく掲載されたっけ! 
  このときほど、パーツ・トレイの大切さを身に染みて考えたことはない。
  前振りが長くなったが、今回アストロプロダクツで手に入れた「プラスチック・マグネットボール・スモール」は、直径110㎜のお椀型のパーツ・トレイ。重量が190gで意外と軽い。価格も420円とこれまたバカ安。
  底にマグネットが付いているので、ツールボックスの側面でもぺたりとくっ付く。お椀形状なので、垂直に取り付けても、なかのボルトやワッシャーはこぼれ落ちる心配はない。しかも、フック穴があるので、フックもしくは紐に通して、ぶら下げておくこともできる。
  色が黒というのが少し気になったが、なかに入れるボルトやワッシャー、ナット類は銀色系が多いので、問題ないか。内壁を波状の形状にして小さなボルトやナットが転がりにくくもしている。しかも、よくよく見るとマグネットを仕込んだ丸い底の外周に1/4ほどガイドをつけて、パーツ・トレイ自体が、不用意に転がるのを防いでいる。こう観察すると、価格から推定する・・・・≪安かろう悪かろう≫でもない、むしろ出色の製品であることがわかった。


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