M4とかM5といった小ネジを締め込んだり緩めたりする場合、たまに頭を抱え込むとトラブルに陥ることがある。頭部の溝がグチャグチャになりニッチもサッチもいかなくなることだ。
頭部が少しでも出っ張っている「ナベネジ」などなら、例のネジザウルスを使いなんとか回せるが、皿ネジ(ゼロ戦などで使われた頭部が沈み込んだ“沈頭鋲”のひとつである!)などになると、お手上げだ。ドリルで揉(も)んで・・・逆タップネジをねじ込み・・・という手法、あるいはドリルでメスネジを傷めない程度に、ぐいぐい食い込ませネジ自体を取り除く・・・。いずれの方法も、テクニカル、というかワザが要求される。
もっとスマートに解決できないか?
この課題にこたえようとするのが、今回取り上げるANEXの「ネジとりインパクト」である。
頭部が舐めてしまったネジ(M3~M6)のナベネジや皿ネジに対し「ネジとりビット」をあて、うえからハンマーで何度も叩き、食い込み溝をつくる。この“食い込み溝をつくる”作業が意外と難しいが、何度も失敗するうちにコツが飲み込めるはず。溝ができさえすれば、小型のインパクトドライバーに「ネジとりビット」をジョイントし、ハンマーで叩き、緩めることができる。ANEXに言わせると「刃先形状に進化のあとがある」という。バイクのシートまわりに使われているヘキサゴンボルトのM5ボルトでも使えそうだ。http://www.anextool.co.jp/
先日、近くにあるホームセンターを散策していたら、思わぬ商品に出会った。
ドイツのWERA(ベラ)のドライバーである。品番350PHである。ベラといえば、ドイツの先進的なドライバー専門メーカー。ここ数年のカタログを見ると、斬新なラチェットハンドルやユニークなコンビレンチもラインナップされているので総合ツールメーカーを目指すようだ。
工具の世界もグローバル化しつつあるのか、ドイツの工具がこんなところ(横浜郊外のホームセンター)にあるとは少しオドロキ。先端部にレーザーチップを施した軽量バージョンのドライバーだ。丸軸で、しかも、ボルスターがないので、10%ほど軽い89グラム。軸径はφ6ミリである。
ベラのグリップは、2つの樹脂素材を使っているのが常道だが、注目したいのはその完成度である。コンペティター同様にインジェクション成型でカタチをつくっているのだが、ざっくりいって日本製よりも1枚も2枚も上手のようにみえる。グリップのデザインにしても同じことがいえる。それでいて、売値が1229円プラス税なので、隣に並ぶKTCの1.5倍だから、がぜん魅力的に写る。
前号のKTCの貫通ドライバーと合わせ考えると、日本と欧州のドライバーは同じドライバーだけど世界観が異なるのかもしれない。ドライバーに関しては、日本のモノ作りがまだ欧米をキャッチアップしているとは言いがたい、とする業界人に会ったことがある。が、どうもそうではなく、その狙いが異なるようだ。貫通ドライバー大好きなジャパニーズドライバーに対し、欧州のドライバーは、美しくネジを回す道具という位置づけ。あれこれ触りまくるうちに、同じねじ回しという機能でありながら、なんだか同床異夢の感じがしてきた。
先日、近所のホームセンターを物色していたところ、思わぬ工具を見つけ出した。
KTCの木柄ドライバー 貫通タイプである。KTCには白いグリップの木柄があるのは、むかしから知っていたが、黒塗り(正確には茶色塗り)の木柄ドライバーは握るのが初めてかもしれない。迂闊さに気づいた反省と比較的安い(857円プラス税)こともあり、買ってしまった。
自宅にもどり、しげしげ眺めたり、触ると、悪くないのである。「天然木のやさしさに機能を加えたカタチ」とキャッチコピーにあるが、深くうなずいてしまうのである。握ってみて「オッ!」と小さく声をあげたのは、グリップエンド部の段差である。この段差に小指がうまい具合に収まり、エルゴノミック・デザインには負けるものの、悪くないグリップフィールなのである。にじみ出るような素朴さに好感がもてるのである。
ただし、洗剤をつけて握ると、まるでグリップ感がなく、スルスルするは、表面にニスが塗ってあるので致し方がないところか。先端はブラックポイントでマグネット付き。
一言でいえば、このドライバー、昭和の香りがするわりにはなかなか機能的に合格点が与えられるのである。ちなみに重量はプラス2番で120グラムと貫通タイプとしては、比較的軽い部類といえる。プラス2番にはこの全長230ミリタイプ(軸長100ミリ)のほかに全長280ミリタイプ(軸長150ミリ)もあり、価格は約1.5倍だ。
アルミ合金製の本体にギアレス機構を組み込み、ビットがプラス1番、3番、プラス2番とマイナス6ミリ、それにヘキサゴンレンチ3,4,5,6ミリの計7本がセットになった「ラチェミニZERO(ゼロ)」は、大阪に本社を持つ新亀製作所(ブランド名は“サンフラッグ”)の製品である。ZEROというのは送り角度がゼロという意味で、もちろん本締めができる本格派。手持ちのビットが使えるので、奥まったところのボルトの脱着にも充分使えそうだ。ただ、ビットの差し換えは油が付着した手では苦労しそうだ。左右の切り換えは黒色の樹脂部分を動かすことでおこなうので、両手での操作となる。
ギアレスの感覚ははじめ、なんだか心もとない感覚に襲われるひともいるかもしれないが、使い慣れると悪くない。逆に狭いところでも、細かく触れて具合がいいことが多い。
面白いのは、それ以外にプラス・アルファーの汎用性がある。というのは、本体のビッド取り付けとは逆面に1/4インチ(6.35ミリ)の差し込み角部があるのだ。1/4インチ(6.35ミリ)のエクステンションバーをつけ、その先にソケットを付ければラチェットハンドルとして機能することになる。
本体は重量感(本体98グラム)があり、Oリングを装着して、グリップ感を高めている。軸のガタツキも極力小さくしているようだ。ビットを取り付けたときの全長は64ミリなので、手のひらで隠すように持ち、狭いところでも、手首を動かすことでクルクルと、まるでスタビドライバー感覚で使える。なお、ビットホルダーは、作業ズボンのベルトに付けられるタイプで、表面に太い文字で、サイズ表示がなされている。メーカーの愚直さが表れているようで好感が持てる。
http://www.sunflag.co.jp/
アメリカスタイルの巨大スーパーマーケットのCOSTCO(英語読みはなぜかコスコ!)を散歩すると、ときたま国籍不明の“バカ安工具関連GOODS“とでも名付けたくなる製品にめぐり合い、つい財布の紐がゆるむ。
TOOLMASTER(「工具はお任せ」というほどの意味)という名前の部品収納箱である。英語とフランス語の表記なのでたぶん出処はカナダと推理する。
横42センチ、縦29センチ、奥行き5センチほどのハンドル付きの樹脂製パーツケースである。透明のフタは取っ手の両端にあるクリップを上に持ち上げると上に開く。内部はパーテンションで区切られている。取っ手の両端を入れると全部で12個のコンパートメント。中央にやや大き目の空間があるが、樹脂製仕切りを取り外せば、そのぶんコンパートメントの数は少なくなるが、長物も収納できる。
この製品、部品収納箱としては比較的大きめなのと、手にやさしい形状のハンドルが付いていて、フタが透明で一目でわかるのはとてもいい。出張用でも使えるし、倉庫内での部品ストックケースとしても活躍できる。何もいれなくともやや重く(2kg以内だが)、多少の衝撃にも壊れそうもなく、安心感もある。
でも、開け閉めが、ワンタッチとはいかない点が、いささか不満。物理的には一ヶ所で開け閉めできる構造にするのは難しいが、たとえば、半分がひとつのクリックで開け閉めできるというのは無理だろうか? いずれにしろ、こうした使う側に自由度がありすぎる道具(この場合は箱だが)は、おのれの“頭の整理度”が試される気がする。急いでいるときは、モノが挟まりフタが閉まらないとか・・そんな不快な経験が蘇る製品だといえなくもない。ちなみに価格は、2個で、2398円と、かなりのバカ安だけに、逆にバカにされている気もしないでもない!?
今回取り上げる工具の名は・・・「クニペックスのスプリング・ホースクランププライヤー・ロック付き」である。
どんなに横文字の記憶が確かな読者でもこいつは、すぐには憶えられない。メーカーが、クニペックス(ドイツ)なので、コブラとかアリゲーターといった、いささか恐ろしげなニックネームを持つウォーターポンププライヤーと思いきや、アゴ部をみると金属チップが付いている。だんぜん異色である。ここで、滑りがちなホースクランプをガチッとばかり保持するのだ。こうした配慮はこれまであるようでなかった。
この工具のすごいのは、これだけではない。
握り部上部にロック機構が付いていて、噛み付いた状態を維持できるのだ。ということは、たとえばホースクリップを広げた状態にできるので、両手が空き膠着したホース自体はがす作業(両手でホースを揺さぶるとか、細いマイナスドライバーを隙間に差し込むとか・・・)ができるということ。私の記憶ではこうしたクランプできるプライヤーは初めてではなかろうか。
上あごと下あごは、クニペックスお約束の3枚合わせなので、やや重量が重くなるきらいがあるが、チカラのバランスが理想に近く、ずっこけない。先端のチップは回転でき、万が一摩滅したら新品と交換できる(2800円と高いが)。アゴの調整段は19と細かく、全長は250ミリ。ハンドル部はディップタイプで昭和の味!? 品番は8551-250AFで、価格は1万38000円とややお高い。www.knipex.jp
フランス生まれのファコムのラチェットハンドルのなかには、最近実にユニークなものがある。「ファースト・アクション・ツイスト・ハンドルラチェット」(別名:ドライブ・ロータリーラチェット)。長ったらしい製品名がまず気に入らない。不満はそれだけではない。3/8インチ差し込み角なのだが、一見するとだれしもが1/2インチに見間違うほどデカイ。筆者も、3ヶ月以上触れずにいたら完全に1/2インチだと思い込んだ。インポーターに電話して不明に気づき、冷や汗をかいたエピソードが生まれたほど。全長が232ミリ、重量がなんと465グラム。長さは80ギアのスナップオンFHR80とほぼ同じで、重量は通常の約2倍。価格はさほど高くはないので、重さあたりの価格ならだんぜんお買い得!(冗談だけど)。
ギア数は、60ギアで、丸型である。一見な~んだ、と思うなかれ。ハンドル部をクルクル回すことができ、そのクルクル回すだけで、ボルトを脱着できてしまうのだ。一周グルグルでなく、手首でハンドル部をクルクルと往復させることで、締め込んだり、逆に緩めることもできる。「ファースト・アクション・ツイスト・ハンドラチェット」の面目躍如なところは、ここなのである。インポーターが説明する、これこそが航空機業界に食い込んでいるメーカーの真骨頂なのかしら!? 15年ほど前遠い記憶を手繰ると、台湾製で同じようなものが存在していた記憶があるが、FACOMというロゴだとなんだか、後光がさしてマドモアゼルにみまがう!? ただ、左右の切り換えは両手を使わざるを得ないのが不便。プッシュボタンもやや重い。ヘッド部も付加機構が組み込まれているせいか、通常のものよりひときわ大きい。ちなみに、1/4インチも1/2インチも揃っていて、1/4インチの方は141グラム、全長120ミリで実に具合がいい。大きいだの重いだのは欧米人の手との違いで評価が分かれるが、我が邦としては、1/4インチボディに3/8インチ角のモノを発売してくれるといいのに・・・と心から思うのである。
工具をウォッチィングしていて最大限にエキサイティングな気分に満たされるのは、当初はきわめてシンプルで改良の余地なしと思われたカテゴリーの工具のなかに、いつの間にか大きな存在感を備えた製品を目の当たりにするときだ。
最近のL型ヘキサゴンレンチの世界がまさにこれ。ヘキサゴンレンチの分類としてはナイフ型、ドライバー型、ソケット型、それにフレックス型といわれる両端が自在に動くタイプなどがあるが、やはり主流はL型。サイズごとにコンパクトにひとまとまりになるし、短軸と長軸があり、使い勝手がいいからだ。
このL型は「6角棒という素材を鋼材メーカーから購入し、曲げて、先端部をボールポイントタイプにしたり角を取ったりするだけ」と言えばそれまでの単純きわまりない工具。数年前までは、ショートタイプ、ロングタイプなどごく寂しいバリエーションしかなかったが、ここ数年で様相は一変。短軸を極端に短くしてタイトなところにアプローチしやすくするとか(写真一番上)、長軸部にカラーを付けて早回すができるという付加価値をプラスする(上から2番目)、あるいはボールポイントのアプローチ角度を38度の極限まで詰めたタイプ(上から3番目)、はたまたカド部でL字に曲げることで振り角度を小さくできこれまた狭いところでも使いやすくする(一番下)トリッキーな手法(モノづくりのオキテ破り!)、ボールポイントで相手のボルトをキャッチする機構を組み込んだタイプなどいわばL型ヘキサゴンレンチの爛熟期を迎えている。
ラチェットドライバーがいつの間にか、プロが使う道具の一つにのし上がっている。この背景にはスナップオンが切り開いた、質のいいラチェットドライバーの登場がある。
工具業界というのは、クルマ以上に真似をされる(あるいはする)世界であるが、単なる真似だけでは語り足りない面白みがある。「どれだけ従来品より安く、より使いやすく、さらには付加価値を付けるか?」が競われる。ごく最近登場したSEKのプロオートシリーズの「伸縮式ラチェットドライバーSED-1V」は、価格が2500円前後のわりにはよくできた製品だといえる。
さっそく、安売り家具店ニトリで購入した組み立て式BOX棚を組み付けるのに使ってみた。プラス1番を16本ほど締めこんだ。手持ちのPBにくらべても軸のガタが比較的少なく、悪くない。伸縮機能については、220ミリから300ミリに伸びて、いっけんライバルを蹴落とす勢いを感じるかもしれない。操作もハンドルのプッシュボタンを押せば手で伸縮できる。でも、これはあまり付加価値にはならない。逆に330ミリも伸ばすためグリップが150ミリもあるのは厄介。この伸縮機能のおかげで、付属のビットをハンドル内に収容できないデメリットが生じている。
ビット数は最近増加の一途であるが、プラス1,2,3番、マイナス5.5ミリ、ヘキサゴンビット4,5,6ミリの3本、それに1/4インチのソケットアダプター1個、計8本で、必要にしてほぼ充分。左右の切替えのハンドル側に印がないので、カチカチといちいち手で確かめる必要がある。いろいろと○と×をあげつらうことができるが、ギア数が30でわりと滑らかだし、コスパから見ると上出来の一本であることは疑えない。
エンジンルームなど、ついうっかりして作業中にボルトやナットを落としたことがないひとは、たぶんいないと思う。手が届く範囲であればなんとか手繰り寄せたり、拾うことができるが、そうでない場合は、細身の長いドライバーなどで地面に落としたり・・・とにかく難儀するスチュエーションである。
そんなとき、あればたいそう便利なツールが、ピックアップツールと呼ばれるものだ。先端にマグネット付きのものは昔からあったが、ステンレスボルトや樹脂部品だと役に立たないケースがあった。
つい最近TONEからデビューした「LED付きピックアップツール」は、従来品の弱点を洗い出した便利工具である。TONEのひさびさのヒット作かもしれない。先端部には0.9kgまで保持できる磁力をもたせる一方、ハンドル部の握ると3本の爪が飛び出しピックアップできる。しかもハンドル部のボタンを押せば先端部のLEDが点灯し、暗がりでもばっちり照らしてくれる。しかも角度を自在に変えられるので、曲がりくねったタイトな場所まで届くのである。
全長は625ミリで、重量は電池を含め126グラム。価格は2500円とリーズナブルである。工具箱のなかでは邪魔になりがちだが、それ以上の活躍をしてくれる工具だ。www.tonetool.co.jp
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