物欲に囚われたくはないが、それでも一度目にしたツールを渇望することは時たまある。
スナップオンの差し込み角1/4インチのスイベルラチェット(品番THNF72)である。林道ツーリングで知り合ったライダーの工具袋に収まるそれを一度だけだが使ったことがあり、いたく感動したからだ。スイベル(SWIVEL)とは「回り継ぎ手」のことで、丸型のヘッドがくるくると回せ、軸に対しL字でもストレートでもどちらでもいける、相手のボルトに対し角度が変えられる自由度があるラチェットハンドル。ヘッド部のデザインはベンツのマークを思わせるので通称≪ベンツラチェット≫とも呼ばれる。
この良さが手に残っていて、コピーでもいいから似たものを探せないものか? そんな下心が、先日足を踏み入れた、横浜みなとみらいのとあるホームセンターで思わず現実となった。兵庫県三木にある藤原産業(電話0794-86-8200)SK11シリーズの品番SRH2FRという製品。全長こそ146ミリで、スナップオンの175ミリにくらべ30ミリほどショート。逆に重量が147gでスナップオンより30gほど重いのが癪(しゃく)の種。スナップオンはロングではあるが、軽量。ここにスナップオンの凄みが垣間見え、1万円近いプライスでも受け入れられている背景。
だが、台湾ツールも負けてはいない。ギア数は72と本家と同じで、そのラチェットフィーリングも悪くはなく、至極スムーズ。ヘッド部の幅と厚みは計測したが、ほぼ同じ。しかもスナップオンにはないプッシュボタン付きなので、ソケットやエクステンションバーが作業中に外れるという心配がない。ソケットを取り付けたときのガタも小さい部類で、好感が持てる。価格は1830円。スナップオンの約1/6で手に入れられる。やはり台湾ツール恐るべし、である。
一昔前まで「ソケットホルダー」といえば、板金製が圧倒的多数派。うっかり素手でソケットを抜き差しすると、指を傷つけてしまいそうな感じの代物だった。ところが、樹脂製系の進化とよりいいモノを求めたいという市場の成熟により、スチール+樹脂(樹脂部がクリップ)のハイブリッド構造が多数派を占め始めた。それがここ15年ほどではないだろうか?
市場にさまざまなソケットホルダーが出回っている背景には、決定打ともいうべき製品が世に出ていないからだ。台湾製ツールを前面に押し出しビジネスを展開するアストロに、ボール部こそスチール製だが、レール本体をアルミにし、クリップをナイロン樹脂というタイプが登場している。差し込み角3/8インチの全長305ミリのタイプ。価格もKTCなどにくらべ約半分の税込み1058円とリーズナブル。
使ってみると、悪くないのである。オールスチールやスチール+樹脂に比べ、約半分の重さの69グラム。しかも、クリップ自体がアルミのレールの上を回しながら前後方向に動かせるので、サイズ表示を揃えることができ、そのぶん早く必要なサイズのソケットにアクセスできる。ところが、1/4インチタイプは、興ざめである。3/8インチと同じレールを流用しているため、商品力を逆にダウンさせているのである。ユーザーが心理を無視して、作り手側の都合でデザインする手法にはやはり台湾のモノづくりの姿勢が問われる。
スタビドライバーを使って手狭なところにあるネジを脱着した経験のある読者はおわかりだが、意外と使いづらい。小さいため相手のネジに対して、押すチカラがうまく伝わらないからだ。ドライバーという工具は、よく言われるように押すチカラがゆるいと、ネジの溝から外れやすい。この点、ラチェット機構付きのドライバーは押すチカラに専念できて、具合がいい。手をクルクル回せばいい。
ANEX(http://www.anextool.co.jp/)の「ガンドラ」はガングリップタイプのドライバーを縮めたネーミングのようだが、なかなか発想がいい。中指と薬指がリング部に入りチカラが伝わりやすいのだ。ビットはANEX独自の1本で+1番、+2番、+3番を兼ね備える。しかもハンドル部に+2番とマイナス6(全長30ミリ)のもう一本ビットが収まる。1/4インチ(6.35ミリ)なので手持ちのビットも使える。価格もホームセンターで943円とお手頃。見た目もコンパクト。黒とシルバーの色使いで可愛い。重量95グラムと小柄(102ミリ×63ミリ)で魅力的。
ところが、使うとかなりガッカリする。ラチェットがやけにガサツなのだ。ギア数を数えると10ギアだ。ということは振り角度36度もある。イマドキのラチェットハンドルのギア数はダルマ型でも80ギア、なかには90ギアもあるというのに、お粗末過ぎる。欲を言えば、PBのラチェットドライバーを日本のドライバーメーカーが凌駕して欲しい。ギア数をたとえば30ギア数ほどにして、ガタを小さくし、樹脂成形を緻密にして質感を高めれば3倍の価格でも売れると思う。
ハンドツールの世界で、ドライバーほどその種類やブランドが多い工具はない。とくに一番使用頻度の高いプラスドライバーは、数が多く、どれを選んでいいか分からないほど。ただ1本数百円から千円プラスと比較的お手軽価格のため、複数手に入れ、試してみることができる面白みがある。
そんなわけで、これまであまり足を踏み入れなかったアストロでポピュラーなドライバー2本を入手した。「APスタンダードドライバーPH2×100ミリ」(写真下)というのと「APスタンダードドライバーHEXヘッドPH2×100ミリ」である。前者は明らかに非貫通タイプだが、後者はいっけん貫通タイプに見えるが、軸と6角部を持つグリップエンドが実はつながっておらず、「ハンマーなどで叩かないでください!」という注意書き付き。前者は、重量78グラム(実測値:カタログ値はなぜか85グラム)で、手持ちの15ほどの非貫通2番の中では軽い部類。軸はφ6ミリの丸軸だ。後者の「いっけん貫通タイプ」のほうは、全長がやや長く、重量も129グラム(実測値:カタログ値は130グラム)と貫通ドライバー並みの重さ。エンド部に2面幅13ミリの6角部を持ち、ここにメガネレンチをジョイントすると強いチカラをかけられる仕掛け。こちらの軸は6角断面で、その2面幅は6ミリ。
両者ともに、先端にカムアウト防止策こそないがマグネットタイプ。グリップがなかなか秀逸。比較的柔らかな樹脂素材の黒と硬めの樹脂赤のハイブリッドタイプは今流で(“いっけん貫通タイプ”はイボイボもある)ある。驚くべきことは、家庭用の洗剤を付け使ったところ、ライバルたちがことごとく滑り使えないのが多いなか、グリップ伝達がすぐれていることを発見。230円、250円と牛丼一杯よりも安い値段で買える割には、見上げたものだと正直思った。ただし、先端部の耐久性などは、今後使い込んでからの判定だ。http://www.astro-p.co.jp
9月から11月の3ヶ月、ブランド別の整備士コンテストを立て続けに9つほど取材して回った。場所は、横浜、八王子、豊橋、世田谷といろいろ。ツナギ姿の整備士が奮闘している姿をカメラに収めたり、昼食時に雑談したり、優勝者の整備士にインタビューしたり。クルマに乗ることだけを楽しみにするひとには、その楽しみは分かりえないかもしれないが、筆者には貴重な楽しみの時間である。なにしろ日々クルマの整備をし、そのクルマの壊れる部位や壊れ方、部品の着脱法などを熟知している人たちと直接接することができるからだ。取材対象者として、これ以上のカテゴリーの男はいない(たまに女性もいるが)。
なかでもトラブルシューティングは沈黙のバトルである。与えられた60分(あるいは90分)でたいていは「始動不能になったクルマのエンジンをかけなさい」とか、「ついでに日常点検と他の不具合を見つけなさい」という課題に立ち向かう。使い工具はあらかじめ与えられているケースもあるが、なかには日頃使う工具を会場に持参というケースもある。そんな取材で、発見する工具も少なくないが、今回はLEDも小型ランプを教えられた。エンジンルームやインパネの奥など暗がりを点検するとき欠かせない。かつては30センチ以上もある作業ランプがメインだったが、いまや手のひらサイズのLEDランプが主役。ツナギのポケットにも入るし、LEDなので、長時間使える。そこで探してきたのが、「LEDスティックライト」で、メインのLEDが6個、サブが1個の計7個。全長170ミリ。単4電池3本で、重量33グラム(電池含まず)。メイン点灯で約5時間半の連続点灯ができる。ヘッド部にプッシュ式のスイッチがあり、手に持った状態でちょうど人差し指はそのスイッチに位置するので使いやすい。価格は750円とお手軽だった。ストレート製だ。http://www.straight.co.jp/
クルマのなかで、スマホやタブレットを充電したい、ポータブルDVDプレーヤーを楽しみたい、あるいはラップトップ・コンピューターを充電したい・・・そんな要望に、文字通りスマートに応えてくれる製品をコストコで見つけた。「エナジャイザー・カップ・コンバーター」がそれ。購入価格は2398円だった。本体(重量193グラム)は、見るからに“カップ形状”で、クルマのカップホルダーにピタリ収まる大きさ。上部には、4つのUSBポートとAC/100Vのコンセント1つが付いている。シガーライタープラグ付きコードが付属していているので、12Vバッテリー電源の直流を本体内部で交流に切り換える。まとめると、12V・DC→100V・ACに変換する“コンバーター”なのだ。
さっそく、使ってみたところ、まったく静かに粛々と充電してくれた。最大出力360Wなので、ヘアドライヤーとか電気ポットは使えないが、スマートフォンの充電やデジタルビデオカメラの充電などは朝飯前というわけだ。シガーライター部には管ヒューズが備わり大電流が流れた場合本体破損を防いでいる。温度超過による自動電源オフ機能も内蔵するという。本体裏側には、50㎐⇔60㎐の切り替えレバーも備わる。ちなみに、エナジャイザーという企業は、日本では馴染みはないが、ミズーリー州セントルイスに本社のある100年以上の歴史を持つ老舗。世界ではじめて消費者向けの乾電池や懐中電灯を世に送り出している。
ネジ穴がつぶれ、ネジが効かなくなった! そんな時はタップを立てねじ山を修正する。あるいはタイムサートで新たにネジ部を作る。
先日ホームセンターを散歩していたら、変なものを見つけた。「ネジ穴補修キット」(16枚入り:価格284円)である。安物買いの銭失い、というコトワザが頭をよぎったが好奇心が勝り、手に入れた。
20ミリ×50ミリのブリキの薄板(肉厚0.3ミリ)に、写真で見るように細かくパンチングして、鋭い凹凸をつけている。このブリキを適当な大きさに切りバカ穴になったネジ穴に装着。このとき、穴に隙間なく覆うように差し込むのがポイント、とある。そして、そこにネジをねじ込もう・・・という、なんとも野戦的なトラブル解決法なのである。母材は木、鉄、プラスチック、セメントなど何でもOKだという。
どう考えても、エマージェンシーというか、応急処置的な対処法だ。
説明書どおりに、まず金バサミで適当(といっても難しいが)に本製品のブリキを切り、穴にあてがうが、帯に短しタスキに長し。隙間なく覆いかぶせるのは、かなり器用なひとでないとできそうもない。相手の母材にも食い込ませないといけないので、ネジの締め付けトルクも考える・・・
とにかくスキルが必要な道具だ。航海中帆を失ったヨットがなんとか岸までたどり着くための道具を探そうとする・・・そんなシチュエーションのボルトトラブル解決策に思えてきて、そんなことなら日頃のメンテナンスをきちんとおこなうことの重要さに目覚める・・・ということは、この用品、メンテの重要性を再認識させるお守りとなる!? 発売元は与板利器工業㈱ 電話0256-35-4311。
現在国内に10店舗ほどある、アメリカ生まれの会員制の大型倉庫店COSTCO(コストコ)は、これまでの日本の小売りデパートやスーパーにくらべると風変わりな面がある。衣料品を販売しているが、フィッティングルームはないし、いつもお目当てのものが揃っているかどうかは、じかに店に足を踏み入れないと分からない。つまり昨日あったものが今日はない、というケースもさほど珍しくないのだ。
それを承知での情報だが、「ボッシュの91 TⅰN」というビット&ドリルセットを見つけた。
ドイツのボッシュには、ABSなどのシャシーセーフティ部門、燃料噴射などのエンジン部門、車両コンピューター診断機といった業者間ビジネスのほかに、大工道具やDIY向けの道具類の開発販売もしている。商品名の“91”というのは、樹脂ケース(320×220×70ミリ)のなかに入っているビットとドリルの総数だ。ドリルの刃はチタンコーティングタイプ、木工タイプなど3タイプ、ビットはフィリップ、ポジドライブ、ヘキサゴン、トルクス、マイナスとプラスはそれぞれ25ミリタイプと50ミリタイプ。それにそれらを取り付け使えるラチェット機構付きのハンドドライバー。ガタがややひどすぎるのが気になるが・・・。エンジンルームに落としたビスをマグネットでピックアップできる650ミリまで伸ばせるテレスコピックタイプのマグネットツールは意外と使える。中国製なので、これからどんどん使ってみてあれこれ評価するとして、樹脂ケース付きで3480円は、価格の安さに目がくらみ、とりあえず「いいねっ」と言いそうかな!?
困ったときの神頼みではないが、ねじの頭がぐちゃぐちゃになったとき、重宝するのが、「小ねじプライヤー」である。
新潟県三条市にあるプライヤーとペンチ,ラジオペンチの専門メーカーのスリーピークス技研では、大小4種類の「ダイヤ型小ねじプラーヤー」をこのほどスタンバイさせた。これまで150ミリと175ミリの2タイプだけだったが、115ミリと215ミリが加わり全部で4タイプとなった。写真にはないが、ロッキングプライヤータイプ(こちらは130ミリと200ミリ)もあるので、トータル6タイプである。
ダイヤ型というのはくわえ部分に目を近づけるとわかるが、先端と奥に大小2つの菱形(ダイヤ型!)のくわえ部分を持つ。これによりとくにロック機構こそ持たないが、3点支持で、頭が壊れたネジを回すことができる寸法だ。とくに先端部の小さなダイヤ型くわえ部は縦溝を施しているところがミソ。先端部は高周波焼入れを施し硬くしている。グリップは、エラストマー製の樹脂グリップで、手にやさしい。ちなみに、スリーピークスでは「かるいニッパー」や「かるいペンチ」などで、市場を切り開いている。http://www.3peaks.co.jp
大部分の工具がそうだが、本当にたまにしか出番がないが、絶対必要となるシチュエーションがある。さしずめ『ハンドナッター』もそのひとつ。似たような工具にリベット止めをおこなう「ハンドリベッター」があるが、ハンドナッターは、何もないところにナットを作り上げる工具である。たとえば、ボルトで部品を取り付けたい場合、ボルト穴がないとしたら、新たにナットを創設するという役目である。
今回の場合、オフロード・バイクのガソリンタンクの根元のネジが駄目になった。もともとM6(ネジの径が6ミリ)のナッターが使われていたのだが、そのねじ山が数回の転倒でぐちゃぐちゃになり駄目になったということだ。クルマの場合なら、ブラケットにネジ止めする場合、を考えればいい。
『ハンドナッター』とは、ハンドルを閉じた状態で、ナットリベットと呼ばれるコマを先端のネジ部に取り付け、ハンドルを思い切り開く。すると、ナットリベットの中間部が取り付け面に沿ってツバができ、板と一体になる。ナットリベットの素材にはアルミとスチールがあり、ネジ径はアルミでM3×0.5,M4×0.7,M5×0.8,M6×1.0、スチールでM5×0.8,M6×1.0,M8×1.25がある。作業性は意外と悪くなく、仕上がりが上々だった。工具の価格は5480円と格安。ナットリベットも10個入りで200~300円レベル。ストレートwww.straight.co.jp
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