2013年6 月 1日 (土曜日)
切れ端をしっかりキャッチするニッパ

ニッパ(ニッパーともいう)という工具をご存知だろうか?
NIPとは英語で「噛み切る、はさみ取る」という意味で、ハサミの一種である。たとえばワイヤーハーネス(配線)などを束(たば)ねたり、ワイヤーハーネスを隣り合う部品に取り付けるときに使用する樹脂製のタイラップバンドというのがある。片側に一方向にしか動かないロック機構が付いていて、手でカンタンに締め上げられるものだ。
このタイラップの端をカットするとき通常のハサミやニッパでは、ロック部ぎりぎりに切れない。しかも切り口が鋭角になり、素手で触れると思わぬケガをする恐れがある。
東大阪市にあるペンチメーカーの老舗「フジ矢」が最近発売した「キャッチニッパ」(品番:90CS-12)は、こうした不満をいっきに解消した製品だと誉めてあげたい。
使うとすぐ分かるのだが、切れ端が残るように板金製の“受け”が付いているのだ。まるでカットされたツメが飛ばない工夫のある爪切りと似たようなものだ。あるいはかつてのチャンバラ映画の“真剣白刃取り”という言葉を思い出した。しかも刃の形状がすごいんだと思う(うまく説明できない!)のだが、いわゆるツラ位置できれいに切れるので、不用意に指で触っても傷つかない。ちなみに、このニッパに限らないが、ペンチでもそうだが、両の刃は、人間の前歯と同じで、わずかながら互い違いにしてある。アメリカのペンチやニッパがいわゆるまな板切り(片側がまな板の役目)をするのとはまったく異なる流儀が隠されている。
2013年5 月15日 (水曜日)
T型でも使える付加価値の高い1/4インチ・ラチェットハンドル

差し込み角1/4インチ〔6.35ミリ〕のコンパクトなラチェットハンドルである。「フルターンロック・ラチェットPFR-02」という、いささか長めの商品名。それに写真を見ても、たぶんどんなものか想像できないと思う。
ヘッドは、丸型で、ギア数は72なのだが、ツメを通常の1個ではなく2個付けることで、2倍の144、つまり送り角度2.5度を実現。文字通り小気味のよいラチェットフィールを味わえる。
しかもフルターン式で、任意の位置で止めることができるのが、大きなポイント。ヘッド手前に樹脂製のダイヤルが付いていて、これを回すことで、ヘッドと軸を固定したり、逆に解除することで回すことができる仕掛け。面白いことに、このハンドルのグリップ中央にプッシュボタンがあり、これを押しながらハンドルを回すと、あら~っとばかりT型ラチェットレンチに早変わりするのである。
以上縷々(るる)説明したが、おそらく半分も伝わらないと思う。いたずらな付加価値は、トリッキーな感じを抱かせる心配もあるのだが、この工具は、これまでのスタンダードツールの壁を打ち破る力を秘めた、そんな商品だ。というと少し誉めするになるか!? 重量は173gと1/4インチにしては、やや重いが、コンパクトなので気にならない。価格は7、900円。
発売元は、兵庫の三木市にあるスエカゲツール㈱。
http://www.suekage.co.jp
2013年5 月 1日 (水曜日)
侮るなかれ! 台湾製のラチェットハンドル

どんな商品でもそうだが、安くて性能が高いことが強く求められる。
かつての日本のモノづくりは、安い労働力と地道ないいモノをつくろうという情熱、それに企画力で、世界でその名をとどろかせた。ソニーしかり、ホンダしかり、パナソニックしかりである。
ところが、今やそれがうまくゆかない。労働力コストだけがその原因ではなく、大きな課題はそこで働く人たちのハングリーさの欠如・・・。台湾ツールを眺めると、つくづくこのことに気付かされる。
今回取り上げる「差し込み角3/8のコンパクトヘッド・ラチェットハンドル」〔藤原産業㈱ 電話0794-86-8200〕は、文字通りヘッド巾が27ミリと小さく、重量も250gと軽く、切り替えレバーの操作感がきびきびしている。とくに駄目出しするところがないところが、いささかナショナリストになりがちな、当方としては悔しさが込み上げる!? 丸型なので、ギア数も72とだんぜん多く、いわゆるラチェットフィーリングも悪くない部類。しかも価格(購入価格)は、1280円と、有名ブランド品の1/10に限りなく近い。台湾工具メーカーは、過去30年近く欧米や日本の一流メーカーの下請け工場として、培った技術と企画力とのドッキングで、こんな素晴らしい低価格なツールを作れるという証明をしているところ。
しばらくは、台湾ツールの進化と推移に目を離せないところだ。
2013年4 月15日 (月曜日)
フレキシブル・ビットドライバー

ドライバーという工具は、相手のボルトの軸に力を押し付けながら回す、というのが原則的な使い方。そうしないと固く締まったボルトを緩めようとすると、ドライバーの先端がボルトの頭部の溝を外れ、逃げてしまう恐れがあるからだ。これを専門用語でカムアウト(COME-OUT:抜け落ちる、外れる、の意味)という。
この理屈から言えば、軸がフレキシブルなドライバーというのは、ドライバー本来の使い方に真っ向から反論しているようなものだ。押し付けるチカラはどうしても小さくなりがちだ。
でも、だからといって、このドライバーはまったく役に立たないかというと、そうではない。
軸がフレキシブルということは、奥まったところにあるボルトを回すことができるからだ。実際使ってみると、想定以上に便利なことがわかる。やはり押し付ける力をうまく伝えづらい面はあるものの、がちがちに締まったボルトを緩める場合を除けば充分使える。しかも軸自体が、グリップから取り外せ、同じシリーズの差し替えナットグリップソケットの軸がそのまま使える。先端部には、2面巾が1/4インチ(6.35ミリ)のビットがピタリと収まるようになっているので、プラスビットでもヘキサゴンビットでもジョイントでき、使用範囲がぐんと広がる。全長は238ミリ、重量は110グラム。いずれにしろ、いろいろなシチュエーションで使ってみると、いい点も悪い点もふくめ意外な発見ができそうな工具だ。価格は、3060円。発売は、KO-KEN
http://www.koken-tool.co.jp/
2013年4 月 1日 (月曜日)
フレックス・ラチェットハンドル

台湾発のハンドツールは、日本の商社などからのアイディアで、意外と興味深い製品を生み出す。
とあるホームセンターで見つけた「フレックス・ラチェットハンドルFRH-23B」もそのひとつだ。
いっけん首振りタイプのメガネレンチと見間違えそうだが、よく見ると両端に首振り機構を備えたらラチェットヘッド部を持つ。3/8インチと1/4インチの差し込み角を持つラチェットヘッド。ギア数がいずれも72度なので、振り角度はわずかに5度。きめの細かいフィーリングと使い勝手を狙っている。しかも1/4インチのヘッドの裏側には1/4インチのビットが入る6角部があるので、手持ちのラチェットドライバーのビットを流用することで作業の巾が広がる。
使ってみての印象はどうか? 全長220ミリとやや長めなのでトルクが入れやすい。ところが・・・左右の切り換えボタンがヘッドの根元に付いている。親指の腹で動かすスライド式である。スライド式は、たしかに袖口でうっかり知らないうちに切り替わる恐れのある、レバー式よりもメリットも多い。この切り換えボタンが、3/8インチ側は大きいのでいいのだが、1/4インチ側がかなり大きな操作力を加えないと動かない。このややできの悪い切り換えレバーさえ改善すれば、なかなか商品力を持つ工具だと思う。ハンドツールは、辛抱強く育てていくかでブランド力が高まるが、モノづくり工場を持たない商社にこれができるかが課題。発売は、㈱三共コーポレーション 電話06-6252-1712
2013年3 月15日 (金曜日)
水さえあれば充電可能な水素燃料電池型充電器

燃料電池とは水の電気分解の逆をおこなうことで、電気を作り出す仕掛け。つまり、子供のころ理科の実験室でおこなった水に電気を作用させることで、水素と酸素の分解した実験の真逆・・・とは頭では理解していても、いまひとつリアリティを抱けない。
「マイエフシー(myFC)パワーチャージャー」は、128×65×42ミリの手のひらサイズの燃料電池型発電&充電機なのである。別売りのヒューエルパックを本体にセットし、下部タンクに水を入れるだけで、発電が可能。
携帯電話、スマートフォン、パソコン、デジタルカメラなどの充電ができるというものだ。ニッケル水素電池やニッケルカドニウム電池などにくらべ、エネルギー密度の高いリチウムポリマー電池を採用して、安定した電力を供給するという。バッテリー容量は、1000mAh/5.0V。本体重量は、245グラム。価格は2万4000円。水の電気分解の逆を体験するにはややお高いかもしれない。
http://www.evernew.co.jp/
2013年3 月 1日 (金曜日)
ナイロン製のツールバッグ

とくに旧車をふだん使いで乗っているドライバーは、たぶん思うに覚悟を持っているのではないだろうか。万が一不具合を起こしたら、できるだけ自分で応急修理したい・・・なんとか、だましだましでも近くの修理工場まで自走したい・・・そんな思いを秘めているのではなかろうか?
そのためにはトランクルームのある程度の工具を保持し、突発的なトラブルに即座に対応したい。そうなると、金属製のツールチェストだと少し大げさだし、クルマの揺れで騒音の原因になる。やはりここは手ごろなナイロン製のツールバッグがいいと思う。でも工具袋と言うのは、徐々に内容物が増えていくので,これを抑制するためにときどき整理整頓が必要だし、はじめから小さめで必要最低限のものしか入れておかない、という主義を貫徹すべきだ。
今回紹介するのは、縦横のサイズが300ミリ×185ミリ、高さ190ミリ。重量は470g。使用頻度の高いソケットツール、メガネレンチとコンビレンチ、それにドライバー2本、ヘキサゴンレンチ・・・あたりを入れておくにはちょうどいい。内面と外側には、ポケットが付いており、短めのタイラップ、薄手の整備用手袋、予備のスパークプラグあたりならなんとかはいりそうだ。これよりもうひとまわり大きなタイプ(320×220×210ミリ)もあるが、小さめのモノを2つ持ち、もうひとつにはハンマー、プライヤー、モンキーレンチ、オイルフィルターレンチなどを入れるという手もある。価格はいずれも980円と格安。
購入先は、アストロプロダクツ。
www.astro-p.co.jp
2013年2 月15日 (金曜日)
1/4インチのソケットホルダー

差し込み角1/4インチ(6.35ミリ)のソケットをホルダーから取り出すとき、かなり苦労するはず。とくに油の付着した手でレールから外そうとするときがそうだ。
より理にかなったソケットホルダーはないものか? そんな思いでいたところ、かなりイケそうなものに出会った。兵庫県三木市にある藤原産業製のSSH210Nという品番の1/4インチ専用ソケットホルダーである。10個の収容能力で、価格が400円とかなりリーズナブルなので迷うことなく購入した。レール自体は、板金製なのだが、ホルダーのコマ(クリップ)が樹脂(ポリアセタール)製。オレンジ色のホルダーには、横にツメが生えており、ホルダーに付いたソケットを取り出すときに、このツメを少し押し下げると、ソケットとクリップ間の密着が緩まってらくらくソケットが取り出せるという仕掛けだ。実際使ってみると、なかなか具合が良く、ストレスなくすんなりと脱着できる。ただ、残念なのは、横幅が約30ミリと通常の約2倍も大きいことだ。全長は210ミリ、重量は、72グラム。
購入先は、アストロプロダクツ。
www.astro-p.co.jp
2013年2 月 1日 (金曜日)
3ウエイT型ソケットレンチ

クルマやバイクで一番使用頻度の高いボルトの6角部の頭はなんだろう?
8ミリ、10ミリ、12ミリの3つだ。たぶんこの3つで、6角部頭のボルトの半数以上を占めるほどだ。ということは、この3つのサイズを一堂に集めてある工具が一番使い勝手のいいことになる。理屈のうえでは。
いわば、この理屈で、商品化されたのが『3ウエイT型ソケットレンチ』といえなくもない。T型の下部に8ミリがあり、左右に10ミリと12ミリがある。“Tの字”の下部が140ミリ、左右が130ミリだ。重量は180グラムとやや重いが、エマージェンシー用として、バイクツーリング時のウエストバックに忍ばせておくといい。ただ、あまり小さなバックには収まりきれず、収まったとしても、他の道具と絡まりやすいので、収納にはコツがいりそう。さらにデメリットといえば、奥まったところのボルトにはアクセスしづらいという点だ。価格は、600円とリーズナブル。もし折り畳める、フォールディング機構をもたせると、大ヒット商品になる!?
購入先は、アストロプロダクツ。
www.astro-p.co.jp
2013年1 月15日 (火曜日)
ギア数90にKTCのモノづくりが見える!?

KTCのトップブランドはNEPROS(ネプロス)と呼ばれる。トヨタでいえば、レクサスブランドに当たる。このネプロスシリーズに、ギア数90というラチェットハンドルが登場した。
従来品のネプロス3/8インチのラチェットハンドルが36ギアだから、2倍以上。ギア数が多いだけでは、送り角度が小さい(この場合4度)だけだと思われるかもしれないが、使うたびのフィーリングに天と地ほどの違いが生じる。むろんフィーリングがギアのかみ合いを、いかに吟味するかに左右されるが、ギア数が小さければ話にならない世界ともいえる。KTCの技術陣がすごいところは、ヘッド内部の限られたスペースの中に納まるパウエルと呼ばれる左右切り換え機構と本体ギアとの噛み合い部を従来の1ピースから2ピースに大改革したこと。これで、いっきに36ギアから90ギアまで広げてしまった。実際手に持ち、動かしてみる。カチェカチェではなく、えも言われぬ音色とクリック感に驚かされる。その奥には、「そんじゃ、そこいらの台湾ツールとは違います」となにやら京都弁が聞こえてきそう(KTCは京都機械工具株式会社でもともと京都生まれ)。
いまや日本のハンドツールの市場は、20年前とはまったく異なり、それなりに愛用できるほど上質の台湾ツールが、シェアを伸ばしつつある。ツールのユニクロ化が進行中。ジャパーニーズ工具の地盤が揺さぶられている。ネプロスNBR390はそんなKTCの危機意識から生まれた製品ともいえなくもない。価格は1万1700円とリーズナブルだ。
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