「これほどてんこ盛り機能を満載したラチェットハンドルなど聞いたことがないぞ!」
このツールを手にした人はたぶん全員、異口同音にそんな言葉をつぶやくに違いない。今回も前回同様に台湾ツールである。ヘッドを見ると、両サイドに差し込み角3/8インチと1/4インチの2つの差し込み角を持つ、いわば両刀使い! 面白いというか、笑えるのは、これだけではない。グリップの根元のリングを前方に押すと、まるで望遠鏡のごとく、テレスコピック機構があり、あっという間に全長が短くなる。スケールで正確に測るとノーマル時の長さが220ミリあったのが、縮むとわずか160ミリになるのである。
手に持った感触は、通常のラチェットハンドルに比べずいぶん重い感じ。秤で測定すると、322gもある。ふつうの3/8インチのラチェットハンドルが200g台の前半なのにくらべ、約5割り増しの重量アップ。多機能ぶりを仕込んでいるだけにある意味仕方のないところ。
振り角度を左右するうえで、気になるギア数は、72ギアとかなり多い部類。わずか5度の振り幅で使える。切り換えレバーの軽やかに動く。ただし、機構上仕方がないが、グリップと軸のガタが大きく、使用フィールは重量級ということもあり、あまり好ましくない。
このツールの入手先は、アメリカからやってきたメガスーパーマーケットCOSTCO(コストコ)。価格は、正確ではないが、ほかに3つのラチェットハンドルが付いて、4000円前後だった。だからこれだけなら1本1000円ちょっと。パッケージを見ると製造元は台湾だが、販売はLAのロングビーチにあるMASTERGRIP(www.alltradetools.com)である。
いまや台湾ツールをあざ笑う人は少ないと思うが、この1本のハンドツールは逆に台湾ツール恐るべし、と思わず口に出してしまいたくなるほどだ。一見何の変哲もないレンチに見えるが、デュアルヘッド、つまり2つのラチェットの差し込み角部を持つツールなのだ。使用頻度の高い3/8インチと1/4インチ。
通常二兎を追うもの一兎をも得ずというたとえがあるが、この工具は1本で二度楽しめる!? しかもプッシュボタンタイプで、不用意に差し込んだソケットやエクステンションバーが抜け落ちる心配もないし、ボタンを押すことでらくらくソケットを取り外せる。鏡面仕上げで、見るからに美しい。加えて、左右に切り換えがレンチを持ったまま親指1本でできるのも、アドバンテージ。見栄えからすると過度なトルクはかけられないかもしれないが、通常の使用の世界では問題ない。この工具のすごいところは価格が、1800円と安い点。車載工具用として、あるいはバイクのツーリングツールとして重宝する工具でもある。ギア数は72ギアと細かい。全長は176ミリ(実測値)だ。
『ネジザウルス』という、ちょっと人を食ったような名前が付いた工具がある。
一見すると何の変哲のないペンチなのだが、アゴの先端部に秘密がある。通常のペンチやプライヤーは先端部に「横溝(よこみぞ)」しか施していないが、これは縦溝(たてみぞ)のギザギザ加工があり、そこでネジの頭をしっかり掴まえ緩めることができるのでだ。頭部がつぶれたネジだけでなく、錆び付いて普通の工具ではなんともならないネジ、固着したネジ、トラスネジと呼ばれる頭部が薄くて通常のペンチやプライヤーでは掴まえることができないネジでも、このネジザウルスがあれば、解決するという。なお、掴まえられるネジの直径は9.5ミリ以下である。
もちろん、通常のペンチ同様に、刃部を装備しているので電線も切断することができる。切断能力は銅線でφ1.2ミリだ。開脚部にコイルバネが付いているので、連続して作業しても手が疲れることがない。グリップ部はエラストマー樹脂だ。全長160ミリ、重量は130g。発売元は(株)エンジニア http://www.engineer.jp 価格は、2800円。
KO-KENが創業50周年を記念して、まったく新しいソケットツールシリーズを誕生させた。
ZEAL(ジール)というのがそれで、ZEALとは英語で熱意とか情熱を意味し、エボリューション・オブ・オートモーティブ・シリーズ・ラインナップの頭文字でもある。
ソケット、ユニバーサルジョイント、エクステンションバー、スピナーハンドルなどソケットツール全般が一新したのだが、今回はラチェットハンドルを取り上げたい。
新しいラチェットハンドルは、従来にくらべひとまわりコンパクト・軽量化されている。従来の内部構造は、“逆ハの字”構造だったのだが、スナップオンやKTCのネプロスなどと同じ一体型の爪でギアを押し上げる構造。ところが、この手法だと、空転時に重くなるのと、使用時の切り替えレバーが逆方向になり、しかも使うたびにレバーがカクカク動く。そこで、内部構造を独自のオリジナル構造にすることで、こうしたデメリットをクリア。ギア数は36ギアと細かくし、振り幅の取りにくいところでの作業性を高めている。グリップは、油脂類に対して耐性を備えたエラストマー樹脂としている。グリップフィールはとても上質だ。いまのところセットツールだけの販売だが、販売価格が従来とあまり差がない設定だという点もうれしい。http://www.koken-tool.co.jp/
モノをつかむ工具といえば通常プライヤーをイメージするが、太いパイプなどをつかむとなるとウォーターポンプ・プライヤーの出番である。つかむものの大きさに合わせて複数段で調節が利くのと、柄が長いためつかむ力が強力で、通常のプライヤーにはない便利さがある。
ところが、これまでのウォーターポンプ・プライヤーは、上あごと下あごの状態が2枚合せ。これだと強いチカラで締めたとき、剛性感がない。長いあいだ使ううちにガタが大きくなり、まことに心もとなくなるのだ。頼りない工具では愛着もわかない。
新潟三条市にある老舗工具メーカーTOP工業(℡0256-33-1681)が満を持して発売したのが3枚合せの「ウォーターポンプ・プライヤーWP3-250」である。上あごが下あごの中央に挟まる構造なので、チカラを入れて使ったときのバランスに優れる。口幅の調整は9段階で、パイプならφ6~φ51ミリのパイプまで幅広く咥えることができる。しかも咥え部の形状が菱形をしているので、確実かつ強力に食いつく。上あご部にストッパーを付けているので、万が一の指はさみの心配がないのと柄の開閉がスムーズにゆくのも美点。ちなみに、歯部には高周波焼入れをして耐摩耗性にすぐれるという。
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